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第20回国会等移転審議会議議事要旨

1.日時

平成11年7月22日(木曜日)14時0分〜16時0分

2.場所

中央合同庁舎5号館別館共用第23会議室

3.出席者

(審議会委員)

森会長、石原会長代理、新井、石井(威望)、石井(幹子)、宇野、下河辺、中村(英)、野崎、濱中、堀江、溝上、各委員(12名)

(専門委員)

井手、戸所各専門委員(2名)

(国土構造検討会委員)

宮沢社会総合開発研究所理事長

谷川政務次官、古川内閣官房副長官(事務局長)、久保田事務次官、木下国土庁長官官房長、板倉国土庁大都市圏整備局長(事務局次長)、他

4.議題

公聴会とりまとめ、既存都市との関係に係る検討、地震災害等に係る検討、環境負荷に係る検討、国土構造に係る検討、総合評価等

5.議事の要旨

公聴会とりまとめ、既存都市との関係に係る検討、地震災害に係る検討、環境負荷に係る検討結果、国土構造に係る検討結果について、説明が行われた後、質疑応答が行われた。

(1)公聴会とりまとめについて事務局から説明があった。

今年の1月から9回の公聴会を開催し、1,822人の方々が出席された。各会場8名の意見発表者ということで72名から意見を発表していただいた。公聴会の出席者から様々な立場の意見を幅広く頂き、公聴会の目的を十分達成できたのではないかと分析している。

(2)既存都市との関係に係る検討について戸所専門委員から説明があった。

既存都市と新都市との位置関係について検討した。

検討の枠組みとしては、新都市と既存都市の関係は移転のプログラムや新都市のつくり方、移転の規模、新都市の内部における機能誘導方針、都市としての自立性追求といったことによって大きく変わってくる。したがって、国会等移転調査会報告の前提を基に検討を行った。

既存都市との関係について、既往の新都市開発事例から、新都市周辺のスプロールの発生、街びらき段階での利便性、周辺地域との関係といったことを検討課題とした。

「検討の視点」として、まず市街地の連続(市街地連坦)の抑制、母都市となり得る既存都市との連携の可能性について検討した。市街地の連続の抑制については、新都市の周辺におけるスプロールの抑制と政令指定都市級の大都市の圏域との市街地連坦の抑制という2点を検討している。

それぞれの調査対象地域における周辺の政令指定都市級の大都市とそれ以外の既存都市の状況を整理した。

新都市周辺における市街地連坦に係る検討では、市街地連坦が発生する代表的なパターンとして、新都市周辺のスプロール、沿道立地の連続、新都市と既存都市の中間地域での開発の3つを想定して、自然地形と既存市街地の状況並びに交通基盤、現況土地利用規制といったものを検討項目とした。

検討結果として、新都市周辺におけるスプロールについては、地形的な制約の有無、既存市街地の状況等によって発生の程度に若干の差は想定されるものの、現行土地利用規制を前提とした場合、いずれの地域においても周辺におけるスプロール発生を完全に抑止することは困難と予想される。このため、新都市の周辺地域における土地利用について新たな制限、誘導のための措置を関係者の理解を得た上で導入することが必要と考えられる。

政令指定都市級の大都市の圏域との連坦については、政令指定都市級の都市に近接している地域については、都市機能の享受と新都市の利便性を兼ね備えた中間地域の市街化圧力が高まるものと考えられる。現在の圏域の拡大状況から考えて、政令指定都市等の大都市の圏域の周辺地域には、既存の土地利用規制では必ずしも十分と言えない地域もあり、新たな制限を検討する必要があると考えられる。

以上のように、現状の規制ではどの地域も大差がなく、21世紀のリーディング・シティとしては土地利用規制の導入が課題となる。

新都市と既存都市との連携については、新都市の発展段階別に連携の可能性を検討している。発展段階は大きく3段階あり、第1段階は街びらき段階で、初期ほど母都市への依存が生じる。成長段階では、母都市と新都市の間に依存関係と競合関係が生じてくる可能性もある。そして成熟段階になると、母都市との関係は適切な機能分担の下でそれぞれの都市圏が形成されることが望ましい。なお、極めて特殊な機能については東京を利用することになる。母都市として望ましい都市規模と交通利便性を検討項目とした。既存都市の機能立地状況を見ると、政令指定都市とその他の都市等では差が非常に大きい。

