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第7回国会等移転審議会調査部会議事要旨

1.日時

平成10年3月20日(金曜日)10時0分〜12時0分

2.場所

東條会館やよいの間

3.出席者

(審議会委員)

有馬部会長、石原部会長代理、石井(威望)、石井(幹子)、堺屋、下河辺、中村(英夫)、溝上各委員(8名)

(専門委員)

井田、井手、片山、黒川、鈴木、戸所各専門委員(6名)

古川内閣官房副長官(事務局長)、竹島内閣内政審議室長、近藤国土事務次官、久保田国土庁長官官房長、
林大都市圏整備局長(事務局次長)他

4.議題

第2タームにおける調査の進め方について、新都市像に関する検討について等

5.議事の要旨

今回は、第2タームにおける調査の進め方について事務局からの説明と意見交換が行われた後、新都市像の検討について石井幹子委員と事務局からの説明と、意見交換が行われた。

(1)第2タームにおける調査の進め方について

事務局からの資料説明の後、以下の意見交換が行われた。

・現在の環境アセスメント制度では、計画が決定した後にアセスを行う事業アセスという形が中心になっており、その場合アセスを行う段階で計画の見直しを行うことは難しいのが現状である。国会等の移転先候補地の選定と今後の計画の策定に関しては、できるだけ早い段階で自然環境の調査を行うことが非常に重要であると思う。
EUでは、国家的な大規模プロジェクトを行う場合、政策決定に際してStrategic Environment Assessment(戦略的環境アセスメント)を導入することが合意されており、これは世界の流れでもあるので、我が国でも先駆的な一つのモデルとして、首都機能移転において早い段階から同様の検討を行うことに意味があると考えている。
また、調査対象地域は環境の面からグルーピングされているわけではないため、自然環境調査にあたっては生態学的に意味のある地域区分、例えば流域を1つの空間単位として考え、環境への負荷、あるいは環境の形成ということを考えていくという視点が必要ではないかと思う。
さらに、従来の自然環境調査では、自然度の高さや貴重な動植物など、主として現況の自然環境を非常に大事にしてきたが、今後はそれと同時に、優れた土壌であるとか植生の回復の容易さといった自然の潜在力も併せて評価していくことが、今後の環境形成上最も大事なことではないかと思っている。
具体的な評価の方向として、自然環境は定量化しにくいものではあるが、少しでもわかりやすさを求めるという意味で、定量化するものをできるだけ増やしていくことも一つの試みとして必要ではないかと考えている。また自然性が高いということだけを評価の対象とするのではなく、二次的な自然の良さというものが最近見直されているので、こういうものも含め、あるいは自然とのふれあいなど人間との関係で自然を見ていくという視点も大事ではないかと思っている。
なお、環境共生都市ということを考えると、生物的な自然との共存とのほかに、循環系の問題がある。特に物質循環、エネルギー、大気、水、リサイクルというような問題があるが、これらはそれぞれ非常に大きなテーマであり、そこまでこの調査の中で踏み込むことはできないと思うが、現在他にいろいろな研究プロジェクトが行われているので、その研究成果を参考にしながら、例えば水環境に対する環境負荷はどのようになるのかといったことを、モデルによるシミュレーションができるのではないかと考えている。

・火山災害の中でも、火砕流や泥流の類というのは非常に大きな災害を及ぼして、場合によっては新都市を全滅させる恐れがある。そのようなことを避けるためには、基本的には、噴火の場所を見ることも重要であるが、危険度は地形により判断できる。例えば、火山下流の川の流域を避けることがまず1つのポイントである。
また、火山灰は広域に影響を与えるが、火山の近傍とその東側を避けるというようなことがポイントとなる。

・地形、災害、自然は互いに密接な関係があり、中でも地形が基本となるだろう。例えば、水害、土砂災害はほとんど全て地形で決まり、例えば低地でなければ河川災害発生の恐れは少なく、津波もないということになる。調査対象地域の3地域の地形を見ることにより、災害についてもある程度大まかに判断でき、また土地造成の容易性については、起伏量、傾斜、谷密度などから客観的に判断できると思う。

