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第8回国会等移転審議会議事要旨

1.日時

平成9年10月8日(水曜日)10時0分〜12時0分

2.場所

中央合同庁舎5号館別館共用第23会議室

3.出席者

(審議会委員)

平岩会長、有馬会長代理、新井、石井(進)、石井(威望)、石井(幹子)、石原、宇野、堺屋、下河辺、中村(英夫)、野崎、堀江、牧野、溝上各委員(15名)
亀井国土庁長官、坪井国土政務次官、古川内閣官房副長官(事務局長)、田波内閣内政審議室長、近藤国土事務次官、林大都市圏整備局長(事務局次長)他

4.議題

国土庁長官挨拶、専門家ヒアリング(情報通信)、首都機能移転の文化的側面について、移転費用のモデル的試算について、調査対象地域の設定について、国土政務次官挨拶等

5.議事の要旨

今回は、まず、国土庁長官の挨拶が行われ、引き続き、情報通信について石井威望委員からの説明と意見交換、首都機能移転の文化的側面について堺屋委員からの説明と意見交換が行われた。続いて、移転費用のモデル的試算、調査対象地域の設定について事務局説明と意見交換が行われ、最後に国土政務次官の挨拶が行われた。

(1)国土庁長官挨拶

首都機能移転は、まさに「国家百年の大計」と呼ぶにふさわしいプロジェクトです。特に災害の大変多いわが国では、国土の災害対応力を強化するという意味からも、また東京一極集中の是正にも大きく寄与するものであり、東京をさらに快適な環境に変え、すばらしい都市生活ができるようにするためにも、首都機能移転は大きな貢献をするものです。

現在、政府は6大改革に取り組んでいるところですが、これらの改革は政治の最終目標ではなく、この改革を乗り越えて初めて本当の意味での国づくりができるわけであります。財政的な制約から、非常に夢を描きにくい状況になっていますが、このようなときこそ、首都機能移転のような、国民が夢を描くことができるようなプロジェクトが推進されていくことが重要な課題ではないかと思っております。昨年12月に審議会が発足して以来、積極的なご議論をいただいているところであり、私としても事務局を督励しながら審議会のご審議に積極的に協力申し上げる所存です。

(2)専門家ヒアリング(情報通信)

「首都機能が所在する都市の情報通信機能」をテーマに石井威望委員から以下のとおり説明が行われた。

現在、情報通信革命と言われるように、非常に大きな技術革新が進行している。新都市は、本格的な情報通信機能を整備した人類史上初の都市となるであろう。
このことは、新しい技術が持っている可能性をフルに使えるという点で非常にチャンスである。新都市では古い蓄積にとらわれることなく新しい情報通信基盤・機能をつくることが可能である。特に、普通の都市と違うのは、緊急事態における情報通信機能の確保の問題である。神戸の震災の例が参考になるが、震災以降情報通信機能の面で2つの新しいことが起こった。
1つは、インターネットが活躍したことである。インターネットを通じて被災状況が世界中にリアルタイムで伝わり、また、テレビなどでは報道されない細かな情報が流れた。しかし、インターネットは、アクセスが集中するとオーバーフローするので、バックアップ体制が必要である。そして、バックアップのためには、ハードだけではなく、人材の確保が必要である。神戸の震災の時には、慶應大学もその役割を果たした。慶應大学の藤沢キャンパスには多くのボランティアが集まり、バックアップ機能を果たした。
もう1つは、携帯電話で、神戸の震災以来急速に台数が伸びた。特に平成7、8年から大きな伸びを示し、最近ではPHSの伸びが特に大きくなっている。携帯電話とPHSは合計で月100万台ほど増えており、今では3300万台に達しているだろう。一方、従来型の電話機は6000万台くらいで、現在では台数は減っていっている。このように情報通信はモバイル(移動体)に移行しつつある。特に、最近PHSで32kbpsの通信が可能となり、従来の速度では問題があった画像の伝送も問題なく可能となった。今では、デスクトップ中心の情報通新機器がモバイルに移っている。

