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第11回国会等移転審議会調査部会議事要旨

1.日時

平成10年12月7日(月曜日)9時30分〜11時30分

2.場所

共用第23会議室

3.出席者

(審議会委員)

森会長、石原部会長、野崎部会長代理、石井(威望)、下河辺、中村(英夫)各委員(6名)

(専門委員)

池淵、井田、井手、金本、黒川、鈴木、戸所各委員(7名)

谷川政務次官、古川内閣官房副長官(事務局長)、近藤国土事務次官、板倉大都市圏整備局長(事務局次長)他

4.議題

国土政務次官挨拶、現地調査のとりまとめ、公聴会の開催、東京一極集中是正の効果に係る検討、情報ネットワークに係る検討について

5.議事の要旨

今回は、最初に国土政務次官から挨拶が行われ、その後、現地調査のとりまとめ、公聴会の開催についての事務局説明が行われた。続いて、東京一極集中是正の効果に係る検討について金本専門委員からの説明と意見交換、情報ネットワークに係る検討について石井威望委員からの説明と意見交換が行われた。

(1)国土政務次官挨拶

9、10月には各調査地域まで御足労の上、調査いただきありがとうございます。

首都機能移転は21世紀を展望した極めて重要な課題であります。候補地の選定に向けた調査、審議を精力的に進めているところであります。今後とも引き続き地域ごとの詳細な調査、公聴会の開催等を進められ、所期の成果を得られるようお願い申し上げます。

私も事務局を督励し、審議会の活動に積極的し、また国民的な合意形成に促進に努め、首都機能移転の実現に向けて、積極的な検討を行ってまいる所存でございますので、今後とも御指導賜りますようお願い申し上げます。

(2)現地調査とりまとめ等について

最初に9〜10月に行われた現地調査とりまとめについて事務局から説明が行われた。次に公聴会の開催について、1月から6月まで全部で9回行われる予定で行われることが説明された。次に当面のスケジュールとして、各分野ごとの詳細な調査の検討が進められていくことが説明された。

(3)東京一極集中是正の効果について

東京一極是正の効果に係る検討について、金本専門委員から以下の報告が行われた。

首都機能移転が一極集中にどういう影響をもたらすかということに関して、企業に対して大規模なアンケート調査を行って、企業立地にどのような意見をもっているかまとめた。もう1つは、首都機能移転によって東京圏の人口がどれくらい減るか、試算の1つを報告する。

首都機能移転が企業の立地パターンに及ぼす影響については、東京圏の立地ポテンシャルが若干低くなると思われるという答えがかなりある。北東、東海、三重・畿央の3地域に首都機能が移転した場合は、宮城県地方の立地ポテンシャルは、北東地域に移転すると高まり、中央地域に移転すると下がるという意見が多い。基本的に各地域同じようなパターンで、自分の地域に近いところに移転すれば、立地ポテンシャルは上がるが、そうでないと下がるというパターンが見える。

首都機能移転が東京に与える影響については、東京の魅力がなくなるという意見は少なく、マイナス面が緩和され、東京の魅力が増すという意見がかなり多い。

首都機能移転が日本経済に与える影響については、内需拡大の契機、地方経済の発展の契機という意見が多く、日本経済全体に対してマイナスという意見はあまり多くない。

移転先の都市にどの程度の企業が活動を移すと考えているかということについては、3分の2の企業が新都市には移転しないと答えている。

周辺都市等に支社をつくる等の企業が3分の1程度ある。移転先の地域によって、若干差があり、東海地域、三重・幾央地域については、大都市の支店、支社の増強という回答が若干多い。企業別に分けると、中小企業は移転先に移さないというパターンが多いが、5,000人以上の大企業の場合、何らかの変化を予想している。

移転先に立地する本社・支社等の活動目的については、移転先住民が増えることによるマーケット対応が多く、国会、中央省庁との折衝等がある程度あるということになっている。

