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第18回国会等移転審議会・第15回調査部会合同会議議事要旨

1.日時

平成11年5月20日(木曜日)16時30分〜18時30分

2.場所

中央合同庁舎5号館別館共用第23会議室

3.出席者

(審議会委員)

森会長、石原会長代理、野崎部会長代理、新井、石井(進)、石井(威望)、石井(幹子)、海老沢、下河辺、中村(英夫)、中村(桂子)、濱中、堀江、牧野、溝上、宮島、各委員(16名)

(専門委員)

池淵、片山、鈴木、戸所、森地各専門委員(5名)

谷川政務次官、古川内閣官房副長官(事務局長)、近藤国土事務次官、久保田国土庁長官官房長、板倉国土庁大都市圏整備局長(事務局次長)、他

4.議題

文化的特性に係る検討、水害・土砂災害等に係る検討について等

5.議事の要旨

文化的特性に係る検討結果、水害・土砂災害に係る検討結果について、説明が行われた後、質疑応答が行われた。

(1)文化的特性に係る検討について

文化的特性に係る検討結果について、戸所専門委員から以下の説明が行われた。

文化についてきちっと形を決めることは容易ではない。しかし首都機能移転については、数百年オーダーでこれからの国の在り方、在りさまというものをどうするか、どういう国の形をつくっていくかということを考えていくことが重要であり、文化的要素についても考えていくことが大切だろう。
アルビン・トフラー的にいうと農業革命時代と産業革命時代、あるいは情報革命時代というように大きく時代を区分することができる。日本で考えると、農業革命時代の首都は京都であった。京都文化というのは伝統文化として非常に大きな役割を果たしており、京都を中心に九州から東北南部について1つのエリアをもっていた。産業革命以降、東京文化という形で日本は近代化を図り、沖縄から北海道にわたって広く現在の工業文明をというものをつくってきた。そして今日、情報革命時代を迎えつつある。地球化、ボーダレス化、情報社会化が一層進展した脱近代における新しい文化の在りようは、首都機能都市の在りように影響を与え、それは長期で見れば国土における位置よって違いはでてくる。文化的なものは、長期では非常に大きな役割を果たすだろう。

こういった視点から「首都機能移転に係る文化的側面に関する報告」として97年10月に堺屋元委員から報告があり、軽やかな都市、落ち着きのある都市、ゆとりのある都市、新しい文化を体現する都市という4つの都市としての個性を出したわけである。なお、石井幹子委員を中心とした新都市像のワーキンググループでも、このコンセプトを踏まえて、イメージ図などが描かれている。また文化的な面で新都市の持つべき機能ということで国際外交観光機能と情報通信機能というものを三権の中枢機能に加えて、都市に置いていくべきとしている。さらには、移転によって首都中心的な垂直型の社会から各地域均等の水平型社会に変えていく、国の拘束力より各地域の自主性を尊重するように変えていく、あるいはネットワークとフットワークをうまく組み合わせていくべきあるという方向がでている。

今回の検討会はこれを踏まえていくということで、大きく2つのことを検討している。1つ目は新都市の持つべき機能とそれらが与える機能はいかなるものかということである。具体的には諸外国に及ぶ首都機能移転に関連する機能等の立地状況、あるいは新都市の持つべき機能、新都市の機能の面から見た文化的影響といったものを検討している。2つ目は、首都機能移転が文化的側面に与える影響はいかなるものかということである。具体的には将来の日本の文化的方向、政治・行政のイメージ、ライフスタイル・ワークスタイルといったものがどうなるか、ということを所在地別にアンケート及びヒアリングという方法で調査を行った。なお、本検討でいう「文化」とは、芸術・学術だけでなく、ライフスタイルやワークスタイル、政治経済活動における諸活動、更にはそれらの根底にあるものの考え方というように価値観、規範、美意識等まで含めたものとして捉えることとした。

アンケートは、大学、経済界、調査対象地域及び東京都を除く地方自治体に送付し、第1段階は9〜10月、第2段階は今年の3月というように二段階にわたって実施している。

なお、本アンケートの留意点として頭に入れておいて欲しいのは、都道府県を単位として行った関係上、東京圏以東が11県、東京圏以西が32県あり、東京以西の回答数が多くなっている。これをクロス集計すると、全体として東京以東の方はどちらかというと東を評価し、東京以西の方はどちらかというと西を評価されるという傾向が出ていた。

