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宮城県現地調査意見聴取議事要旨

1.日時

平成10年9月22日(火曜日)13時10分〜15時10分

2.場所

ホテルメトロポリタン3階曙

3.出席者

(審議会委員)

石原会長代理・部会長、野崎部会長代理、石井(進)、石井(威望)、濱中、牧野鷲尾各委員(7名)

(専門委員)

池淵、井手、鈴木、森地各専門委員(4名)

村上長官官房審議官(事務局参事官)他

4.議題

地域の概況について、首都機能移転に関する対応方針について、事前質問事項に対する回答について、意見交換等

5.議事の要旨

今回は、宮城県内の首都機能移転先候補地の現地調査を行った後、地域の概況、首都機能移転に関する対応方針、事前質問事項に対する回答について宮城県より説明が行われ、引き続き意見交換が行われた。

(1)地域の概況について

宮城県知事より以下の説明が行われた。

本県では、昭和63年に官民一体の推進組織を設立し、首都機能移転の意義と効果を、当時から広く訴えてきた。そして、客観的な分析と判断によって、新都市のあり方について議論を積み重ねてきた。

首都機能移転の意義は、国土構造の再編や災害対応力の向上、社会・経済及び行政システム変革の一大転機となるというのは当然であるが、これは百年の計というよりは数百年の計であるので、数百年後においても、日本のその時期の本当の豊かさというのは何かということを示し得るようなコンセプトを持った新都市建設でなければならないと思っている。その意味で、自然環境と共生するというのもあるし、様々な選択の多様性ということもあるが、最近私は、「都市と田園が結婚するような新都市づくり」と言っているが、まさに都市と田園の結婚ということを実現するような新都市づくりを進めていきたい。「首都の基準を宮城が変える」というくらいの気概で取り組んでいるところである。

宮城県南部地域は、北東国土軸の中枢である。白石市、角田市など、2市9町で構成されており、総面積約17万ha、人口約25万人である。東北新幹線、東北縦貫自動車道、東北横断自動車道、常磐自動車道などの高速交通体系が整備されており、3,000m滑走路が供用開始されている仙台国際空港まで二十数kmという近距離である。

柴田郡周辺のA地区、白石市・角田市の間の丘陵地のB地区、丸森町周辺のC地区には、まとまった開発適地が約1万haほど存在しており、国の想定する約56万人規模の首都機能移転の受け入れが十分可能である。

パンフレットでは、「未来と緑が融け合うほくとう新都市」という言葉を使っている。「国民に開かれた小さな政治行政都市」、「人・緑・水が織りなす地球環境都市」などを目標に掲げているが、特にここで強調しておきたい点は、仙台という母都市と相互補完するような「連立都市」ということである。新都市の建設は、第1段階の国会都市ができるまで約10年という期間が想定されているが、日本の顔となる新しい都市として成熟するまでは相当の期間が必要である。その際には、やはりベースキャンプとしての母都市の存在、そして、その都市機能の活用が必要不可欠だろうと考えている。また、国土のあり方として、広域的な連携と交流の重要性が高まっている状況の中で、新都市が自己完結的に全ての機能をフル装備するというのは、あまり現実的ではない。周辺の地域や都市と相互に補完・連携していくことが重要だろうと思っている。

仙台市は、1600年の伊達政宗の築城以来、間もなく400年を迎えるが、長い歴史の中で、国際交流や学術研究、生活文化などの様々な都市機能が集積をし、地方中枢都市として発展してきている。各調査対象地域には、それぞれ特色を持った豊かな自然があるが、投資効率を抜きにすれば、高速交通体系の整備も可能であるが、母都市仙台のようなものが存在するのはこの地域だけではないかと感じている。しかも、仙台市との間には、数千haに及ぶ県自然環境保全地域、緑地環境保全地域がある。つまり、仙台市との間に市街地連坦の恐れはないと思っている。

また、本県南部地域は、仙台市だけではなくて、山形、福島の各県町所在地の三角地域のほぼ中心に位置しており、これらの周辺都市の機能活用、連携が容易な状況である。

このほか、緩やかな起伏を持つ広大な緑の丘陵地や、四季折々の表情を見せる自然がある。また、ダムなど新しい開発の必要がない豊富な水資源、地震などの災害安全性、陸・海・空にわたる多重アクセスなど、候補地として極めて高い優位性を持った地域であると信じている。

次に、この5月に公表した首都機能移転みやぎ新都市構想の主要部分についてコメントしたい。みやぎ新都市では、既存都市との連坦を避けて、緩やかな丘陵と自然を生かした、緑の島状に中小のクラスターを分散配置するというイメージで、可能な限り緑地形成と保全に努め、緑の一元的な管理を行うこととしている。中心となるクラスターの集合地域には、首都機能や準首都機能などの中枢機能を効率的に配置することが望ましいと考えている。

また、新都市の人口、開発規模、費用であるが、国では最終段階で人口56万人、開発規模8,500ha、総費用12.3兆円と算定しているが、中央省庁等改革基本法などの行政改革の方向性を考えると、また、地方分権の進展、母都市仙台の都市機能の活用を考慮すると、人口は約36万人前後、開発規模は約5,000ha前後と我々は想定している。総費用についても、土地取得価格が国の試算よりも安いと想定されること、さらに広域交通インフラも相当程度整備が済んでいるということから、9兆円前後で済むのではないかと見込んでいる。

新都市におけるライフスタイルについては、資料にイメージパースを掲載している。

以上のように、本県独自の提案についても検討を進めてきているが、今後とも所要の調査の実施などに全面的に協力するとともに、地元住民の方々をはじめとする県民、また広く国民の方々の理解が深められるよう努めていきたいと考えている。

最後に、本県南部地域を候補地とすることによって得られる利点を述べたい。

一つには、21世紀のフロンティアと位置づけられた北東日本を背後県として、この地域の多彩な自然と原日本的風景を活かした環境共生都市が築かれることによって、新しい生活スタイルや都市づくりの技術などの普及が可能となり、日本の未来のあり方、進路を国の内外に鮮明に示すということになる。

