平成11年12月17日(金曜日)14時30分〜17時15分
通商産業省別館944号会議室(9階)
森会長、石原会長代理、野崎部会長代理(起草委員長)、新井、石井(威望)、石井(幹子)、海老沢、寺田、中村(英夫)、濱中、堀江、牧野、溝上、鷲尾各委員(14名)
古川内閣官房副長官(事務局長)、久保田国土事務次官、木下国土庁長官官房長、板倉国土庁大都市圏整備局長(事務局次長)、他
移転先候補地の選定に係る議論、答申の文案について
移転候補地の選定、答申の文案についての意見交換が行われた。
答申の文案について起草委員長より説明があった。
今回の答申については、審議会に与えられた任務は、国会等の移転先候補地の選定であるので、簡略に書いた。
最初の「はじめに」で、まず、審議会が平成8年12月19日に発足したこと、そして、その答申の意味を説明し、次に、国会等の移転は、国会、内閣、中央省庁及び最高裁判所から成る三権の中枢機能を指すのであり、したがって、遷都ではなく、なぜ国会等の移転、首都機能移転と呼ばれるかという趣旨を明らかにした。
そして、最終的な移転先は国会が別に法律を定めて行うことから、審議会の役割は、移転法に従って専門的、中立的な立場から審議先の候補地の選定等に関する調査審議を行い、国会における移転先の決定のために必要な判断材料を提供することを明らかにし、当審議会の審議すべき事項及びその任務を具体的に記載した。
第1章では、首都機能移転の歴史的意義を記載した。
ここで、「政治の中心を移転することを伴う国政の改革」との言葉を使っているが、奈良、平安の時代は、遷都の形で行われ、鎌倉あるいは江戸時代を考えると、政治の中心が鎌倉及び東京に移った。この政治の中心との意味は、その両者を含むものとして書いている。こういう表現で、そのことを一括して記載した。
次の第2章「移転先の候補地の選定」の「1.移転先候補地」は、本日の審議を経て、その結果を書き加える。
それから、次に、「2.移転先候補地の選定過程」は、3つの調査対象地域をまず決定し、それから、10の総合評価の対象地域を決定したことを書いている。そして、その総合評価は16の項目を設け各専門家の方々が10の地域毎に評価し、また、我々が重みづけ手法によって16の項目毎の評価を行った。そして、最後に、多面的、多角的な検討を加えた上で、最終的な移転先を決定したと書いた。
「3.選定作業の結果」の(1)では、首都機能をどこに移転するかにより、その性格が変わってくることを簡単に説明した。もし、北東地域に移るとすれば、新しい大地に新都市が築かれることになる。そこでは、東北新幹線、東北自動車道を交通手段として首都機能が営まれ、その性格は、東京と非常に関係が深くなり、東京の首都機能を活用する形になる。それから、比較的弾力性のある段階的な移転が可能であろう。そして、新都市は、非常に自然に恵まれた環境共生型の都市になると書いている。
東海地域に移ると、そこは非常に先端的な産業技術の中枢の近くに移転することになるが、東京からかなり離れることから、東京から自立する性格が非常に高くなり、北東地域に比べて弾力的な段階的移転になりにくい。しかし、ここで国土構造が多極化することが予想される。
三重・畿央地域に移転すると、畿内の近くに首都機能が復帰することになり、東京から最も離れることから、その意味では、自立性の非常に高い都市ができ、東京依存型の社会構造にも変化が生じる。その新都市は、伝統文化を生かした新しい形になることを書いた。
次に、「(2)総合評価の対象地域の特徴及び課題」であるが、各観点から議論を行ったことによって得られた結果を簡単に記載している。
それから、「(3)重みづけ手法による総合評価の結果」では、各専門委員からの地域毎の評価に、審議会委員が3回にわたって項目毎の重みづけ評価を行い、数値的に各候補地を比べた。そして、その重みづけ手法による総合評価の結果によると、各候補地の差はかなり接近するが、北東地域の栃木・福島地域の評価が最も高く、次いで、東海地域の岐阜・愛知地域の評価が高い、そして、3番目が茨城地域であった。
それから、「(4)多面的、多角的検討」では、重みづけ手法による総合評価を行い、更に、広域的な目で各候補地を見ることである。将来の交通網が設けられる、あるいは新しい空港ができる等の将来の問題ではあるが、それらを含めた多面的、多角的評価を行った。