望ましい母都市の位置と規模の関係であるが、人口20万〜30万人の規模を持つ母都市と新都市の間を30分程度、新都市と人口100万人以上の規模の都市とは概ね1時間程度で到達することを目安とした。生活利便性を確保し得る人口20万〜30万人規模の母都市と多様なニーズを補完し得る人口100万人以上の規模の都市と各地域との関係を整理した。

これをまとめると、初期の街びらき段階における生活利便性の確保では、生活に必要とされる一般的な機能の確保については、すべてのクラスターからおおむね30分程度の位置に人口20〜30万人規模の都市圏が存在することが望ましい。この観点からは第1段階の10万人に達する以前に最も母都市が必要であり、比較的近い位置に母都市が存在することが望ましい。いずれの地域も周辺に20ないし30万人規模の都市が存在しない地域はないものの、クラスターの立地状況によっては現状の交通条件ではおおむね30分程度で到達できない地域もあり、そのような地域においては母都市と連絡する交通機関の整備を計画的、優先的に進め、アクセスの改善を図ることが必要と考えられる。

新都市の多様なニーズの補完ということについては、現状でもいずれの地域でも地域内の主要駅から政令指定都市まで鉄道で1時間程度で到達可能である。新都市立地に併せ交通網の整備等を実施することによって、どのクラスターからも鉄道でおおむね1時間程度で到達できるものと考えられる。

今後の課題としては、新都市の具体的なクラスター配置の検討に併せて再整理をし、総合評価との関連を考えていきたい。

この後、以下の質疑応答が行われた。

  • 中間地域に市街化が起こるといったようなことは困ることなのですか。
    →新都市と母都市の間に中間地域で今、森林になっているようなところに市街地が発達していくと問題である。
(3)地震災害等に係る検討について

地震災害等に係る検討結果について、溝上委員から以下の説明が行われた。

この検討は2つに分かれている。1つが地震災害に係る検討、もう一つは災害対応力に係る検討であり、この2つはお互いに関連した事項を多く含んでいる。

この検討委員会のメンバーは、地震活動、地震の長期予測、活断層、地震動、津波、都市災害、交通環境変動などかなり広い事項にわたっての専門の先生方に参加いただいた。この事項はかなり広い範囲にわたっており、かいつまんで要点だけを述べたい。

日本列島は地震国であり、局部的に地震の少ない地域もあるが、100%安全な地域はない。たとえある地域が一見安全で地震が過去起きていないように見えても、これから起きる可能性も十分ある。検討項目は地震動、地盤の安定性、津波という3つの項目について検討した。

地震動については、どういった地震を対象とするかがポイントになる。今回の検討では海溝型の地震と内陸活断層に伴う地震という2つの地震に着目して検討を行った。検討の方法は地震活動の特性を地域別、系統的に整理すること、過去に起きた被害地震の様相を調べてみるということ、そして、シミュレーションによって予想される被害についても検討した。その他に地盤の安定性、津波についても検討した。

地震被害をプレート境界の地震、内陸で発生する地震の2つに大きく分けてみる。日本列島は4つのプレートという岩盤の上に乗っており、これがお互いにひしめき合っているために地震が多発する。このプレート境界で起きる地震は非常に大規模な地震である。この巨大地震、プレート境界の地震を引き起こす歪みの蓄積と解放の繰り返しによって関東地震のような地震を繰り返すが、更に、その歪みの蓄積効果が内陸に及んで神戸の地震のような内陸地震を引き起こす。この地震は非常に長い歪みの蓄積間隔、つまり何千年、場合によっては何万年に一度といったような繰り返し間隔をもって発生する。

まず海溝型地震というものに着目すると、北東地域周辺と中央地域周辺ではかなりの差が見られる。北東地域周辺、宮城県から茨城県沖にかけては、海溝型地震の中に巨大地震と言われるものが発生することはなく、大体マグニチュード7〜7.5ぐらいのやや小ぶりの地震が起きるのに対して、中央地域はマグニチュード8クラスの地震が100年、200年の間隔で起きてくるという状況であり、大きな差が見られる。

