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首都機能の段階的移転と第一段階の新首都像

1.段階的移転の考え方

新首都づくりに必要な新規開発の規模の合計は、前述のとおり概ね9,000ヘクタールと想定される。この規模は、東京の山手線内側の面積の概ね 1.5倍に相当し、大規模な住宅地開発として有名な多摩ニュータウンの三つ分ほどに相当する。

首都機能移転は長期間を要する大規模プロジェクトであるため、移転の効果を早期に実現し、長期にわたる移転を円滑に行うためには、新首都づくりの各段階において、移転の規模や内容についての検討を行いつつ、逐次移転を進めることになると考えられる。

段階的移転のプログラムの策定に当たっては、新首都の全体的なビジョンに沿って今後起こり得る社会・経済情勢の変化等に的確に対応できるよう自由度・弾力性を確保するとともに、新首都の発展段階に応じて、新首都に住み働く人々の勤務環境や生活環境が着実に備わり、都市の風格や景観が次第に整うよう移転の順序や機能の整備を新首都のまちづくりの手順と整合させる必要がある。

首都機能移転と並行して推進されるべき規制緩和・地方分権については、平成7年3月に「規制緩和推進計画」が閣議決定され、また、同年5月に「地方分権推進法」が成立するなど、その着実な推進が図られており、今世紀末頃までには、これらの改革を踏まえて、国会及び内閣と共に移転する機能、それ以降に移転する機能、東京圏に残る機能、地方に分散する機能等中央省庁等の機能のあり方を見直し、段階的な移転のプログラムを想定することが可能になるものと考えられる。

首都機能の移転の具体的なプログラムを策定するためには、移転のあらゆる段階において、国会の審議、閣議の運営等に支障が生じないような配慮や国政の改革を進める観点などを踏まえて総合的に移転方法を検討する場を設置することが適当であると考える。

2.第一段階の新首都像

(1) 国会の率先移転

国会は、全国民を代表する選挙された議員で組織された国権の最高機関であり、国の唯一の立法機関である。行政権を行使する内閣の首長たる内閣総理大臣は、国会で指名され、その信任を得て行政を行う。国民主権のわが国において、国のあり方を議論し、方向づける最高の場は、国会にほかならない。

また、衆議院・参議院の両院は、明治の国会開設から100年を経過した平成2年11月に「一極集中を排除し、さらに、二十一世紀にふさわしい政治・行政機能を確立するため、国会及び政府機能の移転を行うべきである」とする国会等の移転に関する決議を行い、平成4年12月には議員立法により「国会等の移転に関する法律」を制定するなど、積極的なリーダーシップにより首都機能移転の具体化を率先して進めてきた。

幅広い国政の改革の手段という首都機能移転の意義からみて、国権の最高機関である国会の移転をできる限り早期に行うことは、時代の区切りを明確にするとともに、政経分離を図り、変革を進める上で最も効果があり、また、首都機能移転に対する国会の率先的な姿勢は、それを早期に行う上で力強い原動力であると考えられる。

したがって、移転のプログラムにおいては、国会の率先移転を行うことが最優先であり、国会の移転をもって首都機能移転の「第一段階」とする。

(2) 中央省庁等の一部の機能の移転

内閣を支える中央省庁等の組織については、その組織や直接、間接にそれに伴って移転する人々の数が大きいことなどから、その機能のすべてを一時に移転することは困難である。中央省庁等の機能は、国政全般の改革を受けた行政組織の見直しの進捗との整合を図りつつ、新首都の整備状況に対応して段階的に移転すべきである。

中央省庁等の機能の段階的な移転の方法のモデルとしては、各段階ごとに、各省庁の内部の機能を政策企画部門、実施部門等その機能の性格の違いに応じて水平に分割して移転する方法や、省庁単位で行政機構を垂直分割して移転する方法などが考えられる。

水平分割には、段階的移転のための組織の見直しが国政全般の改革の契機となりやすい利点がある反面、中央省庁等の内部組織の所在地が分離するため、移転に伴って中央省庁等の内部の連絡調整に支障が生じるおそれがあるという欠点も考えられ、新首都と東京を結ぶ情報通信システムの整備等によりこの欠点を克服する必要があると考えられる。

一方、垂直分割には、省庁内の連絡調整に特別の工夫を要しないという利点がある反面、各省庁の機能が国会と同時に一斉に移転できないため、全員一致により意思決定を行う閣議の運営や中央省庁等相互間の連絡調整に支障が生じるおそれがあり、また、国政全般の改革の契機となりにくいという欠点が考えられる。

現在進行中のドイツにおけるベルリンへの政府機能の移転でも類似の問題が生じている。段階的移転のプログラムの想定に当たっては、地方分権・規制緩和をはじめとする国政全般の改革を促進する立場で、首都機能のあるべき姿についての議論を踏まえ、また、各国の政治・行政の仕組みの違いを踏まえた上で諸外国の経験を参照しつつ、水平分割と垂直分割を適切に組み合わせた移転のプログラムを検討すべきである。

