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畿央地域現地調査意見聴取議事要旨

1.日時

平成10年10月13日(火曜日)15時40分〜17時20

2.場所

ホテルグランビア京都 3階 源氏の間

3.出席者

(審議会委員)

石原会長代理・部会長、野崎部会長代理、石井(進)、石井(威望)、石井(幹子)、宇野、中村(英夫)、堀江、牧野各委員(9名)

(専門委員)

池淵専門委員(1名)

板倉大都市圏整備局長(事務局次長)他

4.議題

地域の概況について、首都機能移転に関する対応方針について、意見交換等

5.議事の要旨

今回は、畿央地域(三重県、滋賀県、京都府、奈良県)の首都機能移転先候補地の現地調査を行った後、地域の概況、首都機能移転に関する対応方針について関係者より説明が行われ、引き続き意見交換が行われた。

(1)地域の概況について

京都府知事より以下の説明が行われた。

首都機能の立地については、新しく人の住む都市を建設するということであるので、純粋の業務機能が完備されたとしても、初期の筑波学園研究都市のように、赤提灯のような人間くさい機能がないと、住民の精神衛生上よくなく、いろいろと支障があった。このようなこともあるので、首都機能が立地する場所が閉じこめられた場所であると、国会議員や中央省庁の職員がノイローゼになったりあるいはヒステリックな議論ばかりしているということになると、国会の一大事ということになるだろう。

これに対応するプランを立てるにしても、新しい都市だけで文化、芸術、教育、生活、娯楽などのすべての機能を完結的に整備することは不効率であると同時に、歴史的なたたずまいなどというものはいくら投資をしても不可能だと思う。この点で、新都市だけで完結に行うということは無理であり、不経済であると思う。

その点、畿央地域においては、夕方仕事を終えてからでも京都や奈良、あるいは大阪などへ往復で行って来れるし、また休日や休暇の中では、三重県の海の幸、あるいは滋賀県の湖、レジャーも楽しめる。そういう点を十分に新都市のロケーション(立地)の面で配慮してほしい。

また、畿央地域から30kmのところには、関西文化学術研究都市が建設されており、その中に新しい情報機能を備えた国立国会図書館の関西館が来月着工の運びになっており、4年後に完成予定である。これは現在の国立国会図書館の分館ではなく、今の国立国会図書館が所蔵する2冊の本のうち1冊をセキュリティをかねて分散すると同時に、新しい情報メディアを使って国会はもちろんアジア全体にまでサービスをしようという機能を持つものであり、首都機能には不可欠なものである。このようなものがすでに近くに立地しているので、首都機能の移転に先立って待っているという気持ちである。

さらに和風迎賓館も、御所の一画に着工の予定である。このような条件の整ったところは他の候補地にはないと確信している。

次に、滋賀県知事より以下の説明が行われた。

畿央地域は、琵琶湖をはじめとする豊かな水や緑に恵まれた地域である。また交通の利便性からいっても非常に便利である。また、歴史、文化、学術も含めていろいろな資源や資産がある。このような優れた地域であるので、首都機能の移転先にはもっとも適していると思い、現在関係4府県で協力、連携して共同の取り組みを行っている。

今後とも広域的な連携で、住民あるいは財界、行政も一つになっていきたいと思う。21世紀の首都として世界に一定の情報を発信できるような都市ということも期待されると思うが、滋賀県は環境にこだわっており、環境共生型の都市としての条件が整っていると思う。

次に、奈良県知事より以下の説明が行われた。

畿央地域は4府県一体となって取り組む方針である。

この地域は大変自然に恵まれた、クラスター形成のしやすい場所であると自負している。同時に各地とも歴史、文化の遺跡等の整ったところで、新都市ができた際にはその背景として大変恵まれているのではないか。この点に是非着目してほしい。

交通等については、移転が決まった際には、それにふさわしい整備をしていただけると考えている。

次に、三重県知事より以下の説明が行われた。

畿央高原は国土の中央に位置し、西日本国土軸、日本海国土軸、太平洋新国土軸といった主要な国土軸が結集しており、環日本海地域と環太平洋地域の結節点でもある。関西及び中部県から適切な距離に位置し、二大都市圏の文化や経済基盤の活用も可能である。

また、全国からの多様なアクセスとしては、東海道新幹線、東海道本線、名神高速道路、名阪国道など、国土の幹線となる交通インフラが集約している。さらに第二名神自動車道、京奈和自動車道等の整備やリニア中央新幹線が計画中である。関西国際空港と中部国際空港の2つの国際空港が利用可能である。

次に、優れた災害対応能力として、東京都同時被災する可能性が低く、東京を経由しない多種多様なネットワークが利用でき、災害時のリダンダンシー確保が可能である。

また、歴史、文化の宝庫として、我が国を代表する歴史と文化、伝統を継承する奈良、京都に近接している。伊勢、飛鳥、近江など日本の代表的な歴史資源を結ぶ歴史街道計画が着々と進んでいる。

次に、豊かな自然環境として、伊勢湾、琵琶湖、若狭湾の3つの「うみ」をつなぐ地域である。琵琶湖国定公園をはじめ、多くの自然公園に囲まれ、豊かな自然環境に囲まれた地域である。国連環境計画国際環境技術センター、地球環境産業高技術研究機構、国際環境技術移転研究センターなど、地球環境に貢献する研究機関が立地している。