内陸に目を移すと、活断層が多く刻み込まれている。同じ活断層でも、存在の確実さから確実度 I 〜 III に区分され、どのくらいの活動度を持っているかによってA〜Cと区分される。これらの活断層のほかにも、まだ活断層として発見されていない伏在断層も十分存在する可能性はある。

活断層については北東地域、中央地域を比較すると、いずれの地域にも将来大きな地震を発生し得る活断層が存在しているが、これらの活断層がいつどのような規模の地震を引き起こすかということについて、現在の地震学は海溝型地震ほど詳細な知識を持ち合わせていない。現在研究が急速に進んでいるが、現時点でこれらの活断層の確実度、活動度から2つの地域について比較し、どちらが安全であるか結論を引き出すことはなかなか難しい。

しかし、ここでは2つの断層について言及したい。中央地域に活動度Aの富士川河口断層というのがある。これは静岡県中部駿河湾の北の活断層である。もう一つ神縄−国府津−松田断層という断層がある。この2つの断層は内陸の活断層という分類になっているが、富士川河口断層の方は東海地震を引き起こすプレート境界の断層が更に内陸にまで及んだ延長上にある断層であり、もう一つ神縄・国府津−松田断層というのは関東大震災を引き起こした相模トラフのプレート境界の断層が内陸に更に延長した一連の断層の一部である。この2つの断層は活動度Aであるとともに巨大地震を引き起こす可能性があり、しかも将来数百年の間隔を見ると、地震を起こす切迫性という点では十分注目していかなければならない断層である。

巨大な海溝型の地震は海底で発生すると、その規模は内陸に大きな揺れをもたらすだけでなく、同時に内陸の地震を誘発するということが知られている。京都周辺の内陸活断層に伴う地震では、海溝型地震が近づくにつれてだんだん内陸地震の数も増えてくることが知られている。これは京都周辺のみならず近畿地方一帯、日本列島周辺、伊豆半島よりも西の地域の内陸活断層に伴う地震と海溝型の巨大地震とが決して無関係ではないということであり、内陸活断層の伴う地震の発生と海溝型の巨大地震の発生は連動した関連のある現象であると指摘できる。

同時に、巨大地震が発生する前後に富士山が大噴火したという1707年の宝永の地震の例もある。火山の噴火と海溝型の巨大地震の関連性が経験的にあるということが指摘できる。

それ以外に津波についても検討した。

検討の結果過去の地震で震度6以上の範囲がどのくらい広がっているかということを示した。北東地域と中央地域との違いも見られると思う。

死者1,000人以上を超えた過去の分布を比較してみることも1つの参考になる。

シミュレーションを行って震度の予測結果を示した。まとめると、海溝型の巨大地震に関しては、北東地域と中央地域にはかなりはっきりとした差があり、一方は大きな被害を受ける可能性が低く、他方は100年、200年に一度大災害を受けてきたということがあるが、内陸活断層に伴う地震による被害については、まだ海溝型地震ほど十分な調査研究が行われていないことと、活断層によって引き起こされる地震の発生頻度、発生間隔が何千年、何万年ということもあり、活断層に関して両方の地域差をはっきり示すのはなかなか難しいと考えられる。

もう一つの災害対応力については、新都市と東京、仙台、名古屋、大阪、それぞれを結ぶネットワーク、人や情報の流れを考えた。伊豆半島の両側を大きく刻み込んだ神縄・国府津−松田断層、富士川河口断層という2つの大きな断層が、将来数百年の間にマグニチュード8クラスの巨大地震を引き起こす可能性が指摘されていることを視点に入れて考えると、東京−名古屋間のルートはそういった地震によって大きくダメージを受ける可能性が高く、東京を中心として考えた東京との連携に対する影響が非常に大きく現れるとと考えられる。

