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第5回国会等移転審議会調査部会議事要旨

1.日時

平成9年11月11日(火曜日)14時0分〜16時0分

2.場所

中央合同庁舎5号館別館共用第23会議室

3.出席者

(審議会委員)

有馬部会長、石原部会長代理、堺屋、下河辺、野崎各委員(5名)

(専門委員)

池淵、井田、井手、片山、金本、黒川、鈴木、戸所、森地各専門委員(9名)

古川内閣官房副長官(事務局長)、近藤国土事務次官、久保田国土庁長官官房長、林大都市圏整備局長(事務局次長)他

4.議題

調査対象地域の設定について等

5.議事の要旨

今回は、まず、調査対象地域の設定について事務局からの説明と意見交換が行われた。その後、首都機能移転に係る文化的側面に関する報告が堺屋委員から行われた。

(1)調査対象地域の設定について

事務局からの資料説明の後、以下の意見交換が行われた。

・地域の選び方にはいろいろな考え方がある。
第1に、可能性の高い地域のみを選ぶのか、それともそれほど可能性が高くないが参考のために調べておいた方が良いという地域も加えるのか。
第2に、首都機能移転が国民的、歴史的大事件であるということを考慮して、全国的な議論を呼び起こすために、地域的な分散も考慮するべきではないかという考え方がある。
第3に、地元で誘致の意識のあるところのみに限るのかどうか。
第4に、東京との連坦の危険をどの程度考慮するのか。東京に近すぎると東京の飛び地になる恐れがあるという問題をどう考えるのか。
第5に、対象地域を選ぶときの広さをどの程度にするのか。広さの設定によっては県境を越える地域が生じることもあり、地域数が変わってくることもあり得る。
このような調査をする場合には、いろいろな考え方があるが、常識的には可能性の高い地域、地元に誘致の意識のある地域に絞るのが普通ではないかという感じを持っている。

・可能性の高いところや、地元に誘致の意思のあるところを選ぶということに関しては賛成である。ただし、そのような地域以外にも社会情勢の変化によっては、調査対象地域となりうる可能性は残しておく必要があると思う。
土地利用にしても、現在は空いているところのみではなく、社会情勢の変化によっては現在土地利用がなされているところでもそれが転換するという場合もあり得る。国民的な議論を巻き起こすという意味でも、そのような余地を残しておくのがよいと思う。

・調査対象地域の設定にあたっての絞り込みは、地域の特性把握の項目に沿って行うことでよいと思う。それによって、可能性の高い地域が必然的に選ばれるだろう。国民の関心を高めるだけの目的で候補地を残す必要はないと思う。
地域が県境を越えるという問題に関連しては、必ずしも地域設定は県単位にこだわることもないと思う。また、地域の名称も工夫する必要があるのではないか。

・明らかに調査をする必要がないという地域をどのように選ぶかが難しい。論理的には、特性把握の項目の中でどれをとっても全ての点で他に比べ劣っているような地域がある場合には、調査をする必要がないということになるが、果たしてそんなにクリアカットに落とせるものなのか気になる。
雪については、国会等移転調査会の時に最終的には選定条件から落とされたと新聞等で報道されていたが、どうしても新都市の移転先地として不都合があるのなら、地域を決めるための一つの要素として考慮しなくてはならないのではないか。

・地域を選んでいくという意味では、可能性のあるところ、地元にその意識があるところというのが条件になると思う。

・東京との連携という条件にとらわれずに候補地を選ぶとすると、国会の移転先地として非常に優れているところはなくなるだろう、という見方があるかもしれない。

・災害に対する安全性は、ネガティブな面ではあるが、これは致命的なものなので、他の全ての条件が優れていてもこの条件がダメだったら候補地としてふさわしくないということになると思う。
特に考えなくてはならないのは、東京との同時被災性である。そのような危険性がある地域は、他の条件がどうであれ、調査対象地域から除いても良いと思う。

・地震に関連して活断層に注意するべきで、活動度の高い活断層からは、一定距離以上離すなどとした方がよい。この検討は次のタームで行う必要がある。

・地震に対する安全性の観点からみると、東海地震などにより大きな影響を受ける地域も予想されるが、地震による影響の度合いは地盤の状況などにより各地域ごとに異なることも考えられるため、今後第2ターム以降においてより詳細な検討を行う必要がある。