大きく2つに分けて考えることのできる検討のうち、1つ目の新都市が持つべき機能に関し、「諸外国における首都機能に関連する機能等の立地状況」ということで、首都機能を移転した国及び首都機能都市以外に拠点となる都市を持つ国を中心に10カ国(アメリカ、イギリス、オーストラリア、オランダ、カナダ、スイス、ドイツ、フランス、ブラジル、ベルギー)を選んで検討した。オランダについては、憲法上ではアムステルダムが首都であるが、首都機能が立地しているハーグについて検討することとした。

「首都機能」について、どんな機能が首都機能都市に置かれているかであるが、全ての国で首都機能都市に所在しているものとして国会がある。最高裁はスイス、ドイツ以外の各国で首都機能都市に立地している。行政機関については、首都機能都市以外に立地しているのがイギリス、オランダ、カナダ、ドイツという状況である。

「準首都機能(政府関係機関等)」では、アメリカ、スイス、フランス、ベルギーにおいては首都機能都市に8割以上の政府関係機関が立地している。政府機関の分野別集中度では、防衛、助言・監督、農業・環境、福祉・健康、といったものの集中が多い。首都機能都市を中心に分布し、分散が見られる機能としては運輸・通信、銀行、資源・エネルギーといったものがある。

「国際交流機能」としては、国際機関はかなり首都機能都市に立地している。国際会議も首都機能都市で行われている。ただ、こういったものは首都機能都市以外でもかなり行われている。

「学術研究機能」については、大学はイギリスやベルギーが30%を超えている。新しく首都機能移転が行われたようなところは比較的少ないという状況である。研究機関も相対的に見て首都機能都市に多くの立地が見られる。

文化機関(文化施設)は古い首都機能都市には多く立地している。新しいところは比較的少ないが、だんだん増えてきている。

「情報発信機能」は統一的に見るのは難しいが、比較的首都機能都市に多く立地している。新聞社、放送局及び出版社に着目すると、イギリスでは全てにわたって首都機能都市への集積がもっとも高い。オーストラリアやカナダ、ドイツについては首都機能都市における集積はその他の都市と比較して低くなっている。

「諸外国における事例のまとめ」として、政治行政機能を中心とした単機能都市にスイスのベルン、キャンベラ、ブラジリアという都市が分類される。政治行政機能に国際交流機能や文化機能が複合した複合機能都市にブリュッセル、ワシントンD.Cといった都市が分類される。そして複合機能都市に更に情報発信機能を含めた諸機能が加わったフルセットの都市にパリ、ロンドンが分類される。単機能型、複合機能型、フルセット型の3つの分類ができる。この分類では、東京はフルセット型都市となろう。

単機能都市の状況として、ブラジリアでも近年では、文化、レジャー機能が整い、住民の満足度も高まっていると大使館ヒアリングなどでは挙げられている。

複合的都市は国際的にプレゼンスが高い都市になっている。例えばワシントンD.C.の場合、文化的にはスミソニアン博物館がある。ライフスタイル等については、独自のライフスタイルを持つ都市が複数存在し、それらが多様な文化イメージを造るのに貢献している。アメリカの場合、西と東でライフスタイルの在りようというものに違いが出ている。

フルセット型都市では、首都機能都市がその国の文化を相当程度代表している。フランスの場合、パリは国民全体にとって象徴的な都市である。しかし各都市がパリを模倣するという形にはなっていない。フルセット型都市においても各都市との関係は違いがあるようである。

次に、新都市の持つべき機能として、どのようなものがあるか検討した。首都機能移転が行われる21世紀は欧米へのキャッチアップから離れて我が国独自の道を歩くべきである。より創造的で活力のあふえた社会を実現するためには、新都市は東京とは異なる特色を持つ都市として形成され、全国における多様性を実現していくように進められるべきである。公務員という単一の職業カテゴリーで構成された都市を想定するとモノカルチャー的になる。それは明らかに避けるべきではないか。ではどうしたらいいのかというと都市としてのバランスを考えれば、発言力を有する市民層も重要であろう。また、全国、海外から多くの人が来て交流していく仕掛けというものを都市の中に造り込んでいくということも必要であろう。更に新都市は、パリのように一生に一度訪れる価値があって、訪れることによって人々に意味が与えられる都市にしていきたい。そういう意味では観光的な色彩を持つ必要がある。