また、主要プロジェクト等との連携・活用が可能であり、関西文化学術研究都市をはじめ、最先端の研究活動が展開される地域であり、国立国会図書館関西館、京都迎賓館など首都機能の一部を担う国の施設が集積している途中でもある。

広域的な連携の取り組みとして、すばるプランの推進など、府県域を越える広域的なプロジェクトを官民が一体となって推進してきた実績があり、平成11年春には、関西協議会が設立予定となっている。

また、東に偏らない国土の均衡ある発展、東京とは独立したネットワークを活用した災害時のリダンダンシーの確保、世界に誇り得る歴史文化遺産や恵まれた自然環境を活かした環境共生都市の創造、伝統文化を現代に活かした新たな文化の創造を、新都市の基本理念として考えている。

次に、畿央地域が提案する新都市像であるが、国土軸や南北軸の結節点に位置し、交通利便性の高い国土の中央部に位置する新都、地球環境の保全など世界が直面する問題の解決に向けた国際社会に貢献する新都、地方分権、規制緩和の推進による小さな政府、情報公開など国民に開かれた新しいシステムを象徴する新都、政経分離による中枢機能の安全性を高め、東京と同時被災しない国の防災性を高める新都、多様な伝統文化や最先端の学術研究の蓄積と国内外との交流連携による伝統文化、学術を継承発展させる新都、恵まれた自然環境を活かした潤いに満ちた県境共生時代の新都、関西圏、中部圏の既存の都市機能の活用など、関西圏及び中部圏の都市と連携する新都、情報通信基盤等の整備により、分散型都市を結ぶネットワーク時代の新都、ものの豊かさを優先する従来の生活スタイルから脱皮し、新しい生活スタイルを生み出す新都ということである。さらに、鈴鹿山麓地域との連携なども考えているところである。

また、畿央高原には、国有地や500ha以上まとまっている民有地があり、公有地もあるので、用地の取得については容易な場所である。関西と中部で築き上げられてきた文化や伝統、インフラも存分に使えることから、新都市としては安くつくのではないか。

(2)首都機能移転に関する対応方針について

最初に、三重県議会首都機能移転・地方分権推進調査特別委員会委員長より以下の発言がなされた。

当県議会の首都機能移転に関する議論は、従来、常任委員会の中で展開していた。しかし、本県が首都機能移転候補地として優れた条件を備えていることから、議会での議論が活発化し、県議会においても特別委員会の設置を全会一致で決定した。

現在、近畿2府4県議会議長の決議に基づいて、三重・畿央地域への首都機能移転を目途とした近畿地区の首都機能移転に関する4府県議会による協力体制を構築中である。新都市を歴史と文化に富み、交通の便利な三重・畿央地域という考えのもとに、近県の議会がスクラムを組み、活発な活動を推進している。

特に優れた点については、一つは奈良に昔7代74年の帝都があって非常に栄えたところであるし、京都には御所がある。また、三重県の伊勢市には国民の心のふるさと伊勢神宮がある。そして、関西圏、中部圏にまたがった非常によいところである。

続いて、上野市市長より、以下の発言がなされた。

21世紀の日本の首都は、そこにすんでいる人が少なくともゆとりを持って住めるような、あるいは安心して住めるような場所でなくてはならないと思っている。そういう面で、いろいろな文化というものが生まれてくるのだろう。そして、近世だけを見ても、数えあげればきりがないほどの文化の蓄積があるのと同時に、この地域はまだ開発されていない場所である。したがって、自然環境を含めて、まだいくらでもこれから開発可能である。そのような文化の蓄積と環境を含めて、私は21世紀の世界に対する日本の首都のあり方として大変ふさわしい、環境文化首都を考えている。

続いて、滋賀県議会議議長より、以下の発言がなされた。

首都機能移転は、新しい時代を構築するための景気として大変意義深いものであり、21世紀の我が国をつくる上で必ず実現しなければならない課題であると考えている。

左様な認識に立って、滋賀県議会では平成4年6月に、国会等の移転の必要性、本県の適地性、本県を候補地とすることを内容とする意見書を採択し、国の機関に提出するなど、早くから首都機能移転の推進に取り組みを進めてきた。また、広域的な取り組みとしては、三重・畿央地域への移転を目指した支援、あるいはまた三重の働きかけの方針やそのことに関係する4府県議会の連絡会議を設立することを合意した。

調査対象地域とされている本県の東南部地域は、東海道新幹線や名神高速道路など主要な幹線が整備されている。また、交通利便性も大変高く、琵琶湖をはじめとして自然公園など豊かな自然にも恵まれているなど、首都機能移転先として優れた条件を有している。

この地域は、歴史的あるいは自然的条件の豊富さや、3つの国土軸が集中し、環日本海地域と環太平洋地域を結んでいるといった日本の中心都市としてその将来性を十分に担い得る潜在的な可能性を秘めている。

特に、人と自然の共生を柱とした環境こだわり県としては、新しい首都機能が自然を生かしたタイプを期待し、関係府県議会とも連携しながら、その実現に向けて機運の醸成など審議会への必要な協力を行うこととしている。

続いて、滋賀県土山町市長より、以下の発言がなされた。

甲賀郡は、三重県の伊賀地方と相通ずるところがある。戦国時代から甲賀流、伊賀流の忍者でつながっている。忍者たちは、堺の町衆の情報を一夜のうちに尾張の殿様に届けたという伝説も生まれるところであり、往時より多くの人が交流しあっていたところである。