移転先へどの程度職員を配置するかということについては、大規模な組織をつくるということは余りないと見受けられる。

まとめると、東京の立地ポテンシャルは、若干下がるが、大きくは下がらない。北東及び東海地域に移転した場合、東京の立地ポテンシャルは現在と同程度で、三重・幾央地域に移転した場合、それより大きく下がる。これは東京の近くに大都市があると、その大都市のポテンシャルが高まり、その結果として、相対的に東京のポテンシャルが落ちるということが一つある。もう一つは、3大都市圏の中で東京に近い場所に移転した場合には、東京のポテンシャルはさほど落ちないと思われる。

日本経済全体に関しては、総じてプラスの影響を見込んでいるものが多く、新都市での企業活動については、大規模なものは想定していないと思われる。

アンケート調査とは別に、首都機能移転により東京の人口がどの程度減少するかをいくつかのアプローチで試算している。この試算は、首都機能移転に関し過去において利用できるデータが無く、また現在、首都機能が東京という非常に特殊な場所にあり、都市としてのサンプルも一つだけであり、信頼性の高い推計をすることは必ずしも容易ではないが、今回は、いろいろな工夫をし、試算した。

例えば東京の生産性は、他の地域に比べて高く、それが東京の高い生活コストを相殺して、人口を集めているということがある。この都市の生産性がどう決まってくるかという関係を推定することによって、東京が首都機能によってどの程度生産性を上昇させているかを推定する。その推計結果から首都機能の一部を移転することによって、どの程度生産性が落ち、その結果どの程度東京から人口が減少するかという試算を行った。具体的には、都市圏の総生産が事業者数、民間資本ストック、社会資本ストック等に依存するが、この中に東京に首都機能があるというダミー変数を入れ、総生産の大きさをベースに東京ダミー変数が小さくなる効果を推定している。119の都市圏の15年間の時系列データを使っているが、最後に人口に割り戻すという計算をして、どの程度人口が減るかという計算をしている。

第1段階の10年間では東京の人口が数十万人弱少なくなるという結果になっている。

いろいろなアプローチで、いろいろな結果が出るので、あくまで参考のための試算と理解してもらいたい。基本的には、東京の人口は減るということは多分間違いない。もう一つ重要なのはどこに移転するとどの程度減少するかであるが、北東地域に移転する場合よりも大阪に近い三重・幾央地域に移転する場合の方が東京の立地ポテンシャルの下がり方がやや大きいという傾向が見える。したがって、東京の人口減少だけ見ると、北東に移転した場合は減少が一番小さい。北東地域に移転すると三大都市圏の中で東京が比較的有利という状況は変わらないが、三大都市圏全体では小さくなり、他の地域に移転した場合には三大都市圏全体が膨らむということも想定できるだろう。

・首都機能移転で特に影響を受ける業種というのはあるのか。

→業種によって違いはあるようだが、そのような集計の詳細をすぐに報告することは出来ない。

・一極集中に伴うマイナス面が緩和され、東京の魅力が増すとのことであるが、マイナス面とは具体的にどういうことなのか。

→アンケートの回答者がどう考えたのかについては、データがあるわけではないが、オフィスの賃料の高さ、交通の渋滞等が緩和されるという見方で良いと思う。

・一極集中のことを考えると、西の方が効果的であると言われたのか。

→立地ポテンシャルから検討すると、そのような結果になる。

・全般的に国民の世論調査とほぼ似たような結果が出てきているが、企業の行動パターンとして微妙な差が地域によって出ている。本社や支社の立地については、大阪で創業した企業が東京一極集中化に伴って東京に本社を持ってきている場合がある。東京本社は全国的にバランスを考えて支店展開を行っているが、関西系の企業は東京本社が東の方を管轄し、西の方は名古屋支社、大阪支社、あるいは九州支社が管轄している。北東地域に移転したときの方が新都市への支社移転が相対的に多い。東海地域、三重・幾央地域の場合、関西系の企業であるなら、既に支社が整備されている。

企業の営業展開、支社立地がどうなっているか、どういう意思決定パターンになっているか、このような国土構造の関係で考えていかないと、必ずしもどちらの方に多くの影響があるかはわからないのではないか。

