スペイン(Spain)

概況

スペインはイベリア半島に位置し、南東は地中海、北西は大西洋、北はピレネー山脈でフランスと接する。人口は約4,700万人(2011年)であり、欧州連合の約1割を占める。欧州連合の中では、独、仏、英、イタリアに次ぐ第5位の人口規模となっている。

首都マドリードは、欧州都市としてベルリンに次ぐ人口規模を有し、大都市圏としてみてもパリ、ロンドンに次ぐ3番目に位置する都市である。

国勢概要

国名 スペイン王国
国土面積 50.6万km²(日本の約1.4倍)
人口 約4,646万人(2016年7月)
人口密度 92人/km²
都市人口比率 79.6%(2015年)
GDP 約1兆1,997億ドル(2015年:IMF)
一人当たり国民所得 25,843米ドル(2015年:IMF)
産業別
就業人口比率
第一次産業2.5%
第二次産業22.4%
第三次産業75.1%(2016年推計)
経済成長率 ▲1.0%(2011年)、▲2.6(2012年)
▲1.7(2013年)、1.4%(2014年)
3.2(2015年)(IMF)

(情報更新:2017年3月)

スペインの地図

スペイン地図

資料:http://europa.eu/abc/maps/members/spain_en.htm

スペインの地方制度

1975年にフランコ独裁政権が崩壊し、1978年に新憲法が公布された。1978年憲法は、従来の市町村(Municipio)、県(Provincia)といった地方組織に加えて、新たな行政組織として自治州(Comunidades Autónomas)を創出し、都市・地域計画および住宅の整備に関する権限を中央政府から自治州へと移譲した。現在、スペインは、中央政府のもとに17の自治州、50の県、8,112の市町村で構成されている。その他、任意で形成できる行政機関として、市町村連合(Mancomunidades de Municipios)、郡(Comarca)、大都市圏(Área Metropolitana)などが定められている。

スペインは市町村数で見るとわずか6%、面積でみると、国土の7%に過ぎない68の都市に人口の62%が集中している。また、基礎自治体の90%以上は人口1万人以下の小規模市町村であり、これは全人口の27%、国土の84%を占める。

国土政策関係の主要な機関

政策分野 機関名 ホームページ
中央政府 インフラ 振興省
Ministerio de Fomento
http://www.fomento.gob.es/
EU地域政策 経済大蔵省
Ministerio de Economía y Hacienda
http://www.minhap.gob.es/
地方政府における
地域政策
マドリード自治州
Comunidad de Madrid
http://www.madrid.org/cs/Satellite?
pagename=ComunidadMadrid/Home
カタルーニャ自治州
Generalitat de Catalunya
http://www.gencat.cat/
バルセロナ大都市圏
Àrea Metropolitana de Barcelona
http://www.amb.cat/web/guest

国土政策に関わる主要な施策

スペイン諸都市の都市化の大きな特徴として、都市部への人口集積と小規模農村地域の数の多さが指摘できる。単一の自治体として人口50万人以上を数えるマドリード(約321万人)、バルセロナ(約161万人)、バレンシア(約80万人)、セビージャ(約70万人)、サラゴサ(約66万人)、マラガ(約57万人)、これにビルバオ(約35万人)を加えた主要7都市は、いずれも周辺の複数の自治体を吸収する形で大都市圏域を形成しており、これら7大都市圏には全人口の約34%が集中している。大都市圏への集中是正は内戦後の1940年代から政策課題として認識されており、現在でも欧州内における競争力ある地域形成へ向けて大都市圏レベルでの政策が模索されている。

その一方、国内そして同一地域内における不均衡の問題も認識されている。国内分権化とEU政策の強化に引き裂かれる中で、より持続的な国土形成のために、EU・国・州が協働した国土政策が模索されている。

今日の空間計画に関わる主要なツール

国土・地域整備に関わる主な計画

計画 策定主体
総合広域プラン(PTG) 自治州
広域整備指針(DOT) 自治州
地域別広域プラン(PTP) 自治州
部門別広域プラン(PTS) 自治州
大都市圏総合プラン(PGM) 原則的に市町村、複数の市町村が連携して策定することも可能
都市整備総合プラン(PGOU)

わが国の都市計画法に相当するのが「土地法」(Ley del Suelo)である。国内初の包括的な都市計画制度として1956年に制定され、その後、1975年、1990年、1998年、2007年に改正されている。現行法は簡潔な理念法となっており、実際の土地政策・都市計画の実施は自治州以下の地方団体に委ねられている。

広域的な空間整備の体系
1975年に最初の改正が行われた土地法は、広域レベルの空間計画体系として、国が策定する「国土計画」(Plan Nacional)、より広域の地域組織が策定する「広域調整指導プラン」(Plan Director Territorial de Coordinación)の2種を導入した。
しかし国土計画はこれまで一度も策定されたことがなく、また広域調整指導プランも1978年の新憲法を受けた地方自治法を根拠法とする各州法が定める広域整備指針(Directrices de Ordenación Territorial:バスク州やアラゴン州等)あるいは総合広域プラン(Plan Territorial General:カタルーニャ州等)に取って代われた。空間計画だけでなく、地域の社会経済計画を包含するプランである。
複数の市町村の連携による広域的都市計画の策定
一方、基礎自治体である市町村は、土地法に基づきプランを策定するが、実態としての都市圏が複数の市町村にまたがる場合には、協働でひとつのプランを作成できる。以下で見るバルセロナ大都市圏プランが代表例である。

EU施策との関係

地域振興政策については、この15年間でEUの構造基金から多大な支援を受けており、実質的な影響力を有している。東欧諸国の加盟後は、基金からの援助が相対的に低下し、国は欧州との交渉・調整、各州との調整に努めている。

また、州の国土計画の実質上の上位計画として、拘束力はないが参考的に上位レベルのビジョンを示すものとしてESDPを位置づけているカスティーリャ・ラマンチャ州の事例もある。

バルセロナ大都市圏総合プラン

バルセロナ大都市圏総合プラン

資料:Area Meetropolitana de Barcelona (1999): "La construcció del territori metropolità"

バルセロナ大都市圏の空間計画

1976年に策定された「バルセロナ大都市圏総合プラン」(Plan General Metropolitano de Barcelona; PGM)は、28の市町村で構成されるバルセロナ大都市圏(面積約476km²、当時の人口約310万人)を計画対象としていた。大都市圏総合プランは現在でも有効な広域マスタープランであり、「広域都市圏」という枠組みから見た大規模な地域間の調整を図るものである。

州の空間計画

現在、すべての自治州が地域整備法の制定を完了している。一般的に、各自治州が定めている地域整備プランの目的は、①地域の均衡ある発展の促進、②生活の質の向上、③地域にとって重要な環境および資源の保全となっている。

マドリード州空間戦略計画
1997年に策定され、都心部を中心とする人口密集地域と州内の他地域のアクセスを改善し、一体的な緑地の保全を図ろうとする計画である。
カタルーニャ総合広域プラン
バルセロナ市への1極集中を是正し、開発計画を誘導し均衡のとれた地域像を実現することを目的に1995年に策定された。地域ごとに将来像は異なるため、カタルーニャ州は州域を7つの計画単位に分け、またプラン作成のために15指標(景観保全や交通網の改善等)を提示している。

(情報更新:2010年3月)