二つめとして、政治・行政の中枢機能を、経済の中枢である太平洋ベルト地帯から離れたこの地域に移転することによって、国土上の機能分担が明確になり、名実ともに一極一軸型の国土構造が是正され、東京中心の価値観の変化と地方分権の推進と相まって、全国的な地域の自立を促すこととなる。

三つめには、大規模災害の発生に際し、東京との同時被災、両都市を結ぶアクセス網の遮断の恐れがなく、日本を支える中枢機能の安全性向上、バックアップ体制の確立が理想的な形で実現できる。

四つめには、母都市仙台、あるいは広域中枢都市圏を形成する福島、山形などの都市機能や、空港、港湾、高速自動車道などの既存の交通インフラが活用できるために、新しい都市整備に多くの経費と時間をかけることなく、しかも、新都市自体がコンパクトな軽装都市となることが可能と考えている。

(2)首都機能移転に関する対応方針について

最初に、宮城県議会議長より、以下の発言がなされた。

首都機能移転に対して県議会も、知事の説明と同様の共通認識を持っている。また、新都市は、新しい政治・経済システムの確立に向けた明確なビジョンが実現できる位置に設定されなければならないという認識も持っている。本県議会としては、そういった意味から、将来の発展性が極めて高い北東地域こそ新首都に最も相応しいという共通認識の下に、今後とも県議会としての役割を的確に果たしていきたいと考えている。

県議会における最初の取り組みとして、平成4年10月に首都機能移転に関する決議を採択し、本県を候補地として検討するよう要望した。

その後、首都機能移転及び地方分権に関する調査特別委員会を設置し、県内関係団体や東北経済連合会等の意見聴取をはじめ、県内外における調査を行ってきた。このようにして、宮城県南部地域を主要な候補地として位置づけ、広域的な連携を図りながら、本県の優位性を国に対して協力に働きかけることとした。

さらに、平成8年3月に、再度首都機能移転の推進と本県南部地域への移転について要望する決議を採択するとともに、宮城県議会議員全員構成による首都機能移転対策特別委員会を設置し、その実現に努力しているところである。

また、平成9年6月3日の閣議において、首都機能移転について慎重な検討を行う旨決定されたのを受け、以後の首都機能移転計画が大きく後退するのではなかろうかという懸念から、県議会開催中の宮城県議会定例会において、首都機能移転の延期反対に関する意見書を採択し、同月24日に国土庁に要望するとともに、衆参両院の特別委員長、県選出国会議員に対する要望活動を実施した。

一方、北関東以北の東日本地域が、首都機能の移転先として最も相応しい地域であるという共通認識の下に、平成8年1月に、宮城、福島、茨城、栃木の4県議会特別委員会懇談会を開催し、首都機能誘致に関する共同決議を採択し、北関東以北の東日本地域の選定を確認したところである。その後、山形県議会を加え、首都機能移転5県議会特別委員会連絡協議会として、各種要望活動や啓発・普及を積極的に実施している。

さらに、今年3月には、関係5県にとどまらず、広く東日本各県との連携を視野に、首都機能移転北東地域県議会連絡協議会と名称を変更し、講演会の開催や、各県の首都機能推進団体との意見交換会の実施など行政サイドから民間サイドを含めた幅広い世論の醸成に努めている。

本県議会としても、県執行部、宮城県首都機能移転促進協議会や宮城県南部地域首都機能移転促進協議会など、関係団体等と連携をとりながら、官民一体となった活動を行っていきたいと考えている。

続いて、仙台市長より、以下の発言がなされた。

首都機能の移転に関しては、分権型の国土形成、また危機管理等の観点から緊急性の高い重要な国民的な課題であると考えている。仙台市としても今日まで、宮城県首都機能移転促進協議会における活動に加えて、独自に山形市、福島市との3市長会議を開催し、南東北地域への首都機能移転の実現に向け、相互の協力関係を確認しているとともに、ここ数年にわたって、東北市長会においては南東北地域、宮城県市長会においては宮城県南部地域への移転の推進に関する特別決議をそれぞれ行って、関係機関への要望を続けてきたところである。なお、平成8年3月には、仙台市議会においても、南東北地域への移転に関する決議を行っている。

東北地方は、先に策定された全国総合開発計画−21世紀の国土のグランドデザイン−の中で、21世紀に向けた調和のとれた新しいライフスタイルが展開されるフロンティアと位置づけられているように、広大な国土と豊かな自然環境に恵まれた、これからの日本にとっても望ましい可能性を持っている地域である。とりわけ宮城県南部地域は、国際的な機能を備えた空港、港湾、交通基盤が整備されており、仙台市としても国内外各地域との交通や情報通信の多様なアクセスルートをはじめ、先端産業を担う学術研究機能の集積等、未来に向けたネットワーク型の都市づくりを実現する最適地であると考えている。

宮城県南部地域に首都機能が移転した際の新都市と仙台市との関係については、仙台市と宮城県南部地域とは、距離的に30〜40km離れており、その間には4,000haを超える環境保全地域が介在しているため、連坦の可能性はあり得ないと考えている。

一方、仙台市は北東国土軸の中枢拠点としての役割を担っていることから、様々な期待が求められており、東北地方の自立的な発展を支えていくことがその責務と考えている。首都機能移転に際しては、仙台市が既に集積し、また今後さらに集積を加える学術研究機能、国際交流機能、経済的な中枢機能などのいわゆる高次都市機能を新都市が有効に活用できるよう、各種機能の相互連携、補完についてその母都市としての役割を果たすべく、積極的に協力したいと考えている。

今後仙台市としても、首都機能移転の意義と日本という国の将来を十分に踏まえて、関係機関との連携を図りながら、母都市としての役割を視野に入れた都市づくりを推進していく所存である。

続いて、宮城県南部地域首都機能移転促進協議会会長(白石市長)より、以下の発言がなされた。

水の安定供給については、平成2年度から仙南仙塩広域水道用水供給事業によって、パイプラインが敷設されている。したがって、首都機能移転における給水管敷設の新たな投資は不要である。

土地取得の容易性については、大部分は雑木林、一部アカマツの植林地で、優良農地は含まれていない。雑木林及びアカマツというのは、スギ、ヒノキ等とは違って経済性が非常に低く、所有者が持て余している。水田等については、優良農地がないので、耕作放棄地が増えている。このようなことから考えても、用地の取得の容易性については、むしろ売りたいと思っている人が多いのではないかとさえ考えられる。