→全体としてみれば、それほど3地域の差はないと解釈している。

・首都機能移転は、国政の改革、規制緩和と関連しているが、そのあたりは検討されたのか。

→ここでは、現行システムとそれほど変わらないという前提の下に試算した。

・人口の増減というのは定住人口のことではないかと思うが、東京圏というのは首都機能の移転の有無に関わらず人口減少期に入ったと見られる。むしろ、東京を訪れる人の数の方が問題なのではないか。

2つ目は、現在の経済の状況で、企業のリストラ、再編成、倒産というのが深刻であると思われる。首都機能移転より我が社の本社をどうするかということの方が関心事であると思う。したがって、首都機能移転よりも東京の本社移転の方が急ピッチで進むのではないかと思うが、どのように考えるのか。

→この計算は高齢化、少子化で東京の人口が減っていく時期を想定して、それに加え首都機能移転があるという前提で計算をしている。東京の訪問者数については過去のデータ等で理屈付けができるか難しいところであり、なかなか成果が出るものではない。本社ビルについてであるが、今のところ、本社ビルを売却している例はあるが、本社を東京から移したという例はほとんどない。日本の過去の都市パターンから判断すると、東京一極集中は分散化に向かわないであろう。もう一つは東京の中で事務所、あるいは雇用が中心部に集中する傾向が続いている。これは世界的に珍しく、他の国では都市の雇用は郊外化している。今のところ、これを分析、あるいは予測できるような明確なパターンがでているとは思えない。

(4)情報ネットワークに係る検討について

情報ネットワークに係る検討について、石井威望委員から以下の報告が行われた。

まずネットジェネレーションというキーワードから入っていきたい。よく第3の波と言われている。第1は農業化、第2は工業化、第3は情報化である。21世紀には第3の波が確実に来るだろう。第3の波で社会が変わる最大のポイントはネット・ジェネレーションである。ネット・ジェネレーションは、生まれながらにして育っていく過程で電子的な環境がある世代である。

日米の比較でいうと、アメリカはデスクトップが中心であり、一方でCATVが非常に普及しており、有線系のインフラが強い。4割以上の家庭に入っている。インターネットは通信料を含めて月額20ドル以下である。ネット・ジェネレーションと言われる1977年以降の生まれの人が人口比率で30%と、一番大きな世代となっている。

日本の場合はモバイル型と名付けているが、携帯電話のような移動体通信の普及率、つまり人口対比で世界トップであり、アメリカの2倍である。これも、ここ2〜3年、年間1000万台というオーダーで伸びており、現在4千数百台である。モバイルで動き出すと、手でキーボードを操作するより音声入力が問題になる。イヤホンマイクというものがあり、マイクと一体となったもので骨伝導によって音が入力される。音声入力も昨年の夏の時点では、スピードが遅かったが、一年たって、キーボード入力の2倍くらいになった。来年はおそらく4倍くらいになるのではないか。

モバイルを違う言葉で言うと、ネットワークがフットワークと一緒になりはじめたことである。日本の9割を占める中小企業は、大部分がモバイルで、携帯電話あるいは将来の音声入力を含めた動きをしながら、仕事を行わざるを得ない。モバイルならではという新しい可能性と必然性が出てきている。ウェアラブルというキーワードが今年の中頃から強くなってきた。これは目の前の小型の片眼鏡のようなものがディスプレイとして体に装着されている。いつも通信機能が体に付いているのは、拘束されているという拒否反応があるが、ネット・ジェネレーションではそれが当たり前である。結局ウェアラブルは服装まで変える。工業化になったとき和服から洋服に変わった。我々が着ているのは工業化社会のウェアである。

ネット・ジェネレーションをどのように将来の計画に取り込んでいくかは難しい問題である。慶応義塾大学の湘南藤沢キャンパス(SFC)では、徹底的な情報リテラシーの教育が行われている。私自身そこの教官であるが、95年の東大の学生と比較をしてみた。