・第1タームの検討において、南関東圏と1923年の関東大震災の時の震度6に相当する地域が除外されており、京との同時被災を避けるという観点については、既に第1タームで一応の方針が出ていると思う。
しかし、今後の課題としては、東京も含めて首都圏直下型の地震の切迫性が指摘されており、東京直下で起これば相当大きな被害の発生が想定されることから、被害に対応していく機能を持つことが必要である。
今後検討しなければならないのは、西南日本ではあと半世紀以内に襲ってくるであろう南海、東南海の巨大地震及びそれによって同時に引き金が引かれるであろう内陸のいくつかの直下型地震である。そのときの地震の規模は阪神・淡路大震災の20倍〜30倍という桁違いの大きさだが、その発生パターンは空間的にはかなりはっきり押さえられている。
また、大きな歪みをためて非常に大きな地震が発生する地域と、比較的少なく歪みをためて短期間に地震を繰り返す地域がある。これはかなりよく分かっている事実で、内陸に及ぼす被害の影響もそれぞれ異なる。大きな歪みをためて巨大な地震が起きる場合には、震度6、7の範囲がきわめて広くなり、その被害は阪神・淡路大震災の比ではない。しかし、震源が比較的沖合で、かつ歪みエネルギーの蓄積量の上限が比較的小さい場合は、周期が短く起こっても、被害につながる影響は比較的少ない。このようなことも視野に入れながら今後評価していくと、調査対象の3地域の違いが比較的客観的に導き出せるのではないかと考えている。
続いて、石井威望委員より、提出資料についての説明が以下の通り行われた。

