平成9年12月8日(月曜日)15時0分〜17時0分
中央合同庁舎5号館別館共用第23会議室
有馬部会長、石原部会長代理、石井(幹子)、堺屋、下河辺、溝上、野崎各委員(7名)
池淵、井田、井手、黒川、戸所、森地各専門委員(6名)
古川内閣官房副長官(事務局長)、近藤国土事務次官、久保田国土庁長官官房長、林大都市圏整備局長(事務局次長)他
調査対象地域の設定について、属地的調査の進め方について等
今回は、調査対象地域の設定、属地的調査の進め方について事務局からの説明と意見交換が行われた。
事務局からの資料説明の後、以下の意見交換が行われた。
・今回、調査対象地域として選ばれなかったところについて、このまま切り捨ててしまうのか、あるいは場合によっては再び調査対象となることもあるのか。完全に切り捨てるということにはしない方が良いと思う。
・今回選ばれなかった地域の位置づけをどうするかということは重要である。今後も首都機能移転を国民的議論としていくためにも、これらの地域を切り捨てず、今後調査対象地域に追加される余地を残しておいた方が良いと思う。
・第1タームでは主に地形の良好性などから適地を選定しているが、第2タームでは地形の多様性や植生の多様性をどう生かすことができるか、また、環境回復のために土壌的な条件などをどう生かしていくことができるかという視点も必要となる。そのような視点で見ると、今回調査対象地域とならなかった地域についても将来検討対象となることがあり得ると考えられるので、それらの地域を完全に切り捨てない方が良いと思う。
この後、各委員から具体的な地域の設定について意見が述べられた。その結果、調査対象地域の設定については、本日出された意見をもとに事務局案を修正の上、審議会に報告することとなった。また、その内容については、部会長に一任された。
事務局からの説明の後、以下のとおり意見交換が行われた。
・属地的調査を行うに当たっては、現在の社会・経済条件を前提とするのか、それとも将来の状況も考慮するのかによって調査が変わってくるのではないか。例えば、農地については将来の食料問題にも関わるので、調査項目とすべきであろう。また、農地の問題は単に食料問題だけではなく、水収支や物質循環、エネルギー循環などとも関連するため重要である。
生物的自然環境については、現在そこに樹林地が無くても、土壌や水の条件等によっては何十年後かに樹林地が復元することもある。現状のみでは評価できない面もあるので、潜在的な条件も含めて考えるべきであると思う。
・火山地を除外するという条件について、どの範囲までを火山地と考えるのか、また、火山による災害が発生する時間スケールと都市をつくるときの時間スケールの違いをどのように考えるか。これらの点を詳細調査の際には検討する必要がある。
また、国土構造に与える影響について言えば、現在は東京を中心として大阪や九州、北海道があり、これらは人文的な面でみるとほぼ分断されている状況である。もし東の方、あるいは西の方に新都市が立地した場合には、過去の歴史から見て国土構造にどのような影響を与えるのかということに関しては、それぞれシミュレーションが必要になるのではないか。
・コストの問題が2つあり、新都市を建設するコストと運営するコストである。前者は1次的なコストで、後者は永久的なコストだということを踏まえ、それぞれのコストを10年後、20年後、30年後くらいまで、新都市の立地場所によるネットワークの変更なども含めた、いろいろなパターンで試算できないだろうか。
・土地取得の容易性の評価の中で、土地取得のためのコストについても検討すべきではないか。例えば、ブラジルは広大な国でありながら、ブラジリア建設の際には最後まで私有地の買収がネックになり、現在でも未買収地が残っていると聞いたことがある。日本の場合、特に土地に対する執着が強いという国民性があるので、それぞれの場所で私有地を取得するために必要なコストについて検討することも重要である。
・火山に関しては、全ての火山を検討対象とするのではなく、主に活火山を対象とするべきであろう。活火山の周りでどのような災害が発生するかは、火山の活動量や地形、風向きなどのいろいろな条件によって異なる。そのようなことを考慮しながら個々に判断していくべきである。
・首都機能移転によって地元にかかる様々な制約について、どこかの段階で地元に示して合意を得なくてはならないだろう。例えば新しい土地制度や開発地の周辺部の保全などのために、制約を伴う施策も必要となるだろう。
・新しい国会都市がつくられるとなると、いろいろな機能がその地域に分散してつくられるだろう。そうなると、住民にとって歓迎すべき施設が来る自治体とそうでない自治体が分かれる可能性もある。それに対して異議が出されたら全体としての都市ができなくなってしまう。そのためにも地元全体の理解を得るための努力が政府と関係者に必要になるだろう。
・災害に対する安全性や水供給の安定性については、現行の整備基準とするのか、新たな基準を設けるのかによって評価結果が異なってくる。その点をどうするか検討が必要である。
・東京から新都市に首都機能を移した当初は、東京と新都市の連携が必要であると思うが、それはどの位の期間必要であるのか。また、いずれ新都市が自立型の都市となったときに、東京以外の各都市とこれまでとは違った意味の連携を持つようになっていくということについても考えていかなくてはならない。
・災害に対する安全性について、広い範囲での地震災害を前提に考えると、広域交通網が断たれることにより東京との連携が危機にさらされるという事態も想定される。東京との同時被災を避けるという条件を拡大して考えると、都市間の交通システムと巨大地震の関係についても考えていかなくてはならないだろう。
・今後の調査に当たっては、1点目としては東京への連携度もしくは従属度という観点から、東京への絶対距離、時間距離、鉄道距離や東京経由となるか他のネットワークがあるかといった検討は重要である。また、人口移動、情報、交通頻度、荷物輸送、放送圏などからみた東京文化への依存度の検討も必要である。
2点目としては、逆に全国的均衡度という観点から、人口重心との距離、交通通信ネットワーク、文化的中立性、気象条件などから見た中立性も検討が必要であろう。
さらに3点目として、開発発展可能性という観点からは、土地の問題、水資源の問題、全国に与える開発の影響について、10〜20年後くらいまで考える必要があろう。また、未来交通網がどのように整備されるかも検討が必要である。
以上の尺度において、地域内で明確な差がある地域は、同一地域内でさらに細かい立地地域設定を行い、それぞれ個別に評価を行う必要がある。
また、各尺度は可能な限り客観的に計測し、客観的評価を行うこととし、首都機能所在地としての適・不適の評価は別途行うべきであろう。