ホーム >> 政策・仕事 >> 国土計画 >> 国会等の移転ホームページ >> 今までの取組 >> 国会等移転審議会 >> 審議会・調査部会議事要旨 >> 第7回国会等移転審議会議事要旨

国会等の移転ホームページ

第7回国会等移転審議会議事要旨

1.日時

平成9年7月22日(火曜日)14時0分〜16時0分

2.場所

中央合同庁舎5号館共用第6会議室

3.出席者

(審議会委員)

平岩会長、有馬会長代理、新井、石井(威望)、石井(幹子)、石原、堺屋、下河辺、中村(桂子)、中村(英夫)、野崎、堀江、溝上、宮島、鷲尾各委員(15名)

(専門委員)

井手専門委員(1名)

伊藤国土庁長官、井奥国土政務次官、古川内閣官房副長官(事務局長)、田波内閣内政審議室長、近藤国土事務次官、久保田国土庁長官官房長、林大都市圏整備局長(事務局次長)他

4.議題

環境、移転費用のモデル的試算等

5.議事の要旨

今回は、まず、環境についての事務局からの説明と井手専門委員から説明が行われ、引き続き意見交換が行われた。次に、移転費用のモデル的試算について、事務局説明が行われ、引き続き意見交換が行われた。

(1)環境について
  • 国会等移転調査会報告における環境に関する記述の整理等について事務局から説明が行われた後、環境からの発想と環境形成について、井手専門委員から以下のとおり説明が行われた。
  • まず第1に、自然立地的、生態学的な土地利用計画の立場からコメントしたい。まずは自然環境の保全から見た地域整備の最近の動きについて触れる。所与の地域環境、自然、歴史文化を尊重した地域づくりを考える必要がある。従来、自然環境は、都市あるいは土地利用の面からの立地条件を探る上の条件の一つと考えられていた。このような考え方では、自然環境が一方的に変質、変化していったり、逆に必要以上にそれを守ろうという動きが出て来ることを避けることができない。発想を逆にして、所与の自然環境を守るためには、どのような土地利用を計画したらよいかという視点から捉える必要があると考えている。これが自然立地的な土地利用計画の基本的立場である。
  • 生態学では、アクション(環境作用)という言葉は環境が生物に及ぼす影響と定義され、リアクション(環境形成作用)という言葉は生物が環境に働きかけて新しい環境をつくり出すことと定義されている。一般の社会で用いられている概念とは、見方が逆である。アクションというものを環境の側から見ることも必要である。
  • また、環境国土軸という考え方があるが、これは環境から見た国土の骨格を示すものであり、大型野生生物の生息域や移動経路を一つの軸と考えてはどうかという提案である。大型野生生物は食物連鎖の頂点にいるものであるから、この生存条件を確保するということは生態系の安定の指標となる。最近よくいわれるオオタカを守るというのも、オオタカが地域の食物連鎖の頂点にいるため、環境指標としての意味がある。このような軸を自然公園、自然環境保全地域、農林地域などをつないで一種の生態学的な回廊(エコロジカル・コリドー)としてつくっていこうというものである。ごく最近ではEUでも国際的レベルで生態ネットワークづくりが提案されている。こういったことを前提とした地域保全を考えるべきだということが進みつつある。
  • アジア圏や東アジア圏でも同じように考えていかなくてはならないだろう。例えば、熱帯降雨林の保護について考える場合、木材の確保の問題が中心となる。ところが、熱帯地域と温帯地域の間に砂漠がなく連続しているというのは地球上に東アジア圏しかなく、その意味では日本の生物相は熱帯の方から補給されるというルートができており、このことが我が国の生物多様性が確保されている大きな理由である。かなりの開発にも関わらず生物自然が崩壊しなかったのは、熱帯からの補給があったためである。こういうことを考えると地域内のみではなく地域の外も含めた1つのネットワークを考えなくてはならない。我が国のある地域の環境が熱帯からつながっているということを意識して計画を立てるべきである。
  • 次に、二次的な自然の価値の再評価についてであるが、適度な人為を加えていくということは、自然にとって生物的な多様性を確保する一つの条件でもある。よく、「水清ければ魚住まず」と言うが、ゲンジボタルは余りにもきれいな水の所では育たず、近くに水田があるという条件が必要である。このように、生物多様性を考えると二次的な自然は重要な役割を果たしている。
  • これに対して、原始的な自然の価値はもっと別の所にあり、希少な動植物を保存するということで従来から大切な役割を果たしてきた。保存という考え方を基礎をした動きとしては、11世紀のフランシスコ修道会があり、生物は皆兄弟であるという思想からスタートした。この考えに沿ったものはシュバイツァー、ワーズワースやソローであり、またダーウィンの進化論もその延長である。こういった保存という考え方が、今日の遺伝子保存の1つの背景となっていると考えられる。
