平成11年7月22日(木曜日)14時0分〜16時0分
中央合同庁舎5号館別館共用第23会議室
森会長、石原会長代理、新井、石井(威望)、石井(幹子)、宇野、下河辺、中村(英)、野崎、濱中、堀江、溝上、各委員(12名)
井手、戸所各専門委員(2名)
宮沢社会総合開発研究所理事長
谷川政務次官、古川内閣官房副長官(事務局長)、久保田事務次官、木下国土庁長官官房長、板倉国土庁大都市圏整備局長(事務局次長)、他
公聴会とりまとめ、既存都市との関係に係る検討、地震災害等に係る検討、環境負荷に係る検討、国土構造に係る検討、総合評価等
公聴会とりまとめ、既存都市との関係に係る検討、地震災害に係る検討、環境負荷に係る検討結果、国土構造に係る検討結果について、説明が行われた後、質疑応答が行われた。
今年の1月から9回の公聴会を開催し、1,822人の方々が出席された。各会場8名の意見発表者ということで72名から意見を発表していただいた。公聴会の出席者から様々な立場の意見を幅広く頂き、公聴会の目的を十分達成できたのではないかと分析している。
既存都市と新都市との位置関係について検討した。
検討の枠組みとしては、新都市と既存都市の関係は移転のプログラムや新都市のつくり方、移転の規模、新都市の内部における機能誘導方針、都市としての自立性追求といったことによって大きく変わってくる。したがって、国会等移転調査会報告の前提を基に検討を行った。
既存都市との関係について、既往の新都市開発事例から、新都市周辺のスプロールの発生、街びらき段階での利便性、周辺地域との関係といったことを検討課題とした。
「検討の視点」として、まず市街地の連続(市街地連坦)の抑制、母都市となり得る既存都市との連携の可能性について検討した。市街地の連続の抑制については、新都市の周辺におけるスプロールの抑制と政令指定都市級の大都市の圏域との市街地連坦の抑制という2点を検討している。
それぞれの調査対象地域における周辺の政令指定都市級の大都市とそれ以外の既存都市の状況を整理した。
新都市周辺における市街地連坦に係る検討では、市街地連坦が発生する代表的なパターンとして、新都市周辺のスプロール、沿道立地の連続、新都市と既存都市の中間地域での開発の3つを想定して、自然地形と既存市街地の状況並びに交通基盤、現況土地利用規制といったものを検討項目とした。
検討結果として、新都市周辺におけるスプロールについては、地形的な制約の有無、既存市街地の状況等によって発生の程度に若干の差は想定されるものの、現行土地利用規制を前提とした場合、いずれの地域においても周辺におけるスプロール発生を完全に抑止することは困難と予想される。このため、新都市の周辺地域における土地利用について新たな制限、誘導のための措置を関係者の理解を得た上で導入することが必要と考えられる。
政令指定都市級の大都市の圏域との連坦については、政令指定都市級の都市に近接している地域については、都市機能の享受と新都市の利便性を兼ね備えた中間地域の市街化圧力が高まるものと考えられる。現在の圏域の拡大状況から考えて、政令指定都市等の大都市の圏域の周辺地域には、既存の土地利用規制では必ずしも十分と言えない地域もあり、新たな制限を検討する必要があると考えられる。
以上のように、現状の規制ではどの地域も大差がなく、21世紀のリーディング・シティとしては土地利用規制の導入が課題となる。
新都市と既存都市との連携については、新都市の発展段階別に連携の可能性を検討している。発展段階は大きく3段階あり、第1段階は街びらき段階で、初期ほど母都市への依存が生じる。成長段階では、母都市と新都市の間に依存関係と競合関係が生じてくる可能性もある。そして成熟段階になると、母都市との関係は適切な機能分担の下でそれぞれの都市圏が形成されることが望ましい。なお、極めて特殊な機能については東京を利用することになる。母都市として望ましい都市規模と交通利便性を検討項目とした。既存都市の機能立地状況を見ると、政令指定都市とその他の都市等では差が非常に大きい。