具体的に新都市に立地すべき機能をあげていけば、国際交流、外交機能、文化機能、観光機能、情報通信機能といったものが考えられる。

「国際交流・外交機能」としては、新都市に高い付加価値を備えた新しい国際中核拠点としての機能を持たせ、各国の大使館とそこに居住する外交官の存在と相まって、世界中から多様な専門家、ジャーナリストが集まって、国際的なプレゼンスの高い都市にしていくことが必要であろう。

「文化機能」としては、新都市の文化は基本的に新たにつくる文化となる。京都の伝統的文化、そして現在の東京文化、どういう文化になるかは一人一人の力でつくっていくものであるが、新しい文化を創造していく仕掛けがづくりが必要であろう。そういう中で、地域的なもの、国家的なもの、そして地球規模で通用し得るものを積極的に取り組めるようにする必要がある。そのためには多文化主義的な混成文化を志向することが必要であり、学術機能に着目することとした。若い人を中心にさまざまな人材を集めて育成し、それを社会に還元する人材の循環システムとして、新しい学術機能像、文化機能像といったものを追求していくことが、新都市においても大切なポイントとなってこよう。

「観光機能」であるが、21世紀型の新しい街づくりの在り方、あるいはライフスタイルや価値観を創造していく中で、実際にそれを体験する人がいなければその文化は全国や世界に普及していかない。したがって、リーディング・シティとしての首都機能都市にいろいろなところから人が集まって、新しい日本の姿を世界にアピールし、そこで体験してものを広めていくという作用を持つため、観光機能というのは非常に大きな意味を持つ。

「情報通信機能」については、過日石井威望委員から説明があったネットワーク構造等をつくるべく、新都市は世界でも最先端の情報基盤を持つ都市として、ポテンシャルを生かした情報発信の拠点とするということが求められている。同時に、情報セキュリティも検討する必要がある。

新都市の機能面から見た文化的影響力についてであるが、国内的な影響力としては、新都市は新たな集中を呼ぶようなフルセット型都市ではないので、東京など既存の大都市が国内に持つ影響力は依然として移った後でも大きいと思われる。しかし、東京中心の意識、心理面での社会構造は再編されていくといった影響があると予想される。

国際的な影響力としては、新都市の建設によって日本が今後どのような国になろうとしているのかということをシンボリックにアピールできる。また、顔の見える日本の姿を形づくるといったことになる。ただ、文化的影響力については、新都市の具体的な姿が明らかになる過程でも改めて検討していくことが望まれる。

次に、大きな2つ目の検討である「新都市の所在地別にみた首都機能移転が文化的側面に与える影響」である。長いスパンで考えると、新都市の立地した地域の風土やそこから出てくるさまざまな文化的個性といったことで我が国全体への影響に違いが出てくるであろう。そうしたことを検討するに当たっての留意点として、東京以東と東京以西の集積度の比較というものがある。具体的にはまず面積に着目して東京圏、東京以東、東京以西に分ける。この場合の東京以東というのは新潟・北関東以東、東京以西は富山・長野・山梨・静岡以西である。面積では、東京圏が4%、東京以東48%、東京以西が49%となり、以東、以西がほぼ同じ面積である。可住地面積もほぼ同じである。人口は東京圏が26%、東京以東が20%、東京以西54%となっていることである。専門的職業や技術者、あるいは管理的職業、事業所数、小売年販売額、県民所得は大体人口に比例した分布になっていると思う。しかし、高等教育を受けた方の分布は東京圏が37%、東京以東が14%、東京以西が49%であり、現在の4年制大学に在学している学生数は、東京圏が40%、東京以東が11%、東京以西は49%となっており、東京及び東京以西が非常に高くなっているという構造が見られる。

製造業の場合でも、面積はかなり東京以東が多くなっているが、製造品出荷額は低い。これは付加価値の高いものが西にあり、東は付加価値が低いという構造が見られるからと思う。全体的に見て、東京以西は東京以東のほぼ3倍の力を持っているという状況である。

「新都市の規模」としては、10か国の状況を見ると、アメリカの場合、ニューヨークが700万強、そしてワシントンが60万弱であるが、日本の場合、東京23区が800万弱、新都市が最大60万と考えられている。これはニューヨークとワシントンの人口にほぼ合うような形に見られる。これは行政域でとらえており、都市圏では見ていないので、都市の力とは即言えないが、結果として日本の場合もかなり密度が高くいろいろな既存都市もあるので、こういう状況が見られるのではないかと思われる。

