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第9回国会等移転審議会公聴会(金沢)議事要旨

日時: 平成11年6月18日(金曜日) 14時0分〜16時0分
場所: 金沢東急ホテル
審議会委員出席者: 森亘会長、石井威望委員、海老沢勝二委員、牧野洋一委員
一般参加者: 総計160名

1.意見発表者による意見発表(氏名(敬称略)、性別、年齢(当時))

(1) 氏名:片岡豊 性別:男性 年齢:39

皆様に一言、お断りを申し上げます。私は現在、腎臓機能低下に伴い、1週間に3回人工透析を実施していますので、意見発表の場において座ったままでの発表とさせていただきます。
では、本題に入らせていただきます。
私は、先ほども述べましたが、39歳、千葉県在住の片岡と申します。現在、週3回人工透析を実施している立場上、私はきょう、災害弱者の立場から私の意見を述べさせていただきます。
西洋のことわざに、「大切な卵は1つのかごに入れて保管するのではなく、幾つかのかごに分散して保管しなさい」ということわざがあるようです。このことわざが、国会機能等移転問題を象徴する言葉だと私は思います。今、我々が住む1都3県、東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県、一極集中化に伴い、より多くの問題が指摘されておりますが、私は、その中で地震災害を中心に私の意見を述べていきます。
皆様の中には、地震なんかそんなに来るものではないと思われている方が多いと思います。実は今年2月26日、東京会場の開催中、震度5以上の地震が秋田沖で14時18分に発生しました。同日、14時25分、自衛隊機が災害の状況の偵察に向かわれました。我々は、常に地震という危険にさらされているのです。私が今話をしている間にも、地震が起こる可能性があると皆様には認識してほしいのです。特に、人口密集地域においては、多くの悲しみを伴い、北陸の方は、昭和20年、福井地震で大変な思いをされたかと思います。
先ほど述べた、西洋のことわざで例えるならば、東京を中心とする1都3県は、1つのかごの中に山積みのように卵を入れ過ぎました。山積みになってしまった卵を守るためには、2つの方法しかありません。1つは、かご自体、すなわち1都3県の防災強化です。第2の方法は、他の地域への新都市計画です。
第1の1都3県の防災強化について、私は、防災、特に地震について各種の資料、そして医療、福祉、在宅介護者の生の声を半年間にわたって研究してきました。その結果、防災マニュアル上は十分に見えても、実際は、防災マニュアルどおりにはいかないという結論に達しました。その理由を3つ挙げます。
第1に、東京都心の土地下落に伴い一極集中が、都心への回帰現象が再び進行し始めたという状況です。
第2に、2011年に日本の総人口がピークに達しても、災害弱者の比率がその後上昇していくということです。申しおくれましたが、災害弱者とは、主に老人、心身障害者、病気の方、在宅介護を受けている人たちを指します。
第3に、災害が起きたとき、避難所における治療が困難なこと、手のかかる手術、私のような人工透析患者、難病患者への対応は不可能です。我々、透析患者の1人分の水の使用量は、約ドラム缶2本分、120キロリットルの水が必要です。大都市における大震災においては、ライフラインの崩壊、その1つとして断水することが多く、復旧するのにもかなりの時間がかかります。透析患者のケースでは、1週間透析ができない状況が続いたときには、多くの患者が死に至ります。そして、大震災においては、家屋の下敷きになったりして起こる挫滅症候群、多くの急性腎不全患者が生じると予想され、多くの人工透析が必要とされます。
以上、述べてきたリスクを回避するために、1都3県の防災強化を強く訴えます。その中に、私は1つの提言をいたします。それは、陸上交通が混乱した災害において、空を災害救助に活かすということ。とにかく、ヘリコプターの活用が重要であると私は主張します。現在では、警察、消防、自衛隊などのヘリが飛び交う状況、災害時、事故がないよう、日ごろから防災無線の統一周波数による通信訓練の実施、そしてヘリコプターの統合運用の訓練の実施を日ごろから連携を密にしてもらいたい。繰り返しますが、空を生かした広域防災訓練の実施強化を私の提言といたします。
以上、1都3県の防災強化を述べてきましたが、次に、他の地域への新都市計画について、私の考えを述べさせていただきます。
1都3県の人口密集地域には、約二、三千万人の人々が生活しています。防災マニュアルの完成度が高くなっても、実際の大震災では、甚大な被害が出ると予想されます。そのときの対応能力という選択肢の中で、国会等機能を移転させておく方法が重要視されます。被災された大都市を復興させる段階のときには、政府機関の中枢都市が中心になって復旧させるのが効果的であり、俗に言う、司令塔的都市が必要です。国会等機能移転は、前もってやっておくべきでしょう。大震災の後では遅過ぎます。
最後に、現在候補地として3カ所の名前が挙がっていますが、各候補地の詳細を判別するのは大変困難ですが、私が、今まで述べてきた地震災害から述べるならば、移転候補地として、地質学的、1都3県の機能とも適切に連携し合える北東地域が妥当だと思われます。特に、造成用地、形状、自然環境との共存から考えますと、那須地域を中心とした北東地域が適していると言えます。災害弱者への救援基地とするならば、200キロ圏内が限界でしょう。そして、移転時期がおくれればおくれるほど、災害弱者はふえ、国力も衰えていき、早期の国会機能等移転を希望します。我々は、1都3県の防災強化、それをバックアップする新都市の認知が今必要なのです。
イギリスの元首相、マーガレット・サッチャーの言葉に、社会的弱者を救うのには、社会的強者の存在が必要との旨の発言があったと聞いています。
この言葉を引用して、私の最後の意見とさせていただきます。地震に弱い東京を救うには、地震に強い都市の存在が必要である。
長らくのご清聴、まことにありがとうございました。

