平成11年10月7日(火曜日)9時30分〜11時40分
中央合同庁舎5号館別館共用第23会議室
森会長、石原会長代理、野崎部会長代理、新井、石井(進)、石井(威望)、下河辺、中村(英夫)、濱中、堀江、牧野、溝上、宮島各委員(13名)
池淵、井手、片山、黒川、戸所、森地各専門委員(6名)
増田総括政務次官、古川内閣官房副長官(事務局長)、久保田国土事務次官、木下国土庁長官官房長、板倉国土庁大都市圏整備局長(事務局次長)、他
評価項目に係る地域ごとの評価方法、関連事項の検討について等
総括政務次官の挨拶が行われ、引き続き評価項目に係る地域ごとの評価方法と意見交換が行われた。次にコストの再試算、国民意見の動向、重み付けの作業について事務局からの説明と意見交換が行われた。
首都機能の移転は東京一極集中を是正し、国土の災害対応力を強化し、東京に潤いのある空間を回復するとともに、国政全般の改革とも深くかかわる重要な課題であると考えております。平成8年12月以来、本審議会におきましては移転先の候補地の選定に向け精力的に調査審議をお進めいただいているところでございます。今般いよいよ候補地間の相互比較、総合評価等を行っていただく重要な段階を迎えております。今後も引き続き精力的に御審議をお進めいただき、所期の成果を得られますようお願い申し上げます。私も事務局を督励し、審議会の活動に積極的に御協力申し上げる所存でございます。
また、国民的な合意形成の促進に努め、首都機能移転の一層の具体化に向けて積極的な検討を行ってまいる所存でございますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。
森地専門委員から外国とのアクセス容易性について説明が行われた。
外国とのアクセス容易性については、政府専用機への対応、外交・公用目的海外渡航者の国際定期航空の利用容易性を検討対象としたが、政府専用機への対応については、3,000m滑走路を有する空港までのアクセスという問題になるので、最寄り空港だけでなく、隣接空港との連携を考慮すれば、どの地域も十分対応可能となる。このため評価は外交・公用目的海外渡航者の国際定期航空の利用容易性だけで行う。
外交・公用目的海外渡航者の国際定期航空の利用容易性の評価については、現状の外交・公用目的海外渡航者の国別出国先の比率に、当該国への路線を有する空港までのアクセス所要時間を乗じて、その全体の加重平均をとり、この大小で評価を行うこととした。評価の対象を新都市街開き段階としているので、国際定期航空路線の設定は、現状のものを基本的に用いることとした。
続いて森地専門委員から東京とのアクセス容易性について説明が行われた。
東京とのアクセス容易性については、東京駅までの鉄道利用時の所要時間を評価指標として、その大小で評価を行う。
新都市まち開き段階を対象として、所要時間の計算は、現状の路線を最大限利用するとの前提で計算した。しかし、現況では新都市中心と想定される場所にはどの地域にも鉄道がないので、ここでは最寄りの駅から新都市中心までは直線区間とし、その間と時速80kmで鉄道が走行するとの前提で行っている。
続いて森地専門委員から全国からのアクセス容易性について説明が行われた。
全国からのアクセス容易性についても、新都市まち開き段階を対象にして評価を行うが、様々な評価手法が考えられる中で鉄道3時間到達圏人口を評価指標として、その大小で評価を行うこととした。この鉄道3時間到達圏人口については、想定した新都市の中心から都道府県庁所在地の中心駅まで3時間以内で行ける都道府県を抽出してその人口累積をとることとした。
但し、この全国からのアクセス容易性については、第二タームの調査で明らかにしたようにコミュータークラスの小型航空機の導入を図ることにより相当変動しうるものである。諸外国の首都では例えばキャンベラのようにコミュータークラスの小型航空機が国内を結んでおり、将来的にこれら小型航空機で新都市から全国各地を十分連絡できた場合を想定して、その場合の全国からの平均的な所要時間、費用を参考値として提示することとした。
全国からのアクセスという問題は、勿論大変重要ではあるものの、将来新都市ができれば十分な対策を行うことによって事情は異なりうる、ということも十分勘案の上、重み付けをお願いしたい。
この後、以下の質疑応答が行われた。
次に土地の円滑な取得の可能性について黒川専門委員から説明が行われた。