  • これに対して、人間がある程度自然に関与し、管理していくというのが6世紀のベネディクト修道会の考え方で、エデンの園の管理者として人間が遣わされているということで、自然をうまく生かしながら利用し管理するという、いわば保全ということの考え方の推進役となった。この保全という考え方は、今日の持続的開発を生み出し、生物多様性を支える背景となったものである。
  • この2つの流れは二者択一の問題ではなく、空間の質に対応して両者が共存しなくてはならないものである。しかし、とかくどちらかに偏ることが多く、開発か保全かといった対立的な考え方となる。Developmentは開発のみの意味で使われるのではなく、人間が生きていくために必要なあらゆる行為を意味している。すなわち、狭い意味の開発ではなく、保全・保存も含めたものであり、開発と保全を二者択一にとらえる考え方は好ましくないと言える。
  • 1935年に世界で最初にできたドイツの自然保護法では、第1章に自然というものは保護したり保全しているだけでは悪くなるものもあり、人間が手をかけないと維持できないという部分もあるということを謳っている。このように二次的自然の再評価が古くからなされていたということを指摘しておきたい。このような動きは、我が国の環境基本法、環境基本計画でも打ち出されている。
  • 第2に、別の観点として、都市空間には2つの核が必要であると考えられ、ヨーロッパの市役所と教会に見られるように、権力(パワー)の中心と権威(オーソリティー)の中心がある。日本では霞ヶ関と皇居、村では役場と氏神といったものである。人をコントロールする中心と心をコントロールする中心である。首都機能の移転が予定される地域においてもこういった2つの目玉は必要であると思う。このことを意図的に行った例として、源頼朝の鎌倉の都市の形成がある。そこではオーソリティーの中心として禅宗を積極的に入れた。従来の天皇制に代わるものとして権威の中心にもってきたという意味では新しい都市づくりを最初に行った事例と言える。日本とヨーロッパを比べると権威の中心となるものの形態に大きな違いがある。日本では、権威の中心となるものの周辺には大きな緑が付随している。鎮守の森とが寺社林とか、山などである。ヨーロッパでは、教会の周りにほとんど緑はない。そのかわりに都市林がある。この都市林が生活・文化のシンボル的存在となり、郷里の原風景を形成している。形式的には教会がオーソリティーの中心であるが、影のオーソリティーはこの都市林であると思っている。ロンドンのエッピング・フォーレストは、かつて数万haあったが、今は2,400haしかない。ここはロビンフッドの森の伝説で有名である。また、パリのブローニュは人為的につくった800haの都心部にある大都市林であり、フランクフルトの都市林も4千数百haあり、ベルリンのグルーネバルトは3,200ha、ウィーンの森は市域内でで8,000ha、市域外を含めると13万haという大きなもので、地域の象徴的な存在となっている。
  • これらの持っている機能はいろいろあり、生産的機能、レクリエーション的機能、水源涵養機能、防災機能、風の道、生物多様性の確保、緑のネットワークの拠点といった位置づけができる。都市計画的にもスプロールの防止という役割をもっている。このようなものを地域の中の基盤整備の一つとして考えていくことが重要であろう。
  • 我が国では、都市林に相当するものとして明治神宮の内苑が例としてあげられる。これは宗教的な森であり、極めて伝統的な日本のオーソリティーの中心と言える。これは外国の都市林とは機能的にはかなり異なっている。面積が70haと小さく、大型の動物は住まない。緑のネットワークは意図的には組まれていないといった違いがある。しかし、ヨーロッパの都市林は上層の高木林と低層の草本の2層に分かれているが、明治神宮の場合は4層の多層に分かれている。また、明治神宮の内苑は、人工的につくった自然林であるということに大きな意味がある。下の方に将来大きくなる常緑樹の低木を植えておき、40〜50年後に常緑樹林になっていく。放っておくと何百年もかかるものを数十年で自然林をつくる技術である。現在では放っておいても自然林の状態が維持できるものとなっている。このような緑の存在を1つの権威の中心と考えるような新しい地域づくりがあってしかるべきである。日本の都市も西洋的な都市形態に似てきたので、今後は都市林的なものが必要であろう。