(2) 氏名:佐藤正幸 性別:男性 年齢:31

私は、青年の要求のために学習し行動していく全国的な青年団体、民青同盟石川県議会の佐藤と申します。
私は、国民主権の観点と、青年の立場から意見を述べたいと思います。
今、配られたパンフレットによれば、今度の首都機能移転の3つの意義と効能の第2番目に、首都機能移転によって政治と経済の分離を図り、政・官・民の新たな関係をつくり出し、国政全般の改革の重要な契機とする、このことが挙げられています。しかし、本当に国政全般の改革の重要な契機になるのか疑問であります。
それは、日本の国民を代表する国会が、国民の大きな部分がいない場所に移ることになり、主権者である私たち国民の声をどうやって国会に反映させるのか、こういう問題が発生するからであります。戦後の政治を見ても、私たち国民は、憲法第16条に明記された請願権、この請願権に基づいて、要請、集会、デモなど、無数の請願行動を行い、国会と政府にその意思を示し、主権者として政治に参加をしてきました。これは、国会が、3分の1近い国民が住む首都圏の中心都市、東京にあるからこそできたことでした。
しかし、新首都に国会が移ったら、同じような行動が可能でしょうか。パンフレットの中には、「幹線交通は全国と新都市を直結する」、こういうふうに述べてありますが、中心都市、東京から遠いところに国会があっても、請願や集会、デモなどによって、国民や青年の声を集中することは難しくなります。
また、パンフレットによれば、「新しい国会議事堂は、対面式の議場に最新の情報機器が導入され、多くの傍聴者の中で活発な議論が展開される」と書いてありますが、そもそも国会が国民から遠ざけられてしまっては意味がありません。これは、21世紀の日本をつくる青年の政治参加の面から見ても重大な問題があります。未来に生きる青年は、みずからの願いを実現するために、政治への関心と、政治参加の意識を高めています。特に、昨年の参議院選挙では、高い失業率に就職難、重い学費負担など、黙っていられない現実の中で、自分たちの未来は自分たちで決めたいという思いで、多くの青年たちが投票所に向かい、マスコミも、若い無党派層が投票所に戻ったと、青年の政治参加の広がりに注目しています。
私は、ここで、フランスの場合を紹介したいと思います。
フランスの首都はパリであり、ここに国会があります。昨年10月、フランス全土で50万人を超す高校生の大規模なデモが開催されました。フランスでは、教育予算の切り捨てで、クラスは39人なのに、学校にはいすが33しかない。こういう例にあるように、勉学条件が劣悪化し、この改善を求めて高校生が立ち上がりました。首都のパリでは、18歳で選挙権を持つ高校生3万人が、ナシオン広場から教育省へ大行進し、親を初め国民の大きな支持を得て、一部要求が実現をしました。これは、青年が政治を動かした民主主義の実例であり、多くの国民が住む首都パリに国会があったからこそ、できたものであります。
未来の日本を担うのは、私たち青年であります。青年の政治参加を進めてこそ、社会に活力が生まれ、日本の将来への希望を広げることができるのに、今度の計画では、青年の政治参加を狭めるという点で、国民主権、議会制民主主義の点で大きな問題があると考えます。
また、計画では、政府の本体は東京に残って、日常行政権力を執行することになっています。これは、憲法62条で保障された国政調査権をやりにくくすることになり、三権分立の観点から見ても問題があると思います。政府の本体と国会とが別のところにある国は、ごく一部の例外を除いて、世界中見渡しても、どこにも存在しないことを強調したいと思います。
国会が、人口の集中しているその国最大の都市にあるというのは、主権在民と議会制民主主義の国では当たり前のことであります。「世界年鑑」などで調べてみても、圧倒的多数の国で人口最大の都市に国会と政府が置かれています。ヨーロッパでは、首都が置かれているのは、すべて人口最大の都市で、例外はありません。主要な国で、首都を比較的小さい都市に置いている国は、アメリカとカナダでありますが、これはパンフレットの中にも紹介されていますが、時間の関係で詳細は省略しますが、これは、どちらも歴史上の独特の理由から決まったことで、日本の先例にはなり得ないことを付言しておきます。
最後に、広島の公聴会において、公述人である青年の意見に答えて、審議会委員の方から、移転を成功させるためには、若年層の意見を反映させること、また、青年層が将来の夢を熱い思いで語れるものとすることが大切と述べられており、事実、国土庁のホームページでは、多くの青年から新都市づくりのイメージについての提案があります。しかし、圧倒的多数の青年たちは、今、将来の夢を熱い思いで語れない現実に直面し、新しい首都をつくる、これどころではないことを強調したいと思います。
先日、文部省の外郭団体、日本青年研究所などが実施した、日本、中国、韓国、アメリカ、4カ国の中・高生の調査、21世紀の夢に関する調査の結果がマスコミで報道されました。この石川県も調査地域に入っております。この調査によれば、将来に夢や希望を持っていると答える日本の中・高生は4カ国中最低でした。これは、高い失業率に就職難、重い学費負担などを初め、国の政治の責任が大きいと思います。それは、本年元旦付朝日新聞に載った世論調査結果で、これからの生活で国が頼りにならないと答える20代の青年が8割にのぼっていることにも示されています。膨大な国家予算を費やす今度の計画の前に、21世紀を担う青年に夢と希望を与えるために、高い失業率や就職難の解決、重い学費負担の軽減を初めとして、国がやるべきことはたくさんあると思います。
パンフレットにある新都市のイメージを現実のものとするためには、天文学的な予算を使う必要があるでしょう。首都機能移転の3つの意義と効果、国政全般の改革の重要な契機、東京の一極集中の是正、災害対応力の強化などは、新首都をつくらなくてもできることを忘れてはいけません。産經新聞の社説などが述べているように、本当に今、この首都機能移転が必要なのか、先ほどの3つの意義を実現するためには、本当に新しい首都を建設する必要があるのか、こういう根本議論が今重要であり、国民的合意が得られるまで、この計画は白紙撤回すべきと考えます。
この点で、審議会委員の皆さんの勇気ある決断を求めて、発言を終わります。