コンピューターを使っていれば、人と会うのは少なくなるだろうと思われているが、何倍にも増えている。

また、インターネットばかりで本を全然読まなくなると思ったら、実際は逆で、活字を東大生の3倍読んでいる。文章を手で書くというのは意外であった。

テレビやラジオも同様で、東大生はテレビをよく見て、ゲームも良くするが、SFCの学生の方がテレビを見る時間はやや少なく、ラジオはやや多いという傾向が出ている。その他全ての情報行動の時間を合計すると、SFCと東大の学生で、1,100分対460分となり、2倍以上となっている。ただ、母集団が非常に少ないということはあるが、トレンドとしては間違いないであろう。このようなことを手がかりにしながら、新都市のいろいろな条件を考えていくことになると思う。

若者以外の例としては、高知県の中芸介護公社というものがある。ここでは、中高年のヘルパーがモバイル端末を片手に活躍している。18名中2名を除いて全て女性で、平均年齢37歳である。このような人達が、5町村の15,000haという非常に広い地域で、高齢化先進県の高知県で最大の産業を支えている。彼女たちが、この4月から携帯端末、電子手帳のようなものを持って、ベッドサイドで看護にあったっている。

調べてみて面白かったことは、一昨年からいろいろな端末の改良を行って、彼女たちがそれを現場で使いこなしている。要するに、草の根でモバイルを使いこなしていけるということを、鉄道も来ていないような所の人達が現に行っている。したがって、我が国には、こういうポテンシャルが非常にある。新しいサービスとして、「あったかコール」というものを考えだし、患者から喜ばれている。効率がおよそ2倍になり、そのため、風呂に入れる回数が2倍になったり、ヘルパーの訪問が2倍になったりして、大変喜ばれている。

我が国全体がネット・ジェネレーションになっていくときの行動様式の共通点としては、1つは、複数のことを並行処理するということがあり、ネフットワークというようにネットワークもフットワークも同時に行うということで、従来のように1つだけ行うということではない。もう1つは、複合目的で、はっきり決まってはいないが、何となく目的を探しながら行動するということが非常に注目されている。したがって、遊んでいるのか仕事をしているのかわからないが、しかし本人は楽しいということを盛んに行うジェネレーションである。

このようなことによって、新都市にどのような情報インフラの問題が出てくるかというと、1つは、概念が変わるということがある。現在の情報技術革新の猛烈な勢いで、大体インターネットは3.4ヶ月で2倍になっている。パソコンのスピードは、1/8ヶ月で2倍になっている。値段はそれほど上がらないので、以前のものが急速に陳腐化していく。少し遅れると資本が回収できなくて不良債権が出る。しかし、当たるとものすごく良いということがある。結局、どれがよいのかわからないわけで、初めにどれがよいか慎重審議して決めてしまい、それに突き進むと大体失敗する。そのころには新しいものが出てきて、全員討ち死にということになる。

アメリカではどうしているかというと、デファクト・スタンダードである。それぞれ勝手に自分の責任で行うということである。変化が激しいときは、計画経済のように将来が見通せるものではない。厳しいが、非常にダイナミックな時代である。装置的にがっちりしたものをつくってしまって、後で全部どうしようかということになると困る。これは組織論的にも非常に問題となる。

ウェアラブルのように情報機能を全て体につけて持っているとか、モバイルで手に提げて持っているネット・ジェネレーションが集まると、その瞬間にそこが情報センターのようになる。例えば、夏に神宮外苑で花火大会があったが、そこに集まる人はみんな携帯電話を持っていて、そこが一遍に情報の集積地になるが、花火大会が終わるとみんな散ってしまい、もとの芝生に戻ってしまう。このように、ある場所が、情報拠点になったり公園になったりするということが起こる。

当然オフィスも影響を受けて、デスクトップと同等の機能のものが手のひらに乗るくらいのモバイルに変わる。神戸の震災のような災害の時に非常に明らかだったのは、モバイル通信の有無によって、リカバリーが非常に違う。したがって、都市機能のライフラインという意味では、ラインを引いてしまうとダメであるが、モバイルというかたちはバックアップとして非常に重要であると思う。