  • また、1911年に内村鑑三がデンマーク国について講演しているが、戦争で荒れた土地を回復させるという内容である。ここで内村鑑三が言いたかったのは、単に自然回復・形成だけではなくて、それが人々の心の回復となり、人々が新たに希望を持って住んでいくという一つのきっかけになったということである。これになぞらえて、都市林、緑の自然環境のシステム形成ということが、人々がその地域に住んでいくという心の支えとなり、地域のプライドを形成していくという地域づくりになってもらいたいと考えている。
  • 最後に技術的な面として、調査会報告では自然環境保全の重要性が謳われているが、9つの選定基準には入らず配慮事項となっている。ただし、土地取得の容易性について判断するときには自然公園とか、自然環境保全地域とか植生自然度、特定植物群落等を調査項目に加えて判断するので、そういう意味では自然環境も基準の中に加えられているとも言える。実質的には自然環境が9項目の基準の中に組み込まれている部分も多いと思っている。にもかかわらず、配慮事項という形で、直接立地条件を規定する基準ではないという表現になっているが、これはむしろ誤解を招くのではないかという気がしている。その後、アセスメント法案ができたこともあり、配慮事項は事実上は9つの選定基準と同等に扱うということでも良いのではないか。あるいは、建設段階においての配慮事項であるということを強調した明確な位置づけをすべきであると思っている。
  • また、対象地域を選定するに当たって、「適地メッシュ」とか「適地」といった言葉が盛んに使われているが、これは誤解を招く言い方である。実際には不適地を除くという方が適切である。「適地」という言い方自体は、総合的に評価する最終的な段階で使われるべきで、途中段階では好ましくない。客観的な調査事項と、評価を含めた適地という言葉を混同すべきではないと考えている。
  • 井手専門委員からの説明後、以下のとおり意見交換が行われた。
  • 最終的な候補地選定の段階では、今説明のあった環境に関することが問題となるだろう。ただし、はじめから細かい議論をしすぎるとすると候補地選定が進まなくなる。環境については、候補地選定の最終段階のための下調べとして行っておくべきであろう。
  • 都市林、風の道などの自然環境を整備する説明を踏まえると、現在残っている自然の中に都市をつくるのと、都市に自然を人為的につくり出すという2通りが考えられ、候補地を選定するときの1つの判断材料となり得ると思う。どのくらいの時間やコストをかければ、どの程度の自然環境をつくることができるのか。
  • 現況の植生の条件と、その土地の有するポテンシャルの2つの問題がある。
    都市の中で自然を生かすという場合は、現状を生かしながらその中に都市空間をはめ込んでいくという方法が中心になりがちであるが、現在植生がなくても土壌や水などの条件がそろっていれば自然はつくられていく。
    そのような意味では、2つの側面から見ていく必要がある。現況の自然条件をどうするか、それをどう生かすかということと、もう一つは、どれだけの技術をかければ環境を再現・形成できるかということである。極端に言えば、良好な土壌がある場合と、岩場のような所では全く条件が異なる。少なくとも、土壌が良好であれば、本州では20〜30年で樹林のかたちになる。明治神宮の場合は25年間くらいで樹林になった。そして内容的に自然に近くなるのには50年近くかければよい。
    このようなことから、現存と潜在の両面から考える必要があり、ポテンシャルを考慮する場合は、水条件などのいろいろな条件を評価の対象の中に入れることが必要である。
  • 新都市をつくるときには、日本全体を考えるべきで、新都市のみ環境が整備されるのではなく、日本全体がネットワークとして環境が整備されていく1つの拠点として新都市を考えると良いのではないか。そういう意味で環境のネットワークという考え方は大切だと思う。最終的に新都市として1つのところが選ばれたときに、それ以外のところが環境の取り組みをやめてしまうようなことにならないようにしたい。
  • 環境影響評価を行う場合、今説明があったような内容について定量化できるものなのか、それとも定性的なものなのか。
  • 自然環境に関わるもので定量化できる部分は極めて少ない。しかし、必ずしも定量化とは言い切れないが、アセスメントにおいて地域の食物連鎖の頂点にいるものを一種の指標生物、指標種というようなかたちで一つの尺度にするということが必要と考えている。
  • 説明によると、環境形成作用というものがあるということなので、新都市では生物が環境に働きかけて、新しい環境をつくり出す作用により環境条件を整えて、そこに人間が住むということになるのではないかと思う。したがって、適切な規模で積極的に環境に働きかけて新しい環境の循環をつくれば、移転した人口のについては環境の調和が図られることになると思う。また、霞ヶ関が移転してビルがなくなれば、風の道などができて東京の環境も良くなるのではないか。
(2)移転費用のモデル的試算について

