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三重県現地調査意見聴取議事要旨

1.日時

平成10年10月12日(月曜日)15時30分〜17時30分

2.場所

鈴鹿サーキット フラワープラザ 2階ハナミズキ

3.出席者

(審議会委員)

石原会長代理・部会長、野崎部会長代理、石井(進)、石井(幹子)、宇野、堀江、牧野各委員(7名)

(専門委員)

池淵、戸所各専門委員(2名)

板倉大都市圏整備局長(事務局次長)他

4.議題

地域の概況について、首都機能移転に関する対応方針について、事前質問事項に対する回答について、意見交換等

5.議事の要旨

今回は、三重県の首都機能移転先候補地の現地調査を行った後、地域の概況、首都機能移転に関する対応方針について関係者より説明が行われ、引き続き意見交換が行われた。

(1)地域の概況について

三重県知事より以下の説明が行われた。

鈴鹿山麓地域というと、山間の地という印象を受けるが、実際は現地での視察、あるいは資料にある航空写真のように、伊勢平野の平坦で、なだらかな里山が伊勢湾から鈴鹿山脈まで続き、海から山に至る多彩で豊かな自然に恵まれ、海に開かれた開放感のある土地柄である。

鈴鹿山麓地域は、西日本国土軸、日本海国土軸、太平洋新国土軸などの国土軸が集まる地域で、前項から東京を経由しないアクセスが容易にできる地域である。

鈴鹿山麓地域に建設される新都の基本理念は、地域に住む住民、市民一人一人が主体的に取り組むことが必要で、その際、新しい地球社会のあり方を考え、その創造に積極的に関わろうとする地球市民、豊かで美しい国土を守り育て、様々な制度疲労を引き起こしている日本の社会経済システムの変革に主体的に取り組む日本市民、自らの住む地域の町づくりや村づくりに責任を持つという意味での地域市民、という3つの役割を常に考えながら行動することが重要であることを提言している。

また、鈴鹿山麓地域は、国土の中央に位置し、豊富なインフラに恵まれた世界と国土を結ぶ多様な交通の結節点。日本の精神文化の揺籃の地である奈良、京都と連携した歴史文化、日本のふるさと伊勢神宮、熊野三山など世界的意義を有する固有の地域文化。環境、新素材、バイオなどの先端技術の集積と国際環境技術研究移転センターを中心とする環境再生、環境技術移転などの先端技術と学術研究機能による環境共生への取り組み。中小都市の分散配置による多極分散型の県土構造。歴史、風土に基づく個性ある中小都市群の連携。鈴鹿サーキット、志摩スペイン村、伊勢、志摩、熊野など多様なリゾート、レジャー資源で、これらの地域のポテンシャルを最大限に活用した新都づくりが必要であると考えている。

新都市の基本コンセプトとしては、行政改革と地方分権をはじめとした一連の改革を推し進める契機となる平成の改革を進める新都。一極集中を求めず、小さく光る中心都市としての国土の均衡ある発展を目指す新都。リニア中央新幹線、高度情報通信ネットワークなど、我が国が誇る最先端技術に支えられ、技術立国のシンボルとしての技術と文化を活かした新都。21世紀の世界の最も重要な課題の一つである地球の持続的な発展に寄与する環境共生都市の形成を進める新都。世界と国土を結ぶ多様な交通軸の結節点としての地理的優位性を活かし、開かれたネットワーク型都市を形成する新都としている。

鈴鹿山麓地域に立地する新都の国会周辺のイメージ図では、国会には、リニア中央新幹線、地域の在来鉄道などが乗り入れ、国会議事堂は、三重の風土にとけ込む生なり文化の象徴としての木造を主体とした建築となっている。

新都の規模と首都機能の分散配置について提言している。1つは、行政改革や地方分権の推進により小さく効率的になった首都機能が新都に移転することを想定。新都の成熟段階の面積、人口も、国会等移転調査会が示した規模の約半分の人口30万人、面積4,800haを想定。

2番目に、新都の都市構造は、首都機能を1ヶ所に集中させず、自然環境との調和、混雑緩和等の観点からいくつかのクラスターに分散配置。

3番目は、新都関係者が一般の県民と一体的に居住するよう、新規開発地区と既存市街地との連携を図ることとしている。

新都内とそれを取り巻く交通網の現状と整備計画であるが、2つの国際空港の利用が可能となる。また、第二東名・名神高速道路など、高規格幹線道路網などが整備。情報通信網の整備により、新都と日本各地、世界各地とのアクセスが可能となる。

また、地球環境時代のモデル都市である環境共生型の新都を、市民参加により建設すべきことを提言している。

最後に、首都機能移転についての本県の基本的な取り組み姿勢を説明したい。

首都機能移転は、大きな変革の時代において、地方分権、行政改革、規制緩和を推進し、世界に通用する日本、あるいは新しい社会システムへの転換を図るための仕掛けとして、極めて大きな役割を果たすものと認識している。首都機能移転は、国家百年の大計ともいうべき重要な案件であり、いたずらに誘致合戦を行った結果、首都はやはりこのまま東京でよいということになることだけは避けなければならないと考える。

こうしたことから、まずは東京から首都機能を移すこと。移転先は、条件の優れた国土の中央部へ移すという方針のもと、近畿圏、中部圏と連携し、中央地域への移転を推進すること。こういった取り組みの中で、鈴鹿山麓地域、畿央地域とも首都機能移転先として優れた条件を備えていることを主張したい。

(2)首都機能移転に関する対応方針について

最初に、三重県議会議長より以下の発言がなされた。

鈴鹿山麓地域は、日本列島の中央部という点で非常にバランスがとれており、東西南北どこから来ても、どこへ行ってもアクセスが良好である。また、日本の心のふるさと「伊勢神宮」という日本の精神文化の原点となる歴史、文化を有している。

地理的条件以外に特筆すべき問題は、水の豊富さである。鈴鹿山麓地域は、過去に渇水はほとんどない地域であり、既に将来に対応した水が確保されている。

その他、地震、災害等に対する安全性、高速交通網の整備等、優れた条件を備えた本県への首都機能の誘致の要望は早くから取りざたされていた。三重県議会では、平成6年頃より、多数の議員が本県に首都機能誘致を積極的に働きかけるべきとの見解から、活発な論戦が行われ、知事に対しても推進に向け激励発言が送られてきた。

