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第5回国会等移転審議会議事要旨

1.日時

平成9年5月21日(水曜日)9時30分〜11時30分

2.場所

虎ノ門パストラル藤の間

3.出席者

(審議会委員)

平岩会長、有馬会長代理、石井(進)、石井(威望)、石原、宇野、海老沢、堺屋、下河辺、寺田、中村(桂子)、中村(英夫)、野崎、牧野、溝上、宮島各委員(16名)

(専門委員)

片山専門委員(1名)

伊藤国土庁長官、井奥国土政務次官、古川内閣官房副長官(事務局長)、田波内閣内政審議室長、竹内国土事務次官、近藤国土庁長官官房長、五十嵐大都市圏整備局長(事務局次長)他

4.議題

専門家ヒアリング(地震・都市防災)、災害対応力の強化について、調査対象地域の抽出について等

5.議事の要旨

今回は、まず、地震・都市防災について溝上委員、片山専門委員からヒアリングを行った。次に、中村英夫委員から阪神・淡路大震災の教訓を踏まえた災害対応力の強化に関する説明があり、さらに資料についての事務局説明と質疑・意見交換が行われた。引き続き、調査対象地域の抽出について説明と質疑・意見交換が行われた。最後に、堺屋委員から首都機能移転に係る文化的側面及びライフスタイルについての検討状況が報告された。

(1)専門家ヒアリング及び災害対応力の強化について

1) 溝上委員からの地震に関する説明

地震現象には、グローバル、リージョナル、ローカルという3つの視点がある。グローバルな視点からいえば、地震の発生の仕組みは地球規模の背景を持っているので、これを十分理解する必要がある。地球は十数枚の非常に厚い岩盤に覆われており、プレートという岩盤と岩盤の境界では非常に大きな歪みがたまる。日本列島はプレートの境界にあり、歪みが蓄積されやすい位置にあるため、巨大地震を発生する仕組みが地下に潜んでいる。過去の地震の発生分布を見ると、日本列島は地震で覆い尽くされている。

リージョナルに見ると、日本列島は4枚のプレートがひしめき合い、これらが影響しあうので、日本の地震は非常に複雑な構造となっており、日本の地震の性質の把握や診断は難しい面がある。

地震を見るときのもう一つの側面として、地震は断層に歪みがたまっていって突然滑るという現象にほかならないが、断層が滑るときにはいろいろな様式があり、地震が発生するまでの過程や、発生するときの順序が相当複雑になっている。神戸の地震と一口で言うが、実際は40-50kmの断層が幾つかのステップで割れたということが、後の詳しい解析でわかっている。

このような、グローバル、リージョナルという2つの視点で見るのと、もう1つ、震源過程という地震が発生する破壊の仕組みの視点の議論が主なポイントである。

地震はプレート運動と密接にかかわって起きているが、我々の生活に直接関係あるのは、どのくらいの大きさの地震がどこに起きるかということである。日本列島はプレートの境界域にあるために歪みが集中し、太平洋沿いあるいは日本海沿い、内陸で地震が発生する。

まず、プレート境界地震については、海と陸のプレートの境界で、プレートが100年〜150年経つと限界歪みに至り、急激にはね返って典型的なスタイルの地震が発生する。大きな地震が発生すると、歪みが全部解放されて、一旦静穏期になるが、また再びプレートが押し寄せて歪みがたまっていく。

最近では、GPSを用いて国土全体の精密観測が行われる体制が整った。このため、日本列島がどういう方向にどのくらい刻々動いているか手に取るようにわかるようになった。これを見ると、歪みが蓄えられている様子がわかる。

他に、太平洋プレートの中がプレートの自重で大きくずれ動くことによって、海底で大地殻変動が起こり、発生する地震がある。このタイプの地震では、プレートが比較的ゆっくりずり落ちるため、地震計ではほとんど揺れが観測されない。大した地震ではないと思っていると、巨大な津波が襲ってくる、いわゆる津波地震というタイプのものであり、今後の研究の対象となっている。この観測のためには地震計ではなく圧力計を海底に設置する必要がある。