望ましい母都市の位置と規模の関係であるが、人口20万〜30万人の規模を持つ母都市と新都市の間を30分程度、新都市と人口100万人以上の規模の都市とは概ね1時間程度で到達することを目安とした。生活利便性を確保し得る人口20万〜30万人規模の母都市と多様なニーズを補完し得る人口100万人以上の規模の都市と各地域との関係を整理した。
これをまとめると、初期の街びらき段階における生活利便性の確保では、生活に必要とされる一般的な機能の確保については、すべてのクラスターからおおむね30分程度の位置に人口20〜30万人規模の都市圏が存在することが望ましい。この観点からは第1段階の10万人に達する以前に最も母都市が必要であり、比較的近い位置に母都市が存在することが望ましい。いずれの地域も周辺に20ないし30万人規模の都市が存在しない地域はないものの、クラスターの立地状況によっては現状の交通条件ではおおむね30分程度で到達できない地域もあり、そのような地域においては母都市と連絡する交通機関の整備を計画的、優先的に進め、アクセスの改善を図ることが必要と考えられる。
新都市の多様なニーズの補完ということについては、現状でもいずれの地域でも地域内の主要駅から政令指定都市まで鉄道で1時間程度で到達可能である。新都市立地に併せ交通網の整備等を実施することによって、どのクラスターからも鉄道でおおむね1時間程度で到達できるものと考えられる。
今後の課題としては、新都市の具体的なクラスター配置の検討に併せて再整理をし、総合評価との関連を考えていきたい。
この後、以下の質疑応答が行われた。
地震災害等に係る検討結果について、溝上委員から以下の説明が行われた。
この検討は2つに分かれている。1つが地震災害に係る検討、もう一つは災害対応力に係る検討であり、この2つはお互いに関連した事項を多く含んでいる。
この検討委員会のメンバーは、地震活動、地震の長期予測、活断層、地震動、津波、都市災害、交通環境変動などかなり広い事項にわたっての専門の先生方に参加いただいた。この事項はかなり広い範囲にわたっており、かいつまんで要点だけを述べたい。
日本列島は地震国であり、局部的に地震の少ない地域もあるが、100%安全な地域はない。たとえある地域が一見安全で地震が過去起きていないように見えても、これから起きる可能性も十分ある。検討項目は地震動、地盤の安定性、津波という3つの項目について検討した。
地震動については、どういった地震を対象とするかがポイントになる。今回の検討では海溝型の地震と内陸活断層に伴う地震という2つの地震に着目して検討を行った。検討の方法は地震活動の特性を地域別、系統的に整理すること、過去に起きた被害地震の様相を調べてみるということ、そして、シミュレーションによって予想される被害についても検討した。その他に地盤の安定性、津波についても検討した。
地震被害をプレート境界の地震、内陸で発生する地震の2つに大きく分けてみる。日本列島は4つのプレートという岩盤の上に乗っており、これがお互いにひしめき合っているために地震が多発する。このプレート境界で起きる地震は非常に大規模な地震である。この巨大地震、プレート境界の地震を引き起こす歪みの蓄積と解放の繰り返しによって関東地震のような地震を繰り返すが、更に、その歪みの蓄積効果が内陸に及んで神戸の地震のような内陸地震を引き起こす。この地震は非常に長い歪みの蓄積間隔、つまり何千年、場合によっては何万年に一度といったような繰り返し間隔をもって発生する。
まず海溝型地震というものに着目すると、北東地域周辺と中央地域周辺ではかなりの差が見られる。北東地域周辺、宮城県から茨城県沖にかけては、海溝型地震の中に巨大地震と言われるものが発生することはなく、大体マグニチュード7〜7.5ぐらいのやや小ぶりの地震が起きるのに対して、中央地域はマグニチュード8クラスの地震が100年、200年の間隔で起きてくるという状況であり、大きな差が見られる。
内陸に目を移すと、活断層が多く刻み込まれている。同じ活断層でも、存在の確実さから確実度 I 〜 III に区分され、どのくらいの活動度を持っているかによってA〜Cと区分される。これらの活断層のほかにも、まだ活断層として発見されていない伏在断層も十分存在する可能性はある。