土地の円滑な取得の可能性ということであるが、取得が可能であるかどうかというのは断定的には言えないので、ここでは可能性がどれくらい高いかを評価している。都市になっているような人口密度が高いところは多分取得の可能性は低いだろう。あるいは、法規制の観点から土地利用の転換に難易度があるだろう。そういった観点から段階評価を行い、更に、国公有地の存在、大規模な民間所有地の存在、あるいはゴルフ場の有無といったものを評価するという方法をとった。
最初に開かれる都市は一応面積的に約1,800ha必要だと想定し、約1,800haの5割増しである2,700haくらいの大きさがまとまってとれるかどうかを評価をしている。
評価の方法としては、第2タームでメッシュデータからa、b、zの3段階のランクに分けているが、aの固まりの度合いで I 〜 III のランク付けを行う。その次に国公有地の規模・分布状況が多ければ取得の可能性が更に高くなる。大規模な民有地の存在も場合によっては、取得の可能性を高くする。ただし、ゴルフ場については、会員数が多く、関係者の合意がとれにくいことから土地取得の方から見ると原則としてマイナスに減点される。入会地も取得は非常に難しいのでマイナスにしている。人口密度についても、密度が高ければ減点ということで評価をする。
総合評価に際しての留意点としては、土地の円滑な取得の可能性については、土地所有者の生活に与える影響、移転先の地域社会との調和、土地対策調整等のいろいろな要素があるが、今回の検討では把握が可能なものに限っている。今回の検討結果が審議会から公表された段階で、土地投機が始まってしまう可能性もあるので、十分な土地投機対策を講じた上で発表していただきたい。
次に水害・土砂災害に対する安全性についてこれは片山専門委員から説明が行われた。
地震や火山に比べると水害・土砂災害は限られた地域で起こるため、全地域が壊滅的な被害を受けることはない。これは全体の重みづけには非常に大きく関係すると思う。だからといって新都市の設計・建設に当たってはその危険性の評価をしなくていいということではなく、やはり危険性が低ければ費用も少なく済むといったことがある。
評価の方法は第2タームでメッシュデータを利用した検討を行ったが、今回もう少し全体の地形図を検討して、災害発生の可能性を水害について4段階、土砂災害について3段階に分け、この組み合わせでA〜Eの5段階に評価した。Aは水害、土砂災害とも両方とも無い、Eの方は両方起こる地域である。Bは安全性の低い地域が局地的に存在、ただし総体的に安全性は高い。Cは安全性の低い地域が部分的に存在、しかし総体的には安全性の高い地域もまとまって存在する。Dは一部に安全性の低い地域が逆にまとまって存在するが、総体的に安全性の高い地域も存在する。B〜Dはかなり難しい判断のところである。この判断には地形図を中心にしてメッシュのデータも参照にしながら決めたが、今のところいずれの地域でも危険箇所を回避しながら安全性の高い都市をつくることは物理的には可能である。Eという地域は無いが、B〜Dにはかなりの地域が数が分布している。
実際に都市づくりをするときには、災害に対する情報システムや危機管理体制の充実を図っていくことが非常に大切である。でき上がった都市はB〜Dのもとの評価そのままではないから、その辺も考えて全体の重みづけを考えていただきたい。
次に水供給の安定性について池淵専門委員から説明が行われた。
水供給の安定性については、現状における供給安定性及び供給量の増加に対応できる地域の供給ポテンシャルの2点に着目して評価を行った。
現状における水の供給安定性についての評価は、地域の水需要量と安定供給量の水需給バランスについて、通常の年と水不足の年について算定し、3段階で評価を行うこととしている。
また、利水者が自らの負担で先行的に確保した水資源開発水量である先行開発水量も水の供給安定性の向上に寄与する場合があることから、先行開発水量の有無も補正事項として2段階の評価を考えている。
地域の供給ポテンシャルについての評価は、降水量から算出した地域の水資源開発可能量の目安となる水資源賦存量を一人当たりに換算し、3段階で評価することとしている。
また、地域が水資源を依存する主要河川の流況等にも着目し、新規水利用の容易性について、開発効率及び流況の安定性を総合的に考慮して3段階で評価したいと考えている。