昭和62年の2月に「ジャパンコリドール計画」に接することができた。この計画を見ていたら、4全総はこれと同じように変わってくる。この4全総に目を向けていたら、これが第2名神高速道路という姿になり、国土の日帰り構想ということがこれに生きてきた。我が町にも甲賀土山インターチェンジができた。現在の名神高速道路、第2名神、名阪国道の3本が並行することとなり、この3本の道路を縦につなぐような道路計画をお願いしているところで、特に甲賀伊賀高規格道路の計画もお願いしている。

甲賀地方には多くの外国人が訪れる。名古屋空港、大阪空港、関西空港からも来ているが、一様に評判が良い。彼らの話を聞くと、地方は田舎者だという先入観を持っていないので公平に見てもらえるということがわかる。私たちの地域から、奈良のナショナルブッダを見ていただき、伊勢のナショナルシュラインを見ていただく。それから彦根や奈良のお城を見ていただく。そしてまた京都には多様なブッディストたちのシュラインがあるということで、1日にして、1時間半ないし2時間の間にこれらのどれかを経験してもらえる。このようなことから、甲賀地域は決して田舎だと蔑まれるようなところではないと思っている。

私たちは、地域全体を公園のようにしていきたいという考え方をしている。たくさんの山並みは築山と考え、奈良県北部の茶畑、三重県の茶畑、滋賀県の茶畑はサツキの刈り込みと考えよう。そして、ところどころにあるゴルフ場は、スギゴケの植わったところと理解しよう。そして、琵琶湖と大阪湾に流れ込む美しい警告は、庭園の中にあるせせらぎと考えてはどうか。このような思いを持って町づくりを考えている。

このような地域であるから、21世紀以後においては、新しい町づくりとして、全国的かつ国際的な視野に立った文化、政治のネットワークを必要とすると思っているので、この地域を他に比類のない適した地域であると思っている。老いも若きも、国会等移転について熱いまなざしで期待しているというつもりで、日々活躍していきたい。

続いて、京都府議会副議長より、以下の発言がなされた。

この畿央地域は、古来から交通の要衝であり、現在も東西及び南北の方向に新幹線や高速道路などの国土の幹線交通インフラが集まっている。また、豊かな自然が残されていて、京都や奈良といった古都にも近く、歴史や文化に恵まれた地域である。このように幾央地域は、交通、自然、歴史、文化といった様々な面において恵まれた環境にあり、首都機能移転先として最もふさわしいところであると考えている。

他方、京都に目を転じると、京都には1200年の歴史に培われた伝統文化があり、大学等の集積による最高水準の学術研究を誇っている。さらに畿央地域に近い関西文化学術研究都市では、国際電気通信基礎技術研究所など、海外からも注目を集める最先端の研究活動が行われ、また国立国会図書館関西館も来月着工される予定である。また京都御苑内には和風の迎賓施設である京都迎賓館が整備されることとなっていて、まさに首都機能の一部でもある国の施設が整備されようとしている。

こうしたことから、京都府議会としても、関係する府県と連携しながら、首都機能の一翼を担うとともに、京都が有するこうした諸機能を最大限に生かして、積極的な支援と協力をしていきたい。

続いて、京都府南山城村村長より、以下の発言がなされた。

南山城村は、京都府の最南端に位置し、三重、奈良、滋賀県に近接している。関西学術研究都市の近くにありながら、周辺都市の狭間にあるために、将来の地域振興を模索するとき、どのような計画とするか苦慮しているのが現状である。このようなときに首都機能移転の話を聞き、最初は夢のような話と思っていたが、このように具体化してきた以上は、是非とも日本の国土の中心にも当たる畿央地域に誘致をしたいという気持ちである。もし、実現できるなら、当村のような過疎の村も、新しい見地に立った地域振興に取り組めると大いに期待している。

畿央地域への首都機能移転が実現するなら、新都市圏が形成されるが、歴史、文化、風土と都市文明が融合することによって新しい生活文化が生み出され、国際外交観光都市が形成され、先導的な地域づくりが実現するものと考えている。

また、当村では、現在約1,000町歩、3,000坪の開発されない土地がある。これらはバブル全盛時代に開発を予定して企業が取得した土地であるが、バブルがはじけたために開発されずに山林のまま残っている。この土地が首都機能移転の際に利用できたらと思っている。

続いて、奈良県議会議長より、以下の発言がなされた。

奈良県議会では、本年3月の県議会において、首都機能畿央地域への移転実現に関する意見書を議決し、関係省庁に要望を行うとともに、近畿2府7県議会議長会に、本県から首都機能移転の早期実現について提案し、4月にはその賛同を得て、近畿2府7県議会議長会から関係省庁に要望を行った。

三重、滋賀、京都、奈良の4府県に関する畿央地域は、我が国のほぼ中央部に位置し、交通の利便性のみならず歴史資源や文化資源に富み、さらに緑豊かな自然環境など、国会や国の省庁を中心とした新都市の建設に着手するのに最適の地であり、その恵まれた可能性を十分に認識していただき、21世紀の新首都の実現を願っている。

本県の大和高原北部地域は、首都機能移転の一翼を担い得る地域であると確信しており、実現すれば当該地域のみ奈良県土全体への波及効果は計り知れないと期待している。

続いて、奈良県月ヶ瀬村村長より、以下の発言がなされた。

大和高原北部に位置する本村並びに都祁村、山添村の3ヶ村は、地形や生活圏を同じくするなど相互のつながりが強いことから、山添町村会を構成している。3ヶ村においては本年1月の審議会で、三重・畿央地域が調査対象地域に選定されたことに伴い、6月議会において畿央地域への首都機能移転実現のための決議を行った。

