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新首都にあるべき機能

今日、わが国は、既存の政治・行政システムへの国民の不信、わが国の国際的な役割の模索、これまでの公と私、中央と地方との関係の見直し等時代の転換期にあることを象徴する多くの課題に直面しており、社会の変化に的確に対応できる政治・行政システムの構築、ますます一体化する地球社会の一員としてのわが国の役割の自覚、自己責任原則と市場原理に立つ経済社会の確立、個性豊かで活力に満ちた地域社会の実現が求められている。

また、わが国土では、政治、行政、経済等の中枢機能が東京圏に過度に集中し、過密の弊害や地域の活力の低下などが国民の豊かさや自己実現の機会を狭めており、東京一極集中メカニズムを是正するとともに、過密のもたらす地震等の大規模災害時における危険の増大に歯止めをかけることが緊要な課題とされている。

このような状況の中で、首都機能移転は、地方分権・規制緩和をはじめとする国政全般の改革を推進し、首都としての東京の限界を克服するとともに、時代の区切りを明確にして新しい社会を築く上で大きな役割を果たすものであり、新首都は、首都機能移転が目指す21世紀のわが国のあり方にふさわしい機能を果たせるよう創られるべきである。

当調査会は、このような認識のもとに、新首都にあるべき機能について審議を行った結果、新しい時代の要請に対応した政策立案の機能を果たし得る「新しい政治・行政機能」、地球的視野に立った国際政治活動の中心地としての「本格的な国際政治機能」及びわが国の未来を象徴し、それを国民と世界にアピールする「日本の進路を象徴する機能」の三つの観点から新首都の機能のあり方を検討した。

1.新しい政治・行政機能

首都機能が東京から新首都に移る過程は、国民の必要に的確にこたえる政策立案が可能となるように、国の中枢機能の役割やあり方が見直され、改革されていく過程であって、新首都の政治・行政機能は、従来のそれとは異なった新しく生まれ変わる政治・行政システムにふさわしい機能となることが必要である。

もとより、東京から新首都への移転の対象とされている首都機能は、法令上「国会並びに行政及び司法に関する機能のうち中枢的なもの」とされており、これらの機能が移転することは当然のことであるが、新首都の政治・行政機能を考えるに当たっては、これに加えてそれらと協同して国論を形成する役割を持つ民間機能の立地や、経済社会における情報化の深まりに対応した国民に開かれた情報機能の整備が必要であると考えられる。このような検討の結果、「新しい政治・行政機能」として新首都に必要とされる機能は、以下のとおりである。

(1) 首都機能

新首都には、国の立法・行政・司法の三権の中枢機能として、次のような機能の立地が必要である。

国会は国権の最高機関であり国の唯一の立法機関であって、行政権は内閣に属しているが、内閣は議院内閣制をとっており、国会と行政は国会審議等を通じて密接な関係にある。また、わが国においては、行政が閣議を通じて意思決定を行い、一体として総合的に施策の実施を図るシステムがとられていることなどから、国会と行政の中枢機能は近接していることが不可欠であると考えられる。

一方、司法権は、国の三権のうちでは立法と行政との関係に比べて独立性が高いが、最高裁判所は国として何が法かを最終的に決定する中枢的な国家機能を担っているものであり、国の三権の一つを代表する機関であるから、新首都をわが国の国家機能の中心地として創る立場から、国会及び内閣と共に新首都に立地することがふさわしいと考えられる。

いわゆる「分都論」は、国の機関を全国各地に分散配置させることが諸機能の地方分散を通じて全国各地域の振興につながるとするものであるが、国家機能の円滑な発揮を確保するためには、国の中枢機能が一体としてその効用を発揮していく必要のあること、内政と国際関係とがますます緊密化し外交等の国際活動の重要性が増していくため、対外的にも国家の三権を代表する機能が一箇所にまとまっていることがより重要であること、欧米諸外国の例をみてもほとんどの国において三権が一つの首都に立地していることなどから、三権の中枢を分離することは適当ではない。

(2) 立法関係機能

政党政治のもとで国の機能である首都機能が円滑に機能するためには、国会の機能を支え、それと密接不可分に機能する多くの政党の本部、国会議員のスタッフ等の立法関係機能が活動することが不可欠であり、新首都には、これらの機能が立地できるようにする必要がある。

(3) 首都機能を支える民間機能

多様な政策の選択肢が様々な立場から提起され、幅広い議論を通じて合意が形成される開かれた政治・行政システムにおいては、国会や政党、行政のみならずマスコミやシンクタンクなど多元的な民間の政策議論に係わる機能もシステムの重要な構成要素といえよう。