(3) 氏名:神谷ますみ 性別:女性 年齢:69

神谷でございます。少し風邪ぎみなので、お聞き苦しい点があるかと思いますけれども、よろしくお願いいたします。
首都機能移転に向けた動きが本格化しているのに、国民、世論の盛り上がりがいま一つ欠けています。首都機能移転とは、立法・行政・司法から成る三権の中枢機能を東京圏以外の地域に移転することですが、首都機能移転が極めて重要な国家事業であることを、広く国民の共通認識とする必要があります。
南北に細長い日本列島の国土の特性を考え、どの地域からも交通が便利で、災害に強く国際的となると、なかなか大変な問題です。今、候補地の作業対象となっている北東地域、中央地域、三重・畿央地域は、今年の秋ごろをめどとして、国会が移転先を法律で決定されると言われています。すなわち、国会都市をどこに置くか、日本のために最も正しいかという視点から、100年から200年先を見て進めていただきたいと思います。
我が国は、明治以来、欧米先進国にいかに追いつくかをテーマに、近代化・工業化を図ってきました。希少な天然資源を、特定の産業に集中させ、輸出を中心に、高度成長が最も有効だとの結果、官主導、中央集権の仕組みがつくられ、東京への一極集中が始まったものと思います。しかし、今日、日本が経済大国となり、企業や国民がより自由な環境や質の高い生活を求めるようになると、これまでの仕組みに構造的な矛盾や問題点があらわれてきました。
例えば、東京圏の混雑、劣悪な住宅環境、また、東京と地方の不均衡、発展、規制の多い経済社会、内外価格差や経済社会の閉塞感といった問題です。このような問題を解決するため、首都機能を東京から分離移転し、一極集中を是正するとともに、移転を機に、官主導、中央集権を見直し、行政改革、規制緩和や、地方分権を抜本的に進める必要があると思います。
また、阪神・淡路大震災の教訓から、都市防災を思い切って進める緊急性もますます高まっております。政治の中心と経済の中心を分離することは、都市防災のみならず、安全保障の観点からも重要です。国際的には、新都市建設を通じて、我が国の変革の姿勢を世界にアピールすることが可能となり、しかも構造改革の一環として、内外から期待の大きい内需主導型は、経済の一助ともなります。その際、大事なことは、都市機能の移転を通じて、人心を一新し、21世紀に向けた国民参加型の新しい国づくりの契機とする点です。さらに、現在、我が国の政治・経済両面に漂う閉塞感を打破して構造改革を進めるためには、首都機能を移転することによって、中央集権の国民意識を変革し、より多様で、分権的な価値観をはぐくんでいくことも必要です。
なお、東京圏は、首都機能が移転した後も、経済面、文化面、ともに我が国の中枢として発達を続け、より国際的、先端的、創造的な都市として発展を遂げ、東京は世界に誇るべき最も重要な日本の顔となっていただきたいと思います。国から地方へ、官から民という大きな時代の流れの中で、自治体のリーダーである東京が中央に依存することなく、都民、企業の協力を得ながら、みずからの力で東京の再生にチャレンジすることが今求められております。東京の再生なくして、日本の再生はありません。
諸外国の主な首都機能移転では、アメリカ合衆国は国家独立に伴い、恒久的、象徴的首都をワシントンに、1893年から建設が始まり、7年後に完成し、現在のところ、顕著な一極集中は見られないとのことです。
また、オーストラリアは、イギリスからの独立に際し、首都争いが激化し、1908年にキャンベラの遷都が決定し、土地利用計画のもとに、緑に囲まれた非常に美しい首都ができ上がりました。
ドイツは、東西ドイツ統合に伴って、1991年6月に、首都をボンからベルリンに移転することが決まり、2000年を予定に今後の動向が注目されております。
今、私たちが将来の世代に、より住みやすく、活力あふれる日本を残していくためには、首都機能移転に着手すべきではないでしょうか。行政改革を実現し、規制緩和を進め、さらに地方分権を進めてスリムになった政府が、新しい都市で我が国の将来を考え政策を実行する、21世紀の大きな課題である環境、エネルギー、資源リサイクル、そして情報化に配慮した新都市づくりを進めることは、技術立国日本の新しい姿として世界中から注目を集めることでしょう。
以上です。どうもありがとうございました。

(4) 氏名:清水孝彰 性別:男性 年齢:27

清水孝彰と申します。よろしくお願いします。
私は、今日は東京から出向いてまいりましたが、もともとは金沢大学出身の者で、1996年まで金沢に約7年住んでいました。そこで、石川県民と東京都民の両方の視点を持つ者として、国会等の移転について公述したいと思います。
私は、基本的には、国会等移転調査会報告で提示されている移転には反対です。
その大きな理由は、1つは、移転先での大きな環境破壊につながること。もう1つは、大都市一極集中を進めている現在の国土開発、都市開発施策が移転と大きく矛盾するということです。最初の問題はよく言われているので、今回はこの2番目の問題を中心に公述したいと思います。
移転を進める理由として最もよく言われるのが、東京の求心力を弱めて一極集中を是正するためというものですが、一極集中の原因は、首都が東京にあることよりも、むしろ国土庁や東京都の進めている国土開発や都市開発施策にこそあると思います。現在の流れは、どちらかといえば、東京圏への集中、そして東京を含む大都市への集中構造となっています。
具体的には、例えば、四全総の交流情報ネットワークや、昨年策定された五全総の多軸型国土とか、あと地域連携軸などの施策は、みな東京圏を中心とする高速交通情報通信インフラの整備を意味しており、これらは東京圏での交流機会の拡大と情報の集積をもたらし、産業の東京圏への集中につながっているのです。
ここ、石川県の例では、北陸新幹線が日本海国土軸、白山トンネルが地域連携軸と言い換えられているのであって、両方とも、東京と北陸の時間短縮を意識して計画された交通インフラなのです。
一方、東京の方では、四全総の民活導入規制緩和路線が都心でのオフィス需要をあおり、都心の地価上昇と、都心への産業の集中を招いたのです。また、今年策定された首都圏基本計画では、横浜、八王子、大宮などの業務核都市の育成と同時に、分散型ネットワーク構造構築がうたわれていて、東京都の「生活都市東京構想」というのがあるのですが、それらの諸計画では、それを具体的にした多心型都市づくりの施策で、都心、副都心、地域拠点の整備や、高密度の放射環状ネットワークの整備を進めています。これらの施策は、大東京を面的に拡大するものであり、業務核都市への都心の機能分散や業務核都市の自立につながることはありません。
東京都が首都の移転に反対していることは有名ですが、その根拠として、展都の推進こそ現実的で有効とか、限られた財源は効率的な国土づくりに投資すべきという考え方があります。しかし、展都の推進というのは、先ほどの多心型都市づくりのことで、効率的な国土づくりというのは、交流ネットワークや国土軸等の社会資本整備を意味するものです。両方とも東京圏への一極集中を推し進めるものです。これらを移転のかわりに持ち出す東京都の主張には大きな矛盾があります。
国会等移転調査会報告では、移転の効果として、集中が集中を呼ぶメカニズムの打破とか、東京の吸引力の大幅な減殺などを挙げていますが、国土庁や東京都が従来の施策を進める以上は、たとえ首都を移転しても東京圏への集中構造は持続することとなり、調査会報告にあるような集中構造が是正されることはあり得ないのです。
次は、移転もとの東京都心での跡地利用に関する問題点を指摘したいと思います。
調査会報告のシナリオどおりに移転が進んだとすれば、霞が関、永田町地区を中心に、都区内に200ヘクタールからなる移転跡地が生じることになります。この活用方法については、調査会報告でも若干触れられていますが、現在、都心での街区開発に関する諸制度や施策には、大規模な開発を誘導するものが余りにも多く、移転跡地でも、これらの制度や施策が適用されることは必至です。制度としては、改正建築基準法や特定街区、再開発地区計画などがあって、いずれも一定の条件をつければ容積率を大幅に緩和できる制度です。施策としては、五全総の大都市リノベーション、それから、東京都の区部中心部整備指針というのがあります。それから、大手町、丸の内、有楽町地区ゆるやかなガイドラインというのがあります。これらはいずれも、大規模土地利用転換や、高度利用を進める政策です。実際に、霞が関、永田町地区周辺の、丸の内、虎ノ門、汐留では、これらの諸制度を利用して、高さ200メートル前後の超高層ビルを何棟も建設する街区開発計画が急速に進んでいまして、これらはいずれも都心への業務機能の集中を促すことは明らかです。調査会報告では、移転跡地は、国際的な経済・文化交流機能の育成に活用することが記述されていますが、現在進んでいる街区開発でも、全く同じ大義名分を振りかざしているのです。
既に終了した東京都庁の移転では、跡地に東京国際フォーラムが建設され、大きな集客力を誇っています。これから行われる石川県庁の移転でも、都心を空洞化させないようにと、跡地を商業・文化・観光のゾーンとして整備することが、都心地区整備構想検討委員会で検討されてきたところです。
これらの実例からもわかるように、官公庁の移転もとで集中構造が緩和されることはあり得ないのです。現在の諸制度や施策は移転跡地にも適用され、超高層の大規模な商業・業務ビル群の街区開発が行われかねません。こうなれば、業務機能の都心への一極集中は逆に加速し、都心の環境破壊が進むことになるのです。首都の移転により、東京一極集中がむしろ進んでしまうおそれもあるということを強く指摘したいと思います。
最後に、国民の認識と、そこから遊離した首都の誘致運動について触れておきます。
移転を推進しているのは、国土庁や、調査対象地域とされている候補地の自治体議員や、それらと関係する経済団体であって、候補地の住民は、必ずしも移転に賛成しているわけではないことがアンケート調査などで明らかになっています。候補地の住民を中心とした反対運動もあり、各地の住民運動が連携して、首都機能移転問題の再考を求めるネットワークも結成されています。これらの動きを無視して、国や自治体が勝手に移転を推進することは認められません。候補地の誘致運動は、ちょうど、今大きな話題になっている北陸新幹線をはじめ、沿線各地の整備新幹線の推進運動と同じ形で進められています。沿線各地に新幹線に反対する住民が多数いるのに、それらの声を無視して、自治体、議員、財界とで、地元の総意と称して、勝手に建設推進運動を行っているのが実情です。
また、大半の国民には、移転についての正確な情報、特に移転のスケジュールや計画がどこまで進んでいるか、全くといっていいほど知られていません。それをなおざりにして、一部の組織が移転の話を先走っているのです。国土庁は、一方的に移転を推進するのではなく、調査会報告や、移転改正法などの正確な情報を国民に知ってもらうよう努力することがまず必要です。
特に、97年に国会で移転凍結の論議があったことがいまだに響いており、実は、私も審議会が公聴会を開催していることを、開催された当初は全く知りませんでした。国民全体が、もっと移転に関する正確な情報を知り、十分な議論を尽くすまで、無理に移転候補地を選定することはやめていただくよう、審議会委員の皆様にはお願いしたいと思います。
まだまだ、言いたいことはたくさんありますが、そろそろ時間ですので、これで私の公述を終わらせていただきます。ありがとうございました。