・水の安定供給については第2タームで検討することとなっているが、毎秒3トン程度の水を確保するとなると大きな河川の存在が必要だということと、既得水利と水利用の状況がどのようになっているかが問題である。河川はあっても水利権の調整が難しい場合もある。
また、地球温暖化等の影響で雪が雨になったりすることもあり、第2タームではそのような変動性というものを十分考慮することが必要である。

・まず、新都市と東京との関連性から議論すべきではないか。東京との関連を重視するのか、それともそれにこだわらなくても良いのか。その考え方を議論すべきである。
また、首都の立地論についても議論すべきではないか。

・国会等移転調査会の報告を踏まえて審議するというこの審議会の役割を考えると、調査会報告でも新しい国会都市と東京との関係は重要な要素とされており、東京との関係を抜きにして日本列島の中から一番良い場所を選ぶのではなく、これからも東京が相当重要な機能を果たし、それとの連携を考慮して新しい国会等の移転候補地を選ぶというように理解している。
したがって、東京と同時に被災しないという条件も大切ではあるが、東京との関連を重視して候補地を選定するということが大前提となっていると理解している。この点についてはどのように考えればよいか。

→これまで、審議会でも国会等移転調査会報告の記述を整理し、東京との連携の必要性を考慮して東京から300km圏内であるとか、鉄道で概ね2時間程度ということが選定基準の9条件の中の項目に入っていることを確認してきた。ただ一方で、東京そのものであってもいけない、東京からの隔離ということも一つの柱としてあり、その辺をこれから具体的に議論していくことも審議会の仕事ではないかと考えている。

