平成11年1月20日(水曜日)14時0分〜16時0分
中央合同庁舎5号館共用第9会議室
森会長、石原会長代理、新井、石井(威望)、石井(進)、石井(幹子)、宇野、下河辺、寺田、中村(英夫)、野崎、堀江、牧野、溝上各委員(14名)
金本、鈴木各専門委員(2名)
谷川国土政務次官、古川内閣官房副長官(事務局長)、近藤国土事務次官、久保田国土庁長官官房長、板倉大都市圏整備局(事務局次長)他
新都市像の検討、東京一極集中是正の効果に係る検討、情報ネットワークに係る検討、地形の良好性に係る検討について、その他。
今回は、新都市像の検討結果について、石井幹子委員から説明があった。その後、東京一極集中是正の検討について、金本委員から説明と質疑応答、情報ネットワークについて石井威望委員から説明と質疑応答、地形の良好性について鈴木専門委員から説明と質疑応答が行われた。
昨年4月に中間とりまとめを公表した移転先の新都市像について、国民から寄せられた意見も参考にした検討結果について石井幹子委員から説明が行われた後、意見交換が行われた。
今日提示された新都市像を審議会の結論として公表されることとなった。
東京一極集中是正の効果に係る検討について、金本専門委員から以下のとおり説明が行われた後、意見交換が行われた。
首都機能移転で一極集中がどの程度緩和されるかといったことについて、企業を対象としたアンケートで、特に企業立地についてどのように考えているか聞いて整理した。
また都市経済学の分析を使い、経済モデルを使って首都機能移転によって東京圏のおおむねの人口減少がどの程度あるかを試算してみた。これは難しいテーマで、ある意味では厳密に客観的に分析するのはほとんど不可能と言っていい。
アンケートについては、国内の企業1万社を対象として、有効回答数2,678という回答を得ている。
首都機能を移転した場合の東京の立地ポテンシャルが高まるかということに関する質問では、首都機能を移転しなくても現在より低くなるという回答が10%程度ある。移転すると低くなるという回答はさらに多い。移転先地によって大きな差はないが、三重・幾央地域に移転したケースが若干多い。移転すると東京の優位性が現在より高まるという回答も少数ある。北東地域に移転すると東京の優位性がかえって高まるという意見が他の地域と比べて若干多い。
首都機能移転によって宮城地方、名古屋地方、大阪地方の優位性がどうなるかということに関する質問に対しては、それぞれの地域の近くに移転したときには優位性が高まるという回答が非常に多い。
首都機能移転が東京に与える影響ということであるが、例えば、政府と関係の深い企業が東京を離れるということがあるかどうかという問いについては、そう思うという答えが多い。ここで注目されることは、東京のマイナス面が緩和されて東京の魅力が増すという回答が56.5%ある。
日本経済全体に対してどういう効果を与えるかということであるが、移転の投資が内需拡大のためになる、地方経済の自立性が増すという回答が多い。企業の自由な事業展開が可能になるといった回答も多い。逆にマイナス面があるかという質問に対しては、そう思うという回答は非常に少ない。政策決定が実態と乖離するといった懸念はあまり持たれていない。
首都機能移転が企業の活動にプラスになるかどうかという質問に対して、プラスになるという回答が半分、マイナスになるという答えが約1割となっており、企業活動、日本経済に対して良い影響を及ぼすと考えていると伺える。
移転した場合、どういう立地を選ぶかという質問に関しては、新都市に本社を移転するという回答は非常に少ない。支社を設置する企業はかなりある。
企業規模別にみると、5,000人以上の大企業では、支社を設置する企業が多い。中小企業では支社を設置するところは少ない。
移転先に本社ないしは支社を移す目的は新住民をマーケットとする営業が多いが、国会、中央官庁との関係を主とする企業も3,4割ある。
移転先に立地する本社ないし支社の職員数は、大きな規模は想定されず、10人未満が35〜40%、規模50人以下でみるとと8割弱を占める。次に首都機能移転でどの程度東京の人口が減るかという試算についてであるが、都市を一つの機能を持った都市圏としてとらえ、その中でどのような生産活動を行われているか、いろいろなデータを組み合わせて生産関数をつくるということをしている。生産活動は大規模な都市ほど高い。所得ないし賃金も規模の大きい都市ほど高い。当然、大都市には、通勤時間が長い、住宅が高い、生活コストが高いといった、賃金が高いことを相殺するデメリットがある。こういう構造になっているので生産活動に関しては大都市が有利な構造になっている。