(5) 氏名:金森富美子 性別:女性 年齢:48

私は、県内中小業者で組織をされています石川県商工団体連合会の金森と申します。
私は、首都機能移転に反対する立場から意見を述べたいと思います。
日本は今、大変な財政危機に見舞われています。赤字国債だけで、99年度末で327兆円、地方債も合わせると600兆円という気の遠くなる借金を抱えています。その大きな原因が、国・地方を挙げて行ってきた大型公共事業であったことは、国民の論を待たないところです。首都機能移転は、いろいろな立場からご意見はあろうかと思いますが、私は、ゼネコンに奉仕する壮大な無駄遣いとしか考えられません。
第一に、国の財政が大変な危機に落ち込んでいる中で、膨大な移転費用が国民の肩に押しかぶさってくるという問題です。国土庁の試算でも、首都機能移転には14兆円という膨大な数字が挙げられていますが、これも、交通機関などの周辺整備費は含まれていないもので、それらを含めると途方もない額に上るのではないでしょうか。
先ほども述べましたが、危機的な財政破綻の原因になった大盤振る舞いの大型公共事業の推進が厳しく問われているときに、私たち国民が、なぜ首都機能移転をしなければならないのか、十分納得のできないまま、どんどんと推し進められようとしていることに大きな疑問を抱かざるを得ません。
しかも、その財源については、国会等移転調査会の宇野会長が、「私の個人の意見を問われるならば、この際、赤字を覚悟で積極的に景気の振興という問題に財政は向かわなければしようがないと思います。その財源を消費税率で上げるか、あるいは建設国債にするか、これは皆様のご議論に待たなければなりませんけれども、この際、積極的にやらないでバランスを考えておったら、もっと局面は厳しいことになると私は考えております。」と発言しているように、消費税の増税か、建設国債か、いずれもそのツケは国民が税金で払わされることになるのです。とんでもないことだと思います。
一昨年の4月に、消費税の税率が引き上げられて以来、私たち中小業者の営業は、ますます冷え込んでいます。我々の上部団体であります全国商工団体連合会が、昨年11月に、全国7万人の中小業者から集めた調査でも、前年より売り上げが減少した業者は、78%に上り、景気の見通しもよくなるというのは、わずか2%でしかありませんでした。不況を理由に、ゼネコン等に下請単価を法外に値引きをされ、倒産に追い込まれ、みずからの命を絶つ人まで出ています。私たち中小業者が今一番望んでいることは、消費税を3%に引き下げ、医療や年金などの福祉を、せめて改悪前に戻して景気を回復してほしいということです。
第2に、首都機能移転は、景気回復につながらないということです。これまでの大型公共事業が財政を圧迫し、地域の経済波及効果が低かったことは、オリンピックを誘致した長野県などでも既に明らかにされています。ゼネコンは、地域の建設業者に採算割れ工事を押しつけ、石川県でも、1億円の工事を請け負って2,000万円の赤字を出し、今後どうしていこうかと悩む業者の相談を受けています。私たちが望むのは、地域住民の暮らしに密着し、学校の改善や、福祉施設の充実などの事業を通じて、地域経済を再生させることです。特に石川県は、特別養護老人ホームの待機者が1,800人近くもいるのに、建設計画が1件もないという大変な状況です。戦後最大と言われる不況の中で、これ以上の負担を国民に押しつけるなら、ますます消費は落ち込み、景気の回復は望むべくもありません。
また、私が疑問に感ずるのは、首都機能を移転すると言いながら、現在、首相官邸の建てかえが450億円で行われていること。首相官邸だけではなく、自治省、人事院、警察庁などが入る予定の合同庁舎2号館の建てかえも534億円という巨額をつぎ込み、その後も、農水省、文部省、大蔵省の建てかえ計画も進行中というのですから、政府は何を考えているのかわけがわからなくなります。その費用も、国民が負担をするのですから、もういいかげんにしてほしいというのが率直な気持ちです。
今、国民は、リストラや倒産、廃業で、生活そのものが成り立たなくなっています。神戸の被災者たちも、今、いまだに営業や生活を立て直すことができずに、仮設住宅や仮設店舗で頑張っているのです。私は最近、神戸を訪れる機会を得ましたが、私たちの仲間は震災で何もかも失ってしまったけれど、国の支援はスズメの涙ほど。義援金さえも全額配られず、再開発計画に回されようとしている。二重の借り入れで、どこまで頑張れるのかこれから心配、こんなときのためにこそ、国は何かをしてくれると思っていたが、全く当てにならないと悔し涙を流しておられました。国民が、これほどの苦しみを味わっているときに、巨大な首都機能移転事業をやることが、一体可能であり、適切なのでしょうか。
私は、以上の理由から、首都機能移転には断固反対の立場をとっています。いったん動き出せば、どれだけの費用がかかるかわからない。財政の保障は国民負担、もうけはゼネコンが吸い上げる。最終的にはゼネコンもうけのために首都機能移転が計画されたのではないかという疑いを拭い去ることはできません。国民の立場に立つならば、この財政危機や深刻な不況をどう打開していくのかという視点で、首都機能移転に検討を加えるべきではないでしょうか。
以上をもちまして、私の意見とさせていただきます。ありがとうございました。