事務局からの説明の後、以下の意見交換が行われた。

  • 移転費用はこの程度で納まらないのではないか。今の段階で試算するのはいろいろと問題が多すぎるのではないか。
  • 今の段階での試算については、調査部会でも問題になった。場所を決める前に試算することには無理があるが、試算をしなくては議論が前に進まないというのも事実である。移転を実施するかしないかを決めるために必要である。移転にいくらかかるのか全然わからないのでは国民が納得しない。また、私はこの試算が過小であるとは思わない。むしろ、これから世界の英知を集めて新都市を建設すれば、もっと安くなるだろうと思う。ベルリンの例では、移転費用の試算をやり直すごとに費用が減っている。今では、費用を節約する技術の進歩が相当ある。この試算結果が過小だとは思わないが、場所を前提としていないのだから正確であるとも言えない。それは当然のことで、現段階でのできる限りの努力の結果と受け止めるべきであると思う。
  • 確かに、世論を喚起するためには、何らかの目安が必要であり、その意味では今回の試算については、いろいろな識者の意見を聞いて過小か過大かの判断をしていくべきであると思う。
    移転する人の合意ということから考えても、ポイントごとに夢の部分もないと困るだろう。
    また、新都市へ移り住む人は単身ではなく家族で行ってもらいたいが、その人が引退した後はどうなるのだろうか。新都市ではそのような高齢者のバックアップ体制も考えておくべきではないだろうか。
    また、土地の取得費についてこのような試算結果が出ると、候補地選定の際にその費用が前提となり、それに当てはまるような候補地を選定してしまう危険性があるので、注意が必要である。
  • 現実的な場所を想定しないで移転費用を算定するのは難しいので、以前幅を持って算定するべきではないかと意見を述べたが、用地取得費については若干幅を持って考えた方がよいのではないか。また、費用については、公共事業のコストダウンということもあるが、一方で将来の財政がどうなっているかは予測がつかない面もある。そのような状況の中で、首都機能移転を進めるには、その予算を例外扱いとしてもらうことをどこかで言い出すことを考えたり、今回の試算の施設が全てそろわなければならないのかどうかを議論する必要があるのではないか。移転が不可欠なものと、それ以外でシンボル的なものでアメニティのためのものとを多少ふるい分けて考えてる必要があるのではないか。
  • 全体として、議論は物理的なものに偏りがちであるが、文化面も無視できない。新都市がどんなたたずまいの街になるのか、そこに墓までできるような街なのか、あるいは墓は故郷へ帰る街なのかどうかといった議論もある。新都市の場所とたたずまいは日本の文化に大きな影響を与えるであろう。そういう意味で文化の問題をいろいろな点から考えていく必要がある。新都市を単身赴任の街にするのか、勤労時期だけを生きる街にするのか、あるいは永久にそこに住む街にするのか。また、役人が外へ出かけていく街にするのか、それともみんなを呼びつける街にするのか、といったことを考える必要がある。
  • 現在はあくまでも抽象的な前提で試算しているので、どうしても隔靴掻痒の感は免れない。今回の試算は、一応どの程度の費用が必要かを検討したに過ぎないので、具体的な候補地が絞られてきたら修正を行う必要がでてくる。また、これは首都機能移転の予算を組むものではないので、将来、この費用に拘束されるという性格のものではないと思っている。
    この試算の考え方、根拠などの経過が将来参考になるだろう。この試算結果が過大か過小か、また試算の前提条件がもっと必要ではないかという議論はいくらしても尽きない。これは次のステップに移るためのものであり、こうした試算の性格を明確にしておくことが大切である。

次回第8回審議会については10月8日(水曜日)10時0分から行われることが事務局より提示された。

移転費用のモデル的試算について(案)

1.首都機能移転に係る費用については、「首都機能移転問題に関する懇談会とりまとめ」(平成4年6月、以下「移転懇試算」という)において、最大で費用総額14兆円と試算されている。