この後、以下の質疑応答が行われた。

  • 中央地域は海溝型では具合悪いということになれば、北東地域が優れているということか。
    →海溝型の地震について考えるとはっきりと差がある。ただ、内陸にたくさんの活断層が存在するということも事実であり、内陸型の活断層は海溝型の地震に比べるとはるかに規模は小さいが、小さいとはいえもし都市直下で発生すれば神戸の地震ぐらいの被害を起こす。過去には福井地震とか鳥取地震のように、1つの県庁所在地の都市が1つの内陸活断層に伴う地震によって壊滅するというぐらいの威力を持ったものもある。そういった種類の地震について2つの地域を厳密に比較して優劣をつけ得るかとなると、もともと日本列島が地震でできた島だということに立ち戻り、はっきりとした科学的な根拠をもって優劣をつけることは現在の知見においては非常に難しい。
  • 学問的に言うと、そのとおりだろうと思うが、要するに今、地震学の見地から言うと、やはり中央地域は非常に危ないのではないか。
    →東海地震や東南海地震という海溝型地震と、それに伴って起きてくる内陸活断層に伴う地震では、明らかに大きな違いがある。いつ地震が起きるかわからない可能性を持った断層が全国随所にある。そういうものを完全に度外視して議論できないため、2つの地域にはっきりとした差を認めることはできない。地震の種類を2つに分けて考えて、一方は現在の知識でいろいろなことを述べることができるが、他方の地震については現在の知識で厳密に危険性の差をつけて、こちらよりもこちらの方が確実に安全だということは難しい。
  • 東京と新都市の2都の状態で地震が同時発生したときには、海溝型であろうと内陸活断層に伴うものであろうとこれは予測がつかないということであるか。
    →同時発生については、理論的な根拠を申し述べるところまで地震学の知識は及んでないが、ある地震が起きたときにその地震によって同時に被災を受けるということに関しては、関東地震のときに震度6以上の被害を受けた地域を既に除いて、この議論をしており、狭義の同時被災についてはそれで一応議論が終わっている。そうではなく、ある地震が起きて1〜2年するとその一連の地震活動の中で西側で起きたものが東京で起きるということは過去に事例がある。例えば、安政の東海・東南海地震が伊豆半島の西側で起きたときに安政の江戸地震というものがあり、江戸で1万人の死者が出たという事例がある。元禄の関東地震は1703年だが、その前に東南海関係、伊豆の西で巨大地震が起きている。しかし、連動するときの時間間隔ははっきり分からないが、ある一定の時間があって、長い地震の発生の仕組みから言えば比較的短い間隔で、次から次に起きている。理論的な説明はまだ行われていないが、事実であり、それは広義の意味での同時性と考えている。
  • 富士山の噴火のことに少し触れられたが、地震と噴火ということについても似たようなことが言えるのか。
    →富士山の噴火は宝永地震が有名であるが、地震と火山の活動というものは日本列島では決して無関係ではなく、同じルーツを持った現象である。だからといって地震が起きれば必ず噴火が起きるというものではない。
  • 関東大震災が起こってからちょうど100年ぐらいになるとまた地震が起こる可能性があるという議論はどうなのか。
    →経験的な事実から、関東地震というのは1707年の元禄の関東地震、大正の関東地震と220年の間隔を置いて起きている。元禄、大正、現時点までの地震活動や地殻変動をずっと追跡すると、まず関東地震が元禄の場合も大正の場合も近づいてくると、南関東一帯の地震が増えてくる。そしてその中に大きな被害を起こすような地震が発生してくる。そして関東地震になる。関東地震の発生した後は、また数十年非常に静かな平穏期が訪れる。平穏期が破れるのが、おおむね関東地震が起きてから70〜80年経つと少しずつ活動が高まってきて、やがてその中に幾つか被害を起こすような地震が発生し、そして最終的に本命の関東地震がまた訪れる。こういったサイクルがよく知られている。その根拠として、実測では、最近の地殻変動で大正の関東地震のときに解放された歪みの約3分の1がまた回復してきているということが知られている。
    それと同時に、地震活動がどのように増加しつつあるかということも関心の対象になっている。少しずつ粒の大きい地震が徐々に増えつつある。それもどんどん増えるのではなく、あるときに増えたり、あるいは減ったりしながら徐々に増えている。だから、過去の経験と現在の観測事実を合わせると、次の関東地震に向けての道のりの第1ステージ、第2ステージ、第3ステージぐらいに分けると、第1ステージの平穏期は一応終わったのではないか。そろそろ第2、第3のだんだん地震活動が増えてくるステージに入ってきつつあるというのが地震学関係者の共通した見方だというふうに申していいかと思う。

環境負荷に係る検討について、井手専門委員から次の説明が行われた。

環境負荷に関する検討では、首都機能の移転先の新都市における環境への負荷発生量の推計とそれの軽減の可能性、そして環境負荷に関する地域ごとの差異を検討し、併せてそれらの結果を踏まえ、環境負荷の点からの新都市の在り方というものについて検討を行った。