大和高原北部地域は、茶や花卉などの農業を基幹産業としているが、起伏が比較的緩やかな地形であり、都市的開発が可能な山林もある。

3ヶ村としては、畿央地域への首都機能移転に対し、その一翼を担うことは地域の活性化へ大きな波及効果があるものと期待しており、その実現に向けて全面的に協力したいと思っている。

続いて、東京大学大学院助教授より、以下の発言がなされた。

首都機能移転の意義について国土計画的な観点から言うと、首都機能が移転するならば、明確に東京に依存しない、かつ東京に匹敵するようなインパクトを持つ地域が望ましいと思う。21世紀の日本の最大の課題ともいえる、多様性の確保、リスクの分散という観点から非常に重要ではないかと思う。そういう意味では、畿央地域は京都、奈良、三重、滋賀と言った県に囲まれているので、インパクトは間違いなく大きい。

2点目は、環境共生都市という観点であるが、移転候補と考えられる地域について、2万5千分の1の地形図によって、私が予備的な検討を行った。伊賀地域を中心とする地域において、丘陵地帯を中心に開発するということを想定すると、やや起伏のある地域もあるので、30万人を想定した場合には、すべて現在の地勢、景観をそのままに開発することはやや難しい点があると思う。いくつかの地域においては多少の地形の変更を伴うような開発も必要となる。これは、既存の都市として上野市や名張市等があるが、これらの都市についてもやや規模が小さくて、そこで吸収する人口も多くは見込めないからである。ただ、面積的には十分であるので、住宅地等については非常に起伏のなだらかな地域で、緑の中に埋め込むような形で形成していくことは可能である。個人的な意見としては、30万人規模をはめ込むのは難しい面もあるのではないかと思い、20万人程度の方が望ましいと思う。これは、あくまでも伊賀地域を中心と考えた場合である。

この地域の最大の特徴は、だいたい中心部から20〜30kmくらいのところに津、大津、京都、奈良といった非常に魅力のある都市が存在し、さらにその外側の50〜60kmくらいのところには、名古屋、大阪といった大都市が存在している。その中心部に存在しているというこが非常に大きな特色ではないかと思う。そういったことを考えると、個人的な見解であるが、やや広域的に首都機能を配置しつつ、中心部を畿央地域に置きながら広域的な都市の魅力を用いながら展開していく。国立国会図書館関西館や迎賓館等の計画もあるので、そういった都市と連携しながらつくり上げていくことによって非常に効率的な都市づくりが行われるのではないかと思う。

こういう観点から交通網を見ると、縦方向の道路をつくることによって広域的な連携をつくっていくことには申し分がない地域である。鉄道については、近鉄大阪線やJR関西本線などがあるが、畿央地域の中心部で必ずしもそれらが通っていないため、新しい都市を想定すると当然需要が見込めるので、JR関西本線あるいは近鉄大阪先頭を強化しつつ、かつそういったところへ直通運転できるような畿央地域を縦に貫く鉄道を建設することによって、非常に広域的に効果的な連携が可能となるだろう。

続いて、大阪市立大学名誉教授より、以下の発言がなされた。

この地域は、特に琵琶湖と伊賀上野を結ぶ線というのは、琵琶湖の研究を行ってきた人間にとって特別な意味を持っている。琵琶湖と伊賀上野を結ぶ地帯は、地質時代に琵琶湖の前身である古琵琶湖が南から北へと動いてきたルートである。このルート沿いには、湖の底で堆積した地層が連続的に分布しており、南へ行くほど時代が古い。かつて古琵琶湖というのは、大体400〜500万年くらい前に伊賀上野でできた。それが地殻変動によって少しずつ北へ動いてきて、数十万年くらい前になって今の場所に深い湖ができたということである。伊賀盆地に湖があったころにはワニが棲んでいた。それから、畿央地域の一番北の橋にある蒲生町あたりまで湖が来たときにはゾウの群が湖岸を歩き回っていた。こういうことも、この地域を結びつける一つの精神的な連帯の基礎となるのではないか。

現在ではその真ん中に分水嶺ができて、行政的にも4つの府県にまたがるということになっているが、この地域全体の自然環境は、府県によってそれほど違わない。どこもなだらかな高原地帯であって、山間部のわりには耕地もかなりある。50%以上の面積が山林であるが、人の手が入っていない山林ではなくて、人間が長年肥料源あるいは燃料源として使ってきた二次的な林、いわゆる里山である。現在はこれはあまり利用しなくなってきていて、林相が変わってきているが、これから自然と人工の施設をうまくマッチさせた新しい都市づくりの素材としては非常に良いと思う。

このように人工林ではあるが、中には鈴鹿山脈のカモシカ、日野町のシャクナゲ群落、あるいは甲西町のうつくし松というように、天然記念物に指定されているものも残っている。そのほか、あちこちにかなり貴重な生物も残っている。