活断層について述べると、活断層は神戸の地震以来有名になったが、実は、活断層というのは、地表に傷を残している地震の一部であって、これ以外にも同じような物理的性質を持った危険なものが潜伏している場合がある。とりわけ柔らかい地層の下の岩盤にある断層は見えないため、歪みがたまっていてもわからない。今回の九州の薩摩の地震は、活断層が描かれていないところで発生しており、同様の事例は日本中で多く見られる。

内陸の活断層に歪みがたまるプロセスは、第一次的な歪みが海溝のプレート境界でたまり、その波及効果として内陸に及んでくるため、プレートに起因する地震と比較して、歪みの蓄積速度が一桁以上小さく、地震発生のサイクルが数百年、数千年、場合によっては数万年ということもある。このような現象をどのように監視し、取り扱っていくかが課題である。

また、複数の断層が力学的に関連を持っている場合があり、断層系としてとらえる必要がある。

このほか、日本は火山国でもあるが、火山が生まれるのはそもそもプレート運動と密接な関係があり、火山があるところは、しばしば群発地震が発生する。群発地震が起きているときに、そのそばでかなり大きな被害地震が連動して起きるということがままある。それは、群発地震を引き起こしている近傍に潜伏した断層があって歪みをためている場合には、マグマの嵌入、上昇、及び群発地震が引き金となってかなり大きな地震を引き起こすことがある。このように火山と地震は密接な関係がある。

地震予知に関して、日本列島の幾つかには、社会的に見ても、過去の地震の経過から見ても、相当注意しておかなければならない地域がある。日本列島の中で、地域別の地震のタイプと危険性を区分をして評価する試みが以前から行われており、この審議会でも参考になるかと思う。

2) 片山専門委員からの都市防災に関する説明

過去の日本の都市震災としては、例えば、1891年の濃尾地震があり、このとき近代的な都市が壊れた。また、しばらく経って関東大震災が起こり、200万人単位の都市地域が被害を受けた。しかし、関東大震災当時の都市と今の都市は大違いで、東京の自動車は当時4,500台だったといわれているし、100カ所近い火事が同時に起こったのにポンプ車は38台であった。このように今の東京には当てはまらない状態であった。その後、いろいろな地震があったが、1978年の宮城沖地震で、都市型の震災が日本でも現実問題として認識されるようになった。一昨年の神戸の地震では、橋が壊れた地点では、何十万台と車が行き交うラインが2年間ほとんどストップしている。水道、ガス、電気などの被害もあるが、交通のストップというのは非常に影響が大きい。

ガスの例を挙げると、幹線から末端までガス管が毛細血管のようになっている。地震の際は単に一つの家が壊れるというより大きなネットワークが機能を喪失してしまうことが大きな問題となる。地震工学は設計ということより、既存のライフラインシステムの被害を予測し、何を準備し、どうやったら早く復旧できるかと考えたりしなければならない。しかし、新都市については、被害の予測だけではなく、初めて都市の機能を解析した上で、それに基づいた設計により都市をつくるという対応が可能なはずである。地上だけでなく、断層も含めた地下の構造の地図をつくって都市を展開することも、新しく首都機能を移転する際には可能であり、被害想定に基づいて都市をつくることができる。新しい都市をつくるということは、従来我々がネガティブな形で防災を考えていたことに対して、非常にポジティブに防災に取り組むことができるわけで、例えば、延焼火災型のような、日本では避けて通れないと思われていた災害に対しても、それをほとんどゼロにする都市ができるのではないか。

また、構造物に関しても高品位のものを確保し、災害による被害を食い止めることができると考えている。そのためには、本物の構造物を壊す実験にもっと取り組まなくてはならない。本物の構造物が揺れの状態で壊れていくという状況を実際に見た人はあまりいない。構造物を壊す研究を本格的に行えば、被害を自衛的にミニマムにできる都市が実現できると考えている。