新都市と各地方との関係ということであるが、北東に移転した場合には、新都市は東京圏と密接な関係を持つ都市になるというのは非常に強く出ている。東海に移転したときは、東京以外の都市との関連が強まり、経済圏を形成すると、新都市は東京圏と密接な関係を持つというのはほぼ同じようになっている。三重・畿央になると、東京圏以外の都市との関係が強まり、経済圏も形成されるというところが強く出てくる。これは三重・畿央になると京阪神と近くなり、そこを中心とした1つの経済圏が出てくるということが表れていると思う。

留意点の4番目として、海外事例から見た既存都市との関係であるが、キャンベラ、ブラジリアのような新しい人工的な首都は歴史を持たないために、国全体の文化を規定する力は弱い。ただしブラジリアはブラジルの近代化を象徴する都市としての評価が出てきているという。これは新都市型都市である。

旧市街地と新市街地を足したような都市はどうかということであるが、ボンの場合、中世からの市街地を核として、その周辺に新市街地が広がっており、その新市街地の中に首都機能が立地している。その結果、歴史、伝統、文化の香りのある旧市街地の落ち着いた雰囲気が感じられるというメリットがある。ワシントンの場合、小さな田舎町をベースに隣接して人工的な市街地が計画され今日に至っているが、国全体の文化のトレンドをニューヨークのように決める都市ではない。しかし、アメリカの歴史や文化を象徴する施設が多い。

旧市街地型都市としてパリは、旧市街地から同心円的に拡大して、フランス文化を象徴するような都市になっている。新都市の建設に当たって、その基盤として旧市街地を持つかどうかである。これは新都市の個性や文化的方向に影響を与えることが考えられ、なお一層検討する必要があると思う。

「新都市のイメージ」として、地理的な違いがその都市のイメージにどんな影響を与えるかということである。ここではかなり違ったイメージが出てきており、北東地域に移転した場合、自然環境と調和した生活を楽しめる環境共生といったようなイメージが非常に強くあり、落ち着いた静かな環境を有する都市になるというのが62.2%という結果になっている。政治・行政機能に特化したコンパクトな都市が54.3%で第3位という状況である。

東海地域では、どんな新都市のイメージになるかというと、高度情報社会をリードするような情報通信都市になるというのが60.6%で最も高い。2番目が国際会議が頻繁に開催される外交都市ということが46.5%、物事に柔軟、迅速に対応する軽やかな都市ということが44.9%となっている。

三重・畿央の場合には、新しい日本文化を創造し、体現する都市や政治・経済機能に特化したコンパクトな都市となっている。

将来の日本の文化的方向ということでアンケートを行い、北東地域と中央地域の2区分と北東地域、東海地域、三重・幾央地域の3区分の2つに整理した。北東地域と中央地域の2区分で、「将来の日本の文化的方向」をみると、北東地域に移転した場合には自然と共生した文化が育つというところが60.9%、ゆとりのある生活の促進、落ち着きのある文化が育つというのが41.7%で高く出ている。中央地域の場合であると、国際性豊かな文化が育つということが出ている。北東の方には緑滴るというイメージがされ、中央は万博や中部国際空港、リニアや国際的なものが既存のイメージとしてあるのではないか。

3区分でみると、北東地域に移転した場合には自然と共生した文化が育つというのは69.3%、ゆとりある生活の促進、落ち着きのある文化というのがやはり高く出てきている。それに対して東海地域に移転した場合には、最新情報にあふれた先端的な文化が育つということが高い。三重・畿央の場合には、伝統や歴史を重んじた文化が育つということで、京都に近いというようなことがイメージされていると思う。

次に、政治行政イメージであるが、2区分でイメージをすると、北東地域に移転した場合、中央集権型から地方分権型の国に変化するというのが最も多くて59.2%、次に経済効率重視から生活者重視へと変化、災害時における国としての対応力が向上といったことが出てきている。中央地域の場合には、中央集権型から地方分権型の国に変化するというのは北東よりは若干低いが51.4%で高い。災害時における国としての対応力が向上するというのは、北東より若干高くなって2番目にきているという状況である。

3区分では、北東地域では1番目として、中央集権型から地方分権型の国に変化するが63.8%、2番目が経済効率重視から生活者重視へと変化するが47.2%、災害時における国としての対応力の向上というのが43.3%である。東海地域に移転した場合は、中央集権型から地方分権型の国へ変化するが58.3%、2番目が災害対応力の向上、3番目が国民の政治への参加意識が高まると出ている。三重・畿央の場合には、やはり中央集権型から地方分権の国へというのが1番で、災害対応力が2番目、いずれにしても地方分権への期待が大きく、どこに移転しても地方分権が出てくることが国民の中ではイメージされている。