こういう環境は、典型的な中山間地帯であるが、一般に言われる中山間地とは非常に違って、人口密度は非常に高いし、過去15年20年の間に人口は増えこそすれ、過疎化は起こっていない。これは、交通が便利で近畿圏に入っているとか、信楽の焼き物、茶畑等のような特別な産業があるということもあるが、なによりも交通が便利だと言うことに起因していると思う。古くから東海道が通り、東西方向の道も伊賀や甲賀の忍者のグループができたように、間道として非常に広く利用された。それから、近江はいわゆる近江商人が全国的に活動していた。したがって、この地域は田舎であるが、地域のコミュニティは視野が広い。これが、首都機能を移転して新しい田園都市をつくるときには、非常に重要な条件であると思う。

新都市をつくろうとするときに、それが完全に飛び島になってしまったら全然意味がないわけで、都市としては十分活力がでない。日本の場合には、そのような条件を持った土地というのは非常に重要なファクター(要因)になるだろうと思っている。

続いて、奈良気象台長より、以下の発言がなされた。

自然災害という観点から説明したい。畿央地域が、北東、東海の2地域と比べて断然勝っている点は、活火山がないということである。活火山を探すには九州まで行かなくてはならない。西の方に活火山がないというのは非常に大きいことである。活火山が噴火したときに一番困るのは火山灰であり、これは、ピナツボ火山の噴火を見てもわかるとおり、未だ片づいていない。雲仙の一旦噴火すると3年以上も続く。このように火山灰は非常に始末の悪いもので、都市機能を語るときに問題になる。偏西風が吹くと、火山の東側は非常に不利で、そういう意味では、西側に火山がないということが大きな利点になると思う。

それから、地震については2種類あり、阪神・淡路大震災のような直下型地震と、日本海溝や南海トラフ沿いの海溝型の巨大地震がある。南海地震や東海地震は大体100年から150年に1回起こる。これは確かに奈良県にもかなりの被害を与えるが、この前の1944年の東南海地震あるいは1946年の南海地震はやや小さく、さらに前の1854年の安政の東海地震と安政の南海地震は32時間置いて立て続けに起こったが、M8.4という大きな地震であった。いずれの地震の時にも、奈良市は震度5強くらいで、上野、笠置、月ヶ瀬付近は震度4程度であった。そういう意味では、心配が要らない。

また、これまで、東京にしろ、名古屋、大阪も全て堆積層に都市をつくっている。例えば、東京では、3,000mの堆積層があり、その下に初めて基盤が出てくる。畿央地域は、そのような地域とは違って、液状化などの面で有利である。

最後に、直下型地震については、日本中どこでもあり、畿央地域でも活断層がたくさんある。しかし、その中で問題になるのは1854年の伊賀上野の地震である。これはM7.3で、全体で1,500人くらい死亡している。上野市の北側のところに1.5mのずれを発生させたが、これは発生してからまだ100年程度で、この後、少なくとも400〜500年は発生しないだろう。ほかにも活断層はあるが、活動度はかなり低い。巨大な地震が起こる前にいくつかの内陸部の地震が発生するといわれているが、これについても大きなものは発生していない。例外が上野地震であり、この地域は非常に地震に対して安全であると思っている。

(3)質疑応答

府県側の説明の後、以下のとおり質疑応答が行われた。

・昨日の、三重県地域での説明の際に、行政改革、地方分権や既存の都市の機能を活用することを考慮して、新都市の規模のついて人口30万人程度、面積4,800haで済むので、国会等移転調査会報告にあるような、人口60万人、面積9,000haは必要ないのではないかという話があり、三重県地域や畿央地域を移転先として選ぶと、新都市の規模が小さくて済むということだったが、移転費用も少なくなるのかどうか。そうであれば、それは特にどのような点に着目してそのような意見を出しているのか。

また、現地を見て、非常に広範囲に適地が散在しているという傾向が見られるので、ここに新都市をつくろうというときに、4府県の行儀会としては、この地域を全て使うことを考えているのか、あるいはもう少しまとまったものとなるのであろうが、その具体的な地域についてはこれからの検討課題ということなのか。

→新都市の規模として我々が提案した、人口30万人、面積5,000ha弱というのは、これは三重県の鈴鹿山麓地域を想定したものである。三重県としてはこのようなことを考えているが、畿央の4府県とも相談していきたいが、基本的にはそのような規模で、5兆円と安くできるということは変わらないと思う。

さらに、畿央地域の一番良いところは、土地が取得しやすいということだと思う。しかし、土地についてはクラスターで対応したいということで、4府県の知事と事務局サイドで話し合いがついている。

私は、三重地域と、畿央地域の両方の立場で日本で一番の適地であると言わなければならない、つらい立場であるが、両方の長所を併せ持つことができれば、見事に関西財界と中部財界が力を合わせて、本当に日本の中心部に移転ができるのではないかということを理解していただきたい。

・移転地域における地方行政組織の変更についてであるが、本日現地を見たところ、良く隣接していて関連した地域であると思う。各自治体に配慮を願いたいのは、住民の方々への情報提供、あるいは意向を聞くにあたっての配慮ということである。

国会等移転調査会に新都市部会があり、そこで、首都機能移転先地についてどのような地方行政制度が良いかという議論が行われた。その中の1つは直轄市、もう1つは圏域に府県と同格の公共団体をつくるというものがあった。この地域が、特別な地域として独立するすることについての住民の方々の意向はどのようであろうか。事前質問への回答の中では、移転先に決まれば、後で自治体や地域住民の意見を十分に確認、尊重していくということを示しているが、審議会としても早く検討を進めることが必要であると思っているが、移転先地域の決定に至る前に各住民の考えを把握しておくことは必要ではないかと思っている。