まず最初に、特に環境負荷の削減の方策を導入しない場合を標準ケースとして、このようなケースの新都市と同様の規模の都市から生じる環境負荷量を推計した。

対象項目として地域レベルの負荷については排水による環境負荷、水質汚濁、地域NOX、廃棄物の処理後の埋立処分量という4項目を選んでいる。広域レベルの負荷では、CO2の排出と広域NOX、一次エネルギー消費(新都市外部からの供給に依存するエネルギー)の3つの項目で推計、試算した。

その推計結果を第1段階の10万人規模と最終段階約60万人規模の両方で数値を示すと水質汚濁以外は既存の同規模の都市の現存の量を若干下回るという数値である。

次に、環境負荷の削減の可能性であるが、このような標準ケースに現在の技術レベルで考えられる環境負荷削減の方策を導入して、どの程度負荷が削減できるかということを推計した。ここでは、現実に先進的な自治体等で既に試みられているような削減の方策等を考えている。その結果、地域レベルでは自動車排ガスの軽減施策等を積極的に入れると広域NOXが88%削減となる。更に埋立処分量については、リサイクルの徹底や焼却処理、あるいはコンポスト化ということを積極的に進むと94%削減が可能だという結果になる。広域レベルについても、広域NOXは効率のよいエネルギー供給システムや高効率の廃棄物発電を導入すると72%の削減が可能と試算される。一次エネルギーについても40%強が削減できる。

これらは技術的な試算であるので、当然コストやいろいろな制度の問題がかかわってくるので、この試算のとおりに現実に行くかどうかは課題になる。この新都市の建設においては、それまでの間に技術開発もまた一方では進むので、その面からの削減技術もかなり進むということも併せて考えておく必要があり、その場合には削減がもう少し進むということも考えられる。

次に環境負荷に関する地域差を検討した。これは3つのタイプで試算した。まずタイプ I では、立地の特性によって発生する環境負荷そのものが変わってくるのかどうか。II 番目のタイプ2は、同じ程度の環境負荷が生じる場合、その立地の違いによって地域が受ける影響の度合いが変わってくるかどうか。

タイプIII は、同じ環境負荷の削減方策を導入する場合に、その地域によって効果の違いが出てくるのかという3つの点で試算した。

まず最初の環境負荷にかかわる地域差についてであるが、これは気温の違いによって冷暖房関連の環境負荷の差、水道水温の違いによる給湯にかかわる環境負荷の差を調べた。気温による冷暖房関連の差については、最小の静岡と最大の福島との間で約1.3倍ぐらいの開きが一次エネルギー消費量の違いとして試算された。水道水温についは、最小の愛知と最大の宮城で約1.1倍ぐらいの開きが出る。差が若干あるというとも言える。

これにそのほかの照明等の電力や交通に係る環境負荷を合わせて新都市全体から出てくる環境負荷発生量というものを見ると、相対的には地域差が小さくなるという方向になった。一次エネルギー消費量も削減方策の導入で、40%強の削減が可能と見込まれるので、やり方によっては地域差をより小さくするということも可能と判断された。

次に、タイプ2のケースであるが、環境負荷の影響の地域差ということで、排水の水系への影響と大気汚染の地域差を見た。河川流量への影響について、河川に対する排水に基づく増加量の大きいところは、三重県の鈴鹿川、あるいは畿央地域の野洲川辺りが現状の流量の2倍以上になるだろうと推定される。ただ、既にもう河川の流量が少ないところでは、ある程度の流量が増すことは水量の保全という意味からは望ましい場合もあるので、この流量増加を単純にただ問題だといえない面もある。

水質について、必要な高度処理レベルの試算をしたが、新都市からの排水を一か所で下水処理してそこから処理、流すという方式で考えているが、現実には複数の場所で処理して流す、あるいは自然の浄化作用ということも期待されるので、各地域とも比較的簡便な方策で基準を達成できると試算された。

次に閉鎖性水域にどのような影響があるかということであるが、ここでは現状の流入負荷量が小さい水域ほど新都市からの影響が大きく出ると考えられる。その点から浜名湖が一番影響が大きいと考えられ、次いで霞ケ浦、琵琶湖、伊勢湾という順番になる。