こうした状況から県議会としても、知事とともに広く県民に理解を求め、県が一丸となって誘致、推進にあたる姿勢を明らかにするとともに、平成8年9月の定例会において、優れた条件を備える三重県に首都機能移転がなされるよう、首都機能移転に関する決議を可決した。その後、さらに議会の意思を明確にするために、平成9年5月に首都機能移転・地方分権推進調査特別委員会を設置し、首都機能移転の推進に関する調査を精力的に行ってきた。

また、東海北陸7県議会議長会の決議により、愛知、三重、静岡、岐阜の各県議会の特別委員会の正副委員長で構成する首都機能移転東海4県議会連絡協議会を設置し、4県における情報交換や要望活動など、中央地域への首都機能移転に関する要望を行ってきた。本年の8月には、首都機能移転東海4県議会連絡協議会の申し出により、近畿2府7県議会議長会において、中央地域への首都機能移転に向けての取り組みについて、私からも提案をした。

是非とも計画通り候補地の選定が行われることを願っている。

続いて、鈴鹿市市長より、以下の発言がなされた。

地元の7市町で組織している、鈴鹿山麓地域首都機能移転推進協議会を代表して意見を述べたい。

鈴鹿山麓地域は、鈴鹿の山々に沿ったなだらかな丘陵地であり、東には伊勢平野から伊勢湾を臨み、山から海に至るまで多彩な自然や水資源に恵まれた地域である。自然との共生といった観点からの都市づくりが求められる時代にあって、21世紀の首都にふさわしい条件を備えている地域であると考えている。

また、当地域は、降雪も少なく、地震も少ない。そして1年を通じて割合温暖な気候であることや、山林などに覆われた丘陵地を中心に、開発可能区域が多いなど、首都機能移転の候補地として好条件はいろいろとあるが、何といっても、地理的に日本の中央部に位置していることである。今後とも、東西の文化や経済が交わる地域として、国土全体の発展に果たす役割はますます高まるものと考えているので、必ずや将来的には、日本全土の交通拠点として、国内外への交通ネットワークを形成していくことができるものと確信する。

我々7市町村は、こうした共通認識のもと、一昨年9月から鈴鹿山麓地域首都機能移転推進協議会を組織化し、誘致活動を進めてきたところである。また、これに呼応するかたちで、関係7市町の議会においても推進決議がなされるなど、この鈴鹿山麓地域への首都機能の移転を実現しようと、積極的な姿勢で臨んできた。

この首都機能移転という未曾有の国家プロジェクトに当地域が関わることがあれば、こんな名誉なことはない。東京一極集中の中央集権的な体制を一新し、地方分権を目指した新しい時代を切り開くための大事業に関わりながら、21世紀にふさわしい国土づくりに大いに寄与したと考えている。

続いて、中部経済連合会副会長より、以下の発言がなされた。

経済界としては、この首都機能移転問題は、非常に緊急性のあるプロジェクトであると考えており、是非とも早期にかつ着実に進められることを望む。その理由として、1点目は、行財政改革あるいは地方分権問題という現在の国家的な大きな国策を実行するための非常に大きな契機であり、そしてまた、その一つの大きな結論ではないかと考えている。首都機能を移転することにより、初めて政府というものは一体どういうものであるべきなのか。官と民、あるいは国と地方の役割分担等についての議論がなされ、その結果将来の政府の姿が固まらない限り、首都機能移転は実現できないので、そういったことを議論していく一つの大きな契機となると考えている。そして、スリムになった政府の機能を分担することによって、新しい国づくりが進むことから、今後の国造り、あるいは行財政改革、地方分権の全ての日本の改革の出発点になるものであると考えている。2点目は、東京問題の解決に緊急性が伴ってきたという実感を持っていることである。東京へ行くと、いろいろな意味で非常に逼塞感、閉塞感あるいは圧迫感を受ける。東京の通勤、通学問題あるいはその他の交通問題、水資源問題、災害に対する対応あるいはゴミの問題、いずれをとっても東京問題の解決は我が国の緊急の課題である。やはり、早く首都機能を分担して、東京はわが国の経済中枢としての機能を十分に果たすことが、これからの国のために一番大事なことだと思うので、東京問題を緊急に解決するためにも、この首都機能移転問題を緊急性のあるものとして推進されることを望んでいる。

次に、中部経済界としての提言であるが、首都機能の移転先として、この三重・畿央地域ないしは鈴鹿地域を含む中央地域が最適な場所であると確信している。理由としては4点ある。

第1は、国土の中央にあるということで、全国からアクセスしやすい。今とは違って、陳情に出向く必要はなくなるかもしれないが、やはり首都というのは一つの象徴であるので、日本国民が等しく往来のしやすいところにつくるべきであると考える。その意味で、この地域は適切な場所だと思う。

第2は、ブラジリアのように何もないところに新しい都市をつくるのは現実的ではないと思う。その意味で、既存のインフラが活用できるところ、あるいは既に計画されているインフラが使えるところに移転することが、コストを下げる大きな理由になると思う。この地域は、既に東名・名神高速道路あるいは新幹線、国道1号線等の恩恵を受けている地域であるし、さらに今後、第二東名・名神や中央新幹線など、新しい計画が既につくられている。これは首都機能移転の有無に関わらず、21世紀に必要なものばかりである。そういうものがそのまま使えることから、この地域は、効率的な首都機能移転を行うための最適な場所であると確信している。

第3に、適度な都市集積のある地域だということである。何もない過疎地あるいは何もないところにい、新しく首都をつくることは現実的ではないが、この地域は既に適当な都市集積がある。知事の説明にもあったように、クラスター状の都市をつくるには適切な集積がある。また、人口密度も、首都圏、大阪圏に比べてはるかに低く、これからの発展の余地の非常に大きい地域である。

第4に、東京との距離であるが、あまり近ければ一体化して移転の意味がないし、遠すぎれば経済首都との間の連携が不便となる。まさにつかず離れずという適切な距離を持っているのが、この中央地域の各候補地であると思う。