次に「ライフスタイル・ワークスタイル」であるが、北東地域に移転した場合には、空間的にも、時間的にもゆとりのあるライフスタイルになるという期待が比較的多い。中央地域の場合は国際性豊かな文化が育つということが多い。ワークスタイルについてはさほど両地域に差はないという状況である。それぞれの地域とも、同じような傾向であるが、空間的ゆとり、あるいは時間的ゆとりは北東に強く出ていると思う。まとめでも、北東に移転した場合には時間的にも、空間的にもゆとりのあるライフスタイルが実現され、三重・畿央及び東海の場合には、北東よりもゆとりあるライフスタイルが実現されにくいというような結果が出ている。

参考として、東京にどんな影響が考えられるかというと、ゆとりあるライフスタイルが東京にも定着するということが65.8%、より必要な施設や空間の整備が進んでくるということが62.4%、ますます経済中心としての重要性が増すとの答えが57.8%、ますます文化的中心としての重要性が増すが45.7%、ますます国際的な都市としての重要性が増すと答えているのが47.4%、生活者優先の都市となるというのが41.9%ということで、過半数に近い、あるいは過半数以上が東京にはよい影響であると答えている。

新都市でこれまでと異なったライフスタイルが形成されるならば、現在の東京圏の超多忙なライフスタイルは特殊なものとして認識され、日本人全体に違った新しいライフスタイル、あるいはワークスタイルというものも影響していくということが言える。こういう結果になっている。

今後の課題としては、他分野の検討とも関連性を有しているので、審議会での総合評価に資するために、これまでの検討結果をまた改めて整理する必要があるのではないかと考えている。

この後、以下の質疑応答が行われた。

  • それぞれの地域について特性や方向というものをアンケートすれば、何がしかの傾向は当然出てくるだろうが、それが本当に有意な意味を持っているのだろうかと思う。
    例えば、ドイツがベルリンを選ぶ。そのときドイツはかなり明確な国家的意思表示をしているわけである。東ヨーロッパ、スラブとの経済、文化に対してドイツはこれから繁栄してくるのだということを言っているわけである。東京から300キロのところで、ここで言っているようなことを本当に我々安心して言えるだろうかという心配を持つが、そう簡単に答えられる話ではないと思う。全体をまとめるという立場からすると、やはり差があるのかないのかということはある程度はっきりさせておきたい。それはこういうアンケート調査的なもので出るのではなくて、それよりこの審議会なりの考え方を出すことなのではないかというふうに思うが、いかがであるか。
    →今回のアンケートは、あくまでも国民一般の意識がどんな状況かということをつかむということである。国民一般の意識や政治行政のニーズから乖離することがないようにということで、国民がどういうイメージを持っているかということをつかむということは必要なのではないか。国民の意識、イメージというのがどういうふうにあるかということは決して無視できないので、それをどういうふうな形で生かしていくかということについては、審議会等でこれを踏まえて検討し、出していくべきものであると思う。
  • 一番興味があったのは首都機能移転後の東京の変化というところである。アンケートに答えた人たちが今の経済中心的な日本の在り方に対して少し人間中心的なものを期待しているのではないかというようなことがうかがえる。地域ごとの状況を見ても、全体としてそういう底流を持ってこのアンケートに印を付けていかれたのかなという気がしている。そういう面で1つの評価はできるのではないかと感じた。
  • 今日の報告と少し違った点であるが、各地域の現在の文化と首都機能を受け入れるということとの関係が気になっている。今、東京にある首都機能には官庁文化や政治文化がある。それが突然地域へ侵入していったときにどんなトラブルが起こるか、プラスかマイナスかが知りたいと思った。
    例えば明治政府が江戸というところへ東京を持っていったときには、西日本の文化を持っている若手たちが伝統的江戸文化に入っていったことのあつれきが東京文化になっている。各地域へへ首都機能という国際化した文化が入っていくということとの摩擦を議論することかなと思っていた。極端なことを言うと、例えば食生活というようなことも気になる。今度の対象地域に「食」というものの特色があるのかないのか。それは今やスーパー、あるいはコンビニで世界共通という動きと地域の食生活の影響というようなことは無視していいかどうか気になる。
    もっと抽象的なことを言うと、公的な公用語と地域の方言とはどのようになっていくかというようなことが少し気になる。各地域は言葉の上で外国語とどのくらいなじんでいるかということも、そこに住んでいる外国人の数などにも影響するかもしれない。今度のアンケートで一般論のところははっきりしたと思うが、はっきりしただけに余り意味がないのではないかということも言いたくなる。首都移転と文化というのはどこで接点を求めるか、もう少し議論をしていくことが今後の課題であると思った。
    →方言の問題については、実は前回の検討会で首都が立地したところの方言が標準語になるのではないかというような議論をしながらいろいろ考えた。そこに至るまでに幾つかデータを取りながら、どう評価していくかということになると思う。この検討については、それなりの議論はやったのだが、必要があれば他の検討で出てきたものと関連させながら検討を深めていきたいと考えている。
    文化摩擦ということであるが、東京に首都機能が移ってきたのは、明治の大きな転換期であり、国内的な戦争というものがある中で、西南雄藩の下級武士が中心になって出てくるという状況の中での東京首都である。今日の場合は違って、国が自らつくっていこうということで、それぞれの地域が来てくださいというような形でやっている。この辺を踏まえながら評価していかなければならない。
  • 言葉の点で、関西弁の方は東北弁は受け入れられないのではないか。それが地域の感覚に見事に表れるという気がする。文化摩擦のときは江戸のときよりももっとひどい摩擦になるのではないかという気がする。霞ヶ関、永田町の文化がローカルな文化と出会うことは容易ではないという気がする。
    →非常に難しいものを持っていると認識している。
(2)水害・土砂災害等に係る検討について