2000年を過ぎると、携帯電話やPHSの電波は地上波から衛星波になるであろう。これによってどんな遠隔地でも利用できるようになる。
アラン・ケイによると、コンピュータは3段階で発展しており、第1段階は大学等の研究機関のメインフレームのような大きなものが主流の時代で、第2段階になってパソコンが登場した。そして第3段階はモバイルである。

果たして誰でもモバイルが使いこなせるのかという疑問があると思うが、先日小学3年生を集めて実験してみた。それぞれにPHSとパワーザウルスという端末機を持たせてみたが、全く問題なく使いこなすことができた。むしろ、大学生よりもマスターするのが早いくらいであった。
モバイルは、非常時をはじめ、多方面に普及するものであろう。したがって、新都市の情報通信はモバイルを中心として考えるべきであろう。特に、緊急時にそれを活用するためには普段からそれを使っていないと対応できない。平常時からきちんと使っていることが大切である。若い学生などは、下宿で電話を持たず、PHSだけを持つなど、既にモバイルが中心となっている。このような流れは、買い物をする場合にも起こっている。例えば、インターネットで、ある店がタマゴッチを2000個販売するという情報を見て、早速その店に行ってみると既に多くの人達が並んでいた。今ではタマゴッチを買いたい人はぶらぶら歩いて探すのではなく、インターネットを見ているのである。実際にタマゴッチを買いに行った学生の感想によると、新しい情報を得るためには、自宅のデスクトップでインターネットにアクセスするよりも、移動しながらモバイルでインターネットにアクセスする方がはるかに効率的であることを実感したということであった。
都市以外の例で、NHKが三重県の神上中学校を取材している。この学校の全校生徒は8名であるが、学校のコミュニケーションルームにはパソコンが7台設置されている。毎朝、全国各地から届くメールを読むのが生徒たちの日課となっている。彼らは全国に向かって情報発信をし、交流している。このような変化はなかなかデータに表れてこないものであるが、このような背景を意識して新都市を考えなければらないと思う。

次に、周辺からの支援ということについて述べると、もっとレベルの低いネットワーク、例えば郵便局というネットワークもエマージェンシーの時には非常に大事であり、神戸の震災の時には避難所へ手紙を届けたり物を届けたりする役割を果たした。これは、周辺の被災していない郵便局とのネットワークが確保されていたために可能となった。情報通信というと、すぐ電気通信ということになってしまい、それが一番早いが、全部ダメになった時には手紙のような従来の郵便局のシステムも使える。このようなことは、支援ということを考えると非常に重要である。
電気通信は電源が弱点であり、神戸の震災の時も小型バッテリーがペットボトル以上に値上がりした。この点では、エネルギーを含めた支援なくしては通信が止まってしまう。したがって、支援を考えるためには、モバイル&サポーティングの周辺を含めた燃料などの問題まで十分考えなくてはならない。毎日使って、電源切れなどないよう常にメンテナンスしておくことが非常時に備えるために大切である。

都市計画などでは、インターネットの中でバーチャル都市をつくって、そこでシミュレーションをしながら実施するということも現実に行われている。新都市の場合も、インターネットの中で非常にたくさんの人がシミュレーションのような形でかかわるというのがよいのではないか。
先般、NASAが公表したマースパスファインダーによる火星の画像を紹介するホームページには、1ヶ月で5億6千万ものアクセスがあった。
また、デジタルデモクラシーという点では、ダイアナ元妃を追悼するホームページには5日間で1300万のアクセスがあった。一方、英王室のホームページのアクセス数は100万くらいである。このように民衆の関心度の高さをアクセス数で比較することもできる。新都市の場合も、ワーキンググループで検討したイメージをホームページに載せると、国民の反応がわかるだろう。