(6) 氏名:田中隆弘 性別:男性 年齢:32

皆さん、こんにちは。山形県酒田市から参りました田中隆弘です。どうぞよろしくお願い申し上げます。
では、首都機能の移転について、私の意見を述べさせていただきます。
最初に、移転については大賛成です。なぜなら、これからの日本の新しい国の形をつくるためには、新しい器が必要だと考えるからです。
今までの歴史を振り返ってみても、時代の大きな転換点において、遷都をすることにより人心の一新を図り、新しい国の形をつくって時代を乗り切ってきました。「新しい酒は新しい革袋に」ということわざもあります。明治維新から終戦、そして今日に至るまで、欧米諸国に追いつき追い越せの官主導の、効率を追求する社会をつくってきましたが、その中でさまざまな弊害が出てきました。これからは、中央集権から地方分権、官から民への転換を図り、地域や国民1人1人が幸せになれるよう、みずから考え、みずから行動する社会へ変えていかなければなりません。そして、そのさまざまな改革の仕上げになるのが首都機能の移転なのです。
98年1月、審議会は、北東、東海、三重・畿央の3カ所を現地調査の対象地域として決定し、これまで調査を行ってきました。しかし、私から言わせれば、どれも候補地として不適当と言わざるを得ません。審議会に先立ち、95年12月、国会等移転調査会が移転先の選定基準として9項目を挙げております。3カ所とも、一つ、国内各地からのアクセスに大きな不均衡を生じない。一つ、水需要が逼迫する地域は避ける。一つ、政令指定都市級の大都市から十分な距離を保つ、という条件をクリアしておりません。また、最大の難点は、いずれに決まっても、多くの都市からは、東京を経由しなければアクセスできないということです。位置的にニュートラルな場所とは言えず、全国的な見地から選ばれたとは到底言えません。
では、どこがよいのか。日本海側が適地だと考えます。日本海側へ首都が移転することにより、東京、大阪の、二眼レフの国土構造から、トライアングルの国土構造が形成され、太平洋側に比べ、おくれている社会資本の整備も進んでいきます。それでは、せっかくの機会ですので、具体的な場所を提案して、皆さんの議論の材料にしていただきたいと思います。
まず、日本の中心はどこかということをこれから皆さんにお見せします。ここに、日本列島の地図がありますが、北海道の稚内と、鹿児島の先っぽを重ね合わせます。そして、折り目のついたところが南北に細長い日本列島の中心と言えるのではないでしょうか。
いかがでしょうか。このライン上で日本海側といえば、新潟県上越市になります。上越市だったら、長野から新幹線が延びれば東京からは1時間半です。大阪、名古屋からは、北陸新幹線、または中央リニアを分岐させれば、アクセスは問題ありません。私がここで申すまでもありませんが、明治以来、130年余りの長きにわたり、裏日本は表日本に比べ何かと冷遇され続け、人、物、金の供給源として表日本を支えてきました。社会資本の整備にしても、在来線、高速道路、新幹線、大学などの各種機関が常に後回しにされ、それがそのまま地域格差につながってきたのです。
1876年、明治9年、金沢市の人口は全国5位でしたが、122年後の平成10年では、全国32位、北陸のみならず、裏日本の地盤沈下は著しいものがあります。今後、少子・高齢化がますます進行してきます。もう10年もすれば、第1次ベビーブームの人たちが年金をもらうようになり、大規模な公共投資が控えられていく中、太平洋側に新首都が決定されるとすれば、裏日本は永遠に日の目を見なくなってしまいます。1858年、日米修好通商条約で開港したのも新潟だけ、今回の審議会もここ金沢だけ、2002年のワールドカップも新潟だけ、すべて日本海側は1カ所だけです。
去る5月、本州と四国を結ぶ3番目のルートが開通しましたが、3ルート合計で3兆3,000億円という巨額な資金が投じられております。一方、裏日本では、このような投資が行われてきたでしょうか。おとなしく最後まで順番を待っていたのに、このまま見捨てられるのでしょうか。いつまでも表日本の刺身のつま扱いは甚だ不愉快です。
とにもかくにも、国土の均衡発展、日本海国土軸の形成のためにも、そして何より、世界へ向けて日本が新しく生まれ変わるということを強くアピールするためにも、新首都は日本海側、なかんずく新潟県上越市が最適だと考えます。3カ所の候補地では、今と何ら変わりなく、波及効果も大きくありません。重大な決断を迫られる今、候補地同士が綱引きをするのではなく、夢と希望を与える決定を。これは、私1人のみならず、青森から山口までの、12府県、2,000万人の強い願いであります。
ご清聴ありがとうございました。