水害・土砂災害等に係る検討結果について、片山専門委員から以下の説明が行われた。

検討の目的としては、地震・火山以外の自然災害に対する安全性の検討を行い、具体的には水害と土砂災害と雪害の3つを取り上げている。

検討の対象地域は、審議会で設定された調査対象地域である。本来、水害・土砂災害等は極めて具体的かつ属地的であり、候補地域がより絞られたときに検討することは多くあるが、絞られる前におおよその検討を行うというのは非常に難しい。検討方法としては、既往のデータが整備されている地域では既往のデータを収集する、地形と地質の条件を一様に比較する、気象の条件を一様に比較する等の方法を用いた。

検討の対象とした災害の一つが水害である。水害については、日本では河川整備の水準が必ずしも中小河川では高くなく、洪水や土砂の流出の危険性があるところは日本のいたるところに存在し、沿岸では高潮の危険性もある。

水害の例として、戦後すぐにはカスリン台風やアイオン台風のように、500〜1000人の方が亡くなるような被害があった。その他、狩野川台風や伊勢湾台風があったが、伊勢湾台風を境にして死者が多く伴うような災害は減っている。土砂災害と水害は非常に連携しており、大雨が降るような災害に伴って土砂災害が起こっているというのが実情である。

土砂災害の最近の例は、長野県の地附山の地すべり、鹿児島県出水市の針原地区の土石流があるが、土砂災害は局地的であるという特徴がある。

土砂災害は、水害のように非常に広い地域が冠水するのと違い、土砂災害の起こりやすい地区はたくさんあるが、そこで被害が実際に起こっていない地域も多く存在する。偶然雨が多く降ったり、同じような条件で、地質的には同じようでも、水が集中するような地形になっていると災害が起こりやすいことから、土砂災害は雨の災害に比べると非常に局地的である。

日本の地すべり地域の分布を見ると、日本中で地すべりが起こっているようだが、多くは山地から平地に掛かるようなところで起こっており、特に北東地域では、奥羽山脈が盆地に移行するところや阿武隈山地が西側の盆地に移行するところで地すべり地域となっている。このように、日本地図の上に調査対象地域を重ねて検討を行うことは実に荒っぽく、これで何が言えるかというのは非常に難しい。

次に、調査対象地域の特性をまず気象の面で比較した。例えば年降水量について、対象地域は中庸であるといえる。30年間の最大日降水量についても、3つの対象地域にそれほど違いは見られない。

積雪量については最も差がなく、豪雪地帯からはごく一部を除くとほとんど離れており、どの地域もそれほど大きな差がないというのが結論である。積雪の日数については、北東地域の北部は多少多いが、全国的に見てそれほど多い地域とは言えない。

真冬日(最高気温が零下以下の日)と冬日(最低気温が零下以下の日)については、北東地域の方が寒いことは言えるが、対象地域全体を比べるとそれほど大きな違いはないというのが結論である。

