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新首都のイメージ

1.新首都づくりの基本理念

新首都の都市のあり方については、第1章4の「『新首都時代』の創出」において「日本の進路を象徴する都市」「新しい政治・行政都市」「本格的国際政治都市」を創造すべきことを示したところであるが、これを踏まえてさらに審議を行った結果、国民や世界に開かれた新首都づくりの基本理念を次のとおりとすることが適当であると考えた。

  • 「日本の進路を象徴する都市」に関する新首都づくりの基本理念としては、日本国憲法の制定以後のわが国の歩みを踏まえ、新首都づくりを通して国際社会に対してアピールすることにふさわしいテーマを総合的に検討し、国と国、人と人、人と自然のかかわりを考慮して、「平和」「文化」「環境」の三つとする。これは、将来にわたって国際平和を希求するわが国の立場を内外に明示すること、これまでひたすら経済大国の道を歩んできたわが国が、真に豊かさが実感でき、世界に誇れるような文化国家へと発展すること、地球規模で取り組むべき人と自然との共生という課題に対しても、先導的役割を果たしていくことを期待したものである。
  • 「新しい政治・行政都市」に関する新首都づくりの基本理念としては、政経分離を前提としつつ、変革を迫られているわが国の政治・行政システムに対して、透明性と公正性の確保により政治と国民との信頼関係の強化が求められていること、地方分権・規制緩和等にみられるように、行政と国民の関係や行政内部の関係について時代の変化にふさわしい見直しが期待されていることなどを踏まえ、「透明な政治」「効率的な行政」の二つとする。
  • 「本格的国際政治都市」に関する新首都づくりの基本理念としては、国際社会におけるわが国の役割の増大にかんがみ、国際貢献の分野において、政府開発援助等の経済的貢献や、平和活動への参加等の人的貢献に加えて、世界の人々の幸福と繁栄に資するための国際政治活動の中心地の一つをわが国土に形成することが重要であることを考慮して、「国際貢献・交流の新しい拠点」とする。
    また、わが国の新首都づくりが、内外の歴史上数多くみられるような建国や独立、支配体制の変更等を契機に国家の統合や統治の象徴として新首都が建設された事例とは異なり、来たるべき21世紀に向けて、政治・行政改革の進展や国際関係の緊密化、ひいては成熟した民主主義社会の形成に寄与していくことを求められている中で進められるものであることにかんがみ、都市のイメージの基調としては、威容を誇示するような印象を与えるものはふさわしくなく、例えば、「開かれた」「親しみ」「ゆとり」「美しさ」といった印象を持たれるものとすることが適当である。同時に、政治・行政の中心地としての「風格」を備えることも重要である。

2.新首都のイメージ

(1) 基本理念を表現する象徴的空間のイメージ

新首都づくりの基本理念は、都市を計画し、建設・維持するに当たっての根本的な哲学をなすものであるが、それらは新首都の都市空間の随所において、施設や景観といった具体的な形として表現されるべきである。

「平和」については、「平和主義を掲げる国家の新首都」を表象するものとして、平和の大切さを象徴するとともに、それを語りついでいくための施設や外国の外交官等が平和のための活動などに利用できる会議施設等を設けるものとする。

「文化」については、新首都を訪れる人々にとって「日本の未来像を考える文化都市」となるように、わが国の歴史や文化を紹介する施設としての各種博物館等の展示施設やホール等を設けるとともに、大学や国際的な文化や学術の交流を図るための施設も設置する。

「環境」については、新首都づくりを「環境共生型の都市づくり」の先導的プロジェクトと位置づけ、生態系の保全・創出、様々な省エネルギー、省資源、リサイクルのための技術等の導入を図るほか、大気や水環境、緑の保全、廃棄物等の処理に配慮するとともに、例えば風の通りみちとなる緑地帯を都市内に貫入させるなどの環境づくりの技術の導入を含め、人と自然とが近接する都市形態とする。

また、新首都が「国民に開かれた新首都」として、国民主権と民主主義を基本とする国家の中心部であることを象徴するため、国会議事堂などの立地する地区には、国民誰もが自由に集うことができる芝生や樹林や水辺のある十分な広さを持った広場を設ける。

(2) 国会議事堂のイメージ

新首都に建設されるべき新しい国会議事堂は、「透明な政治」を表現し、成熟した民主主義社会にふさわしい建物とするため、国権の最高機関としての風格を保ちつつも、威圧感のある外観は避け、国民が親しみを感じ、開かれた印象を与えるデザインとすべきである。