もう一つ、首都機能等の公共財が供給されると、そこの地域の生産性が高くなるということが発生する。今回の調査では、東京が首都機能を担っていることによって、どの程度東京圏の生産性が高くなっているかということを、都市圏のデータを集めて各都市圏の生産関数を実証的に推定した。
従業者数、資本ストック等のデータに基づいてつくった式によって、東京であることがどの程度生産性を高くしているかという効果をはかった。そうして東京に首都機能があることによる有利性が首都機能移転によって減少する。有利性が減少したときにどの程度東京の人口が減るかという推計をした。その際、中央政府が全部移転するわけではないので、移転する首都機能がどの程度あるかを案分して、それによってどの程度人口が減少するかを計算した。
その結果、首都機能移転開始10年後で、東京圏の人口は数十万程度少なくなるという結果となっている。
情報ネットワークに係る検討について、石井威望委員から以下のとおり説明が行われた後、意見交換が行われた。
この検討の目的は本格的な情報ネットワーク機能を踏まえた21世紀の新しい都市を考えることである。インターネットやモバイルの情報を当たり前だという世代、ネットジェネレーションと言っているが、この世代が新都市を使うわけであるから、ネットジェネレーションのライフスタイル、都市そのものの機能、周辺及び全国との関係をこの調査で考えた。具体的にはヒアリングを行った。
ネットジェネレーションの前には、生まれたときからテレビ環境があったテレビジェネレーション、その前にはプリントジェネレーションの3世代があった。今後考えるときには、生まれたときからデジタル情報やインターネットなどが周辺にあるという世代を考えなければならない。
アメリカと日本を比較すると、アメリカは、デスクトップ型で入力もキーボード入力である。もう一つの特徴はCATVが普及していて、有線系のインフラにかなり先行投資がされている。
日本の場合、昨年あたりから音声入力が非常に多くなっている。将来はキーボードの何倍かのスピードになるだろう。有線だけなく無線が並行して普及していく。モバイルである。特にネットワークとフットワークを一緒に考えるネフットワークという移動を伴う情報行動ということで考えていきたい。
デスクトップでは、部屋にこもりきりというイメージがある。すなわちモバイルはネットワークとフットワークを両方同時に行える。我が国の中小企業は現場を飛び回っており、結局モバイル型のネフットワーク社会を考えてよいのではないか。
ハードウェアは、体につけるウェアラブル・コンピューターのように、どんどん小さくなっている。東大の学生について、1995年の1日当たりの情報に関連する活動時間を計った調査がある。慶応の湘南藤沢キャンパス(SFC)で1998年に行った調査と比較してみた。
電子メールについては95年東大では10分程度であるが、SFCの学生は約30倍程度使っている。
人と会う時間は、東大生が140分に対してSFCの学生は400分となっており、予想に反して人に良く会っている。モバイルを持って動いており、じっとしていない。
3番目は活字を読む時間であるが、SFCの方が東大生の4倍近くになっている。また、文章を手で書くものもSFCの方が多いと出ている。
サンプル数が少ないが、このぐらい差があるとネットジェネレーションの特性を見ることができると考えている。
高知県の高知市から自動車で1時間半ぐらいかかるところにある中芸介護公社では約1万5000人を対象に18人のヘルパーが働いているが、広い地域の介護サービスをしているため、モバイル端末を持っている。私が調査を行った時点では、かなり定着しており、成果をあげていた。具体的には端末を利用することにより、仕事が早くできるので、入浴時間が長くなったなどのメリットが出ている。ネットジェネレーションの行動様式をまとめると、マルチタスクすなわち複数のことを並行的に行っている。目的が複合的であったり、一見目的がないように見える行動をする。そういう行動に対応する都市を造る必要がある。今は一つの目的のための場所や行動を前提とした都市づくりが行われている。