以上の4点で、我々はこの中央地域が首都機能移転の受け皿として最適な場所だと確信し、提案するものである。既に、西日本の経済6団体、北陸以西の団体が全て、この中央地域へ移転すべきであるとの決議をしていることも、そのことを物語っている。

最後に、候補地を抱えている本県では、地元の議論が比較的活発であると思う。また、これからも活発に議論を展開するために経済界としても、努力していきたいが、全国的に眺めた場合に、必ずしも論議が活発であるとは言えないと思う。首都機能移転というのは、国家百年の大計をなすのであるから、誘致や賛成・反対という次元の問題以前のものである。首都機能移転の候補があるなしに関わらず、これからは全国的な論議の中で進められるべきであると思っている。

(3)事前質問事項に対する回答

三重県総合企画局理事より、事前質問事項に対する回答について、以下のとおり説明が行われた。

意義と効果に関する質問のうち、国土軸について、どのような範囲に影響があるのかという質問であるが、地域文化の出会いと交流の場ができるということで、多様で特色のある生活、文化、産業等の形成が促進される。東京を経由しない、東京から独立、自立した国土軸あるいはそれぞれの国土軸が水平的な構造への転換が行われるのではないか。

次に、東日本あるいは九州、四国への影響であるが、九州、四国については、首都機能により近いところになる、あるいはアクセスが便利になるということで、その地域の活性化が図られると考えている。北海道、東北については、西日本との交流が深まり、東京一極集中からの脱皮を期待する。

次に、全国的な交通ネットワークの形成への影響であるが、東京を中心としたネットワークと、新都市を中心としたネットワークの2つの二元的な交通ネットワークが形成されると考えている。

続いて、新都市づくりについてであるが、都市像、ライフスタイル、文化についてどう考えるか、どこにどのような都市イメージを考えるかということであるが、三重県の特徴としては、海、山、川といった豊かな自然環境を背景としたゆとりと潤いのあるライフスタイル、あるいは環境先進県として、ICETT等の施設あるいは先端的な取り組みを生かした、環境に配慮した環境共生型の都市づくり、さらには、伊勢神宮の素木づくりに象徴されるように、「自然のまま」、「ありのまま」、「生の文化」や、あるいは20年に1回建て替えるという式年遷宮というものがあるが、建て替えて捨てるのではなくて、その前の木を伊勢神宮の末社の方で使うという循環思想の文化の地である。そういった日本の伝統文化を生かした、国際交流豊かな文化づくりが行われるのではないかと考えている。

次に、現地に即した都市づくりのイメージであるが、三重県は中小都市が散在した町が展開している。新都市づくりも中小都市が散在するいわゆるクラスター型の配置が行われるため、今現在の三重県の町づくりの延長線でものが考えられるのではないか。あるいは、「海のまち」、「森のまち」ということでの環境共生型が具体的にイメージできるような地域であるということを考えるとともに、提言としては人口規模が小さな、すなわち周辺の既存都市を活用するということで、スリムな都市づくりができるのではないかと考えている。

次に、交通アクセスであるが、リニア新幹線以外の東京とのアクセスの改善方針については、クラスター間の交通体系の整備、あるいは東京との連絡では、在来線の新しい車両の投入や、新幹線と在来線の直通運転あるいは在来線の複線化を図っていきたいと考えている。

中部国際空港へのアクセスについては、現在のところ、道路、鉄道それぞれで1時間くらいと考えているが、道路に関しては、第二名神などの高規格幹線道路、鉄道に関しては西名古屋港線の延伸によって、現在の1時間が40分くらいに短縮される。あるいは四日市からの海上ルートでは、30分程度に短縮できると考えている。

次に、土地取得の容易性についての判断であるが、この地域には、約14,000haの開発候補地が広がっていて、保安林、自然公園の土地利用規制がない。あるいは適度に廉価な価格で、あるいは開発構想が以前からもあって、地元の反対のないエリアであり、土地取得は容易であると考えている。

続いて、東海地震の影響あるいは地震対策ということであるが、まず、東海地震の影響については、本県では全域にわたって震度5弱から5強と予想している。対策としては、軟弱地盤を避ける。最新技術による耐震構造、あるいは避難地や緩衝緑地を確保する防災性の高い都市づくり。さらには情報通信ネットワークの整備による危機管理能力の向上といった対策を考えている。

東海地震の際のネットワーク上の対応については、現在、既に複数ルートが確保されていることから、被災の際には復旧活動に迅速に対応できると考えている。

災害の際の緊急災害対策の司令塔としての機能については、ネットワークが完備されていることから、関西圏、中部圏等との連携、あるいは資源を活用して復旧、復興に早急にかかることができると考えている。

次に、水供給に関して、長良川河口堰からの導水を考え、既に中勢水道、北勢水道の供給事業に関わっており、平成19年度までには鈴鹿山麓地域への導水が可能と考えている。それ以外に、工業用水の転用や水循環システムの構築、あるいは山林を環境林として育成するなどの水源かん養機能の醸成によって、水資源の確保は可能ではないかと考えているが、さらに、下流域へは、河口堰からの導水ということで、影響はないと考えている。

次に、既存都市との関係で、名古屋との関係、あるいは名古屋との連坦の恐れについてであるが、当然に、名古屋の機能を十分活用することを考えているが、60kmという距離、木曽三川があること、あるいは自然的土地利用の保全措置によって、連坦を防ぐことは可能であると考えている。

続いて、自然環境と共生した街づくりの具体的取り組みについてであるが、「環境調整システム」と言って本年度から、県の行う公共事業については、計画段階からアセスメントのようなことをどんどん実施していこうということである。あるいは知事の指導により、県民あるいは市町村とのコラボレーション(協働)ということを掲げており、あるいは環境先進県を標榜しているので、地元と一帯となった環境共生都市づくりができると思う。

また、循環型都市づくりの具体的取り組みについては、ゴミの固形燃料化を進めており、3つほどの広域組合が着手あるいは準備を進めている。またゴミの分別収集モデル事業として、生活スタイルからも循環に取り組んでいきたいと考えている。

環境面での地域の合意の取り組みについては、先に述べたように、地域住民とのコラボレーションということが、三重県政の一つの方針であるので、広く地域住民の意見を聞くことについては、十分に対応できると考えている。環境影響評価についても同様である。

