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第1回国会等移転審議会調査部会議事要旨

1.日時

平成9年4月2日(水曜日)16時30分〜18時30分

2.場所

虎ノ門パストラル菊の間

3.出席者

(審議会委員)

有馬部会長、石原部会長代理、石井(威望)、石井(幹子)、堺屋、下河辺、中村(英夫)、溝上、野崎各委員(9名)

(専門委員)

池淵、井田、井手、金本、黒川、鈴木、戸所各委員(7名)

伊藤国土庁長官、井奥国土政務次官、古川内閣官房副長官(事務局長)、田波内閣内政審議室長、竹内国土事務次官、近藤国土庁長官官房長、五十嵐大都市圏整備局長(事務局次長)他

4.議題

部会長挨拶、委員の紹介、部会長代理の指名、国土庁長官挨拶、運営方針の決定、資料説明、フリートーキング、国土政務次官挨拶等

5.議事の要旨

今回は、本国会等移転審議会調査部会の初会合であったため、「委員の紹介」や「本審議会調査部会の運営方針の決定」などを行い、その後事務局から「首都機能移転に関する経緯」、「国会等移転審議会の調査審議経過」について説明が行われた後、各委員からのフリートーキングが行われた。その概要は以下のとおり。

(1)部会長挨拶要旨

首都機能移転は「人心一新」の好機であり、望ましい国土構造の実現、21世紀の我が国の政治、経済及び文化の在り方に大きな影響を及ぼす「国家百年の大計」であると考えられます。
本調査部会は、移転先候補地の選定に関して専門的な事項を調査審議するという極めて重要な使命を課されたものであります。全力を尽くして部会の円滑な進行に努めて参りたいと存じます。

(2)国土庁長官挨拶要旨

首都機能移転については、総理からも強い意欲を持って取り組むよう指示を頂いております。また、国民の関心も日々高まってきていると実感されます。
「国家百年の大計」といいますが、今はまさに20世紀から21世紀に向かっての大世紀末であり、大きな転換期にあります。霞ヶ関の大改革が進められており、これと並行してこの取り組みを進めていかなければなりません。
夢とロマンをもって新世紀を迎えるにあたり、新しい政治都市をつくることは、我が民族の新しい可能性を拓くことになります。委員の皆様には専門的な立場からのご協力をよろしくお願いします。

(3)運営方針の決定

運営方針及び審議会の公開について事務局より説明を行い、各委員の了解が得られた。

審議会の公開については、以下のとおりとされた。

  • 特定の地域を対象とした議論が行われ、土地投機等を通じ特定の者に不当な利益をもたらすおそれがあること
  • 公正かつ中立な審議に著しい支障を及ぼすおそれがあること

から、会議および議事録は非公開とする。

他方、審議会等の公開に関する閣議決定の趣旨や国民の合意形成の促進の観点から、

  • 毎回、会議後、事務局において速やかに議事要旨を作成し、公表する。
  • 毎回、会議終了後、議事内容について記者団に説明する。
(4)フリートーキング

首都機能移転に関する経緯、国会等移転審議会の調査審議経過について事務局より説明し、引き続き各委員のフリートーキングが行われた。

各委員からの意見の概要は以下のとおり。

・関西から見ると東京から北の方がよく見えていない。関西の学生に「頭の中の地図(メンタルマップ)」を描かせると、北関東、東北は空白となってしまう。逆に群馬の方から見ると、東京がバリアになっていて、横浜や川崎が案外わからないという状況がある。どうも東京を通過することがハード面でもソフト面でも非常に難しい。例えば、新幹線で高崎から京都へ行くと、東京で切符が一旦切れるため、通しで買うより割高になるが、東京からは会社が異なっても博多までの新幹線の切符が通しで買える。このようなことが東京から先を見えなくしている原因ではないか。
また、高崎・京都の時間距離を考えても、実際の距離にかかわらず中山道経由より東京経由の方が圧倒的に早い。それだけ公共投資が東京中心に動いてきたということだ。
東京一極集中により、多くの国民のメンタルマップは歪められており、日本人の精神構造にまでマイナスをもたらしていると感じる。
また、地方の大学では、学生は入学したときには非常に希望を持っていて、そこで生活するぞと言っているが、だんだんと夢と希望がなくなって、卒業する頃には東京へ出ていってしまうというのを何回も目にしている。
このような状況の中で、特にハードとソフトをつないでいく必要があり、またソフト面では人的資源の無駄遣い、知恵がなかなか出ないという問題がある。そういう意味では首都機能移転は一つの大きな転換点となる。

・自然災害等を考える場合には、地形と地質は不可分の関係にあるので、その両面から地形の安定性を考える必要がある。我が国には地形・地質に関する多くの既存資料があるので、それをもとに論理を積み上げて火山学や地震学の専門家と協力して検討していきたい。