・都市の立地、都市計画、情報ネットワークが相互に関係・関連してどのようになっていくかということについては、定説的なアプローチはまだないが、人間の方が急速に変わってきているという状況がある。ネット・ジェネレーションといわれるが、アメリカで1977年以降20年間に生まれたジェネレーションについていわれており、その前がいわゆるテレビ・ジェネレーションである。さらにその前はプリント・ジェネレーションであり、3つのジェネレーションがあるが、21世紀を考えると当然、情報ネットワークを使う主力はネット・ジェネレーションである。
アメリカと日本では、教育一つをとっても大きな違いがあるが、その辺の基本的な状況把握が必要であり、その中で首都機能や新都市が果たす役割を考える必要がある。古いものが余りにも多いと古い情報システムで事足りてしまい、新しいものへのシフトがなかなか起こらないが、全部新しくすると、新しいものへのシフトが加速される。従って、システムと人の問題を考えるときに、年齢別の人口構成なども影響してくるということを最初に指摘しておきたい。
2番目の問題は、最近の携帯電話一つとってもわかるように、従来の場所に固定した通信方法から、移動しながら通信するネットワークがだんだん増えていることである。アメリカでは、まだ普通の電話が増えているが、日本の場合は昨年から普通の電話が減り始めた。NTTの見通しによると、現在は6,000万台くらいであるのが今年は130万台減るということである。携帯電話、PHSなどの移動体通信が現在は4,000万台で、昨年1年間に1,000万台増えているので、今年は5,000万台になるかもしれない。
このような変化を踏まえた新しい都市構造を考えるための実験はまだなされていないが、新しい状況が愛知万博で見られるのではないかという予測がある。それ以前の万博とは異なり、ネット・ジェネレーションが集まることになるので、変化が予想される。一番わかりやすい例はパビリオンの前の行列で、それがなくなるのではないかと予測している。つまり、並ばずに電話予約すればいいわけで、今でも新しい病院はそのようにしている。そうなると、待っている時間というのは全て物販とか、レストランとか、ほかのパビリオンを見に行くという行動になり、実質的に入場者数が増えたのと同じことになる。愛知万博ではモバイルの影響として、このようにアクティビティーが上がるということが予想される。
長野オリンピックでは、既にカーナビの影響が出ている。ここでは詳しく述べないが、オリンピック会場周辺地域でアクセスしているときにカーナビの使用による影響がいろいろとあった。
また、長野オリンピックではネット・ジェネレーションが相当大きなウェイトを占めていた。96年のアトランタオリンピックの時に、インターネットのホームページがオリンピックとして初めてできたが、そのときは1億8,000万件のアクセスがあった。長野オリンピックでは6億5,000万件のアクセスがあり、アトランタオリンピックの時の3倍以上に増えている。6億5,000万件の中でおそらく日本人の比率が非常に多いと思われるので、日本人だけを見るとアクセス数の増加は3倍どころではなく、5倍かあるいは1桁増えているかもしれない。
3番目は、セキュリティーの問題で、アメリカでは昨年秋に大統領諮問委員会の報告が出されているが、今年に入って2月、3月に大変なシステムトラブルが発生している。例えば、マイクロソフトのホームページが3月のはじめに全くアクセスできなくなるという事件があった。したがって、都市のアクティビティーを考える上でセキュリティーが重要である。一方で、これは電子商取引や電子マネーと同じ技術で、セキュリティーが強いと産業アクティビティーがそこで発生する。また、ネットワークのセキュリティーを考えるときには、地域の中だけではなく、世界全体が関係してくる。
今後具体的に各調査対象地域で情報面を検討していくと、それぞれの地域の中で産業構造が異なり、優劣もある。ある地域は輸送関係が強いとか、またある地域は情報関連の部品が強いといった特徴があるが、そのような特徴を踏まえて調査を進めて行くべきであろう。
それから、教育や人材育成という面では、インターネットの小学校への普及ということを考えると、アメリカでは大体2000年くらいに全部導入されるが、日本は2003年くらいの見込みであり、多少差がある。パソコンなどは日本は7年遅れている。
また、インターネットの回線では、日本が128kbpsというスピードを考えているが、アメリカの小学校は1.5Mbpsで、クオリティーとしては2桁くらい違う。そのようなことも考えると、新都市に世界トップレベルの情報ネットワークのインフラができたときに、産業のアクティビティーなり人材育成なりが一つのモデル的な牽引力になって、日本国内だけではなくてアジア地域、さらに世界全体に大きなインパクトを与える存在になるのではないかと思う。