次に、隣接県との連携であるが、既に説明があったように、中部圏、近畿圏において知事会や県議会の集まりができている。

移転による地方自治体の見直しということについては、新都市においてはクラスター的な配置を考えているが、それがまとまるということもあるだろう。その意味で、新都市がどのような形態になるのかを踏まえながら、今後特別法制については考えていきたいが、その際には地元の意見を十分に聞いて尊重していきたい。

次に、移転に対する地元住民の受け取り方、受け入れ意向についてであるが、取り組み状況としては、全県下で県、市町村、経済団体等による推進協議会を設置している。さらには地元市町村ということで、鈴鹿山麓地域で7市町の集まりが進んでいる。さらに伊賀地域についても畿央高原地域でも同様の取り組みが進んでいる。

次に、新都市の運営コストであるが、これについては、中部圏、関西県の大都市機能を十分に活用する、あるいは関西文化学術研究都市や伊勢、鳥羽の観光リゾート地帯といった機能も活用することにより運営コストが節約できると考えている。

(4)質疑応答

三重県側の説明の後、以下のとおり質疑応答が行われた。

・第1に、本日現地を見て、素晴らしい環境に育まれた、伝統と文化の地であることを認識したが、気になるのは、山砂利採取地域が結構見られたことが気になる。私の経験では、このような地域は土地利用的にかなり複雑になっていくという恐れと、利権関係が非常に難しくなる可能性があるのではないか。お聞きしたところ、民有地が多いということで、このような点を考えると、土地取得などの面でいかがなものか。

第2に、国土の中央部、真ん中という意見があったが、それに関して、パンフレットの図に三重県を中心にして同心円を描いてあるが、トンネルや橋でつながっている日本の4つの主要な島について、三重県を中心に考えると、九州の鹿児島あたりは、仙台と同じくらいの距離になる。つまり、地理的に必ずしも真ん中とは言えないのではないか。人口重心には近いが、地理的な中心という点では、かなり西に寄っているのではないか。

全国的に考えると、首都機能移転は全国民に夢を与えていかなくてはならない。そういう意味では、東の人たちにとっては、首都機能がだんだん西の方へ行くと夢がなくなるということがある。それに対して、首都機能がこの地に来るということに特段の理由があれば聞かせて欲しい。

→第1の点の土地の権利関係等については、民有地が多いため、つらいところも出てくると思う。当県としては、クラスター状の開発とすることで対応したい。

また、日本の真ん中ということについては、夢を持たせよというのは、当然のことだと思うが、一つは、やはり、京都、奈良、伊勢、熊野三山に近いということがある。新都市の建設にあたっては、既存のインフラを最大限利用し、文化、伝統もある意味で吸収する。それによって、新都市建設の費用を5兆円程度と試算している。そういった意味でも、名古屋あるいは大阪と言ったインフラ整備、あるいは京都、奈良、伊勢といった古い歴史を存分に味わえる、共生できる都市となっている。

もう一つは、海に近いので、海と森の新都ということであるが、鈴鹿山麓という名前から、鈴鹿山脈のイメージが強い方が全国的に多かった。現地を視察していただいて海が近いことを実感していただけたと思うが、海、森が併存している場所がいいと思っている。

また、西日本へ偏りすぎではないかということについては、三重県を真ん中にして、東西に23都道府県が分かれている。また、人口重心ということも大きなわかれどころではないかと思う。真ん中の取り方は、それぞれの地域によって違ってくると思うが、三重県も十分真ん中であることを主張できると思う。

・水供給の安定性について、水は十分確保されているということで、その根拠として、長良川河口堰からの導水ということであったが、ある時期、水はもういらないという話もしていたと思うが、そういったものが、また回復して確保できる事情になっているのかどうか。

また、工業用水の転用で十分まかなえるということであるが、これはどの候補地でもいわれることであるが、その可能性について聞かせてほしい。

それから、「里山」という言葉が非常によく出てきて、これは人間が非常に長い歴史の中で培ってきた一つの資源であると思っている。生態系あるいは水源かん養、人との接点といった中で、この開発と保全ということについて、保全したいというニーズも相当あるだろう。そのあたりについて、クラスターによる環境共生型の都市づくりを訴えていると思うが、里山の開発行為と保全行為のバランスをどのように描いているのか。

→水の供給の問題であるが、行政としては、「水は要らない」ということは言っていないと思う。様々な運動が起こっていて、象徴的な問題であることは認識しているが、鈴鹿市、河芸町、津市については河口堰によって、依然我々が長良川から水を引いていた部分の水位はあがるから、そこから十分取水できるということで、すでに水の供給を始めたところもある。そして、循環型の社会になってきているので、全体の水としては問題ない。さらにいっそう水が必要な場合は、工業用水等の問題などもこれから大きな行政課題であると思っている。工業用水、農業用水、上水の使い分けが今後議論になってくるだろう。そういうところも見据えて水供給を考えている。

次に、里山については、非常に頭の痛い問題であるが、従来の開発とは全く違った、世界のモデルになるような新都をつくらなければ意味がないだろうと思うので、保全というだけではなく、創造というか、ビオトープのような感じでとらえている。

したがって、従来の人の住まいというものを考えていくときに、緑あるいは水、空気というものは今まで以上に圧倒的に配慮しなければならないと思う。そういった意味合いから、今度の新都の創造については、挑戦する価値があると思っている。今までのキャッチアップの形できた日本人の感覚を変えることができれば、それだけでも大変大きなことだと思う。

もう一つは、どうしてもキャッチアップの時代であると、捨てる文化ということに価値があったように思う。今、歴史街道フェアという祭りをしているが、古代からの道の歴史街道を18本発掘して、地元の方々が自分の足下の文化や伝統を見直すという運動をしている。従来はややもすると、高度成長を達成するために、埋蔵文化財は闇から闇へと葬るということもなきにしもあらずということだっただろう。今後は残す文化の時代であると考えている。そういった新しい概念というか、環境の面についても循環型の本当にすばらしい地域社会をつくり出すことができればと感じて、一番重要なポイントであろう。またこのことをオープンに情報を開示した中で住民と話し合いをすることがなければ、新都の形成はできないであろう。そこが一番の焦点になるだろう。これは挑戦する価値がある課題であると感じている。