技術がどれだけ進んでいるかという一例をあげると、ハードディスクの低価格化が急速に進み、価格が昨年の春から今年の春にかけて10分の1になり、さらにこの4月から9月の半年で半額になっている。このように技術革新は急速に進んでいるので、新都市においても技術革新を吸収できるようにする必要がある。
最近では、新聞を取らない学生がいるが、その代わりにインターネットのホームページで記事を見ている。こういった新旧のメディアをどう組み合わせるか。これに関しては、新聞とテレビの関係でも、テレビ番組は新聞に載っていて、新聞がなくてはテレビが見られず、また、新聞もテレビがなくては一番売れ筋のテレビ欄の広告のページがなくなってしまうというように、相互に依存している。新旧のメディアを相互に依存させながら、絶えず技術革新を吸収していく。都市づくりにおいてもこのような方法を取り入れると、都市の設計などは随分変わるであろう。

石井威望委員からの説明後、以下のとおり意見交換が行われた。

  • 情報通信の分野は急速に変わっているということがわかったが、新都市においてもすぐに情報通信関係の整備をやり直さなくてはならないという状況になるのではないか。
  • 全てやり直す必要はないだろうが、部分的には常に新しいものに対応できるような構造を取り込んでおく必要がある。
  • 情報通信の整備は、時代の流れとともに必要になるものであり、東京でも手直しの必要性が生じてくる。したがって、情報通信の整備は首都機能移転の有無に関わらず必要なことではないか。
  • 東京でも新しい情報通信に対応するように施設を手直しすることが大事である。しかし例えば、霞ヶ関ビルに情報ネットワークを整備したが、その費用は新しくつくるのと同じくらいかかった。そういう意味では、更地に新都市ができるというのは、新しい情報通信の整備が非常にやりやすいということである。
  • 21世紀に誕生する第1号の情報都市ということであるが、世界各国の都市と比較して1番ということになるのか。
  • モバイルに関しては、日本が最も高いポテンシャルを持っている。下手な計画をすると1番にならないかもしれないが、適切に計画すると世界のトップとなるだろう。
(3)首都機能移転の文化的側面について

首都機能移転の文化的側面に関する検討会での結果について堺屋委員から以下のとおり報告が行われた。

首都機能移転に係る文化的側面の重要性については、第4回の審議会で、私を中心に検討するよう会長から依頼され、有識者を集めて5月以降、5回の討論を行ってきた。首都機能移転によって日本国内の文化圏が変化する可能性が高いので、少なくとも日本文化がどのような地域特性を持っているか把握しておくことは重要であると考えている。
今まで、物理的な場所が問題となりがちであったが、文化面も考える必要がある。新都市の住民の生活を考えることなく、新都市の整備を行うことは不適当である。新都市のたたずまいや人々のライフスタイルなどは、直接・間接に全国に様々な影響を与えるだろう。これがいわゆるデモンストレーション効果である。今でも東京のスタイルを全国がまねるケースが非常に多い。新都市が出来ると東京とは異なるもう一つのモデルが出来ることになる。新都市のたたずまいは、国と地方との関係、国の三権のあり方、国際関係等のあり方を象徴するものであり、わが国の情報発信の多元性、文化の多様化、都市間競争等様々なソフト文化を生むものと思われる。

現在の日本の最も大きな問題は東京の一極集中で、物理的なものとともに文化、情報発信の一極集中が問題である。この中には、新都市に所在する中央省庁等の仕事のやり方、通信の利用といった問題もあり、中央省庁が各都道府県・団体の方を中央へ呼んでヒアリングするような呼びつけ型から諸外国でみられるような出向き型へなどの変化も考えられる。
新都市の機能及び文化的側面並びにそれらが全国、未来に与える影響は、物理的形状条件よりも大きいのではないか。この点は十分に検討されるべきではないか。つまり、新都市のたたずまいがこれからの日本の文化と国家活動の性格及び日本のイメージに与える影響は重要であるため、国民全体の議論を呼び起こしてもらいたい。