次に、セキュリティーであるが、悪意のある人を防ぐために、ソフトウェアを含めて暗号などが必要になる。逆に、そういうことが非常に良くできた都市は魅力になる。新都市ではそれを徹底的に行わなくてはならないので、ビジネスやその他にとっても非常に魅力がある場所となるであろう。

次に、デジタルアーカイブという記録がどうしても必要になる。デジタル的な映像などはいくらでも改ざんできるので、ある時に届けておいて、契約が成立した時の書類とか、あるいは伝統的な文化の資源などをアーカイブとして蓄積する。これは膨大な量になり、同時に関連産業がそこに集積していくときの新しいタイプの情報のアクティビティーになる。

立地の面で考えると、2つの側面があり、情報化が猛烈に進み、先進的なところと後進的なところが両存するときには、地域格差が非常に問題になる。しかし、あらゆるところで情報化が進むと、あまり差がなくなっていくということもある。例として、Fedexがある。Fedexは、通信でどこに自分の荷物があるか確認するサービスをしているが、Fedexだけの時は、みんなそれを利用するが、全てのところが同様のことをはじめると、本当に荷物が動くスピードで競争することになり、再び地理的条件などが地域格差の問題として出てくる。その場合、現在の地域格差ではなくて、十分情報のインフラができた上で、なおかつそのような格差が出てくるということである。

新規立地や先ほどの本社移転の問題とも関連するが、どのようなメリット、デメリットがあるかというと、新規につくると、しがらみからの脱却ができる。例えば慶應義塾大学の三田キャンパスとSFCは相当離れていたとことが非常に良かった。かなり自由なことができた。そのかわり、あれは慶応ではないなどと悪口を言われたりもしたが、しがらみが無くて自由にできるということは、情報の技術革新が激しいときにはメリットがあり、逆に古いものをたくさん持っているというのは大変不利である。

新規ではなくて改良で良いではないかとも考えられるが、霞ヶ関ビルのように、改良費の方が、新しくつくった場合よりも金が掛かったということになりかねない。これは、しがらみというソフト的なもの以外に、ハード的にも新築した方が良いのではという論もある。

新都市の立地条件を述べると、都市構造の面から望ましい立地条件というのは、先ほどのように集中的にできるという静かな場所のようなものと、散策行動の両立で、それができるのは、モバイルやネフットワークである。人との交流がたくさんできて、心地よい空間というのは、部屋に閉じこもってコンピュータばかりやっているというイメージが全面に出過ぎるが、本当は逆に従来の学生よりもよほど人と会っている。したがって、散策行動には実は本質的に、新しい創造ができる可能性が随分ある。じっと座っているのはIQが低下しているのではないかという説がある。

次に、新都市の機能面から見た望ましい立地条件としては、情報の受発信の面から意思決定の場に全国から参加できるということである。例えば、この秋に一番当たっている映画で、「踊る大捜査線」とうのがあるが、これは昨年ドラマになって、ビデオ化されたものであるが、それに関するフォーラムがインターネットの中で10ほどできたため、これが当たるのではないかということで、フジテレビが映画化した。映画化のプロセスも全部インターネットに載せて、参加型で映画をつくった。さらに、映画館で映画を見た人は、ほとんどが携帯電話を持っていて、映画館を出たところで友達に電話をかけて、今の映画は良かったとPRする。しかも大変感動した後なので、生々しい現場中継になって、口コミで広がる現象が起きている。しかも、相手も携帯電話を持っているので、たまたま映画館の近くにいる人に伝わると、すぐ見に行こうという行動が起こっているようである。情報の受発信の機能というのは、後でゆっくりというよりも、モバイルやネフットワークの時代になると、全国の実際の現場との交流が大きくなると思う。