・首都機能移転ということが起こると、その移転地域における地方行政組織が変わらなければならないだろう。その点については住民の方々にどう情報提供し、あるいは意向を聞くのかということが問題である。国会等移転調査会の新都市部会の中でいろいろと議論があったが、首都機能の移転先の地域については、直轄地域、あるいは都道府県と同格の公共団体を新設するといった議論もなされている。そういう可能性がゼロとは決して言えない。

そういう点については、ある程度決まった中で、後で「住民の意向を十分に認識して尊重した上で」と事前質問への回答には書かれているが、いろいろと住民に対してPRするときに、そのような可能性もあるということを踏まえた質問をすることはいかがであろうか。

それに関連して、全国の県民意識調査をNHKの放送文化研究所の世論調査部が行っている。平成9年1月に発表されたものの中で、首都機能移転に関する質問を行っているが、三重県では、首都機能移転に賛成だが、自分の県に来ても良いという人は、23.7%、首都機能移転に賛成であるが他の県にいってほしいという人は、39%、首都機能移転には反対が、16.4%であるから、55.4.%の方は反対または自分の県に来てほしくないという意向が出ている。

これは、三重県の場合だけではなく、愛知や岐阜でも同様の状況で、自分の県には来てほしくないという方が多い県が多い。そういう意味から、今指摘した点についても、決定する前にはこのようなことを住民の方々に示す必要があるのではないか。

また、今回整備する30万人の都市に要する費用が5兆円という試算が出ていたが、一つの地方公共団体がつくられると考えると、その中のクラスター部分については国が中心となって民間と一緒に整備することになると思うが、インフラ整備は、例えば下水道を考えてみても、完全に公共下水道でつくられる。それから流域下水道ができ、その浄化については、3次処理まで行ったきれいな水を流していく。三重県には、かつて日本一きれいな川があり、今は3番目だが、それをもとへ戻していくようなことも考えている。そういう状況の中で、今の下水道整備は、相当経費をかけなくてはならないはずである。その場合、そのクラスターの中だけではなくて、圏域の中の関連する市町村でも同じような状況で整備するが、その整備は明らかに地方公共団体がかなり負担しなくてはならないはずである。

そういう点で、それは地方公共団体が負担すると同時に、地域の住民は、今までよりかなり負担増になる。今までの浄化槽や農業集落排水事業などの負担より、比較にならないほど負担が多くなる。そういう点についても、住民に十分説明し、その意向を踏まえた上での取り組みが最も必要ではないか。

また、あるニュータウンの経験から、2,700haのところで、人口30万人の都市をつくると、その整備はほぼ完了するが、その場合に、その周辺の市町村の負担が大変になった。東京都に対して大きな負担の要望が出た。住民は、インフラを整備して、生活環境を改善することは当然であるから要望する。その辺について、十分考えていかなくてはならない。

首都機能移転について、先ほどNHKの世論調査結果を紹介したが、平成9年1月に総理府が行った世論調査でも、東海地域、あるいは近畿地域では、移転を希望する方々は34〜35%、反対に希望しないという方は53〜54%となっているので、住民の意向については配慮していただきたい。

→一概には答えにくいが、やはり我々の考え方としては地方分権を進めていくべきであると思っている。知事になって考えるのは、国と都道府県と市町村の関係が非常に曖昧で、責任の所在が明らかになっていないところに大きな問題があり、仕事をする上で情熱がわいてこないという問題が明らかになってきているのではないか。環境、産業廃棄物の問題は特にそうであると思うが、そういったことを明確に自覚しながらやっていかなければいけないと思う。

地方分権推進委員会で、例えば機関委任事務の廃止ということが決まるのは、とても大きいことであり、国の下請け機関が8割くらい県にあるということは知られている。こういうシステムや制度がゆがんだままでは民主主義ということはあり得ないと思う。やはり成熟した社会、あるいは多様な国民の需要に対して多元多様な供給体制をつくるためには地方分権はある意味で欠くべからざる要素であると思う。

そうすると、その地方分権を進めていく上では、確かに理論的な進め方が一番重要であると思う。もう一つ、私の時代認識は、今明治維新より遥かに大きな革命期だと思う。農業革命や産業革命に匹敵する以上の大革命期だという認識があるし、全国民もそういった問題点を共有し始めつつあるのではないか。この革命期を乗り切るためには、リーズナブルな理屈や理論だけではいかない面もあるだろう。形から変えることも、とても重要であると思う。

三重県も様々な行政改革を行っているが、大きな効果があったと思うことは、週に1日だけ、服装をカジュアルウェアに替えて、ネクタイをとったことである。そして、女性の事務服も廃止した。そのように、形から入ると今まで自分たちの作り上げてきた既存のパラダイムについては何ら疑問を挟まなかった職員が、はっと気づくということがなければいけないのではないか。したがって、新たな価値観を創造する、新しい秩序をつくりあげるためには、首都機能を移すだけの大きなパワーが日本国内に充満してくることが非常に重要であると思って取り組みたい。

2点目は、行政体は、何かの権威がないとなかなか進まない。今まではキャッチアップで、昨日の生活より今日は少し豊かにしようという国民的なコンセンサスが得られた。これは、明治維新以来というか戦後50数年は、それで圧倒的に知らしむべからずで、制度的に全部それが補間しあったシステムができて、日本が世界に冠たる経済大国になれたということは、後生の歴史家が高く評価すると思う。しかし、残念ながら、ハード、ソフトの意味ですでに情報革命が進行しつつあり、世界の価値体系が大きく転換している中で、よらしむべし知らしむべからずという形は全く不可能になってきたと思う。

我々の情報公開の考え方は、事後お知らせの報告型ではなく、事前通知型で、意思形成過程、すべての問題を形成していく過程の中で最大限知らせていこうということである。すなわち、情報公開し、情報を共有しあって、お互いが責任を持ちながらということで、コラボレーションというのはそういうことである。

したがって、できるだけ小さな政府にして、民間の力が大きく発揮できるようにサポートするというシステムを作り上げていくことが、実は多元多様な需要に対して供給できる一番のものだと思う。したがって、アベレージ(平均値)の行政から早く脱皮すべきだと思う。