次に、日本の各地域における文化的特性についてみると、日本の歴史に根ざして、東西二分型とサンドイッチ型の二つがある。
言葉についての文化地図では、いろいろと線が引かれる。最も多いのは、富山県、岐阜県、愛知県の真ん中あたりを通る線で、ここでいろいろな言葉が変わっている。他にもいろいろな線がある。下野と常陸、福島県は東の中でも違う言葉遣いがあるという調査報告がある。
家屋については、サンドイッチ型で、東と西南方面は寄棟、中央が入母屋となっている。他にうどん、寿司の文化もサンドイッチ型であるが、他はだいたい東西二分型である。

また、人の動きについても調べてみた。近県に移動する人が多いのは当然であるが、二番目にどこが多いかを調べた。言葉の線とほぼ同じで、東側は東京一色であるが、西側は福岡県、中国圏、四国・関西圏、中部圏と幾つにも分かれている。東側の文化は東京一色の傾向が強いと言える。マスコミの情報発信については、広域発信は東京に圧倒的に集中している。これが東京一極集中の根源である。
以上より日本を文化的に分析すると、様々なものがでてくる。新都市がどのような文化地域を形成していくかということは重要である。

次に新都市のたたずまいであるが、新都市がどんな街であるかによって、日本国のイメージを大きく変えることになる。検討結果では第一に軽やかな都市の方が政府の圧力を感じなくて良いのではないかということになった。第二には、内外の情報を素早く吸収して行動に移るフットワークの良い都市、そして高等教育機関の立地は必要ではあるが、あらゆる分野を対象とするものではなく、新都市の理念に沿った少数の学生、研究者に利用できるものであれば十分である。また、流動性が高く、生涯定住者が比較的少ない、あるいは生涯の故郷として墳墓の地とする人がどれくらいいるのか。これは、今後検討が必要な重要なポイントで、新都市をふるさととして産まれる子供がどれくらいいるのか、この新都市が舞台なのか、住まいなのかという問題がある。ここでは、公務員は、故郷があり老後をおくる土地が別にあるのが原則という考え方を出している。製造業、証券取引所等の経済中枢は新都市にない方がよい。

次に落ち着きのある都市ということで、美しく優しく、見識があって人々に希望を与えるようなたたずまいが必要である。また、物理的に豊かであるとともに、精神的に豊かな都市であること、日本が将来目指すべき文化と生活を象徴するような都市であること。政策の立案、情報の分析、長期的な文化形成等、長期的に思考できるようなところが望ましい。
新都市には表動線と裏動線が分離された都市構造がふさわしい。当分の間は、建設が続くので、建設資材を搬入し、廃棄物を搬出する裏動線が表動線から独立していることが必要である。

それから、ゆとりのある都市ということで公務員の公務等のリエンジニアリングや通勤時間の減少等により余暇の十分に取れる街であること。また、公務員が単身赴任ではなく家族と同居できるような街であること。これは大変議論になったが、やはり家族と同居するという憲法の精神に基づくということである。

それから、国際交流、観光等に携わる人々をはじめとして、新都市を故郷とする人々が存在する、すなわち郷土愛のある人々が必要であろう。また、人のにおいがある界隈性が重要で、新都市を観光、文化、娯楽の充実した街にしたいということである。

次に新しい文化を体現する都市ということで、東京の飛び地としてはいけないということになった。これまでに首都機能を移転した例では、ベルサイユ宮殿や伏見城があり、これらはパリや京都の飛び地で、庶民機能がなかった。このようなものは必ず失敗している。東京の飛び地ではなく独自の新しい日本文化を体現できるような都市でありたい。この点で東京との物理的な連携と、精神的、文化的な独立性をどのように保つかというのが場所を選ぶときに大きな問題となるだろう。新都市は国内外の特定の都市に従属しない独立性と中立性を持った都市であるべきである。東京以外の都市でもあまりに近いところになると従属性がでて、その都市の文化を継承することになってしまう。
内外の情報を自らが公平・中立的に吸収・消化する。また、国民一般の意識、政治・行政・司法へのニーズから乖離することを防止する。これは、重要なことで、情報発信が一極に集中しているとどうしてもそこに政治的な集中が起こる。アメリカでは、50の州の中で、州都が1番大きい街にある例はほとんどない。これは、1番大きい街に官庁があると、そこの情報環境に州の役人が埋没し、州全体を公平に見なくなるというのが理由らしい。そのような配慮は新都市でも必要であろう。