(7) 氏名:杉本真 性別:男性 年齢:53

杉本です。
今、なぜ移転なのかというその大義名分について1つ1つ検討することによって、移転問題の是非について意見を述べます。
最初に東京一極集中の是正という問題です。
これについては、先ほどの方が詳しく述べられましたので簡単に申しますが、新しい首都の予想人口は約60万人。そのうち、半分の30万人が東京から新しい首都に移るというふうに推定されています。東京だけでも1,200万人。首都圏全体で3,000万人を超える人口の中から、わずか30万人が移るだけで一極集中の是正になるのでしょうか。首都移転に積極的なJAPICの機関紙でさえ、「誤解があるといけないが、巨大都市東京への集中緩和と新首都建設とは別の問題だ。何年かかけて完全に移転し終えたとしても、たかだか60万人都市にすぎない。首都圏総人口に比べて全く違う規模であり、肥大化した東京の都市問題の解決には到底なり得ない。」と述べておるほどであります。既に、一極集中解消、過密解消論は完全に破綻しているのではないでしょうか。
次に、このパンフレットの3番目の理由に挙げてあります震災問題について意見を述べます。
最初の発言の方も、震災問題について触れられました。私も東京首都圏の震災対策は大変重要な課題だと思います。日本でも有数の地震危険地帯に3,000万人の人口が集中している。この国民の安全を確保するためには、そのための一大プロジェクトが必要だと思います。ところが、今度の首都移転の立場は、そういう立場ではなくて、首都圏3,000万人の住民をいかにして震災から守るのかという立場ではなくて、そういう危険なところから司令塔だけ移ってしまおうということでありますから、国民の立場に立ったら、全く納得のいかない議論であります。
次に、人心を一新する必要があるという問題についてであります。
先ほども、その立場からご意見を述べられた方がおりました。パンフレットにも、「国政全般の改革を推進します」というのが第一の大義名分として挙げられています。かつて、調査会の宇野会長は、国民全体が地方で本気で地方分権をやろうということになるには、首都を移転して、日本は変わったんだということを身をもって示すことが大切だと。例えば、経済的には不効率なことでも、ここいらで少し壮大な無駄をして、新しい時代に乗りかえるインパクトをつけてもいいんじゃないか、そういうことを述べました。
ところが、この議論も先ほどの人心一新論の意見も共通しているのは、首都移転がどうして規制緩和や地方分権につながるのかどうか、この説明は全く欠落しています。規制緩和の是非論は別にして、なぜ首都機能を移転されたら規制緩和や地方分権が進むのか、その関連性や必然性は何も説明されないままに、壮大な無駄やら、決別の儀式をやるということは、私たち国民の感覚からすれば、余りにもかけ離れた感覚ではないでしょうか。戦後最悪の不況の中で、営業も暮らしも大変、高齢化社会をどうしていくか、こう悩んでいる国民の気持ちとは全くかけ離れた論理だと言わざるを得ません。
最近の新聞に載った、「首都機能移転変革の公知」と題する論文は、首都機能移転を新時代に向けた挑戦を試みる絶好の機会ととらえるべきと言って、第1の挑戦として政治の再生を挙げて、従来のような利益誘導型で、既得権に縛られる金のかかる政治を改める必要がある。移転により、物理的に政経分離を行えばこうしたしがらみから政治が解放されると、こう主張しています。確かに、政治の信頼をどう回復するか、これは大変大事な問題です。汚職・腐敗をどうなくすか、大事な問題だと思います。それは、企業・団体献金を禁止し、政党助成金をなくすという直接的なことをやることによって解決できる問題であります。こうした本質的な対策抜きに、物理的に政治と経済が離れれば、政治とお金の問題が解決できる、そんな議論はだれも信用しないのではないでしょうか。
中央集権構造、中央依存体質の改善にしても、この論者自身が認めているように、地方分権や規制緩和などの改革に徹するのが本道であり、壮大な無駄、国会移転でこれが何とかなるのではないかというのは、全く次元の違う問題ではないでしょうか。
以上に述べたように、国会等移転の大義名分は、いずれも破綻をしていると思います。根拠がなくなった以上、国会等移転は白紙撤回するのが政治の常道ではないでしょうか。
私は、金沢から約60キロ離れた中能登地域に住んでいます。能登半島は、人口の減少や高齢化など大きな問題を抱えています。この地域に住み続けるためには、働く場所の確保や、公共交通機関の拡充、福祉・医療施設の充実や生活基盤の整備などが緊急に求められています。壮大な無駄ではなくて、今、住民が求めている、緊急の要求を実現するために公共投資をやるべきではないでしょうか。
このことを発言して、私の意見発表とします。

(8) 氏名:早川芳子 性別:女性 年齢:

皆さん、こんにちは。早川と申します。
日ごろは、コミュニケーターという仕事をしています。時には、英語と日本語の間の言葉の橋渡しをしたり、いろいろなことをエッセイに書いたり、また、テレビの番組に出演したりしていますので、自分の職業をコミュニケーターというふうに呼んでいます。
きょうは、この問題について意見を述べてほしいと言われましたので、私は、しばらくの間考えて、お引き受けし、そしてきょうここに来ました。
まず、一番最初に感じたのは、とっても唐突な感じがして、まるで数年前の石川県庁の移転問題が急激に浮き上がってきたときのようだなと思いました。ある日、「県庁移転反対」という旗が立っていました。それまで全く知らなくって、エーッ、県庁が移転するんだと驚いたのです。そしていろいろなことで反対意見を述べたけれども、結局は決まってしまって、もう、知らぬ方向に動いて、後は跡地をどうしようかというような動きになっています。この首都機能移転の問題も、そんなふうに何かこう、エッと思っているうちにどんどんどんどん進んで、気がついたらどっかに移転してた、なんてなってほしくないなあと思っています。
今はいろいろな、理由の説明があったのですけれども、皆さんわかりました?私は、わからないんです。どうもわからない。こんなわからないまま、どんどんどんどん進んでほしくないなというのが本音です。
上越市の方かしら、うちへ来てほしいとおっしゃっていましたけれども、私は、金沢には来てほしくありません。今、金沢は約50万の人口を抱えて、とても暮らしやすいまちです。まだ、五感を享受できる。曲がりくねった道を歩いていくと、どこかから花の香りがしてきて、ああ、お花があるんだな、もう咲いたんだなと思っていると、用水の音がしてきます。田植えのころにはその音は大きくなりますし、きょうは少ないなと思っていると、本当に水が少ない。そういう、耳で聞いたり、肌で感じたり、匂いを感じたり。そして、この何とも言えない湿度。きょうも湿度が高いですけれどね。一年じゅう高い湿度。これは、私たちの肌をすごくきれいにしてくれますし、たくさんの伝統工芸を守っています。こんなまちに首都機能は来てほしくないなと思っています。
そして、いろいろな資料を読んで、1つだけわかったことがあります。今のままの案だったら、私は反対です。ただし、先ほどから何人かの意見を述べた方がおっしゃっていましたように、「災害があったときに困る」と言われると、そうだなあという気はしています。
そんなときにいろいろ考えて、今、一番不思議なことは、陳情という現象です。何か、市町村のお偉方が、国会議員さんと一緒に、何度も東京に行って何か陳情してくるものです。それで、名前だけで中身が伴わないようなものを持ってきて威張っているような、あの陳情はどうなるんだろう。首都機能が移転したら、みんながそっちへわんさか行くのかしらん。それはまあ、見てもいいかなという気はしているんですよね。何かこう、この時代に、昔の参勤交代みたいに、飛行機とか電車に乗って、すべての人が東京に向かって陳情に行くというのは、本当に不思議な状況です。
それで、じゃあ、災害のときにどうすればいいのかなというところを考えなければなりませんね。これからは、集中の時代じゃなくて分散の時代だと言われていますので、機能を日本全国にばらまいたらどうでしょうか。「また、この早川は過激な意見を言う」とみんなに言われますけれども、情報通信の発達したこの時代にできないことはないと思うんですね。例えば、北海道開発庁が北海道にあるべきだと思うし、沖縄開発庁は現場にあるべきだし、文化庁ぐらいなら金沢に来てもらってもいいかなという気はしています。
ちょうど今、臓器移植がされていますよね。東京は大きくなり過ぎて、もしかして今病んでいるのかもしれない。それなら、麻痺して困るものを一番安全なところへ移すというのはわかります。このまちには肝臓を、このまちには心臓を、このまちには角膜をという風にね。でも、どうしても肺みたいに、難しくて、臓器移植ができないものもあるでしょう。そういうふうに、どうしても移転できないものは東京に残さなくてはならないでしょう。そんなふうに感じています。
だから、今、いろんな県が「うちに来てほしい」なんて言っているのは、まるでお砂糖に群がるアリさんみたくって、利益だけ見ている。それが来たことによって、いろいろな弊害も多分生まれると思う。そこをどうして見てないのかしらと、とても不思議です。
「はないちもんめ」みたいに、あの子がいいとかね、この子がいいとか、そんなことを言っている限りはだめだと思います。もうちょっといろいろなところに女性の目が入ってほしいなとも思います。
きょう、実は、この会場に来るのに、エレベーターに乗りました。大勢の、多分国土庁の方々も一緒に乗られました。皆さん我先にドーッと乗って、私が最後に。降りるときは、私が「開く」のボタンを押していました。皆さん、我先にと出て、振り返りもしない。ありがとうの一言もありませんでした。こんな人たちに、私は、この首都機能移転をお任せするのはとても不安です。こんな風に言った限りは、私も責任を持ちます。国民として、自分のお金が税金でどんなふうに使われるか、しっかり見ていきたいと思います。
以上、今、思っていることを述べました。ありがとうございます。