我々は公金を扱っているから、やはりアベレージ(平均値)の政治をさせられる。だから、そこをできるだけ切って、多元的供給を営利団体、非営利団体、民間がどんどん行う。そのようなシステムを作るために、形から入って、首都機能移転するぐらいの迫力が日本国家にあれば、21世紀は生き残れる。そのような感じがしている。

したがって、どんなにつらいことでも、情報を共有しあうということで、情報がインタラクティブ(双方向方式)に、リアルタイムに飛び交うため、もはや知らしむべからずでは全くいけない。事前にどんどん公表して、県民と行政が責任を持つ。という形のものが行政効率では一番高いという判断をして、県政を進めている。

最終的に、自立した地球市民というものを日本で創造できれば、これほどのインフラ整備、教育システムが整った日本では、まだ明るい未来が展望されるだろうということで、下水道処理の問題、クラスター外の地域の問題なども明確にオープンにしながら、県民と問題を共有しあっていけば、価値のあるチャレンジではないか。

続いて、三重大学教授より、以下の説明が行われた。

伊勢の国は日本で、鈴鹿山脈という東西線の山と紀伊山地という南北線の山が日本で唯一交わる場所であり、それが伊勢の魅力となっている。西日本の山はすべて東西線で、東日本が全部南北線になるので、そういう意味では、この伊勢の平野は、都市の風格をつくるとすれば、それは全部東向きの町になる。それに対して、畿央地域では、西向きの町をつくることになるだろう。同時に、このことは日本の東西の中央というよりも、東西の文化の接点、境界線であると言っても良いと思う。

これは、例えばこの鈴鹿山脈よりも800m高いところはブナ帯という東日本型の植生になるし、それより下はいわゆる照葉樹林帯となっており、この鈴鹿山脈はちょうど植生の境目である。大きく見ると、日本の文化がここで縄文文化と弥生文化に分かれるという言い方でも良いと思う。同時にそのことは、例えば鈴鹿山脈を境にしてこの突端に関ヶ原があるということもそうであるが、角餅と丸餅に分かれる。例えば、こちら側は沢があるが、大沢というのが、こちらに来るとみんな大谷になるとここで地名上に大きく境がある。言葉の上では、三重県は木曽三川を境にして、東京風なアクセントはなくなり、関西風に変わる。同時に、ここではっきり言えることは、地形的な条件が大変すばらしいということである。これは、北勢地域で計算すると三重県の北の場合には、山地の面積が約25%しかない。丘陵地が13%で、台地と低地をあわせると60%である。先ほど里山の話があったが、すべて標高が100m以下であるので、きわめて地形の起伏が小さい。これは、切土、盛土をする場合にも、自然を守りやすいということで有利である。

この意味では、ここは日本の東西の文化のいわゆる十字路である。なぜかというと、実は神話の時から決められており、瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)が高天原から降りてくるときに迎えに来たのが猿田彦である。伊賀の国は猿田彦の娘の国であり、猿田彦の国がいわゆる日本をリードした。まさにその意味では、東京に対峙できる。東京もちょうど東京湾を持って、東に向いた唯一の地である。実は、このことが伊勢神宮が天照大神を誘致することになったのではないかと思われるし、その意味からすると、ここは唯一東の海から太陽が上がる場所である。

日本の海の上から見ても、伊勢湾と三河湾が東西に並ぶように、海の十字路でもあるということが、この地域の特徴である。

日本の中で、南に伊勢神宮を持っている三重県が環境先進県を訴えるときに、キリスト教やイスラム教などの世界中の聖地でもこれほどの緑を持ったところはない。東京の場合には、あえて明治神宮をつくらなければならなかったが、ここは2,000年来まさに天然の世界に冠たる聖地を持っている。

それと同時に、三重県の南側は黒潮文化圏で、沖縄につながるような、非常に共通した海洋文化を持っている。三重県というのは日本中のどこから来ても東であり、西であり、南であるという非常に特異性を持った場所に位置している。

続いて、三重大学助教授より、以下の説明が行われた。

三重県では、東海地震を想定すると、震度は5や5の弱か強であるが、地震の想定調査を行うとともに、3年前の兵庫県南部地震を受けて、改めて三重県地域防災計画被害想定調査を行った。その中で、東海地震を想定して、どういう被害が起こるかということを想定しているが、三重県の紀伊半島の南の方である尾鷲、熊野の紀州地域で起こる地震、すなわち東南海地震の場合、マグニチュード8.4で発生して、三重県の北部中部でどのような被害になるかというと、伊勢湾の西岸地域では桑名、四日市、鈴鹿、津市にかけて軟弱地盤が広がっているので、液状化が想定され、その対策が必要である。

鈴鹿山脈の東側では、活断層が南北にのびている。海洋型地震と直接関係はないが、海洋型地震というものは100年、150年周期で発生するのに対して、直下型地震は1,000年と桁が違う周期で起こるが、そのような地域である。期間的に見ると、伊勢湾地域を90度回転するとちょうど3年前の阪神・淡路地域の様相に相当する。まず、海があって、平野があって山地というパターンであるので、地震がいつ起こるかわからない。予測は非常に難しいがそういう位置になることを基本的に押さえておいて、安全な首都機能移転を行うべきであると思う。

続いて、東京大学助教授より、以下の説明が行われた。

国土計画の観点、環境共生都市という観点、市民による都市づくりという観点から補足したい。

1点目の国土計画の観点については、先ほど、東日本の人たちにとっては夢がない可能性があるという指摘もあったが、ここで重要なのは、首都機能移転というのは、ゼロ・サムゲームではないということである。もしこれが、ゼロ・サムゲームであれば、西へ行くと東日本にとってはマイナスの可能性があるが、ゼロ・サムゲームになるくらいなら首都機能移転をする必要がないので、これは必ずしもゼロ・サムゲームではない。

この場合に、三重県を含めた西側に首都機能が移転するということの非常に大きな利点は、やはりグローバル化の時代に重要になってくる知識産業やサービス産業の多様性、あるいは「複雑性」という言葉で置き換えても良いが、多様性をいかに担保するかということである。それが今後の21世紀の日本にとって非常に重要ではないかと思う。そういった多様性を確保する際に、やはり現状では、東京に依存するような、画一的な社会経済構造や行政システムになっているのは非常に大きな問題である。それを劇的に変えていくためには、明確に東京に依存しない場所であって、かつ大きな核になり得る場所に首都機能を移転することが最も効果的ではないかと思う。