(3) 第一段階の新首都の建設

新首都づくりの第一段階の建設では、国会の早期移転を最優先とし、建設開始から約10年で国会を開催することを目標とする。この段階の新首都の規模は、中央省庁の政策企画部門を中心とする必要最小限の機能を含め、総人口約10万程度と想定するものとする。また、開発面積は首都機能等の業務用地、新首都としての象徴的空間、住宅地等を合わせて約2,000ヘクタール程度と想定する。

第一段階では、少なくとも、国会議事堂など国会関連施設、内閣総理大臣官邸、数棟の庁舎、国民に開かれた新首都の象徴的空間となる広場、移転する人々のための住宅、訪問者のための宿泊施設その他必要な施設を「国会都市」において建設することとする。

(4) 新首都と東京との連携を確保する情報通信機能と交通施設の整備

首都機能移転により、新首都の政治・行政機能と東京の経済機能は離れて活動することになる。また、第一段階から新首都で首都機能が完全に統合されるであろうときまでの相当の期間においては、首都機能が新首都と東京とに分かれて立地することとなる。それを理由とする新首都と東京との及び国の機能相互間の連絡調整機能が肥大することを防ぎ、諸機能間の連絡の効率化を図るため、●中央省庁等の内部相互間並びに、●東京の経済機能、●地方及び●諸外国との連絡調整のため、マルチメディア、TV電話会議の設備、パソコン等による申請や情報交換などが可能となる高度な情報通信システムの活用とそれを可能とする制度の整備を図る必要がある。

また、第一段階の移転が行われるまでには、各国元首等の専用機などが離着陸できる滑走路を持つ空港の整備等と、東京との主要なアクセスルートとなる交通施設の整備及びこれを補完する交通施設の整備を実現するものとする。

(5) 国の保有する情報をバックアップする機能の先行整備

第一段階の新首都建設のプロセスの中で、新首都の立地が決定し、用地の一部が確保された後、国会が移転するまでの期間を想定し、政治・行政の情報化への対応を図りつつ、大規模災害時においても国の情報機能が十分に発揮されるよう、新首都に情報機能の先行整備を図るべきである。これは、いずれ新首都に整備する必要のある政治・行政情報拠点としての機能を先行的に整備することにより、現下の緊要の課題である首都機能の情報バックアップ体制を強化し、国の災害対応力の多重性を確保するものであるので、決して無駄な投資ではなく、国民生活の安定と安全のために必要なものと考える。

新首都で先行整備する情報機能については、現在各方面で急がれている防災や危機管理に関する諸検討の成果を踏まえて決定すべきものであるが、現時点では、例えば、

  • 国の保有する行政情報や個人情報のバックアップ機能
  • 民間のマスコミなどの情報機能やこれを支える情報通信システムのバックアップ機能
  • 危機管理を円滑に行うためのバックアップ機能

等が検討対象として考えられ、第一段階における新首都建設のプログラムの具体化に当たっては、それらの先行整備が可能なよう考慮しておく必要がある。

新首都の建設プログラムからみても、情報関連施設の整備には大規模な従業者の移転を伴わないため、新首都の用地の一部が確保された段階で、先行的に着手することが合理的であると考えられる。

3.新首都の成熟へ向けて

第一段階の新首都では、国政全般の改革を早急に推進することを眼目とするため、内外に開かれた政治・行政機能を優先的に整備していくことが求められるが、あわせて、そこで働く人々やその家族の日常生活や余暇を支える各種商業・サービス機能を充実することも重要である。また、新首都に魅力を感じて内外から訪れる人々のための宿泊その他の各種サービス機能を整えることも重要である。

その後の新首都の発展過程は、わが国の政治・行政システムの改革、政治・行政機能と経済機能の関係の見直し、中央と地方との役割分担の変化、人々の意識やライフスタイルの変容等と同時並行して進んでいくべきものである。

今後の行財政改革や行政機構の見直し、政官民の関係や国と地方との関係の変化、政治・行政分野の情報化の進展やマルチメディアの発達の民間機能等の立地に及ぼす影響等が、その規模を小さくする方向に作用することが望まれる。逆に、政策立案に係るシンクタンク機能の発展、新たな国際機能の立地、新たな情報サービス産業の成長等従来のシステムにない新しい機能、日本の文化や進路を象徴するような新しい機能等の成長が新首都の規模を大きくすることもあるだろう。

新首都が国民や世界に開かれた都市として、魅力ある街へと早期に醸成されていくよう、繁華性、国際性、文化性を高める必要がある。このため、新首都での国会の開催が行われた後、各種文化施設、会議・研修施設、レクリエーション施設、商業施設、宿泊施設、大学等の整備に優先的に取り組むとともに、住宅地の整備を順次進めつつ、都市としての成熟を図ることとする。

国会が開催されてから一世代くらい経った頃には、新首都は政治・行政・文化等の機能においても、生活の場としても、21世紀を代表するような創造的、効率的でにぎわいのある魅力的な都市として成熟しているものと考えられる。

その時点での新首都の機能のあり方は、未来の国民が新首都に求めるところに委ねられるべきであり、現時点で細部まで決定しておくべきではない。むしろ、新首都には、政治・行政機能や国際政治機能等を十分に受け入れることが可能であるだけでなく、新しい日本のシンボルや未来の文化を創造する魅力とにぎわいのある都市となり得るため、将来の選択が可能となる余裕やゆとり、自由度・弾力性を確保しておくことが重要と考える。

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