ネットジェネレーションに対応することを考えると新都市、情報のインフラの概念が非常に変わってきている。情報の技術革新が早いため、取り替えのできない形で都市を設計すると新陳代謝が出来なくなる。将来を見通すのが非常に難しい。結局、アメリカなどで行っているように規制緩和をして競争を行い、勝ち残ったものが自動的にスタンダードになる。
モバイルの場合に人々自身が情報機能をもっており、人々が集まっただけで、大変な情報集積ができる。人が集まる情報拠点がダイナミックに変化しているというのが、一つの新しいタイプの都市のイメージとなっている。モバイル時代のオフィスというのは非常にダイナミックな動きをするものとなっていく。
4番目は災害の問題で、ネフットワークにより災害に対応できる。阪神・淡路大震災のときも携帯電話が非常に役立った。リカバリーのときも通信系統がライフラインの中で一番早く必要である。ネットワークを通じて世界中の人が見ているため、サポートの人たちが海外からボランティアで来たりした。
5番目はセキュリティーで、1年ぐらい前のアメリカで国防関係にサイバーテロリズムがあった。そういう侵入や障害を検知・対応することが都市の情報インフラとして重要になってくる。
6番目は、ワシントン周辺にもいろいろな産業の集積が出てくるのではないかとの指摘があったが確実にでてくるのがデジタルアーカイブである。台帳、公文書などの入出力、メンテナンス、セキュリティーを確実にやらなければならない。ここでしっかり根付かないと情報社会のベースができない。新都市の場合も産業として期待できるというより、むしろ不可避にそうなっていく。
立地の問題であるが、一般に情報は場所を選ばない。実際、情報化の進展している地域は遠くてもあまり問題にならないということが、ある時期に起きるだろう。ところがインターネット教育を徹底して、全国一律に情報化が進むと、再び地理的遠近が問題となる。Fedexという輸送会社が通信で、荷物がどこにあるかを知らせるサービスを始めたときには、みんな飛びついたが、全ての輸送会社が始めると、結局早く着くという物理的なスピードだけが問題となった。
新しくつくるのか、前のものを改造するのかという問題がある。例えば慶応のSFCは三田キャンパスとは全く別に造った。当然システムも全部新しく、過去のしがらみが切れるという新規立地の良さがある。霞ヶ関ビルをインテリジェントビル化したが、もう一つビルが建つほどの大変なコストがかかった。改造より建て替えてしまった方が良いという現実が出てきている。移転して新都市か、東京の改造か、というのが一つの問題となる。
都市構造の面から見た立地条件では、先ほどのSFCの学生データから、静かなところに人が集まったり、交流したりする空間の重要性が増してくると思われる。もう一つは機能面から見て全国から参加できるような通信受発信機能ということが立地条件となる。
母都市との関係であるが、SFCの例では母都市は藤原市であるが、それだけでなく東京というもっと大きな都市機能が利用されていることがわかった。その条件の中でSFCの情報的な生活があった。そういう条件付きで場所との関係を見なければいけない。
インフラや文化の面でも束縛されない距離感が必要である。あまり近いと既存都市に飲み込まれてしまう。
ネットワークという観点から言うと、一つの都市だけで孤立するということは考えられないので、新しい都市機能、国会等の機能にアクセスする条件が現状を下回らないということが最低限必要だろうと思う。最後に交通にかかる時間の優劣の問題というのは、情報化の段階に応じて変わってくる。交通手段もITSと言われるインテリジェント・トランスポート・システムに変わっていく。そうすると交通手段自身の中の情報化といったことがあり、立地条件の中に織り込んでいく必要がある。
地形の良好性に係る検討について、鈴木専門委員から以下のとおり説明が行われた。
地形の良好性については、メッシュ法による解析を行い、評価結果は、A〜Eの5段階とY、Zと評価してある。Aが優れていてだんだん劣るということになっている。Zというのは条件が悪くて適地とはなり得ない場所である。Yは制限的条件で、条件は良くないが、地形以外の条件が良ければ、適地となり得るような場所である。
全体としてA、Bの地域は平野、細かく言うと低地と段丘である。Cの地域は大体丘陵、起伏の小さい山地である。基本的にはCは普通の地域で、ABCのいずれかであれば地形の良好性を満足している。
