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国会等移転調査会報告要旨

第1章 今なぜ首都機能移転か

1) 国の内外の歴史を顧りみれば、首都機能の移転は、新しい時代を創生しようとする時に、極めて有効な手段として活用されてきた。いま、わが国では、来るべき21世紀を展望しつつ国政全般の改革を強力に推進する契機として、権力者の交替や、武力抗争の結果ではなく、初めて平和裡に首都機能移転を行う。

2) 現在の首都東京は、巨大化、過密化に伴い、交通渋滞や住宅問題等深刻な都市問題を抱えており、さらに地震等の災害に対する脆弱さ、国際的政治活動への制約等、首都として様々な限界に直面している。

首都機能移転の意義と効果

1 東京中心の社会構造が変革されること
明治以降、政官民一体となって東京を頂点として富国強兵、殖産興業に専念してきた体制を改めることにより、東京中心の序列意識が崩れ、人々や企業の東京指向が緩和されること。

2 新しい政治行政システムが確立されること
政治・行政機能が自ら率先して移転し、物理的に政治・行政の中心地と経済の中心地を分離することにより、規制緩和や地方分権等国政全般の改革を推進する牽引力となること。

3 新たな経済発展が図られること
首都機能移転への投資は、幅広い内需の拡大と持続的な技術革新を促し、広く内外に、さらに後の世代にまで及ぶ経済的波及効果をもたらし、また、貿易不均衡の是正を通じて、諸外国との経済的軋轢を緩和することができること。

4 国土構造の改編が進むこと
東京の優位性が相対的に低下することなどにより、東京への吸引力が減殺され、東京への集中が集中を呼ぶメカニズムが打破されること。また、重層的、複合的な情報通信・交通ネットワークが形成されること。

5 首都機能の災害対応力が強化されること
東京と同時に地震等の大規模な災害を被る可能性の少ない場所へ首都機能を移転することにより、リスクを分散し、国土の災害対応力の強化を図るとともに、首都機能移転跡地を活用することにより、東京の防災性の向上にも資すること。

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第2章 移転の対象は何か

1) 「簡素で効率的な政府」の実現をめざし、移転する首都機能の範囲は、移転先地に新たな集中を生じさせない配慮に立った、必要最小限の機能とする。

2) 国会の機能としては、衆議院、参議院及びそれらを支える両院事務局及び法制局、国会議員秘書、国会図書館等を対象とする。

3) 行政機能としては、内閣及び中枢性の高い政策立案機能、危機管理の中枢機能等が国会と共に移転すべきである。

4) 司法機能としては、最高裁判所が、国会及び行政の中枢機能と共に移転することが望ましい。

5) いわゆる分都論については、国家機能の円滑な運営を確保するため、国の中枢機能が一体としてその効用を発揮する必要があるという観点から、望ましくない。

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第3章 移転先の新都市はどのような都市か

1 移転先の新都市のイメージ

1) 「国民や世界に開かれた都市」づくりをめざし、「日本の進路を象徴する都市」「新しい政治・行政都市」「本格的国際政治都市」として創造されること。

2) 新しい国会議事堂は、国権の最高機関としての風格とともに、国民に開かれた印象を与えるデザインとし、その前方に、民主主義国家の中心部であることを象徴し、国民が自由に集うことのできる芝生や水辺のある広場を設ける。

3) 中央官庁地区は、水と緑に囲まれて、庁舎等がゆったりと配置された、親しみやすく開放的で品格のある都市景観とする。建物の色や形は基本的なガイドラインに従いつつ、個性的な特徴を持ったものとする。

4) 人間中心・環境調和型のハイモビリティーをめざし、街の景観にも配慮した公共交通機関や、遠い国からの元首の専用機等にも対応できる空港が整備される。交通ターミナルや街角には、各国語やサインを使ったわかりやすい表示がなされている。

5) 商業・業務地区では、繁華性、国際性の演出を図り、住宅地では、生活の利便と楽しさに配慮した生活環境を形成する。

6) 都市のインフラの一つとして、高度な情報通信設備も組み込まれている。

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2 移転先の新都市の規模と都市形態

1) 移転先の新都市の規模は、その立地条件等により変わり得るものの、最大限で人口60万程度、すべて新規に開発した場合、面積は9,000ha程度と想定される。

2) 移転先の新都市の都市形態は、国会と中央官庁等が集中的に立地している「国会都市」を中心に、複数の小さな市街地から成る「中心都市を有する小都市群」とする。

3) 移転先の新都市を空間的にイメージすると、数万haの自然的環境の豊かな圏域に、人口3〜10万の小都市群が、緑の中に浮かぶ島のように配置された姿となる。

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第4章 首都機能移転はどのように進められるのか

1 首都機能の段階的移転とその第一段階

1) 移転先の都市づくりは、長期間にわたるプロジェクトであり、この間に起こり得る国政全般の改革や、社会・経済情勢の変化等に柔軟に対応し得るように、段階的に進められる。

2) 移転先の都市づくりの第一段階では、国権の最高機関である国会の移転を行い、首都機能移転に対する国会の率先的な姿勢を示すことが望ましい。

3) 第一段階においては、国政の円滑な運営に支障のないよう、国会、内閣及び各省庁の政策企画部門を中心とする必要最小限の機能の移転を行い、総人口としては10万人程度とすること、また、面積は2,000ha程度と想定される。