(2)首都機能移転に係る文化的側面に関する報告

首都機能移転に係る文化的側面について、検討結果が以下のとおり堺屋委員から報告された。

新都市を考える上では、文化的側面が非常に重要であり、新都市によって国内の文化圏が変化する可能性が高い。少なくとも日本文化がどのような地域的多様性をもっているかを把握しておくことは重要であると考えられる。
新都市の住民の生活について考えることなしに新都市の整備を行うことは不適当である。また、新都市のたたずまいや人々のライフスタイルなどは、日本人全てに直接・間接に様々な影響を与えるだろう。このようなデモンストレーション効果が非常に大きい。
新都市のたたずまいは、国と地方との関係、あるいは国の三権との関係、国際関係のあらゆる面に少なからず変化を与えるだろう。さらに、我が国の情報発信の多元性、文化の多様性、都市間競争等様々なソフト文化を生み出すことが想像される。我が国は1990年以降ソフト文化面や国際競争に立ち後れてきたといわれているが、その一つの原因は都市間競争がなく、東京一極集中により何でも東京からしか発信されないということであろう。
ドイツの場合、首都機能移転を行う一番の理由は東と西の都市間競争を生むことであると聞いている。現在のラインランドだけに偏っている状況から、東のブランデンブルグの文化との競争を喚起しなくてはならないようである。フランスでも地方分権法が通って、パリの独占状況が低下している。そういう意味でも、日本では情報発信の多元化、文化の多様化が大変重要だと思う。
次に、新都市に所在する中央官庁の仕事のやり方について、東京との連携によってどのようなやり方になるのか、フットワークを主とするのか、ネットワークを主とするのか、人々が東京に来て仕事をするのか、あるいは全国的にネットワークを活用するのか。これも大きな違いになっている。現在の日本は呼びつけ型行政となっていて、地方機関の人々が霞ヶ関にヒアリングに集まって来るという形態をとっている。これを継続するのか、官庁の方から出向いていくのか。これも新都市のあり方によって全く変わってしまうだろう。
それから、社交、交際等が変わるだろう。日本ほどパーティーをたくさん行っている国はないらしいが、東京にいると出席を断りにくいということもある。そのような状況は変わり、日本の職場、文化全体に与える影響も大きいだろう。
新都市の機能及び文化的側面とこれらが全国、未来に与える影響は物理的問題に勝るとも劣らない条件となる。現在の地域指定や規制等によって、このような重要な文化的問題が無視されて新都市の場所が選ばれるようなことになれば、百年禍根を残すことになるのではないか。このような問題についても十分検討が必要である。
つまり、新都市のたたずまいがこれからの日本の文化と国家活動の性格及び日本のイメージに与える影響は極めて大きいことから、新都市で人々がどのような仕事、生活を営み、どのような文化を形成するか、さらに新都市の存在が日本人の文化、意識にどのような影響を与えるかを検討することは新都市像の検討の上で不可欠なことであり、国民全般の関心の喚起を要する問題である。
日本の地域構造を文化的に見ると東西二分型とサンドイッチ型がある。言葉の場合は、だいたい長野県と岐阜県、愛知県の間と関東の真ん中あたりに区切りがあり、だいたい西と東、そして北関東と南東北だけが少し違った形になっている。
建物では、近畿地方から北陸地方にかけて一つの形があって、だいたい東日本と九州が少し似た形になっている。食べ物では、北陸から日本海沿岸の北側に同じ形が現れている。これらは、典型的なサンドイッチ型といわれるものである。サンドイッチ型は建物以外には余りなく、近畿地方、瀬戸内沿岸が一つの文化圏で、その南側、九州、四国南部と中部地方から四国地方山間部、それから東に分かれている。
出土品については、北関東とその他が分かれている。
通信状況で見ると、東日本は東京一極集中一色になっている。西日本は中部圏、近畿圏、中国圏、九州圏と幾つか分かれている。したがって、東日本の場合はどこに置いても東京の影響が非常に強く、西日本に置くと東京と違ったものが出来る可能性が強いということが予想される。
全国の都道府県からの情報発信量を見ると、県境を越えない地域発信について見ると、一番高い東京都が都民一人当たり6万2千円であり、一番低いのが茨城県で5千2百円とだいたい10倍の差がある。岐阜県や山口県も一人当たり1万円以下となっている。
一方、県境を越える広域発信では、東京都は一人当たり19万4千円、その次に多いのが埼玉県、千葉県、神奈川県で、これらの東京圏の県では一人当たり3万5千円程度、その次に多いのが福岡県で1万8千円と東京の10分の1である。大阪府が1万4千円で、これ以外の道府県はゼロである。すなわち、31道府県の人は自分の県以外に情報発信する手段を自ら全く持っていない。したがって、日本の地方文化が発信されるときには必ず東京のメディアのチョイスに頼っていることになる。これが、情報発信が東京一色になっている理由である。
マスコミについてみると集中型になっており、新都市が独自の文化を形成し、それが全国に一定の影響を与えることが必要であるという結論になる。
新都市のたたずまいについて、堂々たる都市にするということは否定して、政府の威圧感のない都市がよいだろうということになった。また、内外の情報を素早く吸収し、消化して行動できるフットワークの良い都市が良いであろう。高等教育機関等の設備は必要であるが、あらゆる分野を対象とするものは必要ではなく、新都市の理念に沿った少数の学生や学者を対象とするもので十分だろう。