3) 中村委員からの阪神・淡路大震災の教訓を踏まえた災害対応力の強化に関する説明

神戸の震災を経て、東京を含めた日本の都市をこれからどうすればよいのかを考えてきた。

東京には区画が未整理な地域が多く残されている。神戸は日本の都市の中では地震災害に対して比較的条件のいいところであったにもかかわらず大被害にあった。現在の東京では遙かに厳しい状況になると思われる。電柱が倒れると救急車も消防車も入れない。また、個々の住宅は十分な耐震設計がなされていても、周りを火に囲まれる。それに対して、何の救援もできないということになる。

南ドイツの小都市や多摩ニュータウンのような計画的につくられたクラスター的な都市は大規模地震に対してはるかに強い。

個々の建物や構造部で、今後新たに設計されるものは、壊滅的な被害を受けることはないと確信している。このような前提のもとで、大規模地震災害を想定した3つのケースを考えてみた。

第1のケースは、現在の状況で推移した関東周辺に、広域的な地震もしくは東京に直下型の地震が起こった場合である。この場合、建造物は破壊され、関東大震災クラスだと、死者は8〜15万人と見込まれる。首都機能が被災して復旧活動等は大変遅れると想像される。また、経済機能、市民生活の回復も遅れて日本だけでなく全世界にも大きな影響を与える。

第2のケースは、首都機能移転が行われた後に同様の地震が起こった場合で、移転跡地等を活用して東京の再開発などを進めれば、首都機能移転を行わなかった場合よりも被害を遙かに小さくしていくことが可能である。また、復旧活動も新都市が司令塔として機能して迅速な対応が可能となる。

第3のケースは、移転先の新都市が大地震に見舞われる場合で、計画的につくられたオープンスペースや十分な強度を持った建物、インフラ、ライフライン等により被害を大変小さなものとすることが可能である。また、東京と同時に被災しないため、東京が首都機能を代替できる。

新都市をどこに置こうが地震は起こるということを前提に考えているが、更に地震が起こりにくいところに新都市をつくることによりそれ以上に安全なもの、安全な国をつくっていくのに役立つと考えている。

事務局の資料説明の後、以下のとおり質疑・意見交換が行われた。

  • 被害想定について、東京の死者が8〜15万人となっているが、東京都や関係機関による最新の試算によると、1万人弱であり、重傷者が2万、軽傷者を含めても15万人くらいで、震災予防計画が立てられているはずだ。数字についてはその辺も含めて考慮してもらいたい。
    また、危機管理機能と首都機能移転問題は切り離して考えるべきだと思う。危機管理機能は立川防災基地がその役割を果たすようになっている。仮にそれでもだめなら、例えば首相官邸機能や国会機能の予備を、新都市ではなく、既存の都市の中につくるということをまず考えるべきだ。首都機能を持った都市をつくるのはいいが、現時点では危機管理機能とは切り離して考えるべきではないか。
    また、阪神・淡路と比べて東京では、比較にならないほど防災力・訓練も十分だということも考慮すべきである。東京を含めた1都3県3市で防災訓練を行いながら、都費だけでも毎年度1兆円つぎ込んで震災の予防のための施策を展開している。
    防災用に移転跡地210haのうち50haほどが活用できるということだが、これは大半が公務員宿舎の跡地だと思う。移転する公務員数が少なくなればこのような用地も少なくなる。首都機能を移転することによって発生する跡地の利用度は高くないと思っている。
  • 阪神淡路大震災の例から想定すると、関東の被害は相当大きくなることは想像に難くない。
  • 防災上のポイントとして、東京の安全性、新都市の安全性、日本全体の安全性を考慮しなくてはならない。地震被害には、第1次災害(揺れによる直接の被害)、第2次災害(火災)、第3次災害(ライフラインの被害)、第4次災害(他地域への波及)がある。第1次災害の大きさは都市の規模に比例するが、第2次災害から第4次災害はそれぞれ、都市の規模の2乗、3乗、4乗に比例するといわれている。日本の経済や外交などへの甚大な影響を考えると、東京と別の所に首都機能を移すことに意味がある。神戸の復旧のときには隣に大阪があり、資材の調達がなされるとともに、電気やガスの図面が大阪の本社に保存されていたために迅速な復旧が出来た。災害に対する安全性については、2カ所に分かれることが大事である。日本全体の安全性、東京の復旧性ということは、科学技術の面とは別に社会経済、情報系統からも調べてもらいたい。
  • 神戸の地震の際には、首都機能が完全に働いたことが震災対策上非常に意味があったが、首都機能の一部でも被害を受けていたらそれが出来なかったということを教訓として考えるべきである。また、当時は景気対策のための予算が十分にあり、それを復旧のために使うこともできた。しかし、東京の地震の時にはそんな好都合には行かないだろう。しかも阪神淡路大震災は、たまたま被害が最小となる時刻に発生した。
    地震については、非常に重要であるので、調査部会に検討を依頼してはどうか。
(2)調査対象地域の抽出について
  • 調査会報告の選定基準は街づくりの基準と、基本的な基準とがあって、1kmメッシュのデータをもとにして全国の調査を行うというのは、街づくりの基準だけで調査することになる。東京から300kmという基準は、東京と新都市がツインで首都機能を満足することを提案したものである。300km以遠については首都機能としてどのような長所があるのかという検討が必要である。
    アジア政策が日本の政治の中心であってほしいので、首都を九州に持って来ることを検討してほしいという話があった。また、平和の広島や、再び首都を関西にとか、北太平洋の北海道などといった議論が残っており、その議論を審議会で行ってほしいと思っている。1kmメッシュの街づくりの基準にとらわれすぎるのは疑問だ。
  • 300km以遠の扱いについては、例えば北海道であれば空港により国際的な視野から見ると有利な立地となるし、北九州であればアジアとの関係を考えたときに有利な立地となる、といったことではないかと理解している。
  • 普通の街をつくるときに必要な調査と、首都機能移転先の新都市をつくるときの調査は異なる。移転先の在り方、たたずまい、機能、それが与える文化への影響というような調査も必要と考えている。
  • 300km以遠の問題で議論が尽くされていない部分については、調査部会で検討していただいて、それを本審議会で十分討議するという段取りで調査部会に調査対象地域の抽出を下ろしたい。
(3)堺屋委員からの首都機能移転に係る文化的側面及びライフスタイルについての検討状況の報告