・今回の国会等移転でイメージされているのは、人口60万人、全体面積9千haで、第1期は2010年に人口10万人、約2千haということである。つくば研究学園都市(2,700ha)、多摩ニュータウン(約3,000ha)、港北ニュータウン(約2,000ha)も建設から30年経過しているが、いまだ計画人口に達していない。新都市もある日突然60万人になったりすることはないだろう。つくばがそうだが、国の命令で移されて、そこに本当に住みたいと思うまでには、かなりの時間がかかり、やっとこのごろ永住したいという人たちが増えてきた。仮住まいの街では生きた街にならないし、これまでに至るまではいろいろなことがあったわけで、新都市の費用を出す場合にはこういったことも踏まえて、そこに住む人の生活を考えた上で、費用の計算をする必要がある。
その際、新都市を世界に誇れる街にするのか、単に60万人レベルの街を造るかによっても、この計画に要する費用や考え方が変わってくるので、議論が必要である。

・移転コストの試算に当たっては、時間が長いプロジェクトなので、利子率とか割引率などで将来の費用を現在価値に直す必要がある。そうなると、経済学の世界では100年より先の費用はほとんどゼロになる。
また、税金で払う部分と、住む人、企業が払う部分があるということも重要な問題である。特に、国の税金で負担すべきものはどれだけで、受益者負担、例えば公務員が自分の給料で負担すべきものはどれだけかということは非常に重要である。それに加えて、基盤整備については、生活関連の社会資本、空港なり新幹線なりは、かなりの部分は利用者負担となるだろうし、住宅関連の社会資本であれば、地方自治体が税収で負担するものもあるので、これらについて整理してもらいたい。
最後に、首都機能移転自体が行政改革であるという視点が必要である。我が国の基盤整備の費用や住宅コストはアメリカと比べて割高であるが、アメリカのような新しい考え方、新しいつくり方でつくると費用も大きく違ってくるということもよく考えなければならない。

・自然環境の保全あるいはその利用の観点から土地利用を考えていきたい。
生態学的アプローチには2つあり、1つは生物社会学的アプローチで自然とか人間、生物相互の間の社会関係を扱う。共生とか生物多様性というような問題である。もう1つは、生物経済学的な側面で、物質の循環や食物連鎖を扱う。これは生物的な自然の地域的秩序というものに非常にかかわってくる。そういう意味で循環系の整備ということが、新都市の立地選定においても重要となってくるだろう。
また、土地利用と自然環境との関係についても2つの立場があり、1つは、土地利用の形態を考えて適地を探すというものであり、この立場だと、自然環境にどの程度影響を与えないようにしていくかという狭い意味の環境アセスメントが出てくる。もう1つの立場は、自然環境のポテンシャル、あるいはその保全を考えたときに、どのような土地利用が可能かという、立地の土地利用許容性を考える立場である。この立場では、計画アセスメントのようなものが必要であり、具体的には環境の観点から不適地メッシュを作成し、そこを除いて適地を選定するというアプローチを行い、候補地の比較を行うということも必要ではないか。

・火山の問題を考える場合には、溶岩流の問題だけでなく、大量の火山灰の問題も考える必要がある。300年前の富士山の噴火では、今の首都圏は昼間も真っ暗になるほど火山灰が降った。例えば川崎では5センチも降っている。したがって、新都市を考えるときに火山灰の影響の範囲も考えて検討する必要がある。

・新都市が国際都市とか環境共生都市とか、安全・安心都市といった機能を持つ必要があるとなると、水は非常に大事な要因になる。60万人都市を前提とすると、3t〜4t強/sの取水量を確保することが必要で、取水源の確保が不可欠である。
また、洪水の問題については、近年は地球温暖化の影響からか、雨量が増加しており、災害は発生することを覚悟した上で、被害を最小化する観点から都市機能の整備、候補地選定を考えることが必要である。

・国会等の情報関連機能については、情報の技術革新の問題を考えなくてはならない。今や民間の設備投資の中で情報・通信関連が最大になりつつある。情報は今後の産業の中心として考えなければいけない。また、21世紀に向けては子供や若い人を前提に考える必要があり、この1年くらいでも、子供の世界は激変している。このように、通信とか一種のメディアとかは、それをベースにしたあらゆる社会的な活動、政治、経済を含んで爆発的に増えることは時間の問題である。
また、情報通信ネットワークの世界ではこの10年で劇的変化を迎えており、例えばメインフレームシステムの一極集中型から分散型に変わっている。メインフレームシステムの情報形態を前提とすれば、当然それを反映した都市形態にならざるをえない。東京の人は情報化といえば東京で決まりだと、間違える人がいるが、それはこれまでの情報形態を前提とした考えである。首都機能移転問題も、このような新技術の動向を踏まえて検討する必要がある。