続いて、堺屋委員から、提出資料についての説明が以下の通り行われた。

・私の提案は、首都機能移転先の位置と首都機能都市の形状による文化的心理的影響を見定めておかなければならないということである。
1点目として、首都機能の移転は、長期的には日本全国の交通、情報、流通を東京一極集中の放射軸型からネットワーク型に変えることになるだろう。このことを確認するために、交通、移住、マス情報発信、個情報交流(電話、郵便等)などの状況を国際的に比較する調査をする必要がある。
2点目として、「首都機能の位置と交通情報網」であるが、首都機能の位置によって東京経由型かネットワーク型になるのかが決まり、未来の国土形成を決定的に変えると思う。長野オリンピックでは、新幹線ができたこともあり、ほとんどの人が東京経由で長野へ行き、特に名古屋の人の9割が東京経由で行ったそうである。元来、長野は中部と関東の間と思われていたが、完全に東京の経由地となった。
地震に関しても、一番問題なのは一地点が破壊されたときに、全国とのネットワークが切れることで、東京経由型にするか、ネットワーク型にするかということは、非常に重要かつ緊急の問題だと思っている。
長期的に見て、首都機能の移転によりどのような交通ネットワーク、情報ネットワークが生まれるか、東京経由以外の新幹線、鉄道、道路、海空路、マス情報、クリエイティブ情報等がどのように形成されるか、20年くらいは予想の範囲なので、どのくらいのネットワーク化が可能であるかということを把握しておく必要がある。
そして、東京以外の情報受信感度はどの程度かということは、情報的公正性の維持の意味できわめて重要なポイントである。現在、東京のマスコミは東京情報に埋没する傾向があるが、そのためにいろいろな問題を生んでいる。東京圏、東京周辺圏、東京経由圏、ネットワーク圏、遠隔地、孤立地のいずれになるのかで、全国民的感覚を取り入れることができるような状況となるかを把握しておく必要がある。
3点目としては、「首都機能の位置と文化的方向性」の問題で、首都機能の位置によって日本の未来文化にどのような影響を与えるかということも調査しておく必要があるだろう。すなわち、気象、風光による文化的方向性、地域の歴史や政府依存度の伝統と文化的方向性、地域と住民混合度、言語混合度、全国平均的な文化性と文化的方向性という観点である。
4点目としては、「首都機能の位置と日本のイメージ」の問題である。首都機能の位置によって日本及び日本政府のイメージはかなり違ったものになる可能性がある。首都機能が、ある位置に移ったとき、日本は変わったと思われるか、余り変わっていないと思われるか、変わらないだろうと思われるかということである。いわば、ベルサイユ型の都市では余り変わったというイメージが無いという感じがし、遠隔地に行くと非常に変わったというイメージになるだろう。
官僚主導型に見えるか民主導型に見えるかということや、中央集中型に見えるか地方分権型に見えるかということについても首都機能の位置と形状の両面から考える必要がある。
さらに、明るい国に見えるか暗い国に見えるか、政府は大きくなるように見えるか小さくなるように見えるか、政治は良くなるように見えるか悪くなるように見えるか、このようなことはかなり主観的なものが入るかもしれないが、考えておく必要があるように思う。
5点目として、「首都機能所在地の機能集中と文化的影響」であるが、首都機能所在地の機能集中度によって、日本の文化や国の性格は大きく変わると思われる。例えば、鎌倉時代、室町時代のように首都機能所在地に機能が集中していなかった時代と、江戸時代や奈良時代のように機能が集中していた時代では大きな違いがある。