(3) 中央官庁地区のイメージ

中央官庁の建物の配置は、「効率的な行政」を踏まえ、将来あり得べき機構改革にも柔軟な対応を可能とするため、大部分の庁舎をまとまった地区内に配置することとする。内閣総理大臣官邸についても、行政機能の中枢として、行政の一体的かつ円滑な運営に配慮した位置に配置することが適当である。

このようにして形成される中央官庁地区の街並みは、「開かれた」「親しみ」「ゆとり」「美しさ」という印象を重視し、政治・行政の中心地としての風格を備えながらも圧迫感のない形態の庁舎が緑豊かな景観の中にゆったりと配置された、親しみやすく開放的で品格のあるたたずまいとする。修景には水面を効果的に採り入れることとし、建物の色彩や形態は一定のガイドラインを遵守しつつ、それぞれ個性や特徴を持ったものとする。

また、「国際貢献・交流の新しい拠点」として、新首都を舞台とする各国の国際的な政治活動や交流を支援するため、外交使節等の接遇施設のほか、各国の外交官等も利用できる多様な会議施設などを設置する。

(4) 交通施設のイメージ

新首都と世界とのアクセスは、「国際貢献・交流の新しい拠点」にふさわしいように、世界の各地と結ぶ国際線や各国元首等の専用機などに対応することのできる空港とする。

新首都と国内とのアクセスは、この空港の活用のほか、東京との連絡を重視しつつ、当面既存の交通ネットワークに最短距離でアクセスするルートを整備するとともに、新首都と国内のできる限り多くの地域を結ぶ新しい国土の幹線交通体系を構築する。

新首都内の都市交通は、人間中心・環境調和型のハイモビリティを目指し、街の美観に配慮した軌道系等の公共輸送機関の整備や自転車等の活用を含め、老若男女を問わず、安全で便利に移動できる街とする。交通施設の設計は、高齢者や身体障害者に十分に配慮したものとし、例えば中央官庁地区など都心部では、幹線交通路の配置を工夫するなど、歩行者空間の充実に特に配慮する。また、業務や買い物など人の移動に利用されるルートと、物品の配送や廃棄物の処理等に使われるルートを分離し、快適で円滑な移動空間を構成する。

新首都の玄関口となる交通ターミナルは、国内の各地を結ぶ幹線交通機関と新首都の各地域を結ぶ都市交通機関との結節点とし、国際空港と直結するアクセスルートも整備する。ターミナルのレイアウトは立体的に構成し、多様な交通機関を効率良く乗り換えられるようにするとともに、各国語やサインを使ったわかりやすい表示で、新首都を訪れた人々を、新首都の各地域や各施設に案内できるようにする。ターミナルの形態・意匠及びそこから眺める景観は、新首都の玄関口にふさわしいように配慮する。

(5) 商業・業務地区のイメージ

新首都の交通ターミナルに面して、交通広場を設けるとともに、オフィス、店舗、飲食店、ホテルといった各種の民間施設の立地を誘導する。特に、新首都には内外から多数の訪問客が訪れることに配慮して、多様なホテルが多数設けられる必要がある。また、ターミナルから延びる表通りは、歩行者専用の空間とし、これに面しては原則として店舗やレストラン等に限ることにより、にぎわいと楽しさを演出する。また、新首都は、計画都市でありながらも人間味や面白さも備えた街づくりとするため、商業地区においては、店舗の建築等に多様性や創意工夫が積極的に図られるように配慮する。

(6) 住宅地のイメージ

住宅地の街並みは、「ゆとり」と「美しさ」を表象するとともに、人々が家族と共に生活を営む場であることから、暮らしやすさや生活の楽しみなどにも配慮して、緑豊かで明るく落ち着いた、品格とゆとりが感じられる生活環境とする。各国の在日大使館等の一部は、住宅地の中にも配置されるものとする。また、これらの住宅地は、公共施設の規模や敷地面積等に十分なゆとりを持ち、街並みが短期間に熟成され適切に維持されることが必要であるため、土地対策や事業方式が適切に実施・選定されることが不可欠である。