それから、先程述べたアーカイブ機能は、新都市の基盤として非常に重要な部分であると思う。

母都市との関連については、新都市が忽然としてどこかにできるということは、情報的にも非常に難しいことで、近郊にある程度の集積があって、アクセスが便利な母都市や中核都市が必要である。その一方で、インフラや文化などによって束縛されない距離も必要であって、二律背反である。SFCの例では、ある程度の集積がある都市として藤沢市がある。母都市としては、横浜市や東京がある。問題は、SFCの学生を調べたときに、ネットジェネレーションの特殊な例を調べているのではないか、すなわち、そばに東京圏があるという状況での学生という意味で限定して考えなくてはいけないのではないかと思うが、その点はやむを得ない面もある。また、母都市の必要条件から見た望ましい立地というのは、母都市自身が、文化集積、人の集積などを備えていることである。

全国との関連という点での立地条件としては、アクセス条件で現状を大きく下回るようでは、情報的にも困るので、望ましくない。

交通条件から見た立地条件としては、全国レベルで情報化が進むと、地理的条件を含む地域本来のスペックが優越することになる。これは、先ほどのFedexの例であるが、情報化が進むと、情報的にはどこも同じ条件になってくるので、その時は、実際にモバイルで動くときにどのようになるのかということになる。しかし、交通手段自体の中にも、最近はITSやカーナビなどがあり、インテリジェント・トランスポート・システムのような新しい情報的な交通手段が出てくるので、それも考慮してこの問題を考える必要がある。

続いて、以下のとおり意見交換が行われた。

・情報化が進むほど、交通的にも人と接触する可能性が増えてくるということになると、いま説明があったような情報化時代になったときには、大都市がますます大きくなっていくのか、あるいは情報から見ると分散化する方向に行くのか、どちらになると判断したらよいのか。

→イベントなどがあると、たくさん人が集まるということになるが、常に集まっている必要はない。大学を考えてみると、例えば、入学式や運動会などは集まるということはあるだろうが、普通の時の情報ワークでは、常時コンスタントにつくっている設備が無くなったり、常にダイナミックに変動しているという感じになるのではないか。

したがって、都市が大きくなるか小さくなるかということについては、大きくなっているときもあるし小さくなっているときもあるということになる。

・情報ネットワークが進むと、ペーパーレスになるということを良く聞くが、新都市で情報化が進むと紙の消費量が莫大に減少することになるのか。

また、ミーティングは増えるのか、減ることになるのか。

→紙は一般には減らない。今の紙ではダメで、紙の後ろにネットワークやソフトウェアが伴っていないとダメである。そういう意味では、人によっては減る人もいると思う。プリント・ジェネレーションはネットワークが伴っていないので、増えるのではないか。

また、ミーティングには、オンライン・ミーティングとオフライン・ミーティングがある。ネットワークの中で常にミーティングしているのは、オンライン・ミーティングで、オフライン・ミーティングは、フェイス・トゥー・フェイスで会うことである。我々の世代は、ずっとオフライン・ミーティングばかり行ってきたことになるが、これはノーライン・ミーティングである。初めからラインがなかったので、やむを得ずオフラインだった。今の場合は、オフラインになったりオンラインになったりできるという点が非常に問題である。

このようなことから、紙の使い方が変わると思う。私の手帳も、電子手帳に全部入れて、そのものは無くなるはずだったが、結局だめであった。新聞も同様で、新聞社のホームページを見ていればよいのではないかと思うが、記事が細切れに出ているので、一面トップにどのくらいの大きさの活字で出ているかということがわからない。したがって、新聞社がどのように考えているかわからない。そうするとやはり紙の新聞を買うわけである。そういった意味では、紙は当面は減らないと思う。

・情報のセキュリティーの確保は大変重要であるということだが、そのような地域の確保はどのように行うのか。

→これは地域というよりも、システムの中でそういうサービスをしている。例えば、政府がここでアクティビティーを行う場合、例えばアメリカ政府を考えると、国防省は不正アクセスが何十万件とあるが、それに対してガードしている。したがって、そういう産業も当然あるし、サービスも受けられるということである。

不正アクセスの場合、パスワードをどこで盗むかということが最大のポイントであるが、パスワードは人が持っているわけである。したがって、人の管理が問題となる。すなわち、メインテナンスの際のパスワードの管理や、以前勤めていた人で辞めた人など、人的な管理が重要である。