調査対象地域における気象条件の概要としては、全国的には大体中庸の地域であって、3つの対象地域それぞれについて気象条件などで大きな差をつけるということはできない。結果的には、気象で左右されることはほとんどないことが分かった。

何が一番決め手になるかというと、地形である。地質もそれ程大きな違いはなく、地形が大きな決め手になる。

地形について、例えば宮城県の西部には蔵王山がある。この周辺は比較的起伏の大きい奥羽山脈が南北に連なっており、北部が丘陵地、南部は丘陵地〜小起伏の山地で、東部の方に阿武隈高地が連なる。その間に阿武隈川があり、その辺りに幾つかの表明地域がある。表明地域の幾つかは、土砂災害が起こりやすい地域が含まれている部分もあるが、起こりにくい部分も多くあり、地域ごとの差が明確ではない。

福島県は西部に吾妻山、安達太良山があり、その周辺は奥羽山脈の比較的起伏の大きい地域であるが、中部には阿武隈川沿いに広がった福島台地があり、これは表明地域の全体の中に含まれる。それから郡山盆地、東部に比較的起伏の小さい阿武隈高地があり、その間が表明地域である。大部分は阿武隈川の流域であるが、南部の一部は久慈川の流域に入っている。

気象について、例えば、北東地域の宮城、福島、栃木、茨城の降水量は全国的にはやや少ない地域に属しているが、山沿いではやや多いという特徴があるというほどの違いしかない。積雪は、北東地域の一部に積雪が多いところもあるが、表明クラスター内には含まれないというような特徴がある。主要な災害履歴についても、戦後すぐに発生したカスリン台風やアイオン台風の影響を受けたものを除くと、例えば、関東から東北では昭和61年の台風10号が調査対象地域全体に大きな影響を及ぼしており、栃木、茨城では平成10年の台風4号及び前線の停滞が最も大きな影響を及ぼしていることが分かる。

水害については、静岡県では水害履歴がきちんとまとめられており、そこから水害履歴と地形の特性の相関について検討を行った結果、相関が非常に高いことが分かった。

低地水害に対する安全性評価の結果と水害履歴の対応を静岡県で実際に調べてみたが、低地水害の安全性が低いと地形区分上判断されたメッシュと、実際に水害を履歴したメッシュとの対応を見ると、非常によく一致する。低地水害に対して安全性が優れているところでは水害が起こっておらず、安全性が低いところは地形の区分でほぼ明らかになることが分かる。したがって、これはほぼ日本中にこの手法を使っても差し支えないことになる。

一方土砂災害は非常に難しく、土砂災害が起こる可能性はあっても、その全てにおいて発生しているわけではない。しかし、過去の履歴等によると、傾斜が非常に急なところ、表層の地質に特定の地盤があるところ、ある特定の地形区分に土砂災害が集中していることが分かる。

傾斜、表層の地質、地形分類、斜面地盤の保持力を高める植生を組み合わせて安全性を評価してみた。静岡県ではこれについても詳細なデータがあるので、どのくらいよく一致しているかをチェックしてみた。評価について、5〜1と土砂災害に対する安全性が低くなっていくが、3が災害が起きそうなところとそうでないところの境界になる。既往の土砂災害と安全性の評価を対応させてみると、水害ほどは一致していない。例えば、一番安全性が劣ると判断されたメッシュが静岡県の対象地域に88メッシュあるが、そのうちの22メッシュでは実際に被害が発生している。66メッシュでは発生していないが、これは被害を起こす可能性があっても必ずしも起こるとは限らないためと思われる。全体的には、土砂災害の可能性が低いところでは、実際に災害が発生している割合も少なくなるという対応性がないわけではない。土砂災害についても、今回はその他の対象地域にその手法を適用してみることにした。

水害の発生可能性と土砂災害の発生可能性についてまとめた結果、宮城県では東部の海岸沿い並びに阿武隈川及びその支川に沿った低地で水害の可能性が比較的高く、南東部の阿武隈高地及び西部の奥羽山脈で可能性が比較的低い。海岸は高潮の発生の可能性があるが、被害が内陸に広範囲に及ぶところはほぼないことが分かる。土砂災害について、西部の奥羽山脈及び南東部の阿武隈高地の斜面において発生する可能性が比較的高い。このように、県ごとについてそれぞれ整理を行った。

まず最初に申し上げたように、今回は日本地図の上に調査地域を重ねるという程度の検討を行ったのであり、それを更に県レベルに下げて検討するのにはデータ的に限界がある。したがって、地域ごとの善し悪しについては明確に言えない。実際の善し悪しは、移転先が決まって、その中に建物や都市的な構造物を配置する段階で初めて明確にできる。