地元の取り組みについては、平成8年に宮城県が県南部地域を候補地に決定したことを受け、昨年7月に地元の4市9町、民間192団体からなる宮城県南部地域首都機能移転促進協議会を、官民総意の下に設立した。この協議会は、主に地元住民への理解を深めていくために各種活動を行っているが、その他にも、県及び県協議会と共催でフォーラム、キャンペーン等を開催している。

首都機能移転目的の一つである災害時の対応としては、宮城県南部地域だけではなく、県境を越えた3県連携の下で、具体的には福島県北部、宮城県南部、山形県南部の計44市町村で災害時相互応援協定を締結している。これは、6,490km2の範囲にある125万人に対して、有事の際に対応するものである。このことから、首都機能が宮城県南部地域に移転されるとしても、現在でも十分に災害時における対応が可能であると考えている。

首都機能移転によって当地域に新たに住む人と、現在住んでいる我々との共生についても考えている。自然との共生はどの地域でも言っていることであるが、この地域はそれだけではなくて、阿武隈流域文化圏を中心とした固有の生活文化を再発見し、新しい文化を創造していくという、阿武隈流域文化圏構想ができあがっている。これに加えて、首都機能移転によって新たに遠くの地から来る人の異なった文化を融合し、お互いに高め合っていき、人との共生、新たな共通の文化を創りあげていこうという気運が、今非常に高まっている。このことが、首都機能移転の受け皿としての当地域の最大の特徴ではないかと思う。

最後に、当地域が移転先候補地に選定された場合には、円滑な事業の推進に積極的に全力で取り組んでいく覚悟であることを表明したい。

続いて、宮城県首都機能移転促進協議会副会長より、以下の説明がなされた。

協議会が成立してからちょうど10年になるが、これまで、宮城県内に適切な首都機能移転先候補地を見つけて、21世紀の国造りに貢献したいという熱意に燃えて取り組んできた。現在の構成員は、ほとんど全県の各種団体、全自治体を網羅する225団体となっている。

活動としては、前半の4〜5年は県内の候補地の調査、選定にあたった。県内の北部、中部、南部と、3つの地域に分けて、4〜5年にわたっていろいろな条件を調査し、南部地域に候補地を集約した。

このとき最も考慮したことは、他の地域の方がより利用しやすい場所を選ぼうということである。また、1つの条件は気候が温暖であることで、西の人は寒さを非常に嫌うので、東北の湘南地帯といわれる場所そして海岸線も近く、蔵王も近いという、非常に健康によい場所を選ぶことにした。

2番目は、交通の便がよいということで、東京から250kmの距離で、新幹線、道路等があるが、特に仙台空港は、日本各地の各ブロックの拠点と完全につながっている。仙台空港は、東日本の拠点空港と位置づけられており、多くの国内線の路線を持っているだけでなく、国際線も現在、アジアとハワイまで延びており、さらに欧米路線を開拓中であるが、もしこの地域に移転が確定すれば、内外の航空路の拡大は極めて迅速かつ容易にできると思う。また、現在の空港の海岸沿い付近は遠浅で地盤も良好であるため、将来拡張が可能であるとの専門家の調査意見も出されており、さらに近所に国際貿易港もある。

3番目は、仙台市の都市機能は、教育関係、医療関係、文化関係の都市機能を備えているので、機能の分担も非常に行いやすい。また、山を越えるとすぐ隣県の山形県あるいは福島県とも機能の分担がしやすいということで、非常にシンプルで広範かつローコストな街づくりが実現できるのではないか。

以上の3点が、我々が宮城県南部地域を選定した主な理由である。

さらに、県民のコンセンサスづくりのために、県内各地で様々なフォーラムやキャンペーンを行い、東京地区でもアピールを行っている。さらに昨年には、宮城県南部地域にも移転促進協議会ができ、地域で関心、熱意が非常に高まっている。さらに、全県的な支援体制をつくって、いろいろな問題が出たときに直ちに対応できるように、今後支援していきたいと考えている。

続いて、宮城県企画部長から、事前質問事項に対する回答が以下のとおり説明された。

1番目は、首都機能移転に伴う北東国土軸等への影響分野と範囲についてであるが、全国に対しては、新しいライフスタイルあるいは環境共生型の都市づくり等が徐々に波及していくこと、また、一極一軸型の国土構造が是正され、行財政改革や地方分権の推進と相まって地域の自立が促進され、地方への定住志向が高まること。さらには、地震発生時においても東京との同時被災の可能性が極めて低くなり、宮城地域は多重アクセスルートを有することから、国土の災害対応力、安全性が飛躍的に向上する。次に、北東国土軸、北東日本に対する影響であるが、環境共生のシステムや地域づくりが、21世紀の日本のフロンティアと位置づけられる北東日本全域に浸透するとともに、国内外からの来訪者が増大し、国際観光交流圏が形成されること。また、新しい全国総合開発計画で位置づけられた北東国土軸の形成が促進され、国際交流等の拠点となる南東北中枢広域都市圏の形成が一層図られることなどが考えられる。

2番目は、西日本への影響についてであるが、全国への影響と同様に、新しい日本の暮らし方や都市づくりのモデルとして、西日本各地にも十分に影響を及ぼすとともに、九州、四国においても、自立的な地域社会の形成が促進される契機となるものと考えている。

3番目は、全国的な交通アクセスネットワークの形成についてであるが、我が国の玄関口、ゲートウェイが全国に適切に分散配置される契機となり、地方におけるダイレクトな国際交流を促すとともに、東京を経由しない地域相互間の国内交流が活発化する、いわゆる循環型交通ネットワークが形成されるものと考える。

4番目は、新都市像や都市づくりのイメージ、ライフスタイルであるが、新都市のコンセプトやアピールポイントについては、知事の説明の通りである。地域住民や各世代間で、日常的な活発な交流が行われ、自然と親しむ、ゆとりと潤いにあふれた生活が実践されるものと考えている。

5番目は、全国からのアクセスにおける不均衡についてであるが、現在と比べて時間と費用面で若干の増加が見込まれるものの、新幹線の他、空港も充実してきており、大きな支障はないと考えている。何よりも、首都機能移転によって、行政改革、規制緩和の推進が図られることが肝要であると考えている。

6番目は、土地取得の容易性についてであるが、開発適地の大半は民有林であるものの、優良な生産林は適地から除外されている。また、一部に含まれている農地についても、優良農地は除外しているので、土地利用の転換は容易である。加えて、土地取得価格が比較的安く済み、また、地元農林業団体の首都機能移転推進の決議、あるいは地元推進組織への積極的な参画等もあり、土地取得に当たっても十分な理解と協力が得られるものと考えている。

7番目は、災害等に対する安全性に関する3つの質問であるが、一つは、宮城県沖地震による被害発生の想定についてで、仙台市の一部でライフラインの被害が想定されるが、液状化や大きな震度が懸念される地域は開発適地から除外しており、問題はないものと考える。また、陸・海・空の多重のアクセスが既に整備されており、非常時でも東京と多様なアクセスの手段、経路の選択が可能である。

次に、東京の大震災に対する災害対応力についてであるが、何よりも対象地域は、東京とは同時被災の恐れがない。また、多重アクセスの整備が進んでおり、物資、人員等の輸送の面においても、迅速な対応が可能である。

次に、雪による影響についてであるが、積雪日数、積雪量ともに非常に少なく、当地域は特に北東地域では、除雪等の技術あるいは体制も整備されており、雪による心配はほとんどないと考えている。政治、行政の中枢機能を担う世界の主要都市と比較しても温和である。むしろ、不快指数の高い日が年間数十日にも及ぶ現状の方が問題ではないかと考えている。

8番目は、水供給の安定性についてであるが、この地域には、有効貯水量約1億m3の七ヶ宿ダムがあり、現在38万6,000m3が未利用となっており、平均給水量で約110万人、日最大給水量でも89万人分の余裕がある。新都市の最終段階である2025年での新規需要量を含めた需給バランスを見ても、現在手当済みの供給可能量で十二分に対応が可能であり、新たなダム建設等の水源の確保は必要ない。

9番目は、既存都市との関係であるが、この地域は仙台市が有する広範な高次都市機能の活用が可能である一方、仙台市との間には数千haに及ぶ環境保全地域があり、連坦防止という点でも問題はない。

10番目は、自然的環境に関する3つの質問であるが、一つは自然環境と共生した都市づくりの方法、取り組みについてで、みやぎ新都市では、土地自然システムの分析と評価に基づき、地域の地形、地質、植生、生態系を十分活かすことを前提に土地利用を検討することとしている。緑地形成や造成に当たっても、あるいは廃棄物や省エネルギーなどの点でも先見性と実験性に満ちたシステムの構築を、この地域で実践していきたいと考えている。

次は、環境負荷量の検討状況についてであるが、都市建設による具体的な負荷量は、現時点では推定していないが、環境系基盤技術やシステムの整備を構想しており、今後さらに検討を加えていきたい。

次は、環境面での地域の合意についてであるが、住民アンケートでも、環境への影響に対する懸念が最も強いという結果があり、したがって、今後とも環境対策面での調査研究を進め、モデルとなる都市づくりを進めるとともに、地域住民への説明や意見交換を行って、理解を深めていきたい。

11番目は、隣接する府県との連携についてであるが、本県の南部地域は、仙台市のみならず、山形市、福島市といった県庁所在市とも近接し、そのトライアングルエリアの中心に位置していることから、これまでも地元の官民による推進組織を設置し、南東北中枢広域都市圏形成に向けた取り組みを進めてきたが、こうした連携の素地をいかしながら、隣接県との連携をさらに深めていきたいと考えている。

12番目は、首都機能移転と地方自治体等との関係に関する2つの質問であるが、一つは、現在の地方自治体の見直しであるが、みやぎ新都市では、開発地域が複数の市、町にまたがることが想定される。したがって、新都市が円滑に機能するためには、市町村合併や広域連合、特別区などの制度を比較考量しながら、最もふさわしい自治体のあり方を今後検討していく必要があると考えている。

次に、地元住民の受け取り方や、受け入れについての意向であるが、平成8年12月に実施したアンケートによると、首都機能移転については9割以上の方が知っていて、関心が非常に高い。移転に対する賛成は6割を超えていて、反対の15%を大きく上回っている。また受け入れの意向については、地域が一丸となって移転の実現を目指す取り組みを進めているところである。

13番目は、新都市の立地コストについてであるが、みやぎ新都市構想に基づいて人口約36万人の規模で試算した行政需要は、約120億円となるが、環境管理その他の面でもさらに運営費用として検討すべきものがあると考えている。また、新都市が政治、行政の中枢機能を担うことから、国においても一定程度、財政面での配慮を行う必要があると考えている。

引き続き、東北大学教授より、以下の説明が行われた。

私たちは、この地域で21世紀につくられる非常に新しい期待を持った首都が形成されるとしたら、どのようなことを考えるべきであるかを議論してきた。その結果、いくつかのアピールポイントを掲げているが、その中から環境と連立都市について説明したい。

東北というと、とても寒くて雪が多いというイメージが一般的になっているが、宮城県南部地域の気象データを仙台市のもので代表してみると、そうではない。また、不快指数80以上の日数を見ると、日本の中でも非常に少ない地域であり、積雪日数も非常に少ない地域である。これは、いわゆる環境都市をつくるときに非常に面白いポイントである。欧米の主な都市は、大体、日本よりは少し寒冷な地にあって、暖房を主として考えれば、冷房によるエネルギーの負荷はあまりないが、仙台あたりの家屋は、関東地方とあまり変わりなく、寒さに対する防備がこれまではあまりなされていなかったが、最近は断熱に対する知識が出てきて、このようなことが進めば、かなりの省エネ型の都市構成ができるのではないかということを議論している。エネルギーをできるだけ使わないという意味では、暖房は一つの非常に大きなテーマであるので、そうしたところで先鞭を付けることができる、一つのパイオニアとなる都市形成が、ここでは実現できるのではないかという点で、他の地域と少し違うと考えている。

また、この地域は緑の丘陵地が主体となっている。谷津田が入っていて、周りは雑木林であるが、21世紀型の造成というのは、雑木林を残しながら、環境をできるだけ身近において、比較的小さな造成による、緑の中に都市群が散らばっているような形の街づくりが可能となるものではないかということで、いろいろなスタディを行ってきた。

もう一つは、交通システムであるが、公共交通システムを中心にしながら、その駅を中心に歩行距離の範囲で町が展開されるといった提案が可能だと考えている。いま計画する町としては、自動車にできるだけ頼らない、すなわち炭素を使わない町の実現ということが大きな課題となっていると思うが、そうしたことが、小さな町と公共交通システムというようなもので実現できるのではないかということで、勾配などの面からいろいろ技術的な検討が必要であるが、そうした方向で検討を行っている。

植生的には、いわゆる東の地方の、テルハガシが中心となっているところとは違って、この地域は、北側の縄文時代の植物と混じり合っている場所であり、地域独特の植物景観がつくれるのではないか。そういう意味から、歴史を踏まえると、テルハガシ文化圏に首都があったわけであるから、新しい誘因要素として考えていいのではないかということを議論している。

また、地域連携についてであるが、この地域は都市基盤が他の地域と比較して充実している。そうした交通のネットワーク、あるいは水などを活用して、できるだけ安価で、しかも仙台との連携、あるいは山形、福島との連携を考慮しながら首都機能の移転が実現できるのではないか。非常に装備は小さいが、十分に首都機能として発揮できるというのはどのくらいの規模かということを、提案している。

さらに付け加えると、用地取得が非常に大きな鍵になると思っているが、いままで薪炭林として使われてきた小さい丘陵の雑木林は、ほとんど放置された形になっていて、かつての時代のように人の手をある程度入れながら維持していくというシステムが非常に重要になってくると思う。そういう意味では、環境を保全していくための人手を地域の雇用などと関係付けながらつくっていくということにより、地域の人達の協力を得ることができるのではないか。

(3)質疑応答

県側の説明のあと、以下のとおり質疑応答が行われた。

・仙台市は学園都市のイメージが強く、母都市として教育施設が非常に充実していると思う。しかし、母都市といっても距離的にはかなり離れることになる。新都市への人の定着ということを考えると、教育施設は重要であるが、母都市としての仙台市と候補地の全体の教育施設について、どのように考えているのか。

→現在仙台周辺に大学が12、短期大学が9あり、仙台市及びその周辺は名実ともに学園都市である。新都市に教育機関が必要かというと、その現実性はいかがなものかと思う。

新都市には、大使館、外交官がたくさん来ることになるので、大使館員が住む土地として適地かということも考えなくてはならない。その場合に必要なのは、その子弟の教育だと思う。これも、新都市に新たにつくるというのは、現実性がない。いま、仙台市にそのようなインターナショナルの学校はあるが、仙台という母都市を考えるとそのようなものをつくりやすい。

教育だけでなく、文化、芸術、スポーツなどについても、大使館関係者も含めた新都市の住民の数を考えると、相当の数になるので、新都市において、すぐにこれらの機能が使えるようにしておかなくては、魅力ある首都にはならない。その意味では、母都市仙台が、その機能を発揮することが期待できる。それは、教育面でも同じであると思っている。

・県が独自に移転費用の試算を行っているが、仙台市が母都市として都市機能の一部を補完するという前提となっていて、国の試算と比べて移転従業者が2万人以上減るという結果になっているが、その内訳について説明願いたい。

→首都機能のかなりの部分を母都市仙台に頼ることができるので、国の試算の56万人に対して、みやぎ新都市では36万人と想定している。国の試算の25%減としている。サービス機能従事者の算出については、国の試算ではつくば市等の例を参考にして33%としているが、みやぎ新都市では仙台市との関連から30%と想定している。

・その場合、仙台市の現在の機能で十分間に合うと考えているのか。

→そのように考えている。

後日文書による補足説明

みやぎ新都市の人口規模については、国の試算に準じ、(1)移転従業者(2)サービス機能従事者(3)移転従業者及びサービス機能従事者の家族の非就業者に区分し試算した。(1)移転従業者の算定については、行政改革、地方分権、規制緩和等の進展による行政府等の縮小により71,000人と推計した。(2)サービス機能従事者については、仙台市の都市機能活用により、都市人口に占める割合を30%(国の試算では33%)とし、107,000人とした。(3)移転従事者及びサービス機能従事者の家族の非就業者については、(1)移転従業者と(2)サービス機能従事者の合計と同数とし、178,000人と推計した。その結果、(1)(2)(3)の合計は356,000人となり、みやぎ新都市の人口規模360,000人としている。開発規模については、人口規模の減少分や集合住宅の比率を高く設定することにより、国の試算の8,500haに対し、4,600haと推計した。

・「首都の基準をみやぎが変える」ということは、新都市が日本の都市を変える先例になるということではないかと思う。日本の都市が、インターナショナルに見て、どうしてこのようになったかというと、たくさんの背景があるが、縦割り行政や、あるいは農地転用についての農家の優遇、後追い的なゾーニング、景観規制や建築規制に対する建築学会も含めた対応など、いろいろある。新都市だからこそ、新しい立法ができるのではないかと、個人的に思っているが、特に初期計画用地とリザーブ用地、計画外用地を30年とか50年にわたってどのようにマネージしていくかということが大変重要だと思う。

今は、用地が素晴らしい、場所が素晴らしい、フィージビリティー(実行可能性)があるといった競争になりそうだが、もう一つ踏み込んで、自分たちの場所だったら、私権制限も含めてこういう法律まで対応できるということを、本来は国が決めることかもしれないが、逆に地方自治体の側でそのような舞台をつくっていくというのは、フィージビリティーがあるのか。

→今、具体的に土地利用の規制などについて、新都市を念頭に置いて検討を進めているという段階ではないが、そのような知恵比べは是非行うべきだと思っている。

・土地取得の容易性に関しての説明によると、経済的な効果があまりない土地であるから取得が容易であるということと、取得後にその空間が持っている環境保全機能など土地自然のシステムをいかした都市づくりを行うことは、土地取得とその後の扱いとは別の視点に立って行うという理解でよいか。