しかし、この試算では、
(1)全体事業費のうち、民間投資と公的負担の範囲を分けて示されておらず、
(2)また、移転の事業は数十年の超長期にわたって段階的に行われるにもかかわらず、第1段階の事業費について検討されていない。
(3)さらに、行政改革が行われ、行政機関の移転規模が縮小した場合の移転費用や
(4)新幹線、高速道路、空港等の整備費用についても検討する必要があるため、
これらの観点に加え、前提データ等を見直し、移転費用の再試算を行った。

2.試算結果の概要

移転の全体事業費の試算については、数十年の超長期先の不確定要素が多い事業費を提示することとなるため、現実的な費用としての試算が可能であり、また、公的事業が先行的に行われ、各年の財政支出についても議論しやすい、当面の第1段階の事業(建設開始後10年程度で国会を中心として移転する事業)の費用試算を行ったところ、10年間程度の費用総額としては4兆円となり、このうち今後特に議論が求められる公的負担(国又は地方公共団体の財政支出)額は、2兆3千億円となった。

第1段階の事業の費用試算結果
  人口 面積 費用内訳 総費用
第1段階
(国会を中心に移動)
10万人 1,800ha 公的負担:2兆3千億円
民間投資・負担:1兆7千億円
4兆円

なお、最終的な移転費用についても、移転懇試算との比較検討も必要なことから以下の表のように試算したが、移転規模は現在の行政改革の議論等を踏まえつつ検討する必要があるため、とりあえず行政機関の1/2が移転するケースと全て移転する最大ケースにより幅をもって示している。

各試算の比較表
  人口 面積 費用内訳 総費用
1/2ケース
(行政機関が1/2移転)
30万人 4,800ha 公的負担:3兆円
民間投資・負担:4兆5千億円
7兆5千億円
最大ケース
(行政機関が全て移転)
56万人 8,500ha 公的負担:4兆4千億円
民間投資・負担:7兆9千億円
12兆3千億円
移転懇試算(最大) 60万人 9,000ha 14兆円
3.今回の試算の特徴(移転懇試算との比較を中心として)
  1. 人口については、サービス機能従業者数は増加しているが、家族も一定率就業することとしたことから、移転懇試算に比べ最大ケースの総人口は減少している(人口60万人→56万人)。
  2. 開発面積については、施設の整備水準や公共用地に、よりゆとりをもたせることとしたものの、総人口の減少により移転懇試算に比べ最大ケースの開発面積は減少している(9,000ha→8,500ha)。
  3. 費用総額については、
    • (イ)移転懇試算で計上されていなかった新幹線・高速道路の支線、既存空港の滑走路延長、地区外幹線道路、シンボル広場、森林公園等のインフラや国際会議場、大学、美術館等の施設など、公的負担の施設を中心に幅広く計上するとともに(最大ケースで総額3兆円)、施設の整備水準や単価の見直しを行ったものの、
    • (ロ)用地費について住宅地価格に基づいて算定していたものを、8,500haにも及ぶ開発を行うことが可能な山林、原野、田畑等の価格により算定すること(最大ケースで用地費総額5兆円→9千億円)としたことや、最大ケースでは総人口も減少していることから、最大ケースの費用総額は移転懇試算に比べ減少している。
  4. なお、新幹線、高速道路の整備費用については、移転に伴う新都市と東京等との交通量は、既存の路線に並行追加して新線を建設する程の需要量ではないと推計されることから、東京と新都市を結ぶ新線ではなく、既存路線と新都市を連絡する支線(それぞれ延長25km、30kmと仮定)の整備費を計上している。
    また、空港については、既存空港の滑走路の3,000mまでの延長費用を計上している。
  5. さらに、公的事業費の1割削減等の経費節減努力を行い、これによる節減額は今後の新技術の開発、情報化の進展等に伴う費用や文化、環境のための費用に充てることとしている。
4.留意点

施設内の設備・備品に係る費用や、新都市におけるそれぞれの機能の運営に要する費用については、従来の設備等を利用したり、人件費等移転にかかわらず必要な経費であることなどから、移転懇試算と同様に費用として計上していない。

なお、今回はモデル的に費用を再試算したが、今後の移転先の新都市像の検討、移転先候補地の調査の進展状況等を踏まえ、候補地ごとに再度費用の試算を行う必要がある。

ページの先頭へ