大気汚染物質の大気環境への影響については、大気汚染物質が地上に降りてくる現象、あるいは光化学オキシダントの発生、汚染物質が拡散しにくいという3つのケースについて試算した。その結果ある程度の違いが出ている。

最後に環境負荷の削減方策の導入の適性について調べた。1つは、太陽光発電の有効性であるが、日照時間が発電量と比例すると考えると、最小の畿央と最大の愛知で1.17倍の開きがあるということになる。

風力発電の活用の可能性ということも、平均風速が5〜6メートル以上という地域を適地と考えると、畿央の鈴鹿山脈、あるいは布引山地、静岡等々に適地があるが、それ以外では風力発電には適さないということになる。

自転車交通の導入の可能性についても、傾斜が3度以下のような地域のまとまったところが適地と考えると、栃木県中央や茨城県南部、静岡県南部海岸沿い、あるいは畿央の琵琶湖付近というあたりが一応の適地ということになる。

以上、まとめると、各地の環境負荷削減の手法を積極的に導入すると、相当程度の負荷の削減が可能になる。また、地域ごとの環境負荷の発生量等については地域差がある程度見られた。これらの検討結果を踏まえ、新都市としてはできるだけ環境負荷をゼロにするためのゼロ・エミッション都市というものについて幾つかの提案をした。

この後、以下の質疑応答が行われた。

  • ここではある程度数量化、あるいは数値化し得るものを取り上げて調べたのか。
    →定量化できるもので試算した。データがないために試算ができないものは外さざるを得なかった。
  • 一般には環境負荷というと数で表せないような自然破壊とか、緑が減るとかいう物心両面でのことが公聴会などでは言われるが、そういったものも環境負荷と考えることはよろしいか。
    →ここでは狭い意味の環境負荷ということで、自然保護、動植物に対しての影響というようなことは4月に報告したが、定量的には大変難しいものであった。物質循環、あるいはエネルギー循環という面についてはかなり定量化ができるので、その面に限って今回の報告をした。定性的な面と定量的な面、両面とも自然環境への影響はある。
(4)国土構造に係る検討について

国土構造に係る検討について、国土構造検討会委員である(財)社会開発総合研究所の宮澤理事長から以下の説明が行われた。

国土構造についての検討では、国土審議会等に参加している学識経験委員へのアンケート調査を行った。アンケート調査結果は、3地域のどこに首都機能を移転した場合でも東京一極集中への基本的対応に応え得るということがおおむね支持された。しかし、3地域ごとに見た国土構造の改編効果の違いについては、学識経験委員の意見はさまざまであり、その優劣を結論付けるものではなかった。

また地方公共団体からもいろいろな意見が出され、3地域ごとに意見の共通性がある。これらの意見を参照しながら国土構造についての検討をした。

「首都機能移転が国土構造改編に及ぼす影響」としては、新しい全総計画を前提とし、有識者の意見も参考にしながら、3地域それぞれに首都機能が移転した場合の国土構造に与える影響について、7つの視点から整理した。

「国際政治機能を発揮するための大都市との連携」については、首都機能移転のすべての段階を通じて国際政治機能が休みなく十分に発揮される必要があるという考え方から、世界の主要な国際政治都市の現状を整理して、我が国の大都市における国際的都市機能の状況を検討し、3地域のそれぞれに首都機能が移転した場合の大都市との連携の在り方を整理した。

以上のような検討結果を踏まえて、まとめた。

北東地域へ首都機能を移転する場合、国際政治機能は初期段階では主として東京に依存し、成熟段階では新都市と東京が適切に機能分担し、仙台が補完するという関係になる。首都機能を支える諸機能、国際的研究機能、安全管理、国際交流等の機能や新たな情報産業等が東京から新都市、仙台を結ぶ軸上に展開する。大規模災害に対する首都機能の安全管理体制も早期に確立することができるだろう。首都機能を支える新たな全国的交通ネットワークの形成が促進され、その際には、既存交通体系が積極的に活用されることになる。また、新都市近傍の空港の国際航空路線が充実するとともに、東京、関西、名古屋、仙台などをゲートウェイとして活用する国際的なネットワークが形成される。移転先地としての特性としては、高度な都市機能を集積し、世界都市としての地位を占める東京が母都市になって、政治行政の中枢機能を東京圏外に移転しようとするという特性を持つ首都機能移転になると考えられる。