審議会からの依頼により、「首都機能移転に係る文化的側面及びライフスタイルについての検討会」を設置し、5月15日に第1回の会議を行った。

検討事項の一つは、文化の好み、人の流れ、情報の流れなど、いろいろな観点からの日本の文化地図の作成である。

二つめは「ライフスタイルと日本文化の将来」である。首都のライフスタイルは、その時代に大変大きな影響を与えるものである。したがって、「社会的ライフスタイルと首都機能のあり様」ということで、官民のスタイルや、官と民との関係がどのようになるのかを検討する。あるいは、首都機能の中でも政治、行政、司法の分担をどのように考えるのか、歴史的な面あるいは各国の事例等を探しながら検討していきたい。

また、政治・行政という首都機能と経済・文化との関係では、ワシントンとニューヨークとか、ローマとミラノなどいろいろな形が考えられるが、このような在り方も提案していきたい。

それから、首都機能と地方自治との関係についても、どのような形態があるか、事例を出来るだけ集めてみたい。

さらに、首都機能所在地における人間の生活を議論し、生涯のライフスタイルとして、そこが新しい故郷になるのか。あるいは生涯の生活でも墓はもとへ戻ってしまうという北京型のようなものなのか。それから、家族が仕事をするのか、単身赴任の街となるのか。そして、そこがもし故郷となるなら、不動産所有形態はどうなるのか。そこで働く人の子供、老後はどのように考えていったらいいのか。高齢者、引退者がどんどんたまると考えるのか、あるいはそうではないのか。特に新都市では外交官らも来るので多文化、多人種、多言語のライフスタイルの影響というものも考えなくてはいけない。

三つめは、「国民の期待する生活像と予想される姿」である。例えば、出張が非常に多くなるのか、通勤時間が短くなるのか、文化・娯楽はどのようなものになるのか。情報化社会の到来の変化を加えてどのようなものになるかということを議論する。

次回第6回審議会については6月20日(金曜日)9時30分から行われることが事務局より提示された。

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