2.出席した各委員の感想等

【石井委員】

今、ご指名をいただきました国会等移転審議会委員の石井でございます。
私のこの審議会における担当といいましょうか、主として私の専門の分野でお手伝いをしているのですが、情報システム関係でございまして、一口で言えば、今のインターネットとかコンピューターとか通信とか、そういうことでございます。
2つ感想を持ちましたので、それを申し上げたいと思います。
1つは、やはり地震とか、そういう災害のことを多くの方がご指摘なさいました。私も、今、東京に住んでおりますけれども、今回のこの審議会におきましても、もちろん地震の専門家、そういう方かからもたくさん教えていただいたのですけれども、これは地震国、地震ということがついて離れない国土でございますから、「地震・雷・火事・おやじ」というような言葉にもあるように、一番初めに地震が出てくるわけでありまして、これをどうするかということで、きょうこちらに伺いまして、改めてその点を深く感じました。
つまり、東京が関東大震災のような状況にぶつかった過去の教訓もありますし、今度は神戸のようなこともございましたし、これから確実にそういう状況が、時間がどのくらいで来るかわかりませんけれども、来ることは明らかだと。そのときに、日本の対応というのはどうあるべきかということは、諸外国にも余り例がないような、私たちの厳しい条件だということで、きょうもこちらへ来て、改めて皆さんの関心が高いのを痛感したわけであります。
第2は、先ほど、ちょっと言いました私の専門に関することでございまして、具体的には、先ほどご意見をいただいた、感想シートという中にもある方が書いておられまして、情報技術革新の急激な進展によって、情報のネットワークが進行するなど、移転先地の選定基準を設けた移転調査会報告の時点とは、現在のこの社会状況が非常に大きく変化している。こうした状況に合わせた選定基準を新たに定めなければ、仮に選定を進めるとしても、調査対象地域の絞り込みなど、まずいじゃないかというようなご意見でございました。
そのとおりでございまして、私の専門から言いますと、最近、よく「ドッグイヤー」なんて言いまして、大体普通の1年間が、技術の進歩から言うと4年ぐらいの感じで進んでおりまして、その先の計画をしようとすると非常に困るわけであります。私も、国会のこの国土関係の特別委員会ですか、衆議院で参考人で呼ばれまして、その点もここにおっしゃっているとおりのご質問を受けたり、非常に速く進む技術革新と、首都機能移転のような非常に長期レンジで、建設一つにしても10年かかるというようなこととが、どういうふうに基本的に組み合わされればいいのか。これはなかなか、技術革新が進み出したのもそんな昔ではございませんし、人類が初めてぶつかっているようなこともございますので、非常に難しいわけであります。基本的には、わからないというのが、今のところ、やむを得ない状況だと思いますが、ただ、言えることは、従来、ゆっくり技術が進んでいたころと同じやり方で計画をするのは、まずうまくいかないだろう。計画自身のやり方を変えようかというようなことは、今真剣に考えております。
先ほどから、なかなか皆さんよく内容を、情報を得る機会が少なかったとおっしゃっています。この点も、もちろん事務局側の問題もありますが、今ここにご指摘になっているような、情報のネットワーク化の進行が今どんどん進んでおります。これは日本だけではなくて、アジアでもものすごく進んでおりまして、これは、例を言い出すと時間が余りにもオーバーいたしますが、ちょっといただきまして言いますと、アジアというのは、普通、工業化はもちろんのこと、情報化で遅れているというふうに思っておりましたが、それはそうではございません。
例えば、インターネットの中のドメインと言いまして、そういうアドレスを世界中でとっているわけですが、例えば金沢というアドレスをとったりするわけですね。これは、世界中で全部トータルして見ております。今年の1月から3月の間に、大体80万ドメインがとられたわけですね。その中の7割は、これはアメリカであります。日本は、経済大国だから2番目ぐらいに出てくるかなと思ったら、とんでもございませんで、2番がカナダ、イギリスとかヨーロッパがずうっと来まして、先進国の中に全然日本が入ってないんですね。9番目に出てくるのが、実は中国です。10番目がインドであります。アジアの国がこう続きまして、14番目が香港であります。香港というのは、ご承知のように非常に人口が少ない国で、なおかつ日本より多いんですね。日本は15位であります。
ですから、周りでは、ものすごくそういう情報ネットワークの普及ということが進んでおりまして、そういうものをフルに使った皆さん方への情報提供ということも、今後のやり方かなと思います。
ちょうど、私の次が、多分、NHKの海老沢会長さんで、情報のお話が続くということになりますので、ちょっと時間がオーバーして申しわけありませんが、感想を申し上げた次第でございます。
どうも、ありがとうございました。

【海老沢委員】

海老沢でございます。
今、8人の意見者のお話、あるいは皆様方のご意見・感想のシートを拝見いたしました。非常に多様な、そしてまた貴重な意見が述べられております。
そういう中で、この首都機能移転についての国民的な関心が非常に盛り上がっていない、あるいは、非常に無関心であるというような意見が出ておりました。
ご承知のように、首都機能移転というのは、非常に「国家百年の計」といいますか、国家的な、あるいは国民的な大事業だろうと思います。そういう面では、多くの国民の納得性といいますか、合意がなければ成り立たない課題だろうと思っております。
先ほども、一部の関係者だけが熱心で、多くの国民は人ごとのように関心が薄いという、これは非常に残念なことでありますけれども、現実はそのようだろうと、私もいろいろなところで意見を聞いておりますけれども、そういう感触が出てきております。
ご承知のように、首都機能移転というのは、ある種の革命といいますか、そういう中で移転をしてきましたし、今日のような平和な時代に移転するということは、本当に大変な難事業であることは、もう言うまでもありません。
そういう中で、こういう問題は、その時々の経済社会状況によって非常に意見が違ってくるものだろうと思っております。そういうことで、東京一極集中とか、あるいは災害時にどう対応するとか、いろいろな問題がありますけれども、今度の、この議論というのも、もう十数年いろいろ議論しておりますけれども、なかなか難しい状況であることは、もう言うまでもありません。
そういう中で、きょう、皆様から本当に多様な、貴重な意見を我々は伺って、さらにそういう意見を真剣に受けとめて、さらに議論を深めなければならないという感をまた深くした次第であります。
いずれにしても、皆さんの、本当に地方に住んで生活を営み、地域の経済の活性化なり、あるいは文化の振興に直接携わっている方々の意見は、非常に我々にとっても参考になるものであります。抽象的なものではなくて、具体性を挙げたご意見もありました。中には、もう一度白紙に戻して検討すべきだろう、そして、できれば日本海側に持ってくるべきだろうというような意見もありました。
そういうことで、私どもも皆さんの意見を今後とも参考にしながら、真摯に、まじめに議論を重ねていきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
きょうは、どうもありがとうございました。