・情報化が全ての地域に行き渡ると、次には地理的な条件がものを言うようになるということであった。その面では、農業時代から工業化時代になるところで、首都が変わったことも含めて大きく変わって今の地理条件がある。次の時代には、いわゆる工業化時代から情報化時代へと進む。これはある面で混乱して、次の段階へ行くときの首都機能などを移転させるためにチャンスかと思うが、そういう混乱の時期に新しい時代をつくる、情報化時代をつくる際に一番重要なものは何か。例えば、農業の時代から工業化のときには、鉄道が大きな影響を与えたが、そういう意味で、情報の幹線としてどのようなものが重要となるのか。

→その点については、新都市の立地の必要条件の中に入っていると思う。しかし、それだけではなく、技術との関係がある。工業化社会と鉄道の関係が指摘されたが、しばらくしたら自動車に変わった。明治初年にはハイウェイができるということは多分考えられなかっただろう。こうなると、私が今考えているようなこと自身は、いずれ確実に新しい技術によって予想しないものが出てくるので、当然条件も変わってしまうと思う。したがって、常に見直したり、付け加えたりすることを行わざるを得ない。無駄もあるから、最適なものを最高に一斉にやれば良いというのは工業化社会の大量生産的な考え方であるが、そのようなことを情報で行うと、一番古いものになってしまう。何が出てくるかわからないので、先程述べたデファクト・スタンダードになる。

その点では、私が考える程度のことではダメではないかと初めから諦めていた。若い世代によるブレーン・ストーミングでいろいろ意見を集めているが、その人達でもダメではないかと思う。

・都市構造として望ましい立地条件について、情報化が進むと恐らく情報面での立地にほとんど意味が無くなる。そうなると、住んでいる人が好きな場所かどうかということが重要になるのではないか。特に情報化が進むとテンションが高くなるので、それを和らげる空間が非常に重要になると思うが、具体的にあればどのようなものになるか。

また、アーカイブ機能について、これはどこにあっても良いのではないかという気がする。なぜアーカイブ産業の集積が必要なのか。

→もちろん分散できるものもあるが、分散できないものは集積せざるを得ない。例えば、高齢化先進県である高知県でなければできない介護の情報化というものがあり、これは東京ではできない。同様に、非常にたくさんのアーカイブのニーズが発生しているところに非常に近く、ビジネス上有利だということが起こるという意味で、アーカイブの立地がある。

・アーカイブ産業で、新都市に立地しなければならないのは、ユーザーと接触をとりながらデザインをしていく作業ではないかと思う。いろいろなものを入力するなど、実際に人が必要なところは無くならないと思う。アーカイブ産業が集積しているが、何万人も必要かというと、数百人の可能性もあるのではないか。そういう意味で、アーカイブ産業の集積が必要かどうか伺いたい。

→研究所のようなイメージである。研究所は分散しても良いが、集積すると非常にメリットがある。大学はその典型かもしれない。数百人では首都機能を支えきれないと思うので、それよりは多くなるだろう。日本の場合、軍事はないが、官邸など非常に機密度が高いところに膨大な情報が流れたり、そこからアーカイブが出てくるが、遠くなるほど、リークの危険やアタックの危険は増える。したがって、アーカイブの空間的な距離の問題というのも重要なセキュリティーのファクターの1つだと思う。

・モバイル型の時代について説明を聞いて、モバイル型の国会というビジョンが欲しくなると思った。さらに言えば、主要官庁のモバイルというのはどのようなものかということを考えると、首都機能移転とつながるのではないか。次に機会があれば、新都市一般ではなくて、国会や中央政府についての検討を聞かせて欲しい。

→先日、衆議院の特別委員会で意見を述べたときにも、情報的な都市機能のネットワークが全国にできていく場合には、国会自身が今のままの帝国議会以来のスタイルが変わらざるを得ないかもしれないという発言があった。あるいは、政府自身も今のシステムが影響を受けるということは、現にインターネットでいろいろな点で起こっている。例えば、世論を見るにしても、今はプリントしてみているが、それも変わってくるだろう。少しさかