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茨城県現地調査意見聴取議事要旨

1.日時

平成10年9月29日(木曜日)14時40分〜16時40分

2.場所

茨城県教育研修センター

3.出席者

(審議会委員)

石原会長代理・部会長、野崎部会長代理、石井(威望)、宇野、中村(英夫)、牧野各委員(6名)

(専門委員)

井田、井手、片山、戸所(4名)

村上大都市圏整備局審議官(事務局参事官)

4.議題

地域の概況について、首都機能移転に関する対応方針について、事前質問事項に対する回答について、意見交換等

5.議事の要旨

今回は、茨城県内の首都機能移転先候補地の現地調査を行った後、地域の概況、首都機能移転に関する対応方針、事前質問事項に対する回答について茨城県より説明が行われ、引き続き意見交換が行われた。

(1)地域の概況について

茨城県知事より以下の説明が行われた。

本県の面積は全国で24番目の広さであるが、平野が県総面積の約3分の2、可住地面積は全国で4番目の広さとなっている。台地がかなりの部分を占め、それに丘陵地が続き、山地が北の方に連なっている。

人口は299万214人で、間もなく300万人になろうとしており、順調な発展を続けている。

調査対象地域は、水戸市の西方にあり、那珂川・久慈川の清流や緑豊かな田園地帯など、恵まれた自然環境を有するとともに、災害に対する安全性も非常に高いところである。この調査対象地域付近では首都圏中央連絡自動車道、北関東自動車道路、常磐新線、常陸那珂港、さらには百里飛行場の民間共用化と基盤整備が進められているところで、北関東自動車道路についてはあと6、7年で開業できるものと考えている。北関東自動車道路が関越道に接続されるとこの地域から3時間圏内に新潟が含まれることになり、また、百里飛行場も22kmの距離にあることから、今よりも使いやすい県土が実現していくものと考えている。

百里飛行場の民間共用化については、全国から本県へのアクセスが大変容易になるだけでなく、東関東自動車道の延伸で、新東京国際空港と百里飛行場の間の所要時間も現在の1時間40分程度から1時間程度への短縮が可能となる。なお、百里と成田の距離は、成田と羽田の距離よりは近く、羽田−成田間が60km、成田−百里間は45kmという状況である。

調査対象地域は、南の方が東京圏から80km、北の方が120km範囲に位置し、地形については、概ね標高100m未満の起伏の少ない平坦地と、100〜300mのなだらかな丘陵地からなっている。

気候は、年間平均気温が約14度と比較的温暖で、年間を通じて寒暖の差は小さい。年間降雨量も約1,200mm前後であり、浸水の被害も調査対象地域全体として見れば極めて少ないと考えている。先般、那珂川の河口で浸水が見られたが、全体で見れば極めて少ない。

地震・活断層については、関東大震災時の本地域の震度は4であって、過去において大きな被害をもたらした地震はなく、また、活断層も確認されていない。

水資源については、この3月に「茨城県長期水需給計画」を策定し、久慈川及び那珂川の両水系で既に14.742m3/sの水量を確保している。この計画では、現在予定されている最大取水量に対し、余裕水量として4.651m3/sを確保できることとなり、新都市建設の第一段階での0.57m3/s、最終段階での3.15m3/sの使用量について十分に対応可能と考えている。

中心クラスターの候補地としては、調査対象地域の中の3地域を予定しており、一番北側のA地域は約1万haの、丘陵地ややや山がちの地域である。B地域は約1万7,000haの主として丘陵地からなっている。C地域は約8,000haの平坦地である。これらの地域の人口密度については、C地域では1平方キロメートル当たり120人程度で、B地域及びA地域については70人を少し上回る程度である。

土地利用の状況は、この3つの地域を合わせて山林が約6割、農用地が約3割であり、山林の場合には雑木林が多く、農用地については桑畑や栗畑が多いという状況である。

首都機能を移転する必要性としては、阪神・淡路大震災の経験を踏まえ、政治・行政と経済・文化はわけておく必要があると強く考えている。

首都機能都市は、災害発生時には危機管理の司令塔としての大変重要な責務があるが、他方では災害があった時期でも世界の大きな流れの中で経済などの機能は発揮していかなければいけないということを考えると、やはり、首都機能都市と東京とは分けておく必要がある。本県の場合、東京との間に山を隔てており、同時被災はほとんど考えらない。また、これまでに大規模災害の経験もない。一方で、いざというときには鉄道あるいは道路などで短時間で移動が可能な地域であり、海を利用することも可能であることから、災害に対応するためには、本県は大変よい条件を具備していると考えている。

もう一つの大きな目標として、東京一極集中の是正が言われているが、かつて新幹線開通時に二眼レフ論が言われたが実現しなかった。一極集中の是正には、政治・行政と経済・文化という中枢機能を分離しなければ実現することは不可能ではないかと考えている。しかし、同時に、政治・行政と経済・文化は常に密接な連携のもとに運営されていく必要があることから、新都市と東京というものを強制的に分離させるのではなく、両都市の機能をそれぞれ補完しあうような形で有機的な連携を目指していくことが必要ではないかと考えている。

新都市の建設期間中、あるいは将来にわたって東京と連携をとっていくためにはなるべく近い方が望ましく、それが人やモノの移動に伴う時間コスト、コミュニケーションコストを低く抑える、あるいはインフラの整備コストなども低く抑えるのではないかと考えている。災害による交通網の遮断などを考えた場合、首都機能は東京に近い地域に移転すべきではないかと考えている。

次に本県は、公園の中に政治都市をつくったらどうかと提案している。なだらかな丘陵や平坦地が続いており、全体を公園としてとらえ、その中に国際政治都市をつくってはどうかということである。この地域の特徴としては、川や緑に恵まれていることに加え、大規模な土地造成の必要もなく、環境にやさしい都市づくりができることにあると考えている。

本県の取り組みについては、特に地元の市町村が大変積極的に行っており、住民の理解を得ながら首都機能移転を進めていくことについて大変よい条件が整っているものと思っている。

土地取得については、例えば200ha程度で400人の地主がいたところも2、3年で買収ができているので、場所を選びながら行えば、2,000ha程度のまとまった土地は、容易に、また、速やかに取得できるものと考えている。つくばとか鹿島の例を見ても本県の場合にはそのような事業に対する協力体制は十分とってもらいやすい県民性ではないかと考えている。

環境対策について、特に強調したいのは、地球温暖化が大きな問題になっていることから、寒すぎず暑すぎない場所を選ぶことが、これからエネルギー消費を考えた場合には大変重要になってくるものと考えている。そういう意味で、それぞれの地域を真冬の状況がどうか、真夏の状況がどうかといった観点から比較をしていただければ大変ありがたいと考えている。

(2)首都機能移転に関する対応方針について

最初に、茨城県議会の議長より以下の発言がなされた。

首都機能移転については、移転候補地の選定手続きが進められている中、いよいよ大詰めの段階を迎えようとしているが、県議会としても、これまで積極的に取り組んできた。東京一極集中の是正、あるいは災害対応力の強化など、首都機能移転の意義についてはさまざま言われているが、県議会としては、新たな政治・行政システムを確立することが最も重要な意義であると考えている。日本列島総不況と言われるように、我が国は今大変な閉塞状況にあるが、このような状況を打破し、新しい日本社会を築いていくためには、これまでの政治・行政のあり方を問い直しつつ、国政全般にわたる改革を進めていく必要がある。このような意味から、首都機能移転は21世紀に我が国を導いていく絶好の機会と考えている。

首都機能移転の持つこれらの意義を考慮したとき、本県は極めて優れた条件を備えていると考えている。国会等移転調査会の報告では、新しい首都づくりの基本理念として、平和・文化・環境の3つを掲げているが、本県は、このような理念を実現する場として最適であると自負しているところである。本県の優位性については、先ほど説明にあったとおりであるが、ここでは1点だけを追加したい。

本県は太平洋に面し、180kmにも及ぶ長い海岸線を有しているが、その海岸線に4つの重要港湾を抱えている。移転候補地の選定基準には港湾の条件は特に明記されていないが、港は世界に向けた海の玄関口として重要な役割を担うものと考えている。これら候補地の選定を進める中で、港湾の位置づけをぜひとも検討に加えていただきたいと考えている。

県議会では、いち早く首都機能移転等調査特別委員会が中心となって活発な活動を展開し、首都機能の本県移転にかける期待は非常に大きいものがある。県議会としては、今後とも知事や市町村、団体と連携しながら、首都機能の本県誘致に積極的に取り組みたいと考えている。

続いて、茨城県議会首都機能移転等調査特別委員会副委員長より以下の発言がなされた。

本委員会は平成7年6月に設置され、これまで、首都機能移転が本県に及ぼす意義や効果、そして新しい都市づくりのあり方など、幅広い観点から首都機能移転問題をとらえ、調査検討を進めてきた。国会等移転調査会が提示した選定基準等に照らしながら、本県の状況を詳細に調査したほか、都市工学の専門家やオーストラリア大使館の書記官などを参考人として招聘し、さまざまな角度からのご意見を伺ってきた。

その結果、本県も優れた条件を有しているということを強く認識しているところであり、特に本委員会では、新しい首都としてふさわしい都市づくりをどのように進めていくかということが重要な視点であると考えている。

先般、他の調査対象地域を本委員会として視察した際、9,000haの土地をどのように確保するかは大きな問題であり、さらにその土地を首都として形づくっていくためには膨大な費用と時間が必要ではないかとの印象を強く持った。賑わいと活力にあふれ、世界に向けた新しい日本の顔をどのようにつくっていくかということは、土地の確保とともに重要な問題であると考えており、このような意味からも、茨城中北部地域は首都機能移転に最も適した位置にあると考えている。

また、筑波研究学園都市を立ち上げた実績とノウハウも評価されてしかるべきと考えている。

このように、本委員会では、本県への首都機能の誘致可能性を検討してきたが、一方では、人心の一新を図り、国土の均衡ある発展を進めていくためには、首都機能は東日本地域へ移転すべきとの共通認識に立脚し、宮城県、山形県、福島県、栃木県の各県議会とともに、平成8年3月、5県協議会を設立し、共同パンフレットの作成や国への要望活動など、「利根川越え」を合言葉に幅広い取り組みを進めているところである。

続いて、茨城中北部地域首都機能誘致推進協議会長である茨城町長から以下の発言がなされた。

本県は、火山や活断層がなく、安全性に優れ、気候や豊富な水資源など自然条件に恵まれ、かつ、平地林も多く、著しい地形の変更を必要しないことから、環境にやさしい新都市づくりができる条件を有しているという、首都機能の移転先として理想的な地域である。

本協議会では、平成7年8月に常陸平野首都機能誘致推進協議会を設置し、その後、茨城中央地域首都機能誘致推進協議会に組織を拡大し、本県への首都機能移転について積極的な活動を展開してきたところである。さらに、本年1月の調査対象地域の設定に伴い、本県では水戸市等の16市町村が首都機能移転候補地として設定し、さらに、これらを取り込む市町村を含めた47市町村からなる首都機能誘致圏域も設定したところである。こうした中で、本協議会では北部の23市町村にも加入の勧誘を行い、本年7月に47市町村からなる茨城中北部地域首都機能誘致推進協議会を設立したところである。

また、地元市町村では首都機能の受け入れ体制が十二分に整っており、第1に、これらの市町村議会において首都機能誘致の決議を行うなど、住民の協力意識は非常に高く、市町村を挙げて首都機能の受け入れを明確に表明している。

第2に、本協議会では、住民向けの啓発用パンフレット、ポスターの作成ほか、誘致懸垂幕の掲示、各市町村広報紙による本県への首都機能移転の広報など、積極的な誘致活動を行っているところである。

第3に、新都市の用地については円滑に確保できるよう、市町村を挙げて積極的に協力していきたいと考えている。過去において、本県は地元市町村のご協力のもと、鹿島臨海工業地帯の整備、筑波研究学園都市の建設に数千haの用地買収を成功させてきた。最近では、調査対象地域周辺においても、茨城中央工業団地、茨城総合流通センター、北関東自動車道などのプロジェクトについて、住民のご理解とご協力のもと、大変に順調に用地買収を進めてきた実績と自負がある。

当協議会としては、今後も、県、県議会、全県的な誘致組織である茨城県首都機能移転促進協議会などと歩調を合わせ、引き続き県民の合意形成に努めていきたいと考えている。

続いて、茨城県首都機能移転促進協議会の会長から以下の発言がなされた。

本協議会は、県、県議会、市町村代表、県選出の国会議員、さらには本県を代表する民間の主要40数団体等により構成される全県的誘致組織であります。平成8年に設立されてから、県、県議会、地元市町村の誘致組織とも緊密に連携協力を図りながら、本県への首都機能移転に向けての積極的な誘致活動を展開してきているところである。

首都機能の移転先地を選定するに当たっては東京との連携を確保できる地域を選定すべきであるという点に絞って、考えを申し上げたい。

首都機能が新都市に移転した後においても、東京は、商業や交通、教育、文化等高度な都市集積を持っており、これらの集積を将来にわたって活用していくことが新都市にとっても必要である。東京と連携し、補完しあうという観点から首都機能移転に取り組む必要があると考えている。政治・行政は経済とは相互に密接不可分の関係にあり、密接な連携のもとに運営されなければならないものである。高度情報化や高速交通体系の整備がさらに進む将来においても、政治・行政と経済の連携、補完の関係は変わるものではないと考えている。人と人との面識や交わりを通して仕事を進めていく習慣が広く定着している我が国では、新都市と東京の距離があまり離れていることは望ましいものではないと考えている。

また、新都市の建設開始から関係機関が段階的に移転し、移転先地が首都として機能するまでには相当の期間が必要となり、国の中枢機能が新都市と東京に分離するという重都構造の間、あまり離れすぎていては国家機能を円滑しないことも考えられる。また、重都構造の間、想像以上に多くの人やモノが新都市と東京の間を往復することになり、新都市と東京が離れていては、その際の時間的、費用的な負担や効率の程度、移転に伴う費用の膨大さ等々、問題が生じるものと考えられる。これは大阪本社の企業の大阪と東京の間の関係を考えてみればわかる。

こうした問題を考慮すれば、新都市と東京の距離は、連携するのにほどよい距離にあることが望ましいと考えているところである。

茨城県中北部地域は近すぎるという意見もあるが、そうは思わない。新都市と東京が離れるべき距離を考える観点は2点あり、第1には、大地震等の大規模災害が起きたときに、東京と同時被災しない程度に離れている必要があることで、第2には、東京都の一極集中の波に飲み込まれない程度に離れている必要があるということである。この2点を満足する限り、新都市はできるだけ東京に近い方がいいと個人的には考えている。

東京とほどよい距離にある本県候補地は、我が国がこれまで築いてきた交通通信網等のインフラを含めた東京の都市機能の集積が活用できることから、建設コストも抑制でき、また、遠隔地に移転する場合に比べて、東京の人々にとっても地方の人々にとってもコミュニケーションコストの大きな変化のない円滑な移転が可能であると考えられる。

続いて、茨城県企画部長から事前質問に対する回答が以下のとおりなされた。

最初に首都機能移転に伴い、北東国土軸やこれ以外の国土軸に関し、生活、文化、産業、交流などのさまざまな面について、どの範囲にどのような影響を与えると考えているかということであるが、北東地域全体が北東国土軸に位置しており、これまでの一極一軸型の国土構造が大きく転換され、多軸型の国土構造の形成促進に大きく貢献できると考えている。特に、本県の移転候補地は、北東国土軸上に位置すると同時に、西日本国土軸に近接するという有利な位置にあり、双方の軸を連携させることで、生活、文化、産業など多様な交流の結節点として、均衡ある国土の発展に貢献できるものと考えている。具体的には、まず、新都市で形成される人間性豊かな新しい文化やライフスタイルがそれぞれの国土軸に波及し、我が国全体に好影響を与えることになる。さらに、この新都市が太平洋ベルト地帯から離れていることから、太平洋ベルト地帯に集中する企業、人々の意識の転換を促し、西日本国土軸の再生に貢献し、その他の国土軸についても、生活、産業、文化など多くの分野における分散立地を促進するなど、国土全体の活性化に大きな影響を与えると考えている。

2番目の質問は、新都市が東京圏に組み込まれ、東京圏一極集中が是正されないのではないかということであるが、まず、東京圏と移転候補地との関係は、地理的に筑波山系及び霞ケ浦によって、移転候補地は東京圏と分断されている。さらに、土地利用規制を伴う広大な農地が東京圏と移転候補地間に連なっている。歴史的、文化的、商業圏などにおいても、東京圏とは異なる独自の生活圏を形成していると考えている。時間距離においては東京圏からの日帰りが十分可能であるが、通勤圏とはなっておらず、新都市が東京圏に組み込まれることはないと考えている。

全国各地とのアクセスについては、東京経由によらない全国からのダイレクトなアクセスが可能と考えている。なお、新都市は政治・行政機能に特化した最大でも60万人の規模を有する都市と想定されており、既存の大都市とは異なり、大規模な人やモノの集中はあまり生じないと考えている。新都市が周辺地域へ膨張し東京圏と一緒になることはないと考えている。

3番目の質問は、九州、四国をはじめとする西日本の地域にどういう影響を与えるかということであるが、まず、九州、四国をはじめとする西日本の地域とは、百里飛行場を利用することによって、直接、新都市にアクセスできると考えている。また、西日本の地域にとっても、東京が引き続き商業、文化の核都市となることから、東京と政治・行政の核都市である新都市お相互の連携・交流は今後とも重要になると考えている。したがって、首都機能が東京から距離的に離れた地域へ移転した場合と比較して、急激な変化を起こすこともなく、スムーズな首都機能移転が可能であり、さらに、その後の両都市の連携・交流においても、効率的な関係が維持できるのではないかと考えている。

4番目の質問は、首都機能移転の周辺地域に及ぼす急激な変化、地価高騰、新たな土地利用制限措置などの問題についてであるが、まず、本県では、地元が一丸となって誘致活動を展開しており、従って、新都市の建設が地域発展のインパクトとして周辺地域にもたらすメリットも非常に大きいと考えている。次に、周辺地域に及ぼす急激な変化への対応は、新しいサービス産業など多様な産業活動の展開が行われると同時に、新しい文化やコミュニティ、ライフスタイルが新都市に生まれ、このような変化が周辺地域の商業、農業などの地場産業や伝統的文化等と融合しながら徐々に形成されていくと考えている。このことは、筑波研究学園都市の例に見られるとおりである。さらに、地価高騰や新たな土地利用制限措置の問題については、当面は現在の国土利用計画法などを的確に運用したいと考えており、将来的に既存の個別法では制度上不十分な面もあることから、国会で移転先を決定する段階で総合的な調整、規制ができるような特別立法措置も講じていただきたいと考えている。本県ではつくばと鹿島の2つの開発による用地取得、都市づくりの経験に基づくノウハウが蓄積されており、こういったノウハウを生かして、首都機能移転への受け入れ体制を整えたいと考えている。

5番目の質問は、新都市と東京、全国、海外とを結ぶアクセスルートが形成されることにより、どのような全国的交通ネットワークが形成されるかということであるが、既存のアクセスルートのほか、新都市の建設に当たって整備が必要となる幹線道路、鉄道、新交通システムなど各種交通手段との有機的な結合を図り、全国や世界に開かれた陸・海・空の機能を有する複合的な交通ネットワークの一層の充実が図られると考えている。このように、東京を経由しない交通体系の整備が進むことによって、これまでの東京一極集中の放射線の交通体系に加え、長期的には全国的にバランスのとれた縦横の交通ネットワークが形成され、そのネットワークによって、災害時に一地点が破壊された場合にも多くの代替ルートが選択可能となり、ネットワークの寸断を防ぐことができると考えている。

6番目の質問は、新都市の都市づくりについての都市像やライフスタイル、文化についてであるが、本県の理想とする都市像は、自然環境にやさしく、ゆとりとうるおいに満ちた世界に開かれた「公園の中の国際政治都市」というものである。あらゆる世代の人々にとって本当に暮らしやすい、ゆとりとうるおいに満ちた生活環境や就業環境が整備され、豊かな自然環境の中で新しいコミュニティが形成されるなど、安全で快適な生活が営まれることが大切と考えており、開かれた都市づくりが行われることで、従来の文化を継承しつつ、新しい文化やライフスタイルが形成されると考えている。中心クラスターについては、いずれの地区においても、国の目指す理想的な国会都市の建設が可能と考えている。

7番目の質問は、交通アクセスに関するものであるが、まず、鉄道については、メインはJR常磐線であり、これは東京経由にならざるを得ないものの、既存の鉄道が東京を起点に放射状に整備されており、東京から水戸まで約1時間と、ほどよい距離にあって便利であると考えている。さらに、東北新幹線からJR水戸線によるアクセスルートも有しており、特段の不都合は生じないと考えている。航空については、今後、百里飛行場の民間共用化の推進によって、東京経由によらないアクセスが可能であるし、北の方では福島空港の利用も十分可能と考えている。また、成田空港からは、現在整備中の東関東自動車道を利用して1時間以内で直接アクセスが可能になると考えている。また、道路については、既存の常磐自動車道に加えて北関東自動車道、東関東自動車道、圏央道などの整備が進み、近隣県のみならず、より広域的な地域とのアクセスにおいても中心的な手段になると考えている。

8番目の質問は、新都市と東京とのアクセス強化のための常磐新線の延伸についてどう考えるかということであるが、常磐新線は東京の秋葉原と筑波研究学園都市を45分で結ぶ鉄道で、平成17年度の開業を目指し、現在整備が進められている。常磐新線は東京と新都市を短時間で結ぶ特急の運行など、新たな鉄道輸送機関として有効に活用できる可能性を有していると考えている。首都機能が本県に移転された場合には、関係機関との調整を図り、常磐新線の新都市までの延伸に努めたいと考えている。

9番目の質問は、空港は成田と百里飛行場のどちらを主に考えているかというもので、成田を主と考えている場合に、移転先候補地とのアクセスの利便性向上のためどのような措置を考えているかということであるが、まず、国内のアクセスについては、移転候補地に隣接する百里飛行場を考えている。また、海外とのアクセスについては成田空港を考えている。成田空港からは、現在整備中の東関東自動車道を利用することで約1時間でアクセスが可能となる。東関東自動車道の整備の早期完了が利便性向上のための措置と考えている。

10番目の質問は、土地の取得についてはどのような考え方に基づき容易と判断したのかという点であるが、まず、土地の取得については、地権者である地域住民の理解と協力が必要であり、本県では一丸となって誘致活動を展開している。過去のアンケートによっても、誘致賛成が多く、住民の理解が得られているものと考えている。また、過去の本県における大規模開発では、際立った反対運動とかトラブルはほとんどなく、県民の中で開発に対する協力意識が高い。つくばや鹿島開発による用地取得のノウハウも蓄積されており、このノウハウを生かすことで首都機能移転への受け入れ体制を整えられるものと考えている。また、具体的な土地利用状況は、山林、農地、原野が多く、山林には雑木林が多い、また、都市的土地利用については数%と少ない。人口密度も低く、さらには、法規制や自然公園地域の占める割合もかなり低いことから、土地取得が容易なものと考えている。移転候補地内には約8,500ヘクタールの国有地があり、地価も低廉で、土地取得が容易であると考えている。

11番目の質問は、活断層で発生する地震によって、新都市、既存都市、あるいは東京と新都市を結ぶネットワークが被害を受けるおそれについてであるが、まず、東京と新都市を結ぶ本県における地域では、過去に大きな被害をもたらした地震はない。移転候補地内における活断層は確認されておらず、さらには火山もないという状況で、地震、火山に対する安全性が極めて高い地域である。仮に東京で大地震が発生した場合、県の南部の一部で被害が発生するおそれがあるが、過去の関東大震災においても、東京で震度6以上だったのに対し、本県では県南部が震度5、県中北部が震度4であり、将来的にも新都市と東京を結ぶネットワークの大きな被災の可能性は極めて少ないと考えている。

12番目の質問は、東京が大地震により被災した場合に備え、新都市は東京の災害対応力の強化、緊急災害対策の司令塔としてどのような機能を保有すべきかというものであるが、新都市は災害発生時には、災害応急対策の総合調整をはじめとする危機管理の司令塔として重要な任務を有していると考えている。具体的には、大規模災害に対し、本部を設置し、各種の措置を行い、司令塔としての役割が重要ではないかと考えており、2つ目は、災害対策本部を中心に、情報機能の途絶や混乱が生じた場合に備え、情報センター、緊急放送センター、食料備蓄基地、ヘリコプター基地などを整備することが必要と考えている。東京が被災した場合の対応については、商業、金融、放送などの情報や機能を瞬時にバックアップする機能を有することが必要であると考えており、災害復旧に関しては、複数の交通ネットワークを有し、場合によっては海、河川なども利用した迅速かつスムーズな救援及び災害物資輸送が可能であると考えている。特に移転候補地は短時間で東京と行き来できるばかりでなく、海路も利用した災害復旧活動も可能であり、首都機能移転先としては最適な地域だと考えている。

13番目の質問は、水資源の確保は具体的にどのような方法を考えているかということと、上流域における水資源の確保によって、下流域の水量、水質にどのような影響を及ぼすかということであるが、移転候補地は主として久慈川の水系、それから那珂川の水系に位置しており、県で策定した水需給の計画において、都市用水として確保している水量と最大取水量との差である、毎秒4.651m3/sが余裕水量となっている。新都市の水需要は第一段階で0.57m3/s、最終段階で3.15m3/sと予想されており、現在私どもで確保している余裕水量で十分対応でき、水供給に関する新たな対応は必要ないと考えている。この水供給については、既に所要の確保が図られており、今後新たな水資源確保のための対策も必要なく、下流域に及ぼす水量、水質の影響も特にないと考えている。

14番目の質問は、新都市とつくば市などの既存都市、東京との機能分担や連携についてどのように考えているかということであるが、つくば市は東京及びその周辺からの試験研究機関、教育機関を移転することによって、東京の過密を緩和し、首都圏の均衡ある発展に寄与する目的でつくられた都市である。このようなつくば市と新都市が共に本県にあることにより、先端的な試験研究機関と政治・行政の中心である新都市が極めて密接な連携が図られ、新都市の機能強化、国政の円滑化に大きく貢献すると考えている。

また、水戸市をはじめとする周辺都市との関係では、建設段階等において、新都市に不足するであろうショッピングとか居住、レクリエーション、芸術文化交流機能などをサポートし、都市の成熟段階においては、日立の産業、ひたちなかの物流、県都水戸の政治文化機能、笠間の芸術文化機能等を提供することにより、全体としての新都市建設のコストを抑えるほか、新都市を支える役割を担うと考えている。

また、東京との関係では、政治・行政と経済は常に密接な連携のもとに運営されなければならず、東京が持ち続けるであろう商業、文化機能を将来にわたり効率的に活用することが重要である。移転候補地と東京との距離はがおおよそ80〜120kmであり、連携を確保するためにほどよい距離にあるということから、新都市の建設期間中を含め、理想的な連携が可能であると考えている。

15番目の質問は自然環境と共生した都市づくりをどのようにするのかということであるが、まず、本県の新都市候補地は、広大な平坦地となだらかな丘陵地からなっており、土量の著しい移動を伴わない、環境にやさしい都市づくりが可能と考えている。里山とか小川という潤いのある身近な自然が多くあり、こういう自然を都市の魅力として取り入れるとともに、ゼロ・エミッションの都市づくりも進めるほか、例えば自然環境との調和から建物の高さ制限を設けるとか、あるいは電気自動車のみの利用エリアの設定、新交通システムの導入などを考えているところである。また、都市づくりを進めるに当たっては、どの自然環境を残すべきかという観点ではなく、その地域の生態系・植生と調和させるためには、逆にどういった土地利用計画が望ましいのか、という視点に立って行うことが大切であると考えている。

16番目の質問は、環境負荷量についてどう考え、循環型都市の構想の具体化をどうするかということであるが、環境負荷量ついては、首都機能移転の具体的な手法、規模がまだ現在示されておらず、まだ具体的な検討を行っていない状況である。今後、移転の手法などの内容が示された段階で、環境負荷量を極力低減する方策について幅広く検討したいと考えている。循環型都市づくりについては、様々な環境計画等を策定しており、県内の民間企業においても、ISO14001認証取得事業所数が全国3位など、民間企業の環境への積極的取り組みが見られ、環境についての意識が非常に高い県と自負している。従って、新たな都市づくりを進めるに当たっては、ゼロ・エミッション都市の実現、ソーラーシステムの導入、水の循環的利用への取り組みなどを考えている。また、これらを推進するに当っては、新都市建設の環境計画を策定するとともに、その実現のため、法制度の整備や財政的支援方策などについて、必要な施策を講じていく必要があると考えている。

17番目の質問は、環境面で地域の合意を得ることは重要であるが、そのために具体的にはどのような取り組みが必要と考えているかということであるが、このような大きな開発計画については住民の方との相互理解を深めることが非常に重要と考えており、住民に対して、環境と共生した新都市づくりについてご理解をいただくよう、啓発活動を行っていくことに加え、住民参加の都市づくりを行うため、構想段階での情報公開や早い段階でのアセスメントなど、21世紀の住民参加の新たな都市づくりのモデルとなりますような取り組みを行っていくことが必要と考えている。

18番目の質問は、霞ケ浦の水質などの総合的保全のため、首都機能移転の際にはどのような制約条件があり、具体的取り組みが必要と考えているかということであるが、移転候補地は16の市町村からなっており、この大部分は久慈川の水系と那珂川の水系に属している。霞ケ浦とかかわりがあるのは、南端の2つの町である小川町と美野里町である。霞ケ浦の水質などの総合的保全に関して、霞ケ浦の流域で新たな都市づくりを進めるに当たっての規制も現在設けられておらず、新都市建設による霞ケ浦の影響はそれほど大きくないと考えているが、建設に当たっては、新都市内での水の循環的利用、森林などが持つ水質浄化機能の維持増進等に努めるなど、霞ケ浦の水質などへの総合的な保全について万全の対応を図りたいと考えている。

19番目の質問は、首都機能移転の受け入れに当たっての隣接県との連携に対するものであるが、本県においては、他県に先駆けた地域連携として、これまでも、福島県、栃木県とともに「21世紀FIT構想」を掲げており、広域的な地域づくりに取り組んできたところである。また、北東地域の4県に山形県を加えた5県で、県議会、知事などの各レベルで会議を開催したりパンフレットを作成するなど、北東地域の移転実現に向けまして密接な連携を5県で図っている。このような北東地域以外の隣接県も含め、交通、生活、文化などさまざまな面で密接な連携が必要と考えており、これまでの取り組みを生かして、積極的に隣接県との連携を深めたいと考えている。

20番目の質問は、現在の地方自治体を見直していく可能性についてのものであるが、移転候補地が16市町村から構成され、新都市は複数の自治体にまたがるものと考えている。従って、新都市が円滑に機能するためには、これらの自治体、あるいは16市町村の周辺の自治体も含めて、行政はもとより、交通、生活、文化などさまざまな面で幅広い連携が重要と考えている。本県においては、大規模プロジェクトの進展に伴い、市町村合併を行った例は、つくば市とひたちなか市という2つの事例がある。新都市の建設に当っては、こういった事例も参考にしながら、地域の一体性を確保するための方策を事前に十分検討していきたいと考えている。

21番目の質問であるが、新都市が立地し、機能を果たす上でのさまざまな運営コストについてどう考えていますかというものであるが、新都市は、運営コストを極力抑えた都市にすることが必要と考えており、まず、建設段階においてもコストの抑制が重要ではないかと考えている。例えば土地や建物について、必ずしもすべてを政府の所有とするのではなく、PFIなどを活用して、例えば賃貸にするといったコストの低減を図る方策も考えられる。また、移転候補地は著しい地形の変更を必要としないので、造成コストも抑制できる。インフラも既に相当程度進んでいるので、建設段階におけるコストの削減が図られると考えている。また、新都市と東京間の往来については、建設期間中も含めてかなり頻繁になる。その距離が離れると交通通信のインフラの維持管理コストや移動に伴う時間コスト、コミュニケーションコスト、などが多くかかると考えている。本県の移転候補地は東京から約1時間というほどよい距離にあるため、東京から離れた他地域へ移転した場合と比較して、これらのコストが少なくて済むと考えている。また、九州、四国、北海道などから東京と新都市を一日で訪れるといった場合には、本県はほどよい距離にあるのではないかと考えている。さらに、防災・安全性の確保に対するコストも低いと考えており、気候についても比較的温暖であり、年間を通じての寒暖の差も小さく、冷暖房などのエネルギーコストも低くなると考えている。

引き続き、筑波大学教授から以下の説明がなされた

交通アクセスの問題と、都市計画、特に土地利用の制限等について述べさせていただきたい。

全国へのアクセスが東京経由になるという懸念があるが、決してそういうことはないと考えている。地球環境問題を考えると、過度に自動車に依存をするのはいささか問題があるが、趨勢としては自動車への依存度は高まっていくと考えられる。その場合に、常磐自動車道、圏央道、北関東自動車道、東関東自動車道という4つの高速道路がきちんとネットワークされていることは非常に大きな意味を持っており、全国へのダイレクトアクセスが可能であると考える。空の問題についても、成田と百里が非常に近接している。これらが高速道路で直結されますと40〜45分で連絡が可能で、このように国際線と国内線のスムーズな乗り継ぎを両空港で分担するという新しい空港の連携のあり方なども探れるのではないかと考えている。百里飛行場の民間共用化については、今、委員会等で盛んに議論され、民間航空の発着枠に問題があるとされているが、成田と百里の連携というポテンシャルは非常に高く、全国だけでなく、世界に開かれたアクセスが可能であると考えられる。海についても、テクノスーパーライナー等の高速船の寄港も考慮中であるが、他の自動車や航空等に比べて具体的な動きがない点に若干の問題を有していると考えられる。

東京からのアクセスでは、今、常磐線及び常磐新線の延伸も考えられるが、起点がそれぞれ上野と秋葉原であり、これからのスムーズな交通機関の連携が東京駅からの直結性にあると考える場合には問題点として残ると考えられる。また、東北新幹線経由のアクセスの強化も、当該地域にとっては非常に重要な問題であるが、具体的な動きがない意味では問題があると考えられる。

土地利用制限については、茨城県に住んで16年になるが、田園も里山も奥山も非常に美しく、いいところだと思っている。そういう中で、公園の中の国際政治都市という、地域の美しさ、郷土の美しさを生かした非常に魅力的なコンセプトを掲げているが、遠景は非常にきれいであるのに、近景になるとがっかりすることがある。その意味では、土地利用の制限や建築の制限といったことが非常に重要なテーマになってくると考えられる。地元が一丸になり、非常に熱心に誘致活動を行っていることから、本当に品格のある、日本の首都にふさわしい都市や地域をつくるという意味からは、合意形成という難しい問題があるものの、私権の制限と美しいまちづくりという非常に難しい問題にぜひ活発に取り組んでいっていただきたいと期待している。おそらく茨城県民はそれぐらいの度量と郷土愛を持っているものと考えている。

続いて、茨城大学理学部教授より次の説明がなされた。

今回の検討対象地域は、久慈川上流のA地域、那珂川中流の丘陵地であるB地域、涸沼の西の台地であるC地域の3地域であるが、地質の観点から述べると、A地域とB地域は山地から丘陵地にかけての地域であり、ジュラ紀の海底にたまった生物の遺骸や陸から運ばれた砂や泥などの堆積物からなる大変硬い岩石からなっている。地質的にはA地域とB地域は非常に安定した岩石となっている。それに対し、C地域は台地になっており、関東平野の一番北部に位置し、今より海面がずっと高かった12万年前の下末吉期と言われている時期のものである。東京湾がここまで広がって古東京湾が形成されており、その古東京湾の中に溜まった砂や礫などからなる台地で、地質的にも比較的安定した締まった地層になっている。そういう意味で、A地域、B地域、C地域とも地質の観点から安定した地盤を形成していると言える。

次に活断層であるが、茨城県全域において活断層は報告されておらず、このA地域、B地域、C地域についても、活断層は報告されていない。また、その可能性があることも言われていない。活断層については、被覆されていてよく分からない場合があるが、利根川流域の沖積層が非常に厚いところでは存在する可能性はあるが、少なくともその北側において活断層が存在する可能性は、現時点ではないと考えられる。

大きな断層が動くのではないかという懸念もあり、そういう点では久慈山地の中央に白河の方へ伸びる棚倉断層が存在しているが、これについては、第四紀層を変形させておらず、第四紀になってから、少なくとも200万年間は動いていないことが分かっている。また、棚倉断層では微小地震が全く起こっておらず、GPSで断層を挟んで測定してみても、断層を挟んでの変形等が見られないことから、完全に活動を停止した断層であろうと判断している。

茨城県の地震発生時の被害の想定については、茨城県南部でマグニチュード7クラスの直下型の地震が起こった場合と、太平洋側でプレートの境界部の地震でマグニチュード7クラスの地震が起こった場合について行われている。今回の調査対象地域に近い場合として、霞ケ浦の直下に震源を置いた被害想定では、断層に一番近いC地域で震度が5弱、その北側では震度4程度になり、大きな揺れは発生しないことになっている。液状化等の危険性についても、A、B、C地域ではほとんどないと考えられる。

結論として、少なくともA、B、C地域については、地質的にも非常に安定しており、活断層の面でも心配はなく、地震被害想定の面からいっても、そう大きな被害は想定されていない地域である。

続いて、茨城大学名誉教授から以下の説明がなされた。

茨城県は非常に特殊な県で、1,022mの八溝山が一番高い山である。雑木林と一括するような森林は存在せず、自然林から見ると、南のC地域あたりの台地では、スダジイ、タブノキ、カシなどが生育し、そこに多少人為的なものとして、コナラ、クヌギ、アカシデ、アカマツ、モミが混じり、ブナが出てくる地域はかかっていない。B地域、C地域では、クヌギが多く、他にコナラ、アカシデ、イヌシデ、それにアカマツが混り、時にモミが出てくるといったような森林である。したがって、A地域とC地域は同じ平地林でも少し異なり、B地域はちょうどその中間あたりにかかっている。B地域からA地域にまたがるようないわゆる里山というところは、コナラ、クヌギ、クマシデの仲間などがあり、南の方はコナラやクヌギが比較的多い。しかし少し上の方へいくと、コナラとクリが中心のグループを構成していることから、植生的には多少違っているものと考えられる。

昔この地域では炭を焼いて農家の財源にしており、植生に関しては、人間の影響を非常に強く受けた二次林的なものであるが、現在は、炭が焼かれることもなく、この二次林には、樹齢25年から30年ぐらいの大木が生え、落葉広葉樹からなる美しい里山となっている。

このように、ずっとなだらかに続く、いわゆる平地林が茨城県の特徴で、部分的に森林を残しながら、なおかつ都市計画を立てていくという考え方であるとすれば、全く問題のないところだと考えられる。

また、この地域はヤブツバキの生育の北端であり、寒すぎず暑くないという地域の特徴を適切に表している。

外国人の立場から日本の植生を見た場合、那須の南方のスダジイ林、北方のブナ林という形で日本の植生を認識する傾向があるが、この地域はスダジイの林からブナの林に移行する際のコナラ、クヌギ林といった二次林が中心になっており、アカマツやモミも見られるところであり、部分的にこれらを残しておけば、国際的な感覚で見ることができると考えている。

続いて、常磐大学教授より以下の説明がなされた。

第1点は選定基準から見た候補地の立地条件の問題である。自然環境に関しては、地勢が平坦で里山が存在するなど、緑豊かで、しかも、地震、水害の懸念がないことが挙げられている。交通条件については、鉄道あるいは高速自動車道のネットワークが出来上がりつつあり、さらに、新しい都市は、国際的にも往来が非常に多くなるという点を鑑みると、百里飛行場あるいは成田空港への便が大変よいということは、ワシントンがレーガンナショナル空港とダラスインターナショナル空港を持っていることと同じ状況であると考えている。東京と連担することが一番心配されているが、今のところそういう心配はないのではないか。東京都との連坦の可能性については、今のところ、そのような心配はないと考えている。これからの政治、経済が密接な関係を保つためには、種々の施策の立案・調整において、フェース・トゥ・フェースのコミュニケーションが非常に重要なことを考えると、そのための時間コスト、費用負担という観点から、東京都に隣接しているこの地域の特徴を活かすことができると考えている。こうしたフェース・トゥ・フェースのコミュニケーションの重要性は、筑波研究学園都市が立ち上がった時期にも、東京とのコミュニケーションがなかなかとれないということで、一番の問題点であったと考えている。都市を建設していく上では相当時間がかかるが、その間に、人口25万人の水戸市や隣接する那珂川の北側にある人口15万人のひたちなか市という地方都市の集積を利用しながら新しい都市をつくり上げていくことが可能ではないかと考えている。

第2点目は、望ましい新都市のイメージとして茨城県では、「公園の中の国際政治都市」を提案をしているが、これは緑のガーデンシティをここでつくり上げていくということと考えている。国会議事堂、あるいは国会図書館、行政機関、司法機関等の官公庁が小都市の中にプラス配置され、緑の中に都市をつくっていくということである。さらには、例えばワシントンのモールのような文化施設なども配置していくことも望ましいと考えている。この点は、筑波研究学園都市の中に美術館をつくり、あるいは国際会議場をつくるというようなことで茨城県は既に経験済みである。

第3点目に、本県には、筑波研究学園都市建設の経験があり、面積が2,700haで、研究機関の移転が始まって大体25年経った現在の人口は17万人である。内訳は、研究学園地区に5万人程度、周辺地区に12万人程度である。このような官公庁を中心とした施設が移転することによって、地域の中から都市に対するさまざまなサービスの供給が活発になり、地域一体としての活力が出てくると考えられる。インフラの整備が進むことで地域のイメージアップの効果も大きく、地域社会経済への影響という観点から望ましい効果を生み出すものと考えている。

現在、筑波研究学園都市周辺地域で「グレーターつくば構想」が進められ、また、水戸市・日立市を中心とした北関東の中核都市づくりも進められていることから、新都市はその中間で、ちょうど数珠を配置するような形で地域の都市間の連携を生み出すものと考えている。

(3)質疑応答

県側の説明のあと、以下のとおり質疑応答が行われた。

・つくば市は学園都市ができる前は、1村4町だったが、関西学園都市では同じようなことが県をまたいで行われている。新首都機能都市の行政のシステムについて、府県や市町村をまたいで首都機能が導入された場合、どういう行政の組織として地方は受けるのか疑問である。
ブラジリアを例にとると、休日には皆がリオへ帰り、ウィークデーになるとリオからブラジリアへ帰ってくるという実態があることから、新首都における文化、生活という問題は非常に大事だと考えている。

→行政システムの問題について、つくばの場合は合併という形態をとったが、今回の場合にも何らかの対応が必要になると考えている。例えばアメリカのワシントンD.C.のような事例も含めて、これからの制度のあり方を十分に検討していかなければならないと考えている。
新都市に独自の文化が育つには大変時間がかかる。しかし、あまり離れすぎていると逆に土曜日、日曜日は帰ってしまい、地元に新しい文化が育たないと考えられる。本県程度の距離で、家族が来ることも可能という状況にならないと、地元に新しい文化が育つのは困難と考えている。一方、新都市は人口規模が50万人であり、50万人に至るまでにも時間を要すると考えられる。その間、いろいろな施設をつくった場合に、採算がとれるかという問題もある。従って、ある程度東京に近接しないと、国際レベルの要求に満足できず、新都市へは転居しないということも考えられる。ただし、文化のつくり方としては、つくばの例などから、ある程度時間をかけてそこにつくっていくほかないと考えており、また、ひとたび新都市に定住した場合には、定住者の間で同志の文化を創造するのではないかとも考えている。

・本日の現地調査では、大変美しい、しかも広い、柔らかい土地であることに感銘を受けた次第である。しかし、日本の首都機能を移転し、誇りの持てる美しい国をつくるというときに、例えば岩間インターを出たところにある看板などの存在について、これはなにも茨城県だけでなく、日本の多くの県に多かれ少なかれ存在するところであるが、県として条例その他を強化して規制する考えがあるのか。

→例えばつくばの例では、電線の地中化や屋外広告物の制限などで対応している。首都機能が移転することになれば、その地域についての種々も土地利用規制と合わせてそのような制度を創設する必要があると考えている。

・第1点として、新都市には外資系企業が進出したり企業の研究所や大学が設置されるようなことを想定し、また、新たなビジネスチャンスが生じるなどを予想している一方、事前質問事項の回答の方ではやや開発抑制的な趣旨である。連担が起こり得る可能性についてどのように考えているのか。
第2点は、中央地域あるいは西日本から見ると、北東地域への首都機能移転は東に偏りすぎている、という意見に対して茨城県としてどのように考えているのか。

→第1点について、60万人規模の都市を考えた場合、ある程度の、アミューズメントや商業施設などができてくると予想している。ただ、東京との直接の関係については、途中に筑波山が存在などから、連坦はないと考えている。60万人規模の都市であっても、新都市は交流人口が相当大きいと考えられ、特に外国から来た方などの場合には、その都度、東京へ行って楽しむことは困難であるいことから、ある程度の施設は新都市にできるであろうと期待している。
第2点の、北東地域への首都機能移転が東に偏りすぎているという意見については、全国各地からのアクセスの問題であると考えており、本県の場合、百里飛行場の民間共用化を実現すれば、西側の地域の方々にも逆に近く感じてもらえるのではないかと考えている。また、陸の方については、例えば宇都宮や小山から新幹線を延伸すれば、経費的にも比較的少なく、東北地方や日本海側の方々が新都市に来ることが可能になると考えている。

・事前質問事項の回答などの中に見られる「都市づくりを進める上でどのような自然環境を残すべきかという観点ではなく」という表現は誤解を招くものと考えられる。残すべき自然環境がないということを前提にしているのか、また、例えば生物多様性を持つ二次的な自然環境や、優良土壌としての自然環境を残すという視点を持たないということなのか、このような考え方で基本的に進めた場合、果たして環境に関する合意が得られるのかという重要な問題になると考えられるため、この表現の趣旨はどういうことなのかを伺いたい。

→この地域の自然は比較的人工的につくられたものであり、仮に土地利用計画の中で一部を失うことがあっても、それは復元が可能であろうと考えている。どういう土地利用計画を行えば公園の中の都市というイメージとして整合性がとれるかを的確にイメージすることが重要だと考えており、自然を片端から切ってもいいという趣旨とは全く異なる。もちろん自然の相当部分は利用する形で都市づくりを行うことになると考えている。

・筑波研究学園都市や鹿島開発での経験から土地取得に関するノウハウの蓄積があることを強調しているが、例えば筑波研究学園都市の整備の経験から、今度、新都市を整備する場合、繰り返したくないことは何であるか。

→個人的な意見になるが、少なくとも単身赴任の街をできるだけ早く解消したい。その間にいろいろな問題や事件も起きると考えられるが、そのようなことが無くなり、人間が住むにふさわしい街にしていくことが必要と考えている。

・災害対応力など、種々の意味で東京に近いことが非常に便利であるとの見解であるが、新都市が東京に近い場合、東京は新都市に対しても経済的に強い影響力を持っていると考えられ、東京が壊滅的な被害を受けた場合、新都市も経済的な打撃を受けることから、長期的な対応がとりにくくなる可能性がないとはいえないと考えられるが、その点についての考えを伺いたい。

→新都市が経済的に東京と密接に結びつくかどうかは、ちょっと違うと考えているが、東京と新都市が同時に被災しない限り、できるだけ近くということは、何を行うにしても、まず複数の近づくための手段がなくてはならない。その点では、道路や鉄道もあり、海もあることから、いざとなれば海からの対応も可能となり、東京が被災した場合に新都市への経済的な影響が大きくて長期的な対応ができないということはないと考えられ、新都市としては、東京がどのような状況になっても、司令塔としての役目を果たせると考えている。

続いて、茨城新聞社の社長から以下の発言がなされた。

茨城県の県民にとって、この新都市がどのようになるのかという視点について、国土庁から出されたパンフレットを見たところ、建設開始後およそ10年でこの新都市が国会都市として誕生していくという記述があり、その後、成熟して60万都市に形成されていくということであった。今回の首都機能移転に当たり、当新聞社で平成8年の11月に、県民の方々にアンケート調査を行った結果、65.6%の方が首都機能移転誘致に賛成という結果であった。その理由としては、茨城県のイメージアップ、一極集中の是正、交通網が整備されることなどが上位に挙げられていた。新都市の形成には、長期間を要するため、その中で、県民の方々がどのように関わるのかを考えた場合、おそらく住民の方々が主役になって都市づくりをしていくものと考えられる。その立場で考えた場合、本県の方々は、既に筑波研究学園都市の建設やまちづくりを経験しており、また、鹿島臨海工業地帯の建設や、現在、建設が進んでいる常陸那珂地域の国際港湾都市に対しても、大変に協力的であった。さらに以前では、アレルギーのあった時期の原子力施設についても、誘致に努力をされている。委員の方々におかれては、今回の首都機能移転においても、是非そのような県民の積極性、国策的なプロジェクトに対する貢献を考慮していただければ幸いと考えている。

続いて、大好きいばらき県民会議理事長から以下の発言がなされた。

大好きいばらき県民会議は、やさしさと触れ合いのあるまちづくりをしようということで、市町村、企業、各種団体を合わせて、茨城県のまちづくりを行っている。現在、本会議は、住んでよかった茨城、住みたい茨城をつくる趣旨で、他の県には無い良いものを大いにとりこみ、水をきれいにする運動、交通安全、福祉の3点について積極的に取り組んでいる。21世紀に向けて、空気のいい、水のいい茨城をつくり、全体的な環境、人情のあるまちづくりを行っており、茨城県に対してご期待いただきたいと考えている。

続いて、茨城県婦人会館理事長から以下の発言がなされた。

女性の立場から個人的な考えを述べたい。

「公園の中の国際政治都市」という構想からは、緑の環境の中に、いわゆる都会のごみごみしたところに比べて本当に素敵な国際政治都市ができるのかなという感想を持った。

環境への負荷の少ない都市をつくりたいという構想を持っていることは、非常に大事だと感じた。これは、狭いところではなく広いところに種々の施設が点在するという環境の中でこそ実現できるのだと考えている。女性とは限らないが、県の緑を守ろうという運動の場がいろいろあり、そこでも非常に積極的な意見が出ており、運動に参加している方々は地域づくりに非常な熱意を持っている。従って、茨城県に首都機能が移転することになれば、おそらく県と積極的に協調し、環境への負荷を少なくするような都市づくりに一般の女性たちも積極的に協力すると考えており、その点を強調したい。

続いて、連合茨城会長より以下の発言がなされた。

県民の一人として、この事業に対して非常に大きい期待を抱いている。茨城県の場合、平坦地で可住地面積の非常に多いためかどうか分からないが、あまり目立ったものがない。しかしこれは逆に言えば開発しやすい部分が多分にあるということだと考えている。筑波研究学園都市ができた当初は、西部の町へ行った様な雰囲気だったという話を聞いたことがある。赤ちょうちんがあるだけで、本当に国際学園都市ができたはずなのだが、住んでいる人は東京に帰りたいと考えていたという話を労働組合の立場でも聞かされていた。茨城県では、そういう経験を生かした形で首都機能の移転する新都市づくりを立派に成し遂げられると考えており、大歓迎をしたい。

次に、茨城中央農協理事長より以下の発言がなされた。

首都機能移転に関連する土地の約3割が農協の管内であり、種々の開発も当農協の管内で進められている。それらについて、県とも協力しながら、開発を進め、併せて農業の施設化等も進めている。筑波研究学園都市の周辺の農協では、直売場が盛んとなり、当農協の立場から、首都機能が茨城県に移転すれば、新都市の方々に安心できる食料の提供ができるものと考えており、茨城県への首都機能移転に期待をしている。

続いて、JC茨城ブロック協議会の会長より以下の発言があった。

青年会議所の活動として、まちづくりという観点からいろいろ運動を行っている。筑波研究学園都市においても、当団体が一つの文化ということで活動を行っている。筑波研究学園都市があの形で整備された当初は、そこに新しい都市としての文化がなかったという気がするが、人が集まり、そこで活動することによって、今では、我々の団体も含め、種々のまちづくりの運動が行われている。その意味では、茨城県民は、行政も含めて、国家的プロジェクトをうまく成功させてきたと考えており、また、国家的プロジェクトに対して非常に恩恵を受けてきたという県民感情があるのではないかと考えている。茨城県民の特性として、素朴で開放的という感じがするが、その意味では、首都機能が茨城県に移転して、新都市の中で、地元にいる人間と新しくそこに移り住んできた人間とがうまく交流し、その中で新しい形の文化が生まれていくと考えている。

続いて、小川町長より以下の発言がなされた。

町では、県と一体となって、運輸省、防衛庁と、百里飛行場の共用化を一日も早く実現するために努力している。

小川町はC地域に該当し、東京から100km圏内にある町であるが、人口密度は1平方キロメートルあたり200人である。その半分は街の中心に住んでおり、町の大部分は1平方キロメートルあたり100名以下の人口密度である。平地林の中でクヌギ林の中に20年ぐらいの木があり、シイタケの原木として売ることも可能であるが、一度切ってしまうと、あとの手入れができないので藪になってしまう。このため、土地の所有者、農家の方々は売りたくても売れない状況で、土地を持っていることが負担になっているというのが現況である。委員の方々には、土地の取得の容易性が高いということをご認識いただければと考えている。

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