→三重県を含む関西地域では、府県境を越えて共同でプロジェクトを行うことに実績があり、ある程度慣れている。水の問題にしても、琵琶湖を中心にその下流でいろいろなことを行っているし、ゴミを捨てる場合でもフェニックスプランということで環境的に行っている。それから、関西文化学術研究都市は、日本で初めて府県を超えた共通のプロジェクトで、特別立法によって実施している。このような地域なので、住民の抵抗は他の地域よりも少ないのではないかと思う。特別市や直轄市・圏域というものが必要になれば私はこだわらないし、住民にその点は十分説得していきたいという決意である。その点は関西に置いては前向きであると理解してもらいたい。

・説明を聞いて、この地域は大変自然環境、人文社会的環境条件が良好であるという印象を持ったが、私も含めた多くの委員が気にしていることが一つある。それは交通で、関西本線あるいは近鉄等があるが、関西本線の単線が走っているだけという状況である。

空港は、びわこ空港の計画があり、高速鉄道は新幹線の構想があるということは承知しているが、逆に言えば、それらができあがらないと、特に地域間交通や国際観光通に関して足が無くなるということになりかねないという状況がある。首都機能移転に対して、4府県が協力して取り組んでいるが、空港や新幹線等に関して同様の取り組みは行われているのか。

→現在の路線だけを見るとそうなるが、枝線を少し出せば、近くを通っているものはたくさんある。また、計画中でもかなり実現に近いものでは、リニアモーターカーや第二名神がある。空港については、関西空港から奈良へすぐ出てくることができるし、そこから少し道路等を整備すれば畿央地域とつながる。他の地域に比べて交通インフラが特に遅れているとは思っていないが、並行して必要であるということであれば、それを意識して交通インフラの整備に努力したいと思っている。

・日本のふるさとの原型のような風景を大変大事にしたいと思っている。そういう意味から言っても、畿央地域の景観は大変美しく、なだらかな丘陵と松の緑に感銘を受けた。

また、4府県にまたがっているということも、各府県の協力状況を聞いて、決してマイナスではないと思った。

ただ、今日の意見聴取会で意見を述べているのは、行政、経済団体、学識経験者であった。他の地域では、必ず生活者としての女性の代表や若い方などが意見を述べていたのに対して、今回はそのような立場の方がいないのは、いかがなものか。本当に地元で盛り上がっているのだろうかと、気になった。この4府県の住民は、これまでにも歴史的に極めて別の文化圏に属していて、何か交流をしたり一緒に取り組んだりしたことが歴史的にあったのだろうか。古い歴史のある土地であるから、江戸時代の頃からの伝統や地域性が今もずっと残っていて、それぞれに4府県独立しているところが一つになっていくということは、なかなか大変ではないかと思う。4府県にまたがった生活者の方々の連携が既にあるのか。

もう1点は、土地の取得というのは、どこの場所でもいろいろな面で大変だと思うが、かなりの面積の国有地があるということであるが、個人所有の土地も買収していかなくてはならない。その時に、古い土地柄であるので、困難さがあるのではないか。

→京滋奈三という言葉をよく使っているが、京都・滋賀・奈良・三重ということで、絶えず文化交流を行っている。これは、水系が一つということ、あるいは東大寺を中心としたかつての文化圏があり、関西のやや北側、中部の南側という文化圏として、様々なプロジェクトを行っている。

そして、先ほどお話があったように、びわこは三重県から移動していって、その間が平野になっていて、現在も毎年何センチか移動し、やがて日本海へ抜けていくということで、実は若狭湾と伊勢湾輪90kmの距離で、日本海と太平洋側が日本で一番近づいているところである。そういう意味で我々は文化圏を共有し合っていると思う。

現在、三重歴史街道というのに取り組んでいるが、京都の野々宮神社からスタートし、滋賀県を通って、5泊6日で伊勢の地へ天皇に代わって皇女がお着きになるという文化圏を共有している。そもそも歴史街道は、近江の街道もそうであるが、奈良、京へ結びつく。私どもで言えば、伊勢神宮、熊野三山ということで、文化圏は一番共有し合っているのではないかと考えるし、現実に行政体として、あるいは地域の市民団体の方々が水の文化ということで共有し合っている場所だという認識を持っている。

生活者の視点である女性の出席がないことについては、時間の制約などもあり、申し訳ないと思っている。

→一例を挙げると、地形的には奈良市とセパレートされているように思えるが、奈良県庁へ上野市、月ヶ瀬村を越えたところから通勤している者が相当いる。そういう状況が現実にある。それが文化圏とどうつながっているかということよりも、決して根無し草とか、セパレートされた場所ではないということを付け加えたい。

続いて、三重県阿山町町長より、以下の発言がなされた。

阿山町は滋賀県の信楽町、甲南町、甲賀町に接していて、国有林が大変多く、阿山町内で800haの国有林があり、隣の信楽町には1,000haの国有林がある。その中に、それらをつなぐかたちで生産森林組合の所有地800ha、さらにはゴルフ場が2ヶ所、合計400haあり、信楽町と合わせて公有地でおよそ3,000haの土地がある。

続いて、滋賀県八日市市市長より、以下の発言がなされた。

八日市市は東近江地域、すなわち琵琶湖の東部で、調査対象地域の一部になっている。滋賀県でも一番大きな穀倉地帯である。先ほど説明があったように、活断層が非常に少ない。八日市市には、全国のコンピューターデータを保管している企業が、安心・安全という点から立地している。