4) 建設開始から10年程度で移転先地で国会を開催できることを目標とし、国会議事堂や庁舎等の首都機能関連施設の他、住宅、宿泊施設、国際的な空港等の整備を行う。

5) 移転の過程で、移転先地と東京に一時的に分立する首都機能移転が円滑に機能するよう、交通施設や情報通信施設の整備を行う。

6) 地震等の大規模な災害に対して、現在の東京の首都機能が保有する情報のバックアップ体制を確立するため、移転先地において、早急に情報センター等の機能を整備する。

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2 移転先の都市づくりの制度・手法

1) 首都機能の移転先の都市建設という特別な公共性を持ったプロジェクトであることから、思い切った制度・手法の導入が必要である。

2) 一国の政治・行政の中心地にふさわしい景観を保ち、自然的景観との調和・共生を図るため、圏域全体を国民共有の公園都市的なものとして、公的な主体ができる限り広範な土地を取得するとともに、土地の所有権を保有したまま賃貸借契約を通じて土地利用形態等をコントロールできる「リースホールド方式」などを導入する。

3) 移転先地またはその候補地における土地投機を未然に防止し、同時に土地取得促進を図れるような手法を導入する。土地取得に当たっては、まとまった規模の国公有地等の活用を図るとともに、既存の地域社会との協調に配慮する必要がある。

4) 移転先の都市づくりは、国が第一義的な責任を持って事業に当たる必要があるとともに、圏域全体に及ぶ一体性と建設期間を通じた一貫性を持って事業を実施し得る強力な体制の確立が必要である。

5) 移転先の都市づくりは公正・透明なプロセスで進められることが必要である。また、内外から優れたアイデアや技術を結集させるとともに、国民一人ひとりが参加意識を持てる雰囲気を盛り上げる必要がある。

6) 移転先の都市づくりは広域的な圏域にわたって一体的に行われること、多様な都市的行政サービス需要が急増することなどを踏まえて、移転先の都市づくりに関する国と地元の地方公共団体との役割分担については、十分な検討が必要である。

7) 移転先の都市の建設は、基本的には国の責任において行われるべき事業であり、地元の地方公共団体等に生じる負担については、国が適切に支援することが必要である。所要の財源の確保については十分な検討が必要である。

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第5章 移転先はどこ

1 移転先の選定基準

移転先の都市づくりの基本理念とその都市像、移転のプロセス等の観点から、移転先の新都市の立地に関して求められる基本的基準と、移転先の都市づくりに関して特に考慮すべき基準として、次の9項目を提案する。

1) 日本列島上の位置
国内各地から移転先地へのアクセスに、極めて大きな不均衡が生じない場所であること。

2) 東京からの距離
鉄道で1〜2時間の概ね60km〜 300km程度の範囲にあること。ただし、東京圏との連坦を避けること。

3) 国際的な空港
欧米主要各国の元首専用機等が発着可能な滑走路を有し、都心から概ね40分以内で到達可能なこと。また、今後10数年以内に確実に供用開始が見込めること。

4) 土地取得の容易性
広大な用地の迅速かつ円滑な取得が可能なこと。

  • 第一段階だけでも約2,000ha
  • 最終的に最大限、総人口60万規模の都市群の開発適地

5) 地震災害等に対する安全性
大規模な地震が発生した場合、著しい地震災害を生じるおそれのある地域は避けること。
火山については、壊滅的な災害が予測される区域は避けること。

6) その他の自然災害に対する安全性
災害により、都市活動に著しい支障を生じないよう、十分配慮すること。

7) 地形等の良好性
極端に標高の高い山岳部や急峻な地形の多い場所は避けること。

8) 水供給の安定性
60万都市の出現で、現在の首都圏より水需給の逼迫するおそれのある地域は避けること。

9) 既存都市からの距離
政令指定都市級の大都市からはスプロールの影響が及ばない十分な距離を保つこと。
なお、東京からの距離が概ね300km程度を超える遠隔地については、その他の選定基準に照らして極めて優れた長所を有する場合には、検討の対象に加えること。

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2 移転先地の選定方法

1) 多くの国民や、移転先の地元の合意形成を図りつつ、公正・透明な手続きで行うこと。

2) 国会が最終的に移転先地を決定するが、あらかじめ専門的かつ中立的な選定機関を設置し、移転先候補地を選定すること。

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第6章 いつ移転するのか

1) 選定機関が、2年程度を目途に移転先候補地を選定し、国会が移転先地を決定すること。

2) 世紀を画する年までに建設開始することを目標とし、21世紀にふさわしい国政全般の改革のメルクマールとすること。

3) 建設開始後、約10年を目途に移転先地で国会を開催すること。

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第7章 世界都市「東京」の新たな出発

1) 首都機能の移転により東京は、過密集中に伴う諸問題が緩和されるとともに、その高次都市機能のストック等を活かして、一層国際的、先端的、創造的な魅力ある世界都市として役割を果たしていく。

2) 首都機能移転後も東京は、わが国の全体の繁栄を牽引し続ける、いわば経済首都、文化首都としてあり続けることが重要であるが、この場合、首都機能の移転を「東京百年の大計」を構築する好機として活かしていく視点が重要である。

3) 都心部に発生する最大約210haの移転跡地を活用して、東京における新しいまちづくりを展開していく必要があるが、以下の視点を重視すべきこと。 大規模災害への対応の強化に資すること。
住みやすく働きやすい快適な都市として整備すること。
世界都市にふさわしい国際的な経済、文化、交流機能の育成に資すること。

4) 移転跡地の適切な活用のプログラムを検討する東京都、学識経験者等による検討体制を整備すること。

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