活断層については北東地域、中央地域を比較すると、いずれの地域にも将来大きな地震を発生し得る活断層が存在しているが、これらの活断層がいつどのような規模の地震を引き起こすかということについて、現在の地震学は海溝型地震ほど詳細な知識を持ち合わせていない。現在研究が急速に進んでいるが、現時点でこれらの活断層の確実度、活動度から2つの地域について比較し、どちらが安全であるか結論を引き出すことはなかなか難しい。
しかし、ここでは2つの断層について言及したい。中央地域に活動度Aの富士川河口断層というのがある。これは静岡県中部駿河湾の北の活断層である。もう一つ神縄−国府津−松田断層という断層がある。この2つの断層は内陸の活断層という分類になっているが、富士川河口断層の方は東海地震を引き起こすプレート境界の断層が更に内陸にまで及んだ延長上にある断層であり、もう一つ神縄・国府津−松田断層というのは関東大震災を引き起こした相模トラフのプレート境界の断層が内陸に更に延長した一連の断層の一部である。この2つの断層は活動度Aであるとともに巨大地震を引き起こす可能性があり、しかも将来数百年の間隔を見ると、地震を起こす切迫性という点では十分注目していかなければならない断層である。
巨大な海溝型の地震は海底で発生すると、その規模は内陸に大きな揺れをもたらすだけでなく、同時に内陸の地震を誘発するということが知られている。京都周辺の内陸活断層に伴う地震では、海溝型地震が近づくにつれてだんだん内陸地震の数も増えてくることが知られている。これは京都周辺のみならず近畿地方一帯、日本列島周辺、伊豆半島よりも西の地域の内陸活断層に伴う地震と海溝型の巨大地震とが決して無関係ではないということであり、内陸活断層の伴う地震の発生と海溝型の巨大地震の発生は連動した関連のある現象であると指摘できる。
同時に、巨大地震が発生する前後に富士山が大噴火したという1707年の宝永の地震の例もある。火山の噴火と海溝型の巨大地震の関連性が経験的にあるということが指摘できる。
それ以外に津波についても検討した。
検討の結果過去の地震で震度6以上の範囲がどのくらい広がっているかということを示した。北東地域と中央地域との違いも見られると思う。
死者1,000人以上を超えた過去の分布を比較してみることも1つの参考になる。
シミュレーションを行って震度の予測結果を示した。まとめると、海溝型の巨大地震に関しては、北東地域と中央地域にはかなりはっきりとした差があり、一方は大きな被害を受ける可能性が低く、他方は100年、200年に一度大災害を受けてきたということがあるが、内陸活断層に伴う地震による被害については、まだ海溝型地震ほど十分な調査研究が行われていないことと、活断層によって引き起こされる地震の発生頻度、発生間隔が何千年、何万年ということもあり、活断層に関して両方の地域差をはっきり示すのはなかなか難しいと考えられる。
もう一つの災害対応力については、新都市と東京、仙台、名古屋、大阪、それぞれを結ぶネットワーク、人や情報の流れを考えた。伊豆半島の両側を大きく刻み込んだ神縄・国府津−松田断層、富士川河口断層という2つの大きな断層が、将来数百年の間にマグニチュード8クラスの巨大地震を引き起こす可能性が指摘されていることを視点に入れて考えると、東京−名古屋間のルートはそういった地震によって大きくダメージを受ける可能性が高く、東京を中心として考えた東京との連携に対する影響が非常に大きく現れるとと考えられる。
この後、以下の質疑応答が行われた。
環境負荷に係る検討について、井手専門委員から次の説明が行われた。
環境負荷に関する検討では、首都機能の移転先の新都市における環境への負荷発生量の推計とそれの軽減の可能性、そして環境負荷に関する地域ごとの差異を検討し、併せてそれらの結果を踏まえ、環境負荷の点からの新都市の在り方というものについて検討を行った。