もう1点は、緑地保全地域とスプロール防止を絡めた説明があったが、県の制度としては、スプロール防止を含めた緑地保全地域の指定なのか、それとも自然環境保全を目的としていて、結果としてスプロール防止を兼ねるものなのか。

→都市近郊の雑木林の価値が、もはや風前の灯火であるということは歴史的事実として間違いなく、植林地についても同じことが言えると思う。都市づくりに当たって、地元の側の発想で考えると、土地利用の可能性を積み上げていくような形で、人間の収容規模などを評価していこうと思った。

このように考えていくと、従来役に立たない自然の代表のように言われていたそれらのものが、実は町をつくるときの日常的な背景として、もしくは子供達が遊ぶような空間や新しい生産緑地、環境保全緑地として生まれ変わってくるのではないか。

このような観点から、植生の評価を行ってランキングをしている。そのようなことから、従来と比べて発想の転換、価値観の転換がある。

→自然環境保全地域や緑地環境保全地域は県の条例で指定しているが、その直接のねらいは緑地保全である。ただ、結果としてスプロール防止にも役立っている。いずれにしても、美しく豊かな自然環境を守り、その保全と利用との調和を図りながら、豊かな県土づくりをしていこうという理念の下でつくられた条例である。

→その意味で言えば、結果としてスプロールを免れている。実は、今のところ、あまり開発メリットがないので、土地の所有者も現状で我慢しているが、隣に新都市ができるとなると、開発メリットはすごく高まる。現在は、土地を取得しないで、規制だけをかけている。このため、買い上げて欲しいという地域もある。これは、全国的にどこにでもある問題だが、新都市が近くに来れば、別途の規制や取得することも含めて対策を行わなくては、現在の条例が持っている問題がさらに拡大するという懸念がある。

→白石市内には「禁伐木碑」というのが既に江戸中期に建てられている。つまり、木を切ってはならないということで、すなわち、木を切らない文化、木を植える文化がこの地方にはあるということである。我々としても、是非緑は残して欲しいと同時に、環境のために費用をかけるということは当然であるという考えもある。

・首都機能移転の調査対象地域は、従来の日本の都市とは異なり、丘の上を府県が候補地と考えている。日本の大都市は、海沿いからその背後にある台地の上に成立している。しかし、これらの候補地は全て丘陵地で、かつて日本になかった都市をつくろうとしている。そういう点では、日本の都市づくり、都市建設史の中で非常に面白いものだと思っている。

そういう意味において、仙台市は比較的早くから都市のすぐ背後に丘陵をいち早く宅地化している。先年の仙台沖地震では、太白区あたりの宅地造成地の盛土地が崩壊した。もう一つは、仙台青葉区あるいは太白区は地質の関係もあって、地滑り地区に宅地造成が行われて、地震による災害が増加したのではないかと思う。

今回、宮城県が移転先適地として提案している3地区については、地質に関しては南ほど良いが、地形の起伏はかなり大きい。一方、B地区では地盤は大部分が花崗岩で、起伏も大きくない。さらに北のA地区になると、地層はほとんど第三紀層だと思うが、大規模な地滑りはないが場合によってはあり得る。さらに北に行くと、水田になっている低地が広がり、そのような低地というのは、大河川の自然堤防によって堰き止められた支谷閉塞低地で、軟弱地盤地帯である。

大地震によって液状化する地区があるということや、北部に行くほど活断層が多いということを背景として、教えてもらいたいことがある。仙台の西部、丘陵地帯を開発したところはどのような公共交通機関を確保しているのか。低地、台地であれば、道路や鉄道を造るのは比較的容易であるが、丘陵地の場合は交通機関としてどのようなものをイメージしているのか。

→仙台市内でも交通機関が整備されているところと、バスしかないところ、都市計画道路が進んでいないところがあるのが実状である。そのようなところは鋭意改善していかなくてはならない。東西軸という形で軌道系の整備を進めていこうとしているところである。

新都市では、街づくりの中で、交通体系はかなりの自由度をもってつくれるだろう。逆に言えば、町の配置を含めて、交通の需要を適正に誘導しながら交通整備を行うことができるだろう。その面では、動くことが楽しくなるような交通施設が整備できるだろう。交通施設自体が優しく、楽しく、美しくなければならないというコンセプトの下に、新都市では地域に合った、地形にあった、そして街づくりと一体化した交通整備をこれから鋭意考えていきたい。

・地元住民の方の受け取り方、地方自治体の見直しという観点から質問したい。先ほどの説明では、首都機能の移転に賛成の住民が多いということであったが、確かにそのような評価が出てくると思うが、その一方で、自治体の見直しの問題がある。かつて、国会等移転調査会の新都市部会でも地方自治体に関する議論がされていたが、特別区のようなかたちで宮城県から独立した新たな県域がつくられる可能性もあるということを前提とした場合、住民の方々がどう受け止めるか問うことも議論することが必要ではないか。

また、新都市の立地コストについて、知事の説明によると、人口36万人、面積5,000ha規模で、9兆円という検討がなされているということであるが、官と民の経費分担については書かれているが、国と地方自治体の経費分担については触れられていない。当然、地方自治体も負担をするはずである。

通常、都市づくりのような開発を行うと、その周辺住民からいろいろな要望がたくさん出てくる。東京都は多摩ニュータウンという町を30年かけて、3,000haの土地に30万人の人口の都市をつくってきたが、そこでは4市町が関係していた。その地域で、いろいろな都市基盤の整備を行った。一例として、下水道があるが、その地域に下水道を完備すると、その地域を含んだ周辺の市町村の住民に対しても同じようなサービスが受けられるようにしなくてはならないということがでてくる。

先ほど現地で聞いた話では、流域下水道を整備すると1戸あたり1,000万円、簡易水道では100万円単位の費用が必要であるとのことだったが、データによると、白石市の公共下水道の普及率は平成9月3日現在で33.6%、角田市では22.4%、丸森町では20.6%ということであった。このような状況を飛躍的に改善する方向が、近々起こるということになり、このような点についても考慮した上で、住民の方々にも十分にその点をPRして首都機能の誘致を行うのか、その点についてお伺いしたい。