以上の、現状における供給安定性及び地域の供給ポテンシャルの評点をそれぞれ加点することで総合化し、評価を行いたいと考えている。
評価の総合化に際しては、既存の水利権の転用及び抜本的な新技術の導入は見込んでいないことに留意していただきたい。
また、評価の低い地域においても、広域的な調整や新規の水資源開発を講じることにより水の供給の安定性を確保することも可能であると考えている。
さらにいずれの地域においても現在の首都圏より水需給が逼迫することはないものと考えている。
次に既存都市との関係の適切性について戸所専門委員から説明が行われた。
既存都市との関係の適切性には、2つの視点がある。1つは、既存都市と新都市の間が市街地でつながってしまう可能性があるかどうか、もう1つは、移転した新都市の近くの都市がどれくらい利便性があり、連携をどのくらいできるかという2つである。この2つの視点から検討を行った。
連坦を回避する可能性は、政令指定都市級の大都市の圏域との市街地連坦の可能性について検討している。既存市街地の状況も踏まえて、新都市の周辺の状況を見て、政令指定都市との連坦とは別に、スプロールが発生する可能性が高いところは補正を行うこととする。
連携については、街びらき後に初期段階においていかに生活利便性を確保するかということであるが、そのために県庁所在地級の都市との連携の容易さを基本として評価した。この場合、新都市の選択多様性を考えると、母都市にどのような機能があるかについても考慮する必要がある。連坦では政令指定都市を、連携では県庁所在都市を主たる評価対象として、必要に応じてそれを補正するというやり方で行う。
総合評価でA〜Eの5段階に分けて評価をし、Aは連坦はしにくく、連携はしやすいところであり、Eは連坦はしやすく、連携しにくいところである。評価する際、総合的に見て、東京から首都機能を移転するというその意義を考えたときに、余りその意義が出てこない場合については補正を行う。
総合評価するに当たっての留意点として3点あり、1つは現行土地利用制度を前提とすれば当然スプロール等色々な問題が起こってくる。したがって、それを抑えるためにどのような土地利用に係る制限、誘導措置を講じるかということがかなり重要になってくるということである。
第2点としては、生活利便性確保の観点から連携を考えているが、首都機能都市はできる限り早い時期に、まとまった規模で利便性の高い機能を実現させることが必要であろうということである。
もう1点は、連携について国際機能との連携があるが、これは別の検討会で検討するため、今回は生活利便性に限って考えたという、この3点である。
続いて国土構造改変の方向について事務局から説明が行われた。
先般の審議会において、文化形成の方向は審議会の委員の方に評価していただくということで説明したが、国土構造改変の方向についても同じようにしていただきたい。
国土構造改編の方向も全部で項目が15あり、大きく3つに分かれている。1つは、「新しい全国総合開発計画(21世紀の国土のグランド・デザイン)に基づく施策との一体性」の関係が5項目、2つ目は、「国際政治機能を支える大都市との連携」として新都市の近くにある国際政治機能を支える大都市との連携の観点が5項目、3つ目は「新都市と東京との連携と分担」という観点からの項目が5つあり、それぞれある地域に移転した場合に、どういうことが考えられるかをまとめている。例えば最初の項目である国土軸の形成では、全国総合開発計画で4つの国土軸が提案されているが、ある地域に移転した場合に新しい国土軸の形成についての影響、効果を5段階で評価していただくということである。
全体を通じて、質疑応答が行われた。
移転費用の再試算の方針について事務局から説明があった。
平成9年10月に出した移転費用のモデル試算で、総額12兆3,000億円、第1段階の10万都市で4兆円という試算としている。これについて今回移転候補地が答申されるに当たり必要な再試算を行うことを考えている。
平成9年のモデル試算では、第1段階の10万人都市段階の試算と成熟段階における最大ケースと2分の1のケースの試算という合計3つのケースについて試算した。今回は、新都市の建設に長期間かかること、あるいは行政改革等の進展ということもあり、第1段階10万都市についての再試算をさせていただきたい。