まず最初に、特に環境負荷の削減の方策を導入しない場合を標準ケースとして、このようなケースの新都市と同様の規模の都市から生じる環境負荷量を推計した。
対象項目として地域レベルの負荷については排水による環境負荷、水質汚濁、地域NOX、廃棄物の処理後の埋立処分量という4項目を選んでいる。広域レベルの負荷では、CO2の排出と広域NOX、一次エネルギー消費(新都市外部からの供給に依存するエネルギー)の3つの項目で推計、試算した。
その推計結果を第1段階の10万人規模と最終段階約60万人規模の両方で数値を示すと水質汚濁以外は既存の同規模の都市の現存の量を若干下回るという数値である。
次に、環境負荷の削減の可能性であるが、このような標準ケースに現在の技術レベルで考えられる環境負荷削減の方策を導入して、どの程度負荷が削減できるかということを推計した。ここでは、現実に先進的な自治体等で既に試みられているような削減の方策等を考えている。その結果、地域レベルでは自動車排ガスの軽減施策等を積極的に入れると広域NOXが88%削減となる。更に埋立処分量については、リサイクルの徹底や焼却処理、あるいはコンポスト化ということを積極的に進むと94%削減が可能だという結果になる。広域レベルについても、広域NOXは効率のよいエネルギー供給システムや高効率の廃棄物発電を導入すると72%の削減が可能と試算される。一次エネルギーについても40%強が削減できる。
これらは技術的な試算であるので、当然コストやいろいろな制度の問題がかかわってくるので、この試算のとおりに現実に行くかどうかは課題になる。この新都市の建設においては、それまでの間に技術開発もまた一方では進むので、その面からの削減技術もかなり進むということも併せて考えておく必要があり、その場合には削減がもう少し進むということも考えられる。
次に環境負荷に関する地域差を検討した。これは3つのタイプで試算した。まずタイプ I では、立地の特性によって発生する環境負荷そのものが変わってくるのかどうか。II 番目のタイプ2は、同じ程度の環境負荷が生じる場合、その立地の違いによって地域が受ける影響の度合いが変わってくるかどうか。
タイプIII は、同じ環境負荷の削減方策を導入する場合に、その地域によって効果の違いが出てくるのかという3つの点で試算した。
まず最初の環境負荷にかかわる地域差についてであるが、これは気温の違いによって冷暖房関連の環境負荷の差、水道水温の違いによる給湯にかかわる環境負荷の差を調べた。気温による冷暖房関連の差については、最小の静岡と最大の福島との間で約1.3倍ぐらいの開きが一次エネルギー消費量の違いとして試算された。水道水温についは、最小の愛知と最大の宮城で約1.1倍ぐらいの開きが出る。差が若干あるというとも言える。
これにそのほかの照明等の電力や交通に係る環境負荷を合わせて新都市全体から出てくる環境負荷発生量というものを見ると、相対的には地域差が小さくなるという方向になった。一次エネルギー消費量も削減方策の導入で、40%強の削減が可能と見込まれるので、やり方によっては地域差をより小さくするということも可能と判断された。
次に、タイプ2のケースであるが、環境負荷の影響の地域差ということで、排水の水系への影響と大気汚染の地域差を見た。河川流量への影響について、河川に対する排水に基づく増加量の大きいところは、三重県の鈴鹿川、あるいは畿央地域の野洲川辺りが現状の流量の2倍以上になるだろうと推定される。ただ、既にもう河川の流量が少ないところでは、ある程度の流量が増すことは水量の保全という意味からは望ましい場合もあるので、この流量増加を単純にただ問題だといえない面もある。
水質について、必要な高度処理レベルの試算をしたが、新都市からの排水を一か所で下水処理してそこから処理、流すという方式で考えているが、現実には複数の場所で処理して流す、あるいは自然の浄化作用ということも期待されるので、各地域とも比較的簡便な方策で基準を達成できると試算された。
次に閉鎖性水域にどのような影響があるかということであるが、ここでは現状の流入負荷量が小さい水域ほど新都市からの影響が大きく出ると考えられる。その点から浜名湖が一番影響が大きいと考えられ、次いで霞ケ浦、琵琶湖、伊勢湾という順番になる。