国際・外交・観光都市ということでは、観光客は相当多いだろうと思われる。つくば博、花博程度の年間2000万人くらいの観光客は予想されるのではないか。観光を通じて国民と新都市との接触が密になり、また、観光客が集まることによって、新都市と全国との飛行機路線が採算が合うようになり、非常に便利になる。街として魅力を高めることにより、国際都市、情報化都市としての各種イベントや集会が行われるような都市にしたい。

情報通信都市については、常に国民と接触すると同時に、新しい技術、斬新な世界の英知を採用していくことが重要であろう。

全国への影響であるが、新都市のたたずまいが全国のモデルの一つとなり、その文化が全国に伝播していくというデモンストレーション効果は非常に大きい。現在では東京のライフスタイルが全国に広がり、土地の広い地方都市でも、わざわざマンションを建てるのが一般化している。そういったデモンストレーション効果を考えておくべきである。情報通信でもこれを機会に日本が最も進歩した状況をつくれればよい。
国民が首都中心の垂直的な考え方をやめて、各地域の水平的な考え方に変化し、国の拘束性よりも各地域の自立性を尊重するようにしたい。

現在の東京もそうだが、19世紀から20世紀前半に計画された都市というのは、規格大量生産を全国に広めようという意識があったため、堂々たる国家の象徴がまず重要であった。新都市はそういうものではなく、水平的でありたい。単に東京と地方ということだけでなく、例えば欧米に対しては縦につながって情報が入るが、アジアに対しては出る一方である。国内各地、世界各国の情報に公平に反応できるということも大事である。特にアジアの台頭を考えると、日本はアジアの現在文化に対する認識が非常に低いことは問題である。例えば、アジア在住のアジアの建築家に国内で仕事をさせていない国は非常に珍しいが日本はその典型である。それから、ファッションにしても音楽、映画、絵画、ことごとく日本はアジアの情報が入ってこない現状である。だからアメリカやフランスで有名になったから、ヨーヨー・マが日本で知られるようになったとか、ティボー・コンクールで優勝したから鄭さんのヴァイオリンが有名になったとか、ウォン・カーウィの映画がアカデミー賞を取ったから日本でも知られるようになったという現実が非常に多い。このようなことからも水平的な都市づくりが必要である。
フットワークとネットワークの問題では、石井先生からネットワークについて、非常に進歩が期待できることが指摘された、それと同時に人間が移動するフットワークの問題がある。国会等移転調査会では、2時間とか、300kmというようにフットワークに重点が置かれた立地があったが、ネットワークを充実することによってフットワークがいかに補完されるかということが大事である。
フェイス・トゥ・フェイスが必要な場合には、官の側から各地へ出向する出向き型行政になるようなフットワークが必要。このことと、そこに住む人のライフスタイルとの関係が重要で、そのようになると出張ばっかりになるかということになる。このことはさらに検討する必要がある。

今回の検討対象は、これまでの審議では見落とされがちなものであり、この報告は審議会での審議に新たな一石を投ずるものではないかと思っている。今回の検討対象は人によって捉え方が異なり、事実は同じでも解釈なり重点の置き方がかなり違うので様々な考え方が可能になると思う。各委員から忌憚のないご意見を報告していただくとともに、今後の審議会でのさらなる議論を期待したい。