建築物、基盤整備費については前回のモデル試算と変わらないので対象外として、用地取得費、高速道路、鉄道、空港などの広域交通インフラ整備費、基盤整備費のうちの用地造成費の3項目を対象に再試算の作業にかかりたいと考えている。
移転費用の再試算の方針に沿って作業を行うことが了承された。
次に事務局から各種の国民意見について説明があった後、意見交換が行われた。
最新の国民の意見の動向についての把握を試みている。
政府、関係自治体のアンケート調査が行われているが、政府の調査としては総理府の世論調査が平成9年1月に行われている。そのほかに実施した審議会の公聴会でのアンケート、国土庁が平成10年3月にパソコン通信、郵送調査等で行ったアンケートがある。
関係都道府県の調査としては、東京都の調査をはじめ、それぞれ各県で賛否の数字を調査している。
その他マスメディアによる調査や東京大学の大学院で研究者、あるいはその家族を含め、JCなどのメンバーを対象とした調査もある。
国土庁の首都機能移転のホームページを開設しているが、そこで今年の8月にホームページ上に意見交換スペースというものを設け、登録していただければ自由に意見を言っていただける。賛否両論いろいろな意見が出ている。
各種の国民意見については共通の理解として、適地を選ぶという作業をしていくことで了承された。
次に下河辺委員から次のような意見が述べられた。
答申をどのように行うのかを委員の間で意思統一をして、作業のまとめの方向をつくらないといけないのではないかということで個人意見を言わせていただきたい。
まず候補地選定がどのように推移してきたかというと、首都機能移転問題に関する懇談会では東京から60km圏内は地震その他の関係で解決策を求めることが適当ではないということになった。国会等移転調査会では、東京-名古屋、東京-新潟、東京-仙台という300km圏内のルートの中で考えるという意見が非常に強くあり、300kmを超える地域については、その他の基準を踏まえて全国的に想定した。
その後、多くの地域の中で東京-仙台間と中央地域、畿央地域という3地域を調査対象地域としたのであって、候補地の対象地域としたわけではない。
懇談会、調査会の最初のころは首都移転とも言っていたと思うが、これは調査会の後期では首都機能の移転であって首都の移転ではないということになった。
答申までにとりまとめる作業がたくさん残っていることを皆さんに知っていただきい。まず総合評価が一刻も終わらなければならない。
首都機能と国土構造の展望という作業は、日本の首都と国土構造の関係の歴史の展開から、21世紀の日本の国土構造と首都との関係を論争するという歴史的な考察である。
3地域がそれぞれ特色を持っているだけに、その特色を選ぶということは候補地選定の議論を少し超えているということを結論として言いたい。しかし、南関東直下型地震に対する東京のリダンダンシーだけは急がなければいけない。
調査対象地域以外の地域について、答申の中でどのように扱うのかを審議会で早く決めなければならない。
移転法には国民の合意形成の状況を明記している。いろいろな調査や公聴会を行って、もう十分と言い切ってしまうのか。1,000万人、2,000万人が応ずるような世論調査をしてもいいのではないか。
東京との比較考量に関しては、どのようなテーマで比較考量をするのか。
国会等の移転プログラムについての議論は必ずしも十分ではない。第1は、今の国会議事堂が建設されたやり方、プログラムを勉強して、この仕事は大作業になるということを前提にしながら国会都市の建設のプログラムを議論していかなければならない。
第2に、霞ヶ関の中央省庁の移転のプログラム必要だろう。
第3は、司法関係の移転に対して、司法当局の意向はほとんど議論していない。
第4には、国会都市ができ、合同庁舎ができるというプロセスで最初から定住する環境を持つことはあり得ない。もし移転したにしても、新しい都市で生活を充実させるには30年ぐらい掛けて、最終的には今まで審議会が言っていたように家族型で、自然環境も豊かな姿になっていくのだろう。3地域のどこに行こうともこの移転期間中のプログラムを持たないと現実性がない。
答申書を作成するという作業であるが、これはいつ頃やるのか。もうそろそろ答申書の枠組みなり中身のディスカッションを始めなければいけないということを思っている。
重みづけ作業について、意見交換が行われた。
以上
(文責 国会等移転審議会事務局)