首都機能の一部または支援・下部機構の一部を分離するときに、どのような方法があり得るのかということに関して、ドイツ、アメリカ、南アフリカ、イギリス等の例があり、日本の歴史上の経験でも鎌倉幕府当時のような経験もある。各機能の間の関係、人間的、情報的交流度合い、分割によるメリットとデメリットを情報公正性の観点や開発振興性の観点、防災安全性の観点などから検討することが必要である。
そして、「首都機能所在地の『その他機能』との関係」については、首都機能をコアとして様々な機能の輪ができると思うが、両者をどこまで併設するかによって、国家の文化性にどのような変化が起こるかを予測する。例えば、国際機関をどの程度誘致するか、手形交換所、各種取引所はどうするか、政府系金融機関本店はどうするか、大学、科学研究所、出版社、取次店、放送キー局、業界団体などは東京に集中しようと努力しているものであるが、これらが首都機能移転に当たってどの程度まで移転するのか、あるいは新都市への移転を禁止するのか、それによって大きな変化が現れると思う。
6点目として、「首都機能所在地の規模形状と文化的影響」であるが、首都機能所在地の規模と形状は、日本の文化と日本人の心理に重大かつ深刻な影響を与えるであろう。首都機能所在地の規模(人口、面積、来訪者数)が重要であると思うが、これらと未来の文化に対する影響について、諸外国や歴史の事例などから研究、シミュレーションができると思う。
そして、「首都機能所在地の形状と未来の文化に対する影響」については、地形、気象、街並み、空き地率、人口密度、建物の高さ(大きさ)、通勤距離及びその方法などによってライフスタイルが決定し、大きな違いが生まれるであろうと思う。
最後に、7点目として、「首都機能所在地のライフスタイルと日本の文化的方向」についてであるが、この両者は重要な関係がある。
首都機能所在地は強い情報発信力を持たざるを得ないと思うが、ここでのライフスタイルは日本全国のライフスタイルに影響を与え、文化的な影響は小さくはない。そのために、「家族のあり方」として単身赴任、核家族、3世代家族ということが検討対象となる。
また、「住居と地域コミュニティーのあり方」として、高層型か戸建型か、大型店舗主義か商店街か、通学区域か私立学校か、地区祭りかシティーイベントかということが大きな違いとなる。
次に、「呼びつけ型と出張型」で、首都機能の仕事の仕方が人を呼びつけるのか、役人が出張して仕事をするのかということによっても大きく違う。今の東京は呼びつけ型になっているが、新都市でもそれを継続するのかどうか。さらに、それによるライフスタイルの違いも重要で、出張の多いライフスタイルと客の多いライフスタイルの違いである。
そして、「終身雇用か期限雇用か」ということも関係ある。新都市には公務員のみならず、各種サービス機関もあり、地元に定着する型の終身雇用か、全国ネットの一環としてこれを行うのかも重要な問題である。
それから「引退後居住の多少」については、ふるさとへ帰る全国分散型では、首都機能にいた者が全国に分散することによりいろいろな影響がある。そして功労型というのは、功成り名を遂げた人は東京でゆっくりと余生を送るという形である。あるいは、市内及び近隣に定住するのか、そういうことによって人口の累積が変わってきて、都市と人との関係が変わってくる。キャンベラ型、オタワ型、ワシントン型、ボン型などいろいろとあるが、どのような形を選ぶかが重要である。
これまで述べたようなことを調査して、各地域における特徴を出してみることにより、どういうスタイルが好ましいか判断する尺度になるだろう。