そういったことを考えたときに、西日本地域を中心とする地域、東京を中心としつつ東日本を中心とするような地域がそれぞれの多様性を持って、適正な競争と交流を図っていくことによって、多様性のもとでの新しい発展が生まれるのではないかと考える。

2点目の、環境共生都市ということに関して、我々の方で、適地と思われる場所について、国土地理院の2万5千分の1地形図を使って、予備的な検討を行った。その結果、30万人程度の増加を想定するのであれば、非常に平坦な地形であるために、斜面縁地あるいは尾根線等に手をつけずに、すなわち、大きな環境あるいは景観上の改変なしに、十分埋め込んでいくことが可能であると考えている。これは、既存都市も十分使う余地が残っていることも考慮して、そこを使うことも想定している。

クラスター状に配置することによって、循環的な都市づくりという意味では、非常に有効であるが、この場合、クラスター型の都市づくりをした場合の最大のアキレス腱は環境的にどこにあるかというと、やはり公共交通の面が非常に大きな問題になる。分散してしまうため、自動車型の都市になってしまっては、環境共生都市とは言えないわけである。

ところが、この三重県の最大の特質は、非常に強力な公共交通が既に存在しているということである。近鉄、JR関西線等。これは分散的な県土構造に支えられて、かつ名古屋、大阪間、あるいは観光事業などもあるので、既存の需要が十分にあり、クラスター状の都市を既存の公共交通に乗せる形で、補足的に線を延ばせば、十分公共交通で可能である。全体をカバーするのは大変だと思うが、少なくとも必要な部分については既存の交通網をうまく使うことによって、クラスターをつなぐことができると考えている。これが三重県でクラスター都市にした場合の最大の利点であると思う。

3点目は、市民による都市づくりということである。三重県は地方行政改革や環境対策の先進県であるということを非常に重要なポイントとして挙げておきたい。やはり都市づくりをしていく上で、市民主導の都市づくりをしていく上で非常に重要なのが、県民性の問題ではないかと思う。

三重県は東西のちょうど中心、分岐点、交流の中心にあったりとか、街道筋にある、あるいはお伊勢参りの伝統があったりして、外から見て非常に開かれた県民性を持っているということが特質ではないか。同時に、首都機能が移転するならば、外国人や他県の人がたくさん来るが、その際、伝統に則った洗練されたホスピタリティー(歓待)がある。そういった意味で、市民が作り上げていく都市づくりという面では、他の県が全くないということではないが、三重県にはその資質があるのではないかと判断している。

これらの説明に対して、以下のとおり質疑応答が行われた。

・海と森の新都構想の真ん中に、新都の国会周辺のパース(透視図)が出ている。先ほど30万人程度の都市であれば、現在の尾根線等地形に大きな改変を加えずに都市づくりが可能と聞いたが、このパースもそのように見てよいか。

→これはパースであるので、必ずしも完全にイメージしているわけではない。中心については、ある程度コンパクトに部分的にはまとまりつつ、居住地については、環境コンシャスなライフスタイルを生かしながら、スペースを持って配置しているという意味で、業務地区について、完全に緑の中に埋め込むというのはやはりなかなか難しいのではないか。

・三重県で考えている「森のまち」と「海のまち」という分け方をして、新都市をクラスター状につくっていくということには賛成である。図を見ると、四日市都市圏と津・鈴鹿・亀山の都市圏の2つの都市圏に分けられている。確かに四日市唐津までは電車で20数分と遠い距離ではないが、現実に新都市ということで、クラスター状にいろいろなものを配置していくということになると、この2つの都市圏を1つの移転先候補地とした場合、若干大きくなりすぎるのではないか。

そして、例えば四日市都市圏では、四日市という高度な産業都市がその中に組み込まれている。そうすると、それが果たして21世紀に向けての新都市としてよいのか。全体の重心がもっと鈴鹿あるいは南よりに移った方が、たぶん21世紀に向けての新都市としてふさわしいのではないかという気がするが、そういう意味で、四日市あるいは津、さらに伊賀の3つの候補地がどれも同じウェート(重要度)というよりも、三重県としてのウエート付けをする必要がありはしないかという気がする。

また、四日市都市圏と、津・鈴鹿・亀山都市圏を一緒にして1つのクラスター的な都市をつくるということになると、きわめて広範な市町村が新都市の行政範囲に入ってくると思う。そこにある種の特例による市をつくるということになると、それが三重県の中心部分をほとんど占めてしまうことになりかねない。そのあたり、クラスター状の都市を考えていく上で、それに対応する1つの地方自治のシステムというものも考えているのか。

→三重県はもともとクラスター状態であり、お伊勢さんで発達した県であるから、桑名、四日市、鈴鹿、津、松坂、伊勢のラインは、四日市が最大で人口28万人である。10万都市が並んでいて、コア(核)になる町がない。県都津市は人口16万人で、50万都市ではないのが弱点であるが、今後、交通や情報の発達で強さが発揮されるだろう。

もう一つは、名古屋や大阪、京都のインフラを存分に利用でき、安い街づくりを三重県内に当てはめると、従来ある公民館や図書館も混在で一緒にでき、新しくつくる筑波学園都市のようにはならないということを提案している。

一長一短はあるが、三重県の地理的条件がこのように成り立っているので、うまく首都機能の受け入れができると思う。

・国会等移転調査会が示した移転先地の9条件の中に、土地取得の容易性があるが、里山地域が民有地であることから、取得の容易性の面から見ると問題があるという気がしている。

土地の取得の容易さというのは、権利の活用の問題の先に、合意の形成があると思う。県民の合意の形成のもう一つ先に、首都機能を持ってくることの意義がどれだけ理解されているかという問題であると思う。そういう意味での21世紀の日本の姿をどういうかたちで県民に理解してもらうか。理解してもらうことによって合意形成のしやすさがある。合意形成のしやすさがあることによって土地取得のしやすさが出てくることになると思う。そういう点では、情報公開に先進的に取り組んでいる知事の覚悟を伺いたい。