地形の良好性についての理念、評価方法であるが、まず国会等移転調査会報告において地形等の良好性に配慮するという内容が出発点になっている。それを整理して3つの評価軸を考えた。1つは造成工事における地形改変の容易性すなわち土地造成の容易性である。ここでは、ブルドーザーを使ってのハードな切り盛りを考えているのではなく、自然共生型の観点からの評価である。もちろん最小限の防災対策等は必要であるが、基本的に大規模な造成工事を必要とする場所は良い点を与えないというスタンスである。2つ目は、地形条件・地盤条件に起因する災害に対する安全性である。この審議会には地形・地盤に係ること以外に火山、地震等の専門家が入っており、それぞれ検討している。今回の検討においては地形並びに地盤に係る災害は、山地における地滑り、山崩れ等の斜面災害、低地における河川の氾濫、洪水、海岸地域における津波、高潮の災害といった低地型の災害に大きくわけられる。低地型の災害には、地盤沈下や地震による液状化にも配慮する。3つ目は、地形のもつ快適環境活用性というものがある。これは自然となるべく協調した都市づくりということを考慮している。地形のもつ快適性とは、日照や高燥性の観点からとらえられる。
これら3つの評価軸を加法平均して評価している。それぞれの評価軸はそれに関連する評価項目から評価している。例えば、土地造成の容易性について、評価項目は傾斜や岩盤の堅さなどの地盤の状態から見た容易さというものから考えている。ただし地震に対する安全性については、軟弱地盤、砂の液状化等を生じる可能性のある砂地盤のみを考慮しており、どこに活断層があるかとか地震がどこで起きるかということには踏み込んでいない。
評価項目を何で評価するかというと、評価因子というものがある。例えば土地の高燥性なら標高で考える。日照は斜面の方位も東西南北で違うので、それを考慮している。
評価因子は大きくわけて、地形条件、地形分類、表層地質、植生、構造、土壌に大別してある。地形条件は、標高、斜面方位、起伏量、傾斜である。起伏量は1km×1kmの面積内の最高点と最低点の高度差である。これは必ずしも傾斜を表しているわけではなく、山地や丘陵の凸凹を表す一つの指標となっている。この地形条件は国土地理院の国土数値情報を使ってメッシュデータに変換している。
次に地形分類であるが、一つの土地がどのようなプロセスでできたかを示すもので、扇状地、三角州、段丘、砂丘と言った地形のでき方に対応した分類である。これは国土庁で発行している20万分の1の土地条件図でメッシュデータに変換している。
表層地質は地下30mぐらいまでの地質条件である。
地質構造では、特に断層を考慮しており、土木工事の観点から古い断層も評価対象としている。
土壌については、特に低湿地、泥炭地、軟弱地盤等の評価に用いている。
地形条件、地形分類等の個々の因子については、場合によって250mメッシュで得点を与え、加法平均もしくはクロス評価、特殊な場合はフィルタリング評価、例えば活断層が通っているとそのメッシュを最低点に評価するというようなことを行って全体評価として報告している。
ここでの評価にあたっては地形の観点のみからの評価で、土地利用等は一切考慮していない。ランクAのところは、大部分が集落、市街地、あるいは水田のような集約的農耕地となっている。ランクBも多くがが集約的な土地利用が行われており、一部に山地、丘陵地を含んでいる。
イメージ的に言うとランクCは多摩丘陵のような地形のところである。成田空港のようなところはランクAもしくはランクBになる。
地形の良好性というのは、災害や環境等の検討と密接な関係を有しており、あわせて検討する必要がある。関連する項目の調査が報告された段階で、それぞれの調査結果を持ち寄って一体的な評価、特性把握を行う必要があるのではないかと考えている。
今後は、他の調査が進むにつれて、地域が絞り込まれていき、より詳細なデータが必要になることも考えられる。
公聴会の進め方について、事務局からの資料説明の後、以下の意見交換が行われた。
次回第16回審議会・第13回調査部会合同会議について3月17日(水曜日)15時30分から、第17回審議会・調査部会合同については4月16日(金曜日)14時0分から行われることが事務局から掲示され、了承された。
以上
(文責 国会等移転審議会事務局)