引き続き、下河辺委員より提出資料の説明が以下の通り行われた。

・私は、首都機能移転先候補地は4地域(北東地域、中央地域、関西地域、地方地域)に分けて考えられると思っている。北東地域と中央地域は調査対象地域として設定されているが、関西地域というのを考えたのは、調査対象地域となっている三重・畿央地域は、名古屋関連と関西関連という重複した性質を持っていて、もし大阪中心の方が日本列島の中心性が高いということになると、三重・畿央地域は関西との関係が出てきて、そうなると関西としてはこのほかにも和歌山県や兵庫県にも候補地が出てくることが考えられ、関西地域も検討対象となるのではないかということで取り上げた。
それから、地方地域というのは北海道、九州、日本海地域などが該当し、まだこれらの地域を検討してはどうかという少数意見も出ているので取り上げている。
北東地域についての考え方であるが、これは東京・仙台を結ぶ1本のルート上で構想を練ろうというものであり、この帯状の地域の中でどこが適地か、どのようにレイアウトするかということはこれからの作業であると思っている。現時点ではどこへ、どのようにということが言える段階ではないと思うが、北東地域の特性としては、仙台がどのような国際都市になるかということが大きなテーマである。また、東日本国土軸との関係がどうなるかということもテーマであり、その成熟と新都市の立地を選ぶということとは無縁ではない。
ところで、東京60km圏の現在の首都機能をどう見るかというときに、皇居と離宮が非常に大きな役割を果たすとともに、国会、裁判所、首相官邸、中央省庁とその関連施設として文化施設やホテル、サポートのための基地として立川、市ヶ谷、横田、ウォーターフロント、その他の基地が60km圏内に分散している必要がある。中でも大宮が非常に重要性を持ってきていて、北東地域を考えるときには大宮の基地がどのような役割を果たすかということが重要である。
そして、具体的レイアウトとして、埼玉・栃木あたりに公共的な情報の受発信の基地をつくる必要があるのではないかと考えている。また、NHK、NTT、KDDが受発信機能のリダンダンシーをどう持つかということは緊急性を要する問題と思う。
空港については、大震災の時に米軍基地を日本の政府が使えるようにしておくということも重要であり、また成田や羽田やその他の空港について検討するだけでなく、災害時には海からの救援が重要で、そのためにいろいろな港湾を準備していかなければならない。
それから、情報ネットワークについては、どのようにネットワーク化しておくかが問題である。そういう意味で、北東地域の役割というのは、東京の地震との関係で緊急性を要するということと結びつけて考えるということに特色があるのではないかと考えている。地震対策は財政事情に関わらず直ちに着工しなければいけない事態にあると考えている。首相官邸の改築などももっと急がなくてはならないし、全体のネットワーク化も急がなければならないし、国会が開催されないという事態は避けなければならず、第2国会で緊急臨時に国会が開ける体制も取らなくてはならない。また、東京自体が自ら災害を受けて首都機能が止まると大変なことになる。それは東京都が大変だというだけでは済まされず、全国、アジア、世界にまでその影響が及んで、特に情報が途絶するということが政治・経済・学校の全てに強烈なダメージを与えるということで、これを急ぐべきだというのが私の結論である。
東京はこれまで大震災や戦災などによって改造されてきたが、次の地震にどう対処するかということをもっと議論する必要がある。北東地方においては地震に対するリダンダンシーの観点から緊急性があり、直ちに着工した方が良いという考えだが、それが日本の未来の首都機能とドッキングするかしないかというところは問題を残している。緊急性がある問題に対応することを優先すべきだというのが私の考え方である。
次に中央地域について述べると、まずは人口重心ということがあり、それを支える交通軸、国土軸などが重要になると考えている。すなわち単に地理的な人口重心ということだけではなく、具体的に人々の動きの中心になるような施策が必要である。この地域においては名古屋の存在が大きな意味を持ち、名古屋が世界的な都市として国際化するのと併せて近郊周辺地域に首都機能を持つというビジョンがあり得るだろう。新都市に全ての国際機能を持っていくのは無理であろうし、時間がかかりすぎるということもあるので、既存の巨大都市を利用することは大きな意味があるため、名古屋100km圏内に新都市の敷地を求めるという提案である。
文化的首都というのは極めて歴史的な意味を持っていて、資料に示したようにいくつかの文化的な問題に取り組まなければならないが、都のイメージということで言うと、日本の歴史の中に中京都をつくるということもあり得るのではないか。その場合、全国、世界とのアクセスのプログラムの検討や、東京、大阪との関係をどうするかということや、愛知万博が人間居住環境ということで人間と自然との関係を訴えかけているように、もし必要なら将来の日本の首都機能と自然の関係論を考えてみてはどうかと思う。
そのようなことから言うと、首都機能移転は日本の百年の大計であり、目標は500年後という考え方が必要であり、北東ルートのように地震の際のリダンダンシーのためという緊急の話とは違って、日本の500年後の理想像を追求する議論をした方が良いのではないか。
江戸というのは太田道灌から始まり、500年を経て家康が入って幕府ができ、江戸が日本の中心となり、1868年に明治維新で東京となるまで、長い歴史の中で日本の首都となってきたので、この歴史の重さというのは、単にどこかに団地をつくればよいというような話とは違う。
このようなことを3年ほどかけて検討しその後地元との調整を行うために相当時間を要し、現実的に着工するとなると財政再建が終わった後となる。しかも、500年後を想定して100年間かけて工事するという考え方が必要であろう。

この後、以下の通り意見交換が行われた。

・下河辺委員の発言の趣旨は、北東地域の緊急ルート建設と中央地域の長期建設を平行して行うということか。

・これらの検討は平行して行わなくてはならないと考えている。ただ、いずれを選ぶのかということやどのようなプログラムにするのかということはここでの議論ではないと思う。

・首都機能移転のための議論を3年くらいかけてゆっくり検討するという話があったが、審議会としては来年秋に答申を出す予定であるが、その点についてはどのように考えているのか。

・例えば、国会議事堂ひとつとってみても、北東地域のものは緊急性もあるし、仮設型とまでいかなくとも本格的なものではなくて間に合わせなくてはいけないし、中央地域のものは世界に冠たるものをつくってほしい。中央地域の場合は、どのようなものにするかということを考えると、半年でできるような簡単なものではない。このように首都機能移転の検討には時間を要すると思っている。