→私としてはチャレンジしてもよいターゲットであると思う。例えば、用地を買うときに、どうやって買っていくかということをずいぶん議論しているが、例えば、「都市計画」という言葉はやめようと思っている。都市計画というのは官のお仕着せで、我々が計画をつくってあげるというイメージがあるのではないか。我々が道を造ってあげるから退きなさい、我々がつくってあげるから文句ないでしょうという発想から、「このようにイメージをした町をつくろうと思いますが、あなた方はいかがでございますか。」と事前にお知らせするという訓練をしていかなくては、我々の目指す自立した地球市民というのはなかなかつくれないと思う。

用地取得するということが大きな条件の1つになっていることは承知しているので、合意形成を見事にやり遂げることができれば、21世紀は花開くという決意で取り組んでいきたい。

関西経済連合会の常務理事・事務局長より、以下の発言がなされた。

関経連は、会長が関西広域連携ということを提唱している。すなわち、今や府や県など1つの自治体で行政を考える時代ではない。経済界ももっと互いに連携すべきではないか。自治体も経済界も、関西全体という立場に立って、関西全体のいろいろな問題について考える場をつくりたいということを提唱した。自治体の首長の賛同を得て、今年の5月7日に、関西2府4県に加えて、三重県と福井県、四国の徳島県で関西サミットという集まりで、旗揚げした。このときに、首都機能移転の問題について特別決議を行った。それは、三重・畿央地域を含む国土の中央部への移転を、関西全体で促進していこうというものである。

また、西日本経済協議会で同様の決議をしたということが先ほど紹介があったが、その点を補足したい。西日本経済界というのは、北陸・中部経済連合会を東の端として、それより西の関西、中国、四国、九州の経済連合が集まっている協議会であるが、先日の10月8日の総会で中央地域への首都機能の移転を盛り込んだ決議を行った。これは今年のみではなく、過去3年間にわたって決議している。

関経連としては、首都機能移転は言うまでもなく、地方分権、行政改革、規制緩和などの様々な改革を進めていく上で是非実現すべき課題であるという基本的認識であり、その上で移転先は中央地域が望ましいと考えている。これは、人口分布、交通アクセスなど、いろいろな意味でのバランスから考えてのことである。

中部経済連合会とも従来から連携をとって、中央地域への移転を望んでいる。

三重県経済団体首都機能移転推進協議会長より、以下の発言がなされた。

日本の人口重心が岐阜県の美並村にあり、そこからまっすぐ南へ線を引くと、名古屋市がある。しかし、名古屋市は混雑しているので、首都機能移転先として、西がよいか東がよいかということを検討した結果、四日市や鈴鹿という結果を導いた人が、大津市にいる。私も関心を持って、ブラジリア、キャンベラ、ワシントンなどへ行ってみた。キャンベラのたたずまいは鈴鹿山麓と似ているので、直感的に鈴鹿山麓地域が適地であると感じた。交通アクセスもよく、日本の人口重心に近く、水も豊富である。工業用水は余るくらいある。また、港があるので、海外との結びつきもよい。

私は関東大震災を経験しており、そのときは四日市も揺れた。それから2ヶ月後には、東京から相当の人が避難してきた。先の阪神淡路大震災の時も大阪にいたが、三重県にはそのような大震災はない。そのように地盤も安定していて、地価も安いし、人情もよく文化も進んでいる地域であると思う。

日本青年会議所東海地区三重ブロック協議会長より、以下の発言がなされた。

日本青年会議所でも首都機能移転問題について、当然考えている。愛知、三重、岐阜、静岡の東海エリアの4県の中では、一昨年に東海地区に首都機能の移転を促したい。今年は、近畿地区の中で畿央地域が調査対象地域となり、一部が三重県であることから、三重ブロックとしても、両方の地域と関係を持ちながら取り組みを進めている。

現在の日本の財政事情からしても、トータルコストの安いところへ移転するのが一番重要ではないか。また、時間的な距離の一番よいところという視点もある。この地域は、飛行機を利用した場合、仮に台風等で中部国際空港が使用できなければ、関西空港への逃避も可能であるということで、緊急時にどちらの方向からも来ることができると言うことは、非常に優れていることである。

また、民有地が多くて、土地取得が難しいという話もあったが、三重県の地域性から言えば、NPO(非営利団体)組織が非常に進んでいる地域であり、どちらかというと田舎風潮であるが、みんなのことはみんなで考えようという風潮の強いところである。そのようなことから、ある程度のまとまった話は進んでいくのではないか。

河芸町長より、以下の発言がなされた。

新首都は、豊かな自然と調和のとれたものでなくてはならないと思っている。諸外国を見ても、ワシントンやキャンベラのような新首都であるべきだと思う。例えば河芸町と隣の県都津市にまたがる三重県の中勢北部のサイエンスシティ事業は、500haの開発を進めている。この事業は自然との共生ができ得る。21世紀へ向かっての未来都市を建設中であるが、構想段階で、ヨーロッパの先進地にも足を運んだ。ロンドン郊外のミルトンキンズやパリ郊外のマルスラマレー市などを視察した。都市開発とあわせて、自然を残し、畑や牧場、古い茅葺きの納屋があった。人間生活の原点というか、ヒューマンシティーというすばらしい光景が脳裏に焼き付いている。

こうした首都と人間が共生でき得る三重県の中勢北部のサイエンスシティー事業がそこから誕生したが、三重県は日本最大の内海である。波静かな伊勢湾、原生林を残す鈴鹿山系や宮川などがあり、大台山系など美しい自然に恵まれ、しかも県土の3分の1が自然公園に指定されている。また、広くお伊勢さんの名で知られる伊勢神宮があり、松尾芭蕉や本居宣長が輩出された。また、全国ブランドである松坂牛、真珠養殖があり、F1レースの鈴鹿サーキットなどもある。まさしく伝統ある歴史、文化、魅力ある観光地が非常に多いというのがその特徴である。

河芸町も、海に近く非常に緑あふれる町である。鈴鹿市、河芸町を含めた鈴鹿山麓のこの地域は、まさしく海と森の新都を基本的なイメージとして、新しい首都機能をクラスター方式による分散配置で、世界に開かれた環境共生都市を目指すものである。私は、新首都の候補地として、森と海に囲まれた、この豊かな自然と歴史を持つ鈴鹿山麓地域は、未来に限りなく可能性が実現できる地域であると思う。

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