全体のまとめとして、今回は非常に概略的な検討を行ったものであるが、ある地域に対して更に詳細な検討を行うときに使えるようなデータはすべて整えてある。

水害・土砂災害等の安全性の観点から、極めて不利な地域も散在的には存在するが、良好な地域もまた広く分布しており、現在想定されている規模の新都市を設置する場合に、立地が困難だという差をつけるだけの違いはない。立地が非常に困難だという地域はなくて、その中に部分的に不利な地域を含みながらも新都市の立地は可能であるというのが結論である。

防災の観点から見た新都市の在り方についても、移転場所が限定されないと検討はむずかしい。対象地域それぞれに関して属地的に調べなければ結果はでないが、今回はそこまでの検討を行っている訳ではない。

情報収集・提供システムの整備に関しては、水害についてはその整備が日本中で進行中であるが、土砂災害についてはまだそのレベルに達していない。移転先が絞られたり、決定した段階で、予測システムや予測のための研究の構築が必要であると思われる。

危機管理体制の整備に関しては、災害が発生した場合の被害を最小限に食い止めるためには、新都市だけではなくその周辺部を含んだ広域的な防災計画の策定というものが当然必要である。そのためには、災害想定、被害想定等が非常に重要になり、それに基づいた避難体制や適切な情報提供が必要になり、今の段階でどの地点において危機管理体制がとりやすいということは一般論としては進めにくい。移転先が絞られた段階で詳細な検討を行うことが必要である。

雪害に関しては、調査対象地域について、雪害のために新都市の立地が困難であるというだけの差はないということが分かっている。

最後に今後の課題として、今後具体的に新都市の施設配置を検討する際に、現地における調査等を含めた大縮尺図を基図とした地形・地質データや災害履歴データ等による詳細な検討が必要である。詳細な検討は、移転先をある程度絞らないと行えないというのが現状である。

併せて新都市の整備により、周辺地域の水害・土砂災害の危険度を逆に上昇させてしまう可能性もあり、その点に関しては都市をつくるという視点からの検討が必要である。今回は水害・土砂災害を検討しており、地震災害、火山災害といったその他の関係調査の結果を含めて、総合的に災害に対する結論を出さなければいけないが、今回はその一部を行ったに過ぎない。

この後、以下の質疑応答が行われた。

  • いずれにしても今の段階では、言えることに限度はあるが、いざ場所が決まったらその上で局地的な対策はとり得るものだということであるか。
    →そのとおりである。今この場所はできないとか、この場所はできるとか明らかに差別化するだけのデータはない。
  • 現地調査に行って、起伏が激しいと感じたところがあるが、あの土質、岩質というのか、これが非常にもろいとかいうことはないのか。
    →おおまかに言うと、岩盤的なところと関東のように地盤的なところに分かれるが、岩盤的なところに関しては、非常にもろい、または非常に特殊な岩盤が広く分布しているところはない。全体として見たときには随分起伏があるようでも、その中に何千ヘクタールぐらいの場所を探し出すというのは、少なくとも地図上は幾らでもある地域だというふうに理解してもいいと思う。
  • 現状の面で地形改変をしたときの状況という形にはなっていないのではないか。
    →全くなっていない。
  • その場合、都市をつくるというかなり大規模な地形改変をしたときに、その後の特に土砂災害が起こりやすい地域と、余り起こりにくい地域と出てくるのではないかなと思うが、そのあたりいかがか。
    →あるかもしれないが、結局その場所に何をどこに配置してみるということまで考えた上でないと、今のところは言いようがない。
    →要は、範囲が広過ぎるので、その点からも言いにくい。例えば北東地域でも、どこが悪いですよということは言えるが、地域レベルで言ったらそういうところはどこにでも少しずつはある。安全なところは勿論たくさんある。よって、表明地域の広さではいい、悪いということは今の時点では地形、地質の立場からも差し控えようというのが私の言いたいことであり、片山専門委員も同じような意味合いで言われたのではないかと思う。ここの地点が大丈夫かと言われれば言うが、それは意味がないと思う。そんな理解でいいか。
  • そうである。
    →今回の場合は海面の上昇については全く考えていないのか。
    →全く考えていない。

次回、第19回審議会・第16回調査部会合同会議については6月17日(木曜日)14時0分から行われることが事務局より提示された。

以上
(文責 国会等移転審議会事務局)

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