流動性が高くて生涯定住者が少ないというのが一つの問題で、新都市をふるさととする人がいるのか、あるいはお墓を持つ人がいるのかというような議論があった。ワシントンには政治家や行政官の墓はなく、選挙もふるさとへ帰って行う。このように流動性が高くて定住者は比較的少ない方がよいのではないか。したがって、土地所有等も制限されていいのではないか。また、製造機能や証券取引所等の経済中枢機能は有さない方がよいのではないか。
落ち着きのある都市、物理的な豊かさだけでなくて精神的な豊かさのある都市、日本が将来目指す文化を象徴するような都市が望ましい。
新都市は表動線と裏動線が分離された都市がよく、建設が続く間、建設・廃棄のための裏動線が必要である。
ゆとりのある都市として、通勤時間の少ないところがよい。このような都市は広がりを持つのがよいのか、あるいは緑の中に点在するのがよいのか、これは大変難しい問題である。あまり広くない方がよいのではないか。また、新都市の公務員は単身赴任ではなく、家族と同居するような環境を整備する必要がある。
国際交流や観光に携わる人々は定住者となる。したがって首都機能と郷土愛をどう共存させるか、小売店やレストランを経営する人や、その市に勤める人、学校の先生などには郷土愛を持ってもらうのがよいのではないか。また、人のにおいのする、くつろぎのある界隈性をつくらなくてはならない。
新しい都市文化を体現するために、地球市民の意識を持つ必要がある。新都市は内外の特定都市に従属しない独自性と中立性を持つ都市であることが必要である。この点は重要であり、ベルサイユの例を挙げると、現在ではパリから車で1時間くらいの距離であるが、当時は半日くらいの距離であった。それでもベルサイユはパリの出先、パリの1つの区であった。独自性と中立性を持った都市というのは、東京の飛び地にしてはならないという意味である。これは、国会等移転調査会報告にも、建設段階では東京との二重構造になるという観点から書かれているが、東京圏と連坦してはいけないということと東京と分離する首都機能の円滑な運営ということが両方書かれている。少なくとも文化的には東京の一部となり、東京都の新しい区がそこにできるというような意識ではいけないのではないか。全国から中立的な情報が入る都市でなくてはならない。
東京から首都機能が移転すると民間の情報が入らなくなるのではないかという人がいるが、もしそうなら現在は東京以外の情報は入っていないということになる。この意味では、特定の都市に従属しないというときの特定の都市とは、まず考えられるのは東京であるが、東京以外でも大阪や名古屋のような大都市のすぐ近くは避けた方がよいのではないか。内外の情報が公平に吸収され、国民一般の意識、政治・行政・司法へのニーズから乖離しないことが必要である。
新都市が持つべき三権の中枢以外の機能としては、国際的、外交的観光都市である。観光都市と言うのは、イベントなどもたくさん行われる都市であって欲しいということで、新都市への交通条件を確保するためにも必要である。すべての県庁所在地から航空機が1日2、3便飛ぶようになるためには出張客だけでなく観光客が必要である。年間2千万人程度の観光客が来れば十分路線の採算性が確保できる。そうでないといちいち東京を経由することになってしまい、新都市をつくる価値がなくなる。そういう意味では、一般国民と新都市との接触を密にするなど、観光流動作用や国際都市、情報都市としての機能が大変重要であろう。
次に、情報通信都市ということがあり、先端的な情報技術を十分に採用して、官庁機能のリストラだけでなしにリエンジニアリングも進める必要があろう。
全国的な影響として、新都市のたたずまいが全国のモデルの一つとなり、その文化が全国にデモンストレーション効果を発揮する。現在の東京の文化もデモンストレーション効果を持っているため、全国の人が東京の文化・ライフスタイルを真似しようという意識があるが、当然新都市でも同様の効果が出てくるだろう。国民が首都中心的な垂直的な考え方をやめて水平的な思考になるようにするということが大切である。つまり、中央官庁が上で地方自治体が下とか、官が上で民が下というような垂直的な発想をやめるような都市になりたいということである。
国内各地や世界各地の情報が公平・中立的に取り上げられて、知識・技術が積極的に採用されることが非常に大切である。今の規制の下で都市をつくると世界の英知が非常に入りにくいという恐れがあるが、既存の都市でないところで新都市をつくるので、今の建築基準法の新都市への適用については修正を検討する必要があるのではないか。
最後に、これまでとかく分かりやすい物理的な問題に議論が偏りがちであったが、この文化的側面の検討は定量化しにくいという問題や主観的だという問題があるが十分な議論が必要であると考えている。

この後、以下の意見が述べられた。

・候補地を絞り込むにあたって、交通条件などの物理的なものや自然的な条件によってある程度絞り込むことができると思うが、その次の段階でどこにするかという時には、文化の問題や日本がどういう成り立ちでできたということも含めて、これからの日本のあり方の問題が関わってくるのではないか。このような問題を広く議論していくことが必要であろう。

次回の調査部会で、調査対象地域の設定に関して、部会としての意見をとりまとめることとなった。

次回第6回審議会調査部会については12月8日(月曜日)15時0分から行われることが事務局より提示された。

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