まず、総合評価で最も高い評価を得た、栃木・福島地域及び岐阜・愛知地域のこの2つについて、それを行う。その上で、ほかに適当な地域があるかどうかを検討した。栃木・福島地域については、いろいろな面で東京、仙台あるいは近くの宇都宮、郡山との連携も容易なことを考えると、この優位は動かない。そのことを結論とした上で、宮城地域の在り方、また、那須岳の噴火なども書き、この結論部分は当然のことながら、これらのことを併せ考えても、栃木・福島地域の優位は動かないことを書いた。
次に、岐阜・愛知地域は、中部国際空港の建設が決まり、また、将来の新たな交通網がこの地域を通過すると、非常に大きなプラスの要因になる。そういうことを考えると、東海地域の中では、岐阜・愛知地域は総合評価結果が一番高いが、多面的、多角的判断を加えても、その優位は動かない。ただ、大規模地震の問題は頭に置いておかないといけない。静岡・愛知地域は、交通の利便性を生かして、そこにもし新都市が建設されるのであれば、その支援連携の拠点となると考えている。
茨城地域は、栃木・福島地域を広域的に支援する拠点となると書いた。これは、北東地域にもし新都市を設けるとすると、栃木・福島地域を中心にせざるを得ない。そこで、常磐軸にある茨城地域は、北東地域の中ではやや独立した位置であることを考え、栃木・福島地域を支援するという意味で記載をした。
三重・畿央地域については、まず、総合評価の結果は、決して高いものではないことをはっきりと書いた。しかし、この地域は、歴史の非常に古い地域であり、また、日本海との連携も容易である。それから、京都、大阪、奈良といった非常に歴史的なところに近く、国立国会図書館の関西館あるいは京都迎賓館も非常に近い。もし、将来この地域を通過する新たな高速交通網が設置されることになれば、難点とされる東京との連携あるいは大阪、京都、奈良との連絡も容易になり、中部国際空港と関西国際空港を利用し、非常に違ったものになる可能性がある。だから、そういう条件を入れると、俗な言葉で大化けする可能性を秘めている。もし、条件が整うと、結論としては立地条件は大きな飛躍をとげて、移転先候補地となる可能性は秘めているだろうということを書いている。
そのあとの部分は、首都機能の移転先となる新都市の在り方、例えば、新しい情報ネットワークの拠点となってほしいとか、環境に配慮してほしいとか、国際政治都市になるのだからきちんとした機能を備えてほしい、あるいは風格のある景観のことを書き、また、移転の意義・効果としては、一極集中が是正されたり、災害対応力等ということが書いているが、これは、これまでの調査会報告などを参考にした。
「その他」について、ここでは審議会において移転候補地の選定を行うのは時期尚早ではないかとの御意見があったことを書いている。これは答申を行うことに対する少数意見であり、他とは、いささか趣を異にするもので、取り上げることにした。
その後、答申後にいろいろ検討していただきたい事項とか、また、移転先候補地については、土地投機への対応をしてもらいたい、あるいは地方公共団体に対しても配慮をしてほしいということを書いて、終わりに国会に対する私どもの切なる希望と、これまでいろいろ御協力いただいた方々や公共団体に対する感謝の念を表することで、この案を終えている。
意見交換が行われ、次のような意見があった。
会長から、以上の議論を踏まえ、次のような提案があった。
前回からの流れから、重みづけ手法による総合評価の結果で高い評価を得た2つ地域に関しては、前回の議論でも今回の議論でも候補とすることに全く異論ないと理解する。前回の終わりに、茨城地域と三重・畿央地域については何らかの言及をすることで、御了解を得た。
まとめると、当初から一貫して全員の賛成を得ているように、移転先候補地として推薦するのは2地域である。そのほかに茨城地域と三重・畿央地域についても結論部分の中で言及をする。
答申の記述については、会長及び起草委員長に一任することが決定された。
参考資料について事務局から説明があった。
答申が出た以降、できるだけ答申の参考資料を公表したいと考えている。今まで審議会で使われた資料等について要望があれば見ていただくという対応をしていきたい。更に、インターネット等を十分活用していきたい。
この後、以下の質疑応答が行われた。
次回、第31回の審議会について、12月20日9時30分から行われることが、事務局から提示された。以上
(文責国会等移転審議会事務局)