・災害対策の緊急性という問題は大変重要ではあるが、それだけで北東地域が良いとか、また長期的に見ると中央地域が良いと決められるかどうか問題だ。また、緊急性の問題と首都機能移転を関係付けるのが適切かどうか疑問がある。緊急時のための施設というのは職員が張り付いて動いていないといざというときに役に立たない。したがって、国会等の移転と関連付けて緊急問題を考えるのが良いのか、それとも緊急対策は既存の職員がいるところを選んで、首都機能移転問題とは別に検討するということも考えられるのではないか。

・私が大宮を非常に重視しているのは、大宮の行政拠点というのは、現在は支分局を建築することとなっているが、地震対応でそのスペースをどうリザーブするかということが非常に重要であると思う。
そして、国会が決議しない限り、政府が仕事できないという構造はしばらく変わらないであろうから、非常時であっても何が何でも国会を開かなくてはならない。もし関東に地震による大きな被害が発生したとき、その日に国会を開くことは、国会議事堂が無事であっても交通上の問題でできないかもしれないということまで考えて、その日に国会を開催できることを保証するためにはどうしたらよいかということは重要な案件であると思っている。
このようなことから、地震のリダンダンシーを考えると、東海ルートや新潟ルートよりも東北ルートが一番良いのではないかと思っている。

・このような議論はむしろ審議会で行うのがよいと思う。
また、第2タームの調査にあたっては、その後に行われる東京との比較考量ができるような形で実施していく必要があるのではないかと思う。特に首都機能が移転したときに東京がどのように良くなるのかということについて調査が必要である。
文化面に関しては、例えば関西エリアのように確固たる文化を持っているところでは、新しいものが来るとそれに対する反発力が発生する。首都機能がそのような伝統的なところへ行ったときの反応や混乱についても検討が必要ではないか。
また、首都機能移転による社会構造や国土構造の変化に関して、これと連動して人々のメンタルマップがどう変わってくるのかということも考えなくてはならない。先ほど、名古屋から長野のルートが東京経由になったという話があったが、これは細かく検討してみると、JRなどの宣伝のためで、実際には在来線で東京を経由しないで行けるはずである。このように国民の頭の中の地図がどう変化するかということも検討する必要があるのではないか。

・日本にはいくつかの文化圏があって、人々はそれぞれ違った育ち方をしている。比較的わかりやすいのは、モデル地域として世論調査や商品の販売が行われるような地域で、比較的新しいものが入りやすい地域である。そういう地域は、文化の許容性の高い地域、混合性の高い地域と言える。
また、メンタルマップについては、今は東京一極集中のメンタルマップができているが、それが大きく変わると思う。例えば東京を離れると国家公務員は十分な情報を得られないのではないかという議論さえあるくらい東京一極集中マインドができているので、これが変われば全国的に情報公正性が生まれるという観点では、首都機能移転は優れた効果があると思う。
問題なのは、災害発生時にネットワークが分断されるが、そういう場合でも全国的なつながりが変わらないということも、マインドの上で非常に重要だと思う。そのようなことも含めて、首都機能の位置と文化の方向性ということを検討していきたい。
この後、環境に関しては井手専門委員を中心とするワーキンググループを設置し、検討を進めていくことが部会長から提案され、了承された。

(2)新都市像に関する検討について

事務局および石井幹子委員から新都市像に係るテーマ及びイメージ図の説明があり、意見は各委員が別途事務局へ連絡することとなった。
また、第11回審議会に新都市像を報告することとされた。

次回第10回審議会・第8回調査部会合同会議については4月21日(火曜日)9時45分から、第11回審議会・第9回調査部会合同会議については4月22日(水曜日)10時0分から、第12回審議会・第10回調査部会合同会議については5月25日(月曜日)15時0分から行い、このうち地方公共団体のヒアリングについては記者の取材などを可とすることが事務局より提案され、了承された。

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