堺屋委員からの説明後、以下のとおり意見交換が行われた。

  • 軽やかな都市という考え方は、これまでにない考え方で賛成である。それに加えて、自然との共生、循環型の都市といった考え方も入れていただきたい。新たな都市が出来て、ゴミ問題が周辺に及ぶとなるとなかなか同意は得られない。エコロジカルな都市が出来るように考えていく必要がある。
  • 軽やかな都市ということで、国の威光のようなものは排除されるということだが、今の時代は機能的な都市がよいのかもしれないが、象徴的なものがものが無いというのも困るような気がする。
  • 文化的背景から都市を考えていくのは賛成である。従来は都市づくりで伝統的な地域の文化や望ましい今後の社会構造の変化に対応していくということについて、比較的ハード面はがっちりできているが、ソフト面は弱い。他方、軽やかな田園都市的なにおいや機能一点張りでないコミュニティーは大切であるが、21世紀の大競争の時代にこれでいいのかという考えもある。また、地方分権と規制緩和が進んで、完全に民間主導になればそれでも良いだろうが、明治以来の官主導という状況が一挙に変わるかどうか疑問であり、将来そのような方向に向かっていくということを新都市の計画の中で勘案しておくべきではないかとも思う。
(4)移転費用のモデル的試算について

移転費用のモデル的試算について、事務局から説明が行われた後、以下の意見交換が行われた。

  • 移転による東京圏等での公共・公益施設整備費の縮減については、学問的には正しいと思うが、実際には新たな東京を創造するために新たな需要が発生して、単純には縮減することにはならないだろう。単純に減るという誤解を与えないよう説明なりで注意が必要である。
    また、地元の費用負担については、誘致にあたっての重要な判断材料になるので、新都市に適用される地方行政制度はどうなるのかということと併せて明確に示すべきではないか。
    →東京圏等での公共・公益施設整備費の縮減については、新たな需要が生じるということもあるが、仮定上の計算として人口が移動することによって東京圏で本来必要なものが必要なくなるという計算をしたもので、移転費用の試算とはリンクしない形で整理しており、誤解なきよう説明してまいりたい。地方の負担については、必要に応じて求められる作業であるが、現時点では事業手法等も決まっていない段階なので、試算が難しい。

移転費用のモデル的試算の案を審議会の結論とすることが了承された。

(5)調査対象地域の設定について

事務局からの資料説明の後、以下の意見交換が行われた。

  • 調査の進め方については事務局案で良いと思う。
    また、文化的側面は国会等移転調査会報告で示された新都市の選定基準の9項目にはないが、重要であると思う。
    アメリカ、カナダ、ドイツ、オーストラリアに調査に行った際に感じたことは、新都市の住民の生活も考える必要があるということ。また、首都機能の所在地としての独自性と、全国に対する中立性ということも同時に大事だと思う。
    最終的に何カ所に絞るのかが問題となるが、国会で審議するときの選択肢を残すことも必要であろう。そのように考えると最低でも2カ所は必要ではないか。
    また、地方分権との関係で言えば、首都機能移転は地方の住民の意識の改革につながり、首都機能移転が地方分権を進める契機になり得る。
  • フィジカルな自然条件調査のようなものとは別に、21世紀の日本の政治の中心地をつくるという立地論を議論する必要がある。開発の問題を超えた政治の問題として議論する必要があると考えている。
    調査対象地域の設定の調査の進め方に関する事務局案が了承され、引き続き調査部会に検討を依頼することとなった。
(6)国土政務次官挨拶

本日は長時間にわたりまして、ご審議を賜り、心から感謝申し上げます。
とりわけ、石井委員からの情報の問題、堺屋委員からの文化的な問題等、非常に参考になるご意見を賜りまして、私どもも、審議会の委員の先生方のご意見を賜りながら、力強く前進をし続けてまいりたいと思っております。
元気のない日本といわれている中で、この審議会が元気のある日本へ転進する大きな転機になっていただきますようお願い申しあげます。

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