東海地域へ首都機能を移転する場合、首都機能を支える母都市等は名古屋に依存する度合いが大きく、名古屋の国際機能、都市機能が充実する必要がある。首都機能を支える諸機能や誘発される新たな情報サービス産業等が名古屋−東京間に展開する姿になるだろう。国土構造改編の方向では、名古屋圏が首都機能、国際政治機能を支える大都市圏としての役割を担う。また、名古屋圏の交通拠点性を生かして首都機能を支える全国的交通ネットワークが更に充実、強化されるだろう。移転先地としての特性は、東京圏と関西圏の間、及び全国の中央部に位置して、世界都市化を進める名古屋を母都市とし、名古屋を中心とした新しい圏域を形成するということになる。

三重・畿央地域へ移転する場合、首都機能、国際政治機能を支える母都市の役割は、主として大阪、京都等の関西圏の諸都市が担うことになる。首都機能に関連する諸機能や新たな産業等が関西圏に展開する。国土構造改編の方向としては、我が国の政治・経済・文化と国際交流の中心的役割を長く担い、高次都市機能の高い集積を有する関西圏が我が国の首都機能、国際政治機能を支える大都市圏としての役割を担う。大阪、京都等を中心とする関西圏の交通拠点性を生かし、首都機能を支える全国的交通ネットワークが充実、強化される。関西圏における高次都市機能の集積を活用して、国際社会と連携する国土になる。移転先地としての特性としては、長く首都が置かれ、我が国の伝統文化の創造・承継に中心的な役割を担ってきた畿内周辺に首都機能を復帰させるという整理をした。

最後に、今後更に整理、集約して、国土構造の観点から見た首都機能移転先としての各地域の特性をより鮮明にして、移転先候補地の選定につなげていくことが望まれるということが検討の結果である。

この後、以下の質疑応答が行われた。

  • 関連する地方公共団体等から示された意見では、それぞれの地域に特徴があり、地域ごとの意見の共通性が見られたという。その特徴と共通性というのは具体的にどういうことか。
    →各地域の公共団体等の意見の特徴として、北東地域の地方公共団体は、一極一軸型国土構造是正、三大都市圏への集中を緩和、新しい国づくり、東京との十分な連携ということが比較的共通した主張である。東海地域の公共団体等からの意見は、東京圏、名古屋圏、関西圏という3つの大きな極を持った多極型国土の形成、全国的交流の中心、国際社会との連携を十分図ろうという意見に特徴がある。
    三重・畿央地域から意見は、国土の中央への移転、伝統文化を生かした新しい文化の創造、関西圏と中部圏の連携、国際社会との連携といった共通性がある。
  • 今のまとめでは、3地域それぞれについての特色をそれぞれ挙げており、新しい首都機能移転候補地としての価値判断には直接触れていない。それぞれの特色をどう重視するか。価値判断は全体の審議会の各委員なりで考えることであるという理解でいいのか。
    →そういうことでよろしいと思う。ただ、審議会で方向を示していただければ、直ちに対応することはできる状態にある。
  • 例えば北東とか中央と言っても、かなり広い。その地域の中では西に偏ろうが東に偏ろうが余り差はないということか。
    →ポイントになる点の比較論になると、3地域比較よりもっと比較が難しくなると思う。

総合評価について、石原会長代理から調査部会での検討結果について報告された後、中村委員から以下の説明が行われた。

総合評価には、第2タームでの16の検討項目すべてを網羅した形であること、公正なものであること、可能な限り客観性を持ったものであること、透明性を持ったものといったことが求められる。

この問題に関しては大変多様な意見があり、可能な限り多様な意見を反映できるものでありたい。

そういうことから考えると、重みづけによる方法、金銭的に評価する方法、足切り法、定性的な記述の方法の4つの方法が考えられる。それぞれの特性を考えると、結果的に重みづけによる方法が一番条件を満たす方法だと考えられる。

どのような順序で評価を行うかというと、まず評価項目と評価の対象となる地域を決める。評価項目は16項目で、調査会時代から検討されてきたが、部分的にある程度手直しもせざるを得ないだろう。すべての地域について、地震の問題、水供給の問題、交通の問題等について評価していただく。次に評価項目間に重みづけを行う。