公正・透明な政治・行政が求められる「新しい政治・行政都市」としての新首都には、世論形成や政策決定など国家意思形成のための機能を支えるものとして、マスコミ、シンクタンク等の首都機能と協同する機能の立地が必要不可欠である。

(4) 情報機能

わが国社会では、情報化が急速に進展しており、政治・行政の分野においても、その情報化が政治・行政のあり方や、ひいてはわが国社会の変革を先導するものと考えられる。このため、新首都は、国民や世界に開かれた情報機能の拠点として整備されるべきである。

(5) 連絡調整機能

また、首都機能の新首都への移転に伴って、首都機能との連絡調整を目的とする地方公共団体等の連絡事務所や民間企業等民間機能の連絡事務所等の立地が予想される。しかし、これらの機能については、地方分権・規制緩和をはじめとする国政全般の改革の進展による国と地方公共団体等、国と民間との関係の変化、政治・行政の情報化やマルチメディアの発達などに伴うフェイス・ツー・フェイスの接触の必要性の低下により、新首都への立地の必要性が小さくなるよう目指すべきであると考えられる。

2.本格的な国際政治機能

新たな秩序を模索しつつある国際社会の中で、わが国が地球社会の一員としての役割を果たしていくためには、わが国の新首都は、単に国内的な政治・行政都市としての機能を果たすにとどまらず、多数国間の外交活動も含めた多様な国際政治や地球的視野に立った国際的活動の中心地としての機能、海外への援助活動など国民レベルでの相互理解を深める国際交流を支援する機能等を発揮することが求められる。

このため、新首都は、多様な国際政治活動や国際交流が活発に行われ、世界と日本をつなぐ役割が十分に果たせるよう、首都機能としての外交機能のほかに、以下の機能を備える必要がある。

(1) 外交関係機能

国際政治機能としては、外交上の連絡調整の機能を果たす各国大使館等の在日外国公館の機能の立地が必要不可欠である。

(2) 国際交流機能

また、新首都には、各種国際機関の本部機能や地域機能などの新たな立地に加えて、民間レベルでの国際援助活動等をはじめとする各種の国際交流が活発に行われるよう、留学生や海外へのボランティア活動等を支援する機能等の国際交流機能の立地が求められる。

(3) 国際情報拠点の機能

さらに、情報化の進展に即し、わが国を舞台とした外交活動や国際交流の活発化を図り、新首都が国際的な政治・行政情報の発信拠点として国際的な世論の形成にも貢献できるよう、世界に開かれたわが国の政治・行政情報や世界各国からの様々な情報が交流する結節点としての機能も求められる。

3.日本の進路を象徴する機能

首都は、その国の顔として、その国の歴史や文化、理念や価値観、将来へのビジョン等を自らの国民及び世界に語りかけるものとして創られるべきである。

わが国の新首都にも、日本の歴史や伝統を体現するとともに、21世紀に生きる国民が未来に託する夢をはぐくみ、わが国のアイデンティティを世界に伝えていく役割が求められており、このため、日本の文化や進路を象徴する次のような機能が求められる。

(1) 日本の文化や進路を示す機能

わが国に対する世界中の人々の理解を深めるためには、人々が新首都を訪れ、滞在する際に、新首都の文化的機能に接することを通じてわが国のあり方を体験することが効果的である。新首都には、日本の歴史や文化、現代のわれわれの生活、わが国が目指すべき方向等に接することのできる博物館、ネットワーク、交流の場等の機能を備えることにより、物や情報にとどまらず人と人との交流を通じて、わが国がどのような国かを語りかける機能が求められる。それらは、新首都が、人々が訪れたいと思う魅力とにぎわいのある都市であることにつながるものである。

(2) 国際的な文化・学術交流を深める機能

文化・学術交流は、未来に向かって社会の進歩を担う人材を育成するとともに、諸外国との協調のための相互理解を促進するために大切な機能である。

このため、新首都には、人文科学、社会科学、自然科学等にまたがる幅広い情報や識見の集積やそれを活用した人材育成の機能、地球的な視野に立った研究交流を深める機能等世界と日本の情報と人材を生み出す機能の立地が求められる。それらの機能は政治・行政機能とあいまって、新首都を日本や世界の進路をさぐる知性をはぐくむ場にするものと期待される。

(3) 未来の文化を生み出す機能

21世紀の新首都に住み働く人々は、新首都の政治・行政をはじめとする諸機能を担う人々であると同時に、豊かで創造的な生活を求める生活人でもある。

人々が新首都で自らの価値観や理想とする生き方を追求し、豊かな国際色が花開く新しい文化を享受するためには、新首都での新しいライフスタイルや文化の創造を支援し、未来の文化を生み出す機能の立地が求められる。それらにより、新首都は生活のあり方の面でも新たなライフスタイルを先導する都市になり得ると考えられる。

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