大気汚染物質の大気環境への影響については、大気汚染物質が地上に降りてくる現象、あるいは光化学オキシダントの発生、汚染物質が拡散しにくいという3つのケースについて試算した。その結果ある程度の違いが出ている。
最後に環境負荷の削減方策の導入の適性について調べた。1つは、太陽光発電の有効性であるが、日照時間が発電量と比例すると考えると、最小の畿央と最大の愛知で1.17倍の開きがあるということになる。
風力発電の活用の可能性ということも、平均風速が5〜6メートル以上という地域を適地と考えると、畿央の鈴鹿山脈、あるいは布引山地、静岡等々に適地があるが、それ以外では風力発電には適さないということになる。
自転車交通の導入の可能性についても、傾斜が3度以下のような地域のまとまったところが適地と考えると、栃木県中央や茨城県南部、静岡県南部海岸沿い、あるいは畿央の琵琶湖付近というあたりが一応の適地ということになる。
以上、まとめると、各地の環境負荷削減の手法を積極的に導入すると、相当程度の負荷の削減が可能になる。また、地域ごとの環境負荷の発生量等については地域差がある程度見られた。これらの検討結果を踏まえ、新都市としてはできるだけ環境負荷をゼロにするためのゼロ・エミッション都市というものについて幾つかの提案をした。
この後、以下の質疑応答が行われた。
国土構造に係る検討について、国土構造検討会委員である(財)社会開発総合研究所の宮澤理事長から以下の説明が行われた。
国土構造についての検討では、国土審議会等に参加している学識経験委員へのアンケート調査を行った。アンケート調査結果は、3地域のどこに首都機能を移転した場合でも東京一極集中への基本的対応に応え得るということがおおむね支持された。しかし、3地域ごとに見た国土構造の改編効果の違いについては、学識経験委員の意見はさまざまであり、その優劣を結論付けるものではなかった。
また地方公共団体からもいろいろな意見が出され、3地域ごとに意見の共通性がある。これらの意見を参照しながら国土構造についての検討をした。
「首都機能移転が国土構造改編に及ぼす影響」としては、新しい全総計画を前提とし、有識者の意見も参考にしながら、3地域それぞれに首都機能が移転した場合の国土構造に与える影響について、7つの視点から整理した。
「国際政治機能を発揮するための大都市との連携」については、首都機能移転のすべての段階を通じて国際政治機能が休みなく十分に発揮される必要があるという考え方から、世界の主要な国際政治都市の現状を整理して、我が国の大都市における国際的都市機能の状況を検討し、3地域のそれぞれに首都機能が移転した場合の大都市との連携の在り方を整理した。
以上のような検討結果を踏まえて、まとめた。
北東地域へ首都機能を移転する場合、国際政治機能は初期段階では主として東京に依存し、成熟段階では新都市と東京が適切に機能分担し、仙台が補完するという関係になる。首都機能を支える諸機能、国際的研究機能、安全管理、国際交流等の機能や新たな情報産業等が東京から新都市、仙台を結ぶ軸上に展開する。大規模災害に対する首都機能の安全管理体制も早期に確立することができるだろう。首都機能を支える新たな全国的交通ネットワークの形成が促進され、その際には、既存交通体系が積極的に活用されることになる。また、新都市近傍の空港の国際航空路線が充実するとともに、東京、関西、名古屋、仙台などをゲートウェイとして活用する国際的なネットワークが形成される。移転先地としての特性としては、高度な都市機能を集積し、世界都市としての地位を占める東京が母都市になって、政治行政の中枢機能を東京圏外に移転しようとするという特性を持つ首都機能移転になると考えられる。