【牧野委員】

牧野でございます。
貴重なご意見を真剣に、また興味深く拝聴をさせていただきました。また、休み時間にご提出をいただいた、ご意見とか感想シートも含めて、さまざまな視点からいろいろなご意見があったように思っています。いずれも、この日本という国をもっとよくしたいという気持ちのあらわれであろうと感じている次第でございます。
賛成の人の中にも、考えは1つではないようです。一極集中の是正のため、あるいは国政の改革のため移転を行うべきだとか、とにかく現状を変えてほしいという気持ちをあらわした人もおいでになりました。また、移転を進めるとしても、一定の条件をつけた意見が幾つか伺うことができました。
反対の意見もさまざまで、金がかかる、もっとほかにやるべきことがあるとか、地方分権や行政改革をまず行うべきであるという意見がございました。また、思い切って移転をやめる勇気を持て、という意見もあったように拝見をいたしました。
このように、移転の目的の受けとめ方を初めとして、首都機能のあり方などについて、実にさまざまな考えがあったように思います。これは、国会の移転決議がなされたバブル最盛期の平成2年の時点からでは、社会的条件が大きく変わったために、移転の必要性や、その意図があいまいになっているということにもよるんじゃないかと、私としては感じている次第でございます。いずれにせよ、この首都機能移転問題は、十分に時間をかけて議論をされるべき事柄だと、こう思っております。
最後になりましたが、この金沢で、今回のこの一連の公聴会が終えることになるわけですが、これまでいただいたさまざまな意見を十分尊重をしながら、審議会の場で議論をしていくことが、これまでに寄せていただいたさまざまな意見や感想を初め、公聴会の開催に協力をしていただいた方々に報いることなんじゃないか、こう思っている次第です。
本日は、貴重なご意見などを伺わせていただいて、まことにありがとうございました。

【森会長】

それでは、私からもごあいさつを兼ねて一言発言させていただきたいと存じます。
本日、こうしてご来場いただきました皆様方には、本当にいいご意見をちょうだいいたしまして、ありがとうございました。それからまた、全体の運営につきましても、円滑な、そして時間を守っての議事の進行などにもご協力いただきまして、心からお礼を申し上げます。
既にご承知のことかと存じますが、私どもの公聴会と申しますものは、今回の第九回をもって、一応全部終了したことになります。この間いただきましたいろいろなご意見、もちろん本日のご意見を含めてでありますけれども、私どもにとって、大変貴重なものでございました。
それからまた、特に私個人にとりましては、皆様方のご意見を、賛成とか、反対とかという、そういう結論として受けとめることではなしに、むしろその賛成のことは、どういう理由でご賛成か、あるいは反対の方は、何のためにご反対かという、そういう理由、あるいはその内容をいろいろと教えていただきまして、結論としては反対とおっしゃった方のそのお言葉の中にも、少なくとも一部は、結論はとにかくといたしまして、その内容の一部は、私も全く同じであるという気持ちを持ったことも少なくございませんでした。こうした総合として、私自身、大変いい勉強になったことを改めて皆様方にお礼申し上げる次第でございます。
先ほどから、情報不足とか、あるいは日本社会全体としての盛り上がりがどうであるかといったようなお話も伺いまして、これも実は、平素から審議会の中でもいろいろな方のご発言にあるところでございますけれども、私自身、改めて反省いたしました。
ただ、一方から申し上げますと、どのようなおいしいごちそうでありましても、それを目の前にしたお人の方に食欲がなければ食べていただけない。あるいは、それを血となり肉とはしていただけないわけでございますから、私どもは、これからおいしいごちそうに相当するような、できるだけ内容に富んだ、そして正確な情報を用意したいと存じます。そして、それをいろいろな方法を通じて、皆様方にお届けしたいと存じますが、どうか、一方、皆様方も、できるだけ食欲をお持ちいただいて、そしてそういう情報をつかんでいただきたい。あるいは、ご自分のものにしていただきたい。
そのためにも、きょう、こうして雨の中、お出かけいただきました200人近い方々が、これからお帰りになって、そしてきょうの、ここでごらんになり、あるいはお聞きいただいたことを、いいことも悪いことも含めてそのまま周囲の方々にお伝えいただく。いわば、一つの核となって、そしてこういった雰囲気をさらに広げていただくことが、結局は、より多くの方々のこういった情報に対する食欲なり関心を増していただくことにも通じるかと存じますので、こうしておいでいただき、ご意見をちょうだいした上に、さらなるお願いをすることは恐縮でございますけれども、どうかお帰りになりましたら、周囲の方々に、この輪をお広げいただきたいということをお願いする次第でございます。
本日、あるいは今まで8回の公聴会を通じて、皆様方からちょうだいしたご意見は、今後、私どもの審議会の中でできるだけ反映させていただきたい。さらに、そういった議論を続けてまいりたいと存じます。
実は、私がこの審議会に入るようにと、1年ほど前に申しつけられました折には、適当な候補地を選ぶことが審議会の仕事であるというようなお話をちょうだいしておりますけれども、もちろんそのほかに、必要なことは論議してもよろしいという、そういうことを伺っておりますので、こうした公聴会で、皆様方のお話を伺いますと、ただ単に、その候補地、どこが適当であるかということだけではなしに、若干はもとに戻って、しかし、今までに幾つかの委員会で築いてこられた、その結論は尊重しながら、若干はもとに戻って、やや本質的なことも、私どもの今日の審議会でさらに検討しなくてはならないのではないかと、こういったこともこれから委員の方々とよりより相談してまいりまして、それでいい結論を得たいと考えている次第でございます。
また今回、第九回をここで開催するに当たりましては、恐らく私どもの目に見えないところで地元の方々がいろいろと会場の運営なり、あるいは準備にご苦労いただいたことではないかと想像しておりますが、その方々に、心からお礼申し上げる次第でございます。本当に、私どもの目の見えないところに、縁の下の力持ちとしていろいろご努力いただきましたことについて、心からお礼を申し上げます。
それでは、改めて、きょうここにおいでいただきまして、そして貴重なご意見をちょうだいした皆様方に、再び心からお礼を申し上げまして、この第九回の国会等移転審議会公聴会を終了させていただきたいと存じます。
最後に、事務局から一言申し上げるかと存じますが、私のごあいさつはこれで終わりにいたします。
皆様方、どうもありがとうございました。

以上

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