・21世紀の新しい都市をつくる場合、景観の美しさが重要なポイントである。日本で言えば京都は自然景観が大変美しいところであったので、あれだけ長く都市が続いたのかなという気がする。また、世界の美しい首都は、大変魅力的で、緑や水の美しさが際立っている。
景観の美しさを考える場合、都市の美しさに加え、空港から新都市に向かう際の景観、また列車や車から見た美しさが重要である。
そうした美しさは、建築の美しさばかりでなく自然の景観からきた美しさがポイントだと思う。
また、地方で首都機能移転反対の声が聞かれることがあるが、映画や漫画で描かれる超高層ビルの廃墟の固まりのような未来都市が来るというイメージがあるためではないか。このようなイメージは払拭する必要があり、私は、低層の、できれば燃えない木造の建物からなるフレキシブルな都市をイメージしているが、違う都市イメージを考える必要がある。

・このプロジェクトは、1つの都市や地域の開発の問題にとどまらず、将来の日本を拓く、日本を象徴する問題である。日本の文化の方向や、日本人のライフサイクル、日本と世界との関係ということを考えなければならない。街は生き物であるから、日本全体の方向性と関連させた議論をする必要がある。
つくばの集積や、新幹線通勤により、1都3県の外周部に非常に集積が高まっていることや、インターネットのホームページの90%弱が東京に集中しているなど一極集中は非常に激しく、このプロジェクトはますます重要性を帯びていると感じる。
また、60万人、9,000haという話も、最大限を示した格好になっており、今後議論していく必要がある。

・調査部会は専門家が勢揃いしたので、森羅万象ことごとく議論することとなると時間が足りなくなるだろう。したがって、例えば、新都市のライフスタイルの在り方や、立地を決めるための調査技術など、専門性の高いテーマについて議論を集約する必要がある。

・ある地域で国際空港の適地選定に加わったことがある。空港は地域にとって大きなプラスの効果もあるが、嫌悪施設でもある。地元で議論してもまとまらないので、東京の5人からなるワイズメンコミッティーに全部ゲタを預けられた。そこでは適地選定のための方法を随分議論し、結果的にAHP(アナリティカル・ハイアラーキー・プロセス)という手法を用いた。その手法では、考えられる要因全て、建設費、反対運動、環境問題、地域開発効果やその他極めて詳細な因子から積み上げて、それぞれの要素について重みを議論して整理していく。これは、多数の要素があり、それがトレードオフの関係にあるようなものについて総合評価する手法として、多彩な立場の人間が議論してまとめ、世の中に判断してもらうのにたいへん有効な方法なので、参考としてもらいたい。

・地震に対する安全性については、まず「東京と同時に被災する可能性の少ない地域」とされているが、「同時に」とは東京が短期間に壊滅状態になって、代替機能がそこに求められないという意味だと理解すると、具体的な事例としては関東大震災がイメージできる。関東大震災の発生の範囲は東京と連旦する範囲とほぼ重なるので、その地域をはずすことにより同時被災の回避が可能である。
「大規模地震による著しい被害の恐れのある地域」という基準については、ある地域に発生する地震は周期性を有しているため、同じ場所でも安定した期間がある。地震に対して安全に使える期間をどの程度とするかによって異なってくる。

・行政改革で時に中央省庁の在り方が検討されいるところだが、政策立案部門と実施部門に再編成するという議論は、首都機能移転とも関係するので、その結論は大いに参考になるだろう。この調査部会は審議会から一定の前提の下に、専門的な検討を行って候補地を選定するように言われると思うが、時間に限りがあるので、議論が拡散しないようにし、深い議論をしていくことが大切である。

・全国各地での勤務経験から、東京の人は周辺の都市をあまり尊敬していないような言動をしていると感じる。関西では、大阪、京都、神戸、奈良などの各都市がそれぞれの特徴を持って張り合っている。アメリカの地方中核都市のように、それぞれの地方が大企業の本社を抱え、互いに競い合いつつ重要な役割を担っている。日本もそういう形に持っていく必要があり、そうすることによって、21世紀の日本がもっと住み易い、いい国になると考えている。

(5)国土政務次官挨拶要旨

本日はご多用にも関わらず貴重なご意見を賜り、ありがとうございました。
今後、本調査部会で練り上げられたものが審議会でご議論いただくわけですが、先生方の一言一句、貴重なご意見が形になっていくこととなりますので、今後ともよろしくお願いします。

次回第2回審議会調査部会については5月7日(水曜日)17時30分から行われることが事務局より提示された。

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