また、人的交流については、滋賀県の職員の中にも三重県から通っている者もいるし、古くは近江商人が全国を股にかけて、三重県との交流も随分あった。

続いて、三重県経済団体首都機能移転推進協議会会長より、以下の発言がなされた。

三重県商工会議所連合会がある四日市市は、江戸時代には天領であり、代官が信楽から来ていた。このように昔は、四日市市は近畿地方であったが、今は東海地方といわれている。

また、昔の軍隊では、三十三連隊がすぐ近くの久居にあり、その元締めの十六師団は京都であった。このように昔から近畿にくっついていた。言葉も木曽三川までは京都言葉であった。このようなことがあり、近畿とは親戚のようなものである。

続いて、滋賀県経済同友会代表幹事より、以下の説明がなされた。

滋賀県経済同友会では、第4次全国総合開発計画が策定された昭和62年以降、首都機能移転問題を重要課題として取り上げてきた。昭和63年には、政府中枢機能の地方分散を提言し、本県に政府中枢機能の一部を移転整備するよう要望してきた。

その後、衆参両院において国会等の移転に関する決議がされ、続いて国会等の移転に関する法律が制定されるなど、移転問題が具体化してきたので、平成5年3月、本会会員を対象に首都機能移転に関する意識調査を実施した。その結果、90%の方が移転に賛成し、その86%が滋賀県への移転を希望するという結果がでた。それを踏まえて、平成6年5月、滋賀県経済同友会として、県に対して首都機能移転問題検討委員会を設置するなどして県民論議を喚起し、合意形成を図るなど、具体的活動を展開するよう要望し、また、国会等移転調査会及び政府に対して、滋賀県を有力な候補地として選定するよう要望してきた。

候補地としての根拠は、首都機能移転問題に関する懇談会が首都機能移転候補地に求めている条件、すなわち地震等自然災害が少ないこと、十分な水供給が可能であること、交通の便利性等の数項目を滋賀県が十二分にクリアしているとともに地理的に日本の中心部に位置していることと、歴史が深く文化的に高いなど、首都にふさわしい条件を備えている地域であることを掲げている。

国会等移転審議会においても、このような意図を理解いただきたい。

続いて、京都府経済同友会副代表幹事より、以下の発言がなされた。

京都府経済同友会では、京都、滋賀、奈良、三重の各府県、あるいは市と商工会議所、経済同友会が一体となって、この地を日本の新文化創造エリアと位置づけ、先ほどから話がでている、京滋奈三広域交流圏の形成を図るべく、共同作業によるビジョンの策定を現在急いでいるところである。

この京滋奈三地域については、若狭から熊野に至る日本古来の文化軸と国土軸が交わる大変特異な地域である。歴史的な遺産と自然条件にも恵まれ、その中から育まれた文化・学術的なポテンシャルも高く、また精神性を重んじるこれからの時代にあっては、日本の国土政策上からも、こうした京滋奈三地域を広域的日本の新文化創造エリアとして活用していくべき重要な時期にあろうかと考える。

また、審議会の調査対象地域の一つとしてあがっている三重・畿央地域には含まれないが、すぐそばに隣接する形で、京阪奈文化学術研究都市も位置しており、そのほか畿央地域を取り囲む多様なプロジェクトと結びつく開発整備が進められれば、首都機能の移転効果もさらに広がりを持って高まるのではないかと期待する。

また、私的な見解であるが、これから首都機能移転を考えるときには、まず一つにはその動機が地域エゴであっては絶対にいけないと思う。すなわち、首都機能移転はあくまで全国民的・国家的視点から最も望ましい地域を選定すべきである

第2には、首都機能移転が決まった場合には、是非とも可能な限り自然との共生を念頭に置いた整備を行うべきであると考える。これらの点に配慮願いたい。

続いて、奈良県商工会連合会会長より、以下の発言がなされた。

奈良には、日本の心のふるさととして、史跡、寺社、仏閣など多くの歴史文化遺産と、それらを取り巻く歴史的景観を求め、国内外から多くの観光客が来訪している。さらにまた、県南部には吉野熊野国立公園など雄大な自然があり、これについては県でも半日圏構想という具体的な将来構想を持って着役と進められている。そのようなものと相まって、最近の自然志向を反映して、年々来訪者が増えており、また未来があると思っている。

そうした中で、現在奈良の経済にしめる観光産業の割合は、約5%という試算もあり、観光産業はこれからの奈良の産業の大きな柱であると考えている。

奈良の経済界としては、これらのたぐいまれな観光資源の積極的な活用により、地域経済の活性化に向けて、文化遺産の活用による魅力づくりと情報発信の取り組みや、観光客やコンベンション(国際会議)の受け入れ態勢の整備、ホスピタリティ(歓待)の向上等、様々な努力を行っている。

畿央地域に新都市が建設されると、そこに住む人たちや、あるいは国内外から来訪する人たちに対して、そこからさほど遠くないところにある日本の歴史文化、そして人と自然が調和した場として奈良を訪れてもらえるものと確信している。

新しい日本の幕開けともいえる首都機能移転には、いろいろな問題点あるいは課題もあろうが、日本の国の始まりである奈良に近接する畿央地域に移転することに対して、奈良県の経済界としては、その実現に向けて全面的に協力していきたいと思っている。