(7) 新首都の景観のイメージ

以上のような各地区や諸施設により形成される新首都の都市景観は、それぞれの部分の街並みが親近感や開放感を感じさせつつも、全体的には、政治・行政の中心地としてふさわしい風格を備えた美観を形成することが必要である。このため、象徴的空間としての広場やその他の緑地空間等はスケールを感じさせるように配置するとともに、建築物や土木構造物及びその他の建造物等の外観も品格ある風景が形成されるように配慮されることが必要である。この場合、道路等の交通施設については、利用する人の目から見た景観の展開に配慮するとともに、必要に応じて、それらが自然的景観の中にとけ込む工夫も講じるべきである。

また、風格あるランドスケープの形成には、市街地の街並みなどの都市的景観にとどまらず、市街地を取り巻く自然的景観や彼方の山並みなどの眺望が適切に保全・確保されることも重要である。

このような新首都としての固有の「美しさ」を形成・維持するため、計画的かつ総合的なデザインコントロールが行われる仕組みが講じられる必要がある。

(8) 新首都での生活のイメージ

新首都での居住者の生活は、東京のような通勤混雑や長時間通勤が解消されることにより、生活や時間にゆとりが生まれ、仕事の能率も向上することが期待される。

新首都は、街の周囲に豊かな自然的環境が広がっているため、アウトドアレジャーが手軽に楽しめるとともに、居住者の楽しみや健康増進のため、文化活動のための施設、スポーツ施設、娯楽施設など様々な施設が整備されることが望ましい。

また、国際政治都市である新首都には、世界各国から人々が集まってくることに伴って、世界各地の料理が提供されるレストランや、世界各地の宗教の施設がつくられたり、世界各地の祭りが行われるなど、日常生活の面でも国際色豊かな生活環境となろう。

多くの人々が交歓し、新首都から世界各地に多様な話題が発信されるようにするため、コンサートやスポーツが催される大規模なホールや競技場も建設されることが望ましい。

地域の既居住者もこれまでの暮らしのリズムを維持しつつ、新首都の各種施設を新住民と共に利用することにより、新たな生活面の豊かさを享受できることが期待される。新首都住民のコミュニティは、新しい都市にありがちな、同じような職業や年齢層の人々が集住することを避け、幅広い世代の人々が共に暮らすことによって、多様性の確保を図ることを目指すこととする。

(9) 情報化時代の新首都のイメージ

情報通信技術のめざましい発展に伴い、新首都の職場や家庭には、最新鋭の機器が導入されることが予想されるが、新しい都市基盤として、それらを支えるネットワークの構築やソフトウエアの整備を行い、都市のインフラの中にその設備を組み込んでおく必要がある。

例えば、各庁舎内には多数のTV会議室が整備され、全国各地や外国の人々と随時会議ができることや、各種情報のデータベース化が進み、全国各地からアクセスできるとともに、自動翻訳機や自動点訳機等により外国人やハンディキャップを持つ人も自宅で容易に情報を取り出すことができるようになることが期待される。

新首都における膨大な情報処理や、その全国や世界に向けての受発信においては、保有情報の公開性や安全管理、行政事務の公正さや迅速な処理など最先端の技術を応用すべき課題も多く、技術立国を標榜する日本を代表する先導的な情報都市づくりが望まれる。

3.新首都づくりに当たっての留意事項

(1) 未来へ可能性を残すゆとりの確保

新首都は、将来にわたり日本の政治・行政の中心地として、常にその時代に求められる首都機能が発揮できるように造られるべきである。未来の世代が、この都市を適切に機能させ、質的、機能的に高めていけるようにするためには、現時点では予測することのできない様々な変化などに的確に対応し得るように、都市づくりの計画やプロセスにおいてゆとりや柔軟性を持たせることが必要である。

例えば、首都機能用地等については十分な空間的余裕を確保しておくとともに、建物等についても必要に応じて容易に増改築や更新、新技術の導入などが行えるような構造とするなどの工夫が必要である。また、将来にわたって新首都の骨格を形成する広域的な基盤施設などについても、あらかじめ余裕をもった計画とするよう配慮すべきである。

(2) 危機管理に対する配慮

首都機能は、いかなる場合においても停滞を許されず、緊急事態に際しても十全かつ的確に機能することが必要である。このため、新首都の都市づくりに当たっては、危機管理機能としての首都機能の役割を考え、建物の安全性、警備のしやすさ、緊急時の交通・通信機能の確保、保有情報のバックアップなど首都機能の安全の確保に十分配慮するとともに、災害等に対する都市としての安全性の確保を図るものとする。

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