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国会等の移転ホームページ

はじめに

国会並びに行政及び司法に関する機能のうち中枢的なもの(以下「首都機能」という。)が東京から移転すべきだという議論は、わが国においても明治以来折りにふれ提起されてきたが、特に東京の過密とそれに伴う弊害が顕在化してきた昭和30年代以降は、新しい国土の創造を図る観点から首都機能の移転を積極的に推進すべきであるとの多数の提言、提案が、学界や研究機関等によってなされてきた。

その内容は、遷都・分都・展都論等様々なものであったが、政府が国土計画として最初にこの議論を採りあげたのは、昭和52年に策定された「第三次全国総合開発計画」(三全総)においてであった。そこでは、首都機能の移転再配置を国土政策上の重要課題として位置づけ、「21世紀に向けて創造的建設的な議論が国民的規模でなされることが望まれ、これを踏まえて首都機能の移転の方向を見定めなければならない」とされた。

その後策定された「首都改造計画」「第4次首都圏基本計画」等では、当面の対応策として展都や分都が提案され、東京都区部に立地している国の行政機関や特殊法人の一部を東京都区部外の首都圏各地に分散立地させる施策が打ち出され、昭和62年に策定された「第四次全国総合開発計画」(四全総)においても、「遷都問題については、東京一極集中への基本的対応として重要と考えられるため、国民的規模での議論を踏まえ、引き続き検討する」課題とされた。

東京都心部に端を発した地価高騰が大きな社会問題となったことを受けて、昭和63年には総合土地対策要綱で、単に一部の行政機関等の移転にとどまらず「政治・行政機能等の中枢的機関の移転再配置について、幅広い観点から本格的検討に着手する」とされ、土地対策という新たな観点からも首都機能の移転の必要性が認識されるようになってきた。

このような中で、平成2年1月に、国土庁に設置された「首都機能移転問題に関する懇談会」(座長:八十島義之助帝京技術科学大学学長(当時)、以下「国土庁懇談会」という。)において検討が開始される一方、国会100周年に当たる同年11月には、衆・参両院において、「国会及び政府機能の移転を行うべきであり、政府はその実現に努力すべきである」とする「国会等の移転に関する決議」がなされた。同決議を受けて同年12月に、政府全体の立場から国会及び政府中枢機能の移転に関する国民的合意の醸成を図るための検討を目的として、内閣総理大臣の主催する「首都機能移転問題を考える有識者会議」(座長:平岩外四東京電力株会長(当時)、以下「有識者会議」という。)において検討が開始された。

国土庁懇談会は、首都機能の移転を前提とした上で最も効果的かつ望ましい方策についての検討を行い、平成4年6月にはその検討結果の取りまとめを公表した。これは、「首都機能移転の方法」「新しい首都像」「東京の将来像」等についての国土庁懇談会の意見を取りまとめたものであり、国民的な議論がより一層具体的かつ深化して行われるための一助にすることを目的としたものである。

同年7月には有識者会議も意見の取りまとめを公表した。取りまとめでは、首都機能移転を「人心一新」の好機としてとらえ、21世紀のわが国の政治、経済及び文化のあり方に大きな影響を及ぼす「国家百年の大計」であると強調している。

国会においては、移転決議以降活発な論議が展開され、平成3年8月からは衆・参両院に「国会等の移転に関する特別委員会」が設置され、各方面から参考人の意見聴取を行うなど議論も本格化し、平成4年12月には議員提案による「国会等の移転に関する法律」が成立、公布・施行される運びとなった。

同法は、国会等(国会並びに行政及び司法に関する機能のうち中枢的なもの)の東京圏以外の地域への移転に向けて積極的な検討を行う旨の国の責務、国が検討を行う上での検討指針、国における検討機関としての国会等移転調査会(当調査会)の設置等を定めている。

当調査会は、移転の対象の範囲、移転先の選定基準、移転の時期の目標、移転先の新都市の整備に関する基本的事項、移転に伴う東京都の整備に関する基本的事項等法律に定められた事項を調査審議し、その結果を内閣総理大臣に報告し、報告を受けた内閣総理大臣はそれを国会に報告することとされている。

当調査会は、平成5年4月より調査審議を開始し、さらに専門的な立場から検討を行うため、基本部会を設置した。第一タームとして、首都機能移転についての国民的な合意の形成を図るため、「移転の意義と効果」について調査審議していくこととし、基本部会において同年9月から11回にわたり調査審議を行ってきた。当調査会では、その検討内容を中間的に取りまとめて国民各位の検討に供するため、平成6年6月に「首都機能移転その意義と効果」について内閣総理大臣に中間報告を行った。

次いで、第二タームとして、新首都の具体像を明らかにしていくための調査審議を行っていくこととし、基本部会においては、平成6年9月より6回にわたり、どのような機能をどのような手順で移転し、整備すべきであるかについて調査審議を行ってきた。

また、「移転先の新都市の整備に関する基本的事項」を専門的に検討するため、新都市部会を新たに設置した。新都市部会においては、同年4月より10回にわたり、新首都のあるべき都市像に加え、新首都づくりのための制度等のあり方について、調査審議を行ってきた。当調査会では、首都機能移転が国民の間でさらに現実性のあるものとして具体的に議論されることを目的として、平成7年6月に「首都機能移転の範囲と手順・新首都の都市づくり」について内閣総理大臣に第二次中間報告を行った。

第三タームとしては、「移転先の選定基準」「移転の時期の目標」「移転に伴う東京都の整備に関する基本的事項」について、基本部会において平成7年7月より7回にわたって調査審議を行ってきた。

さらに、国民から広く意見を聴くために、公聴会を平成6年3月に東京において開催した後、同年11月には名古屋で、平成7年3月には新潟で、同年10月には福岡で開催してきたところである。

この報告書は、当調査会が、これまで約2年半にわたり調査審議してきた成果について総括的に取りまとめ、国民各層の広範な議論に供するものである。

この間、平成7年1月17日には阪神・淡路大震災が発生し、大都市の危機管理の重要性について認識を新たにさせられた。これを契機に、首都機能の安全性に対する危惧の念が喚起され、首都機能移転による東京への一極集中の是正、国土構造の改編に対する論議が高まりつつあることも事実である。

近年、東京の転入・転出の人口の差は徐々に小さくなり、ついに平成6年には転出人口が転入人口を上回ることになった。東京への一極集中の流れは、大きな転換期を迎えたかに見える。しかし、東京は既に集積のメリットより集中のデメリットの方が顕著になる程に過密過集積が進んでおり、一極集中の是正をより効果的に促進する方策が求められている。

また、平成7年3月に「規制緩和推進計画」が閣議決定され、同年5月に「地方分権推進法」の成立をみるなど、首都機能移転とあわせて規制緩和・地方分権などの国政全般の改革を行い得る好機が到来しつつある。

さらに、低迷する経済活動や、様々な社会不安の中、国民は閉塞感からの脱却を待望しており、首都機能移転は、その事業自体の経済的波及効果のみならず、世紀を画する時期において人心を一新し、多くの国民が夢を共有できるプロジェクトとして期待されている。

この報告書が首都機能移転に対する国民的合意形成の一助となり、首都機能移転の早期実現を目指して着実に歩を進めるための一里塚となることを期待する。

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