続いて、関西経済団体連合会副会長より、以下の発言がなされた。

関西は、最近の首都圏中心ということで地盤は沈下しているが、それでも人口が関西圏で約2,000万人いる。GNPでいえば、カナダ一国よりも大きい、力のある地域である。

それに加えて、地政学的に見ても日本の中心はこの地域ではないか。万葉集にも国のまほろばという言葉があるように、神武天皇が苦労して九州からやっと這い上がってきて、ここに首都をつくった。やはりここが国の中心ではないか。関西の人口は2,000万人であるが、日本の人口1億2,000万人が全部、どの地域から見ても中心だと思うところが首都としての資格があるのではないかと感じている。

関西経済団体連合会は、800数社ほどの経済団体の集合であるが、全面的に各地の知事と協力して進めていきたいと考えている。

先ほども話があったが、来年の4月から、近畿圏の2府7県3政令指定都市の知事・市長で構成する関西協議会という連合会をつくり、ここで広域の連携の話を進めていく予定となっており、関西経済団体連合会としてもそれに全面的に応援したいということで取り組んでいる。

大阪大学名誉教授より、以下の発言がなされた。

本日は、審議会が提示している立地条件以外について述べたい。

1つは、世界都市としての戦略的な地域条件を満たす立地であるかどうか。つまり、ドメスティック(閉鎖的)な国家の首都ではないという、世界都市システムの中でいろいろな情報が発信できる、世界の役に立つ都市としての立地である。この中では、トランスナショナルリージョンと言っている、国際機関や外国人の目から見て住み易いという条件の都市づくりという点で日本は一番弱い。ヨーロッパのブリュッセルとかロンドン、パリと比較して、国際的な視点からの戦略的な地域条件を満たす都市という立地条件があげられる。

2つめは、環境適合的ということがかなり言われているが、これは都市づくりのパラダイム転換という視点で考えて、循環共生型というのは都市と農村、あるいは都市と自然の関係の中における都市というコンセプトを設定していただき、都市と農村との循環共生のできる立地条件である。

3つめは、ニューコンパクトシティというコンセプトがオランダの国土計画ででてきているが、これは、サステーナブル・シティの枠組みの中にすべての開発を位置づけるというものであり、そういう意味では、新首都建設はこの条件にはずれる。人口減少等を考慮すると、ニュータウン建設の時代ではないという先進国の状況とかけ離れるのがこの首都機能移転という問題である。したがって、できるだけニューコンパクト・シティとかサステーナブル・シティの条件に合うような立地を選定してほしい。そのためには、既成大都市圏の機能を最大限活用できるような立地が望ましいと思う。

4つめは、環境コストがミニマム(最小量)になるような立地条件、つまり、この首都を利用する人たちの都市間移動の総和がミニマムになるような都市、つまり国土の中央で、長い目で見て環境に有利な都市という立地である。

5つめは、新形式のメトロポリタンリージョンをつくり上げていく、つまりメガシティの時代は終わったわけで、新しい都市的エネルギーを連携型の、つまり2つのメトロをつなぐことによって新しい形式のメトロをつくれないかという試みを世界にここで発振することができる。そういう意味では、隣接府県との連携が非常に良い地域であり、現に中部圏と近畿圏の連携という点ではすばらしい立地ではないかと思う。ヨーロッパでは、ロンドン、パリ、ブリュッセルといったような軸、あるいはアジアではシンガポール、クアラルンプール、ジャカルタ、香港、台北とった軸が考えられている。オランダでは新生都市をやめて、ランドシュタットを強化するということになっている。そういう意味で、国際的な都市づくりの方向にそう。

6つめは、諸改革のドライビングフォースになるような仕組みで、分権を中心とする行政改革や政治改革、法制改革、司法改革などいろいろな改革を行わなければならないと思うが、そのドライビングフォースになるような地域の取り組みが重要だと思う。そういう意味では、参加都市というベルリンが打ち出した方針をつくり上げて、我が田に水を引くような姿勢は厳に慎むべきであるが、改革への熱意のある地域ということが立地条件として必要であると思う。そういう意味で、参加の仕組みづくりをつくってほしい。ベルリンはポルタハッセマーという大臣になったが、非常に熱心である。

最後に、土地資本主義から知識資本主義へと脱皮するような制度転換を首都機能移転の計画で試みてもらいたい。

国都創造についての研究会代表より、以下の発言がなされた。

畿央部、あるいは畿央高原というのは、私が10年前につくり出した言葉である。これまでもいろいろな条件をもとに適地性を検討しているが、審議会の首都機能移転先の条件を大体満足できるのではないかという結論に達している。

この畿央に、畿央水郷都市というのはいかがであろうか。

次に、ワシントンと国連機能を一体化した都市構想についてはいかがであろうか。先ほど委員から交通が弱いという指摘があったが、名古屋と大阪を新幹線で大ジャンプしたらどうか。奈良、大阪、京都、大津、神戸などがみんな生きてくる。さらに、ここには地震によって物議を醸したが、国際都市としての神戸がある。これは大きなファクターである。

さらに、市民の代表、生活者の代表がいないという指摘もあったが、私がその生活者、市民の代表である。畿央という言葉を作り出し、多くの人々と協力しあって、ここまでに至った。それを評価されていると思う。私は、これで畿央をはずすということが難しくなったと思っている。この畿央という言葉を、審議会の委員にはっきりと預けた。

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