→時間の都合上、後ほど文書で回答したい。

後日文書による回答
みやぎ新都市(圏)については、隣接する地方中枢都市仙台都市圏、県庁所在都市圏(福島都市圏、山形都市圏)を含む「連合都市圏」としての性格を有することを想定している。新都市(圏)における広域行政、広域連携の展開に当たっては、個々の自治体の主体性を尊重しつつ多様な行政ニーズに対応できる柔軟性のある組織体とするため、都市圏で発生する全ての広域的課題に対応する「包括的広域組織」とその傘下に位置づけられる個別的行政課題に対応する「個別広域行政機関」の「二層型の広域行政組織」の設置を想定している。新都市が国の直轄地(独立県)となるのか現在の都道府県における自治体として設置されるかについては、国における専門的な調査研究や国民的議論などを踏まえ、総合的に検討されるべき事項と思料されるが、首都機能移転が国政全般の改革と一体を為すものであり、地方分権の推進等と併せ考えれば、新しく国直轄地を設けることはそれらの方向と一致しないものと思われる。また、地元住民の合意形成については、本年5月に県として決定、公表した「首都機能移転みやぎ新都市構想」のパンフレット作成等により地元説明会、意見交換会を随時開催することとしており、住民の意見、要望等を取り入れた形での「新都市構想」をより深化させることとしている。新都市建設における財政負担については、民間投資を助長しつつ基本的に国において措置されるべきと考えるが、広域的な関連性の高い交通基盤や広域的なサービス機能等の整備については、地元府県としても、圏域全体のよりよい生活環境、地域の都市基盤形成のための施策として取り組んでまいりたい。また、周辺市町の住民等からの下水道をはじめとする施設整備等の要求については、現在も社会資本・生活環境の整備に取り組んでいるところであり、より一層推進することとしているが、東京都の例(多摩ニュータウン)にもあるように、新都市建設によって要求レベルが高まることも予測され、それらの住民のニーズに応えるための周辺市町の財政負担の増加も考えられる。一方、周辺地域においては、新都市建設によりサービス産業や農林水産品の需要拡大、観光・レクリエーションによる交流の増大、雇用機会の創出等がもたらされると考えられ、増加する財政需要にも計画的、段階的に対応していくことが可能であると思料される。

・水供給の安定性に関して、七ヶ宿ダムによって供給可能という説明があったが、ダムの未利用水量が非常に大きいということは、計画通りに水需要が進んでいないためなのか、あるいは計画通りに水需要が進んでもさらに余裕があるということなのか。

また、流域は異なるが、名取川の上流域にある釜房ダムでは、水質問題で苦労していると聞いているが、七ヶ宿ダムにおいても水質問題が発生する可能性があるのか。

→七ヶ宿ダムの未利用水量については、計画では都市用水、工業用水として使うこととなっているが、工業用水の需要が少ないため余裕がある。

釜房ダムの水質問題については、改善に向けた取り組みを行っているが、新都市に供給される水源としては、七ヶ宿ダムのみで十分対応できると考えている。また、七ヶ宿ダムの水質については問題なく、非常においしい水という評判である。

引き続き、仙台青年会議所理事より、以下の説明が行われた。

昭和62年5月に、四全総の試案を受けて、仙台首都構想市民会議を仙台市で開催した。この際には経済界も含めて600人ほどの市民が集まり、「仙台宣言」ということで、仙台市への国の中枢機能の移転実現、仙台空港、仙台港の早期国際化、仙台首都構想準備室の設立を提言した。

その次の年には、東京で、都民に直接首都機能の地方分散を訴えるため、「21世紀の首都を考える」というシンポジウムを開催した。この際には500人ほどの都民が集まり、「東京宣言」ということでいくつかの提言を行った。その一つは、首都機能の地方移転についての国民のコンセンサスづくりと、地方の中枢・中核都市の整備、緊急災害時の首都代替地対策への取り組み、中央集権的な行財政機能の抜本的改革、具体化への法制化を含めた実行機関の整備を、青年会議所として提言した。

その次の年には再び仙台に戻り、「東京一極集中と東北の年未来像」というテーマで、東北6県の地域の青年会議所の理事長も含めて討議を行い、中枢都市間の連携、国際時代の都市間ネットワークのあり方などを考えて、首都機能移転を実現したときの地方の側の条件整備を考えていくために会議を開催した。

その後は、首都機能移転促進協議会に仙台青年会議所も幹事として加入し、宮城県内外に対するPRなども含めて、様々な会議に参加している。

青年会議所は、その地域ごとに活動しているが、特に仙台で最近活動している内容は、次代を担う子供達と一緒に首都機能移転を考えようということで、国会が宮城県に移転してくることについて子供達の視点で一緒に話をした。子供達は、「きれいで活気のある町」、「人間と自然との調和がとれた町」、「誇れる町」を是非つくりたいと。何よりも、ミニ東京化ではなく、あくまでもその町にある文化や自然を活かした町がつくりたい、自分たちがつくるのだという、非常に心強い意見を聞くことができた。

その後、我々は、茨城、栃木、福島、宮城と、北東地域の4ブロックで、それぞれの青年会議所の会長と一緒に、それぞれの県に誘致するのではなく、もっと大きい単位で首都機能移転を考えようということで、その4ブロックで協議会を発足させていて、様々なパフォーマンスも含めて、首都機能移転に対して市民、国民のコンセンサスを得るために活動している。

また、女性の立場での意見としては、首都機能移転によって、今までの生活はどうなるのかとか、やはり環境、文化、教育のことが大変気になるが、このみやぎ新都市の内容に関しては、非常に関心が高いということがいわれているが、仙台市、宮城県自体が、市民やNPO活動も大変盛んなところであり、そういう意味でも、与えられるものということではなくて、自分たち自身も理想的な町をつくっていこうという気概がある。さらに、コスト削減の部分で、地域主権型社会というか、地方分権の進展も大変大きな役割を果たしていると思うが、その部分に関しては、青年会議所という組織も含めて、そのような市民団体がいろいろな力になっていけるのではないかと思っている。