東海地域へ首都機能を移転する場合、首都機能を支える母都市等は名古屋に依存する度合いが大きく、名古屋の国際機能、都市機能が充実する必要がある。首都機能を支える諸機能や誘発される新たな情報サービス産業等が名古屋−東京間に展開する姿になるだろう。国土構造改編の方向では、名古屋圏が首都機能、国際政治機能を支える大都市圏としての役割を担う。また、名古屋圏の交通拠点性を生かして首都機能を支える全国的交通ネットワークが更に充実、強化されるだろう。移転先地としての特性は、東京圏と関西圏の間、及び全国の中央部に位置して、世界都市化を進める名古屋を母都市とし、名古屋を中心とした新しい圏域を形成するということになる。
三重・畿央地域へ移転する場合、首都機能、国際政治機能を支える母都市の役割は、主として大阪、京都等の関西圏の諸都市が担うことになる。首都機能に関連する諸機能や新たな産業等が関西圏に展開する。国土構造改編の方向としては、我が国の政治・経済・文化と国際交流の中心的役割を長く担い、高次都市機能の高い集積を有する関西圏が我が国の首都機能、国際政治機能を支える大都市圏としての役割を担う。大阪、京都等を中心とする関西圏の交通拠点性を生かし、首都機能を支える全国的交通ネットワークが充実、強化される。関西圏における高次都市機能の集積を活用して、国際社会と連携する国土になる。移転先地としての特性としては、長く首都が置かれ、我が国の伝統文化の創造・承継に中心的な役割を担ってきた畿内周辺に首都機能を復帰させるという整理をした。
最後に、今後更に整理、集約して、国土構造の観点から見た首都機能移転先としての各地域の特性をより鮮明にして、移転先候補地の選定につなげていくことが望まれるということが検討の結果である。
この後、以下の質疑応答が行われた。
総合評価について、石原会長代理から調査部会での検討結果について報告された後、中村委員から以下の説明が行われた。
総合評価には、第2タームでの16の検討項目すべてを網羅した形であること、公正なものであること、可能な限り客観性を持ったものであること、透明性を持ったものといったことが求められる。
この問題に関しては大変多様な意見があり、可能な限り多様な意見を反映できるものでありたい。
そういうことから考えると、重みづけによる方法、金銭的に評価する方法、足切り法、定性的な記述の方法の4つの方法が考えられる。それぞれの特性を考えると、結果的に重みづけによる方法が一番条件を満たす方法だと考えられる。
どのような順序で評価を行うかというと、まず評価項目と評価の対象となる地域を決める。評価項目は16項目で、調査会時代から検討されてきたが、部分的にある程度手直しもせざるを得ないだろう。すべての地域について、地震の問題、水供給の問題、交通の問題等について評価していただく。次に評価項目間に重みづけを行う。
項目ごとの評価は、基本的に各検討委員会でやっていただき、項目間の重みづけは審議会で行う。
やり方としては、それぞれの地域について各検討会で点数等による評価を行っていただく。評価項目間の重みづけは、審議会の委員に行っていただく。これは各委員ごとに違っており、このまとめ方が議論になる。一番簡単な方法は平均することである。各委員の重みで直接計算することも可能である。極端な重みをつけた場合については、落とした方がいいと考えても良い場合もある。一対比較による結果と頭の中で考えていたものが違っている可能性もあり、そうした場合、例えば、出てきた結果をフィードバックして自分の理解をチェックしながら行っていくという方法もある。
重みづけを考える上で16項目の調査の階層化について考えなければならない。そのためには、評価すべき全ての分野を網羅していること、透明性、公正であること、評価が可能であることから考えると、評価項目の表現や階層の部分的な修正したいと思う。
全体のプログラムは7〜9月にかけて、階層化や評価項目に関して検討していただく。同時に即地的評価に必要な地域を定める。そして各検討会において評価していただく。
9月に重みづけの方針と仕方を決めて、作業を行う。出てきた結果を審議会で検討して最終的な案としてまとまっていくのではないかと思う。
この後、以下の質疑応答が行われた。
重みづけによる総合評価の方法が了承され、これに基づいて評価していくこととなった。
以上
(文責 国会等移転審議会事務局)