項目ごとの評価は、基本的に各検討委員会でやっていただき、項目間の重みづけは審議会で行う。

やり方としては、それぞれの地域について各検討会で点数等による評価を行っていただく。評価項目間の重みづけは、審議会の委員に行っていただく。これは各委員ごとに違っており、このまとめ方が議論になる。一番簡単な方法は平均することである。各委員の重みで直接計算することも可能である。極端な重みをつけた場合については、落とした方がいいと考えても良い場合もある。一対比較による結果と頭の中で考えていたものが違っている可能性もあり、そうした場合、例えば、出てきた結果をフィードバックして自分の理解をチェックしながら行っていくという方法もある。

重みづけを考える上で16項目の調査の階層化について考えなければならない。そのためには、評価すべき全ての分野を網羅していること、透明性、公正であること、評価が可能であることから考えると、評価項目の表現や階層の部分的な修正したいと思う。

全体のプログラムは7〜9月にかけて、階層化や評価項目に関して検討していただく。同時に即地的評価に必要な地域を定める。そして各検討会において評価していただく。

9月に重みづけの方針と仕方を決めて、作業を行う。出てきた結果を審議会で検討して最終的な案としてまとまっていくのではないかと思う。

この後、以下の質疑応答が行われた。

  • この評価であるがも、これまでどういった実績があるのか教えていただきたい。
    →いろいろな産業での製品、例えばテレビやラジオなどの評価といったものがある。大きなプロジェクトでは九州の国際空港の立地選定がこれに近い方法である。出した結果については、決まったところはいい方法であるというが、決まらなかったところは、問題が多いという意見も出てくる。だからといってこれに代わる案があるかというとなかなかない。
  • ドイツのベルリンへの移転では、素人目に見ても、今後ドイツの東欧政策やロシアとの関係を考えているということは感じられる。トルコの場合アンカラというのは、恐らくトルコにとって東の方、クルド族の対策なども多分あると言う方もたくさんおられる。つまり、首都機能を移転するということは外から見れば一体どういう意図を持って移転しようとしているのかと見るわけで、特にその意図が非常に不明瞭な形の首都移転というのはあり得ないことだろうと思う。そういう意味で諸外国の例を見ると、かなりはっきりした、国外から見た場合でも、それは何を意図しているかということが分かる事例が多い。今回の日本の首都機能移転の場合にそれがどうなのだろうかということが1つある。
    もう一つは、首都を移転する背景に、地震国日本であれば地震もあるが、国の安全といったような側面が非常に強い。トルコも地震国であり、当然地震のことを考えていると思うが、それと同時に国の安全というものも念頭に置いている。是非こういう点についても、勿論時間の制約はあっても、審議会等で検討していく必要があるのではないかと思う。
  • 今、出ているようなことを審議会がまとめるのに時間があるのか。時間を限らないと果てしない議論になってしまうのではないか。
  • 各検討会とも手持ちの材料は手持ちの材料を持っており、ある程度評価できる状態にあるのではないかと思う。
  • 我々は一定の期間内に1つの答えを出すべくこれまで作業してきたわけであり、作業の途中でいろいろ意見も出てくるし、気がつくこともある。しかし調査会で移転候補地の選定基準として9つの項目が示され、16項目を選んだ。それを大前提に作業してきているわけだから、一定の期間内に答えを出すために割り切らなければならないと思う。
    先ほど国の安全上の配慮という指摘があったが、基本のところで出てくる話ではないかと思う。これについては首都機能を東京以外の場所に移すことを検討する場合、日本の国内では、どこでも状況は同じであり、すでに調査会等で済んでいる話であると考えていた。
  • 重みづけによる方法は大変有力な方法であるが、この方式に全て頼ってしまって良いのだろうかとも思っている。
  • 入学試験の場合に、点数だけで決めることもあれば面接を加えて評価する場合もある。しかし評価する上で、その地域が客観的にどういうものなのかということを知らないと評価できない。そのためには是非、こういう評価はやっていかなければならない。

重みづけによる総合評価の方法が了承され、これに基づいて評価していくこととなった。

以上
(文責 国会等移転審議会事務局)

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