続いて、タス・デザイン室代表より、以下の発言がなされた。

普段、民俗学的なフィールドワークを東北で行っていて、ここ数年来は、候補地も1〜2ヶ月に1度くらいは回っている。そこで聞く話の中に、首都機能移転の話は出てこない。年輩の方と話しているからかもしれないが。実際に現地を見ると、いろいろな印象があると思うが、私自身は、大変穏やかなところであると思っている。ここに住んでいる方々は、大体は大変働き者で、ここに首都が来るのだなと思うと、なかなかイメージがわかない。首都機能移転について、「知っている」が90%で、「賛成」が60%、「反対」が15%というデータがあるが、首都機能移転に関する情報が十分伝わった上で調査すれば、違った数字になるのではないかと思う。そういう意味では、そこに住んでいる方々がどのように思っているかということについては、これからたくさんの情報が必要になるだろうと思う。

本日、意見を述べるために、首都機能移転の資料を見たところ、大変見事なプランだと思った。必要条件については随分満たされていると思うが、果たして住民の側から見たときにそれで十分だろうか。十分条件を加えるとすれば、歴史、生活、あるいは文化的な視点からの調査なり検討が大変重要ではないかと思う。

先ほど発言があったように、白石市では確かに伊達の林業政策が非常に行き届いていて、例えば1本の木を切るときにも、1尺以上の場合は届けるとか、切っても構わないが必ず苗木を植えなさい、苗木は無料で差し上げましょうというような、今日言われるミティゲーションというか、補償していくことが行われている。雑木林はもう値打ちがないと言われているが、それを代々守ってきた方は新しい生産の形を捜すために模索しているが、今日では雑木林の環境機能がいろいろと言われているにもかかわらず、そのきっかけをつかめず、空しいままになっているように思われる。

土地柄としては、白石の和紙のように、水、光、風などを基本条件にして産業を形成している。丸森は養蚕である。そのようなところは、農薬を使うとカイコが死ぬので、使わない。角田の産業は米であるが、こういったところは、県内でも環境保全型農業の先駆地であって、なおかつアジアとの交流を十数年前から続けている。ある意味で自分たちの風土にネガティブであるように見えるが、大変しっかりとしたものを持っているような気がする。「自然と都市の調和」という言葉を実質で裏付ける基盤が、そこに生きているのだろうと思う。

先の発言にあったように、雑木林は単なる雑木林ではないという伝統も必ずあると思う。それは、生き物と一緒に生活してきたところから来る、ある種の文化性というか生活文化が基本にあると思う。

別な視点から見ると、東北の60数%は中山間地である。日本全体の3,300の自治体のうち、恐らく6〜7割は中山間地であるから、首都機能移転が今後どのような方向になるのか、希望や期待になるような視点が是非組み込まれていくことを期待したいと思う。また、首都機能の必要性、あるいはそれを誘致するために必要な、何か加えるべき十分なものを考えると、どうしてもそこには人というファクターが出てくるので、この議論が、現地とそこに積み上げられた様々な視点から深められていくことを考えている。

この首都機能移転が、次なる日本の首都だけではなく、他の自治体のあるべきこれからの都市像、地域像となっていくよう、配慮して欲しい。

続いて、柴田町長より、以下の発言がなされた。

私は現在、北海道・東北町村会長を勤めており、特に日本海側に面した問題に大きな関心を持っている。また、県議会にいた当時は、釜房ダムの問題、あるいは七ヶ宿ダムの問題、笹谷隧道を通る山形とのルートの開発などに、関わりを持ってきた。

特に、北東新国土軸の中には、首都圏とは違った、新しいステージの展開が期待できる。特に今は、ユーロが来年1月にスタートし、アメリカ経済圏はガードが固まってきている。アジアはどこへ行くのだと。結局、近未来的には、中国、ロシア、日本が結びつき、新しい枠づくりをもってリードする以外にないと思う。宮城から大変近い距離に酒田港、秋田港、新潟港があるから、ロシアと宮城県は緊密につながっている。さらに、横断道路によってもつながっていて、将来高規格の道路整備計画を持っていて、高速の大量輸送機関の構想もあると聞いている。

やはり、個別の県のことだけでなく、日本の将来という点から、国際的に果たすべき具体の役割があるのではないか。そして、ロシアやその他の国々との連携を一層強めるためにも、北東国土軸の戦略的な位置、地位を改めて強調したい。熱い新日本海時代来るという、いきいきとした活動に宮城県が結びついていくことによって、首都機能移転にさらにインパクトを与え、大きな力になってくると思う。

続いて、宮城県知事から、以下の発言がなされた。

地方分権推進委員会の第5次勧告が出されようとしているが、これに対して各省庁から極めて厳しい反発が出ている。つまり、今のままで良いではないかという反発が出ている。中央省庁等改革基本法ができて、国の行政機関をスリムにするということが法律で定められているにもかかわらず、このような反発がある。大変遺憾に感じるが、首都機能移転は地方分権が前提となっている。スリムな省庁として、地方に大幅に権限、財源を移転した後に、首都機能が移転される、ということが前提だと思う。こうした状況にも関わらず、今我々が目にしているのは、極めてそれと反対方向の動きである。審議会委員の方々からも、遺憾の意をしかるべく伝えていただきたい。

例えば、我が宮城県の位置は、九州から来たら東京より遠いではないかという話がある。これは多分、今までどおりの陳情行政を意識しているからだと思う。首都なのだから、国内よりは外国との交通アクセス、すなわち国際空港の整備が絶対の条件である。しかし、国内の場合は、小さな政府であるので、これとは別問題である。経済的首都は東京に残るということを想定しているのだから、外国からの来客は、東京に寄り、首都に寄ることもあるだろうし、その逆もあるだろう。そうすると、東京と新首都のアクセスは非常に重要であるが、九州とのアクセスはあまり考えなくても良い。中央省庁等改革基本法のねらいは、実はそういうことで、首都に来ずに、全部その地域で済ませることを目指している。そうすると、今現在の秩序のままでの新首都を考えて、国内での交通アクセスのことを気にするのはナンセンスという以上に、中央省庁改革基本法の理念がどこかへいってしまっているのではないかということで、委員の方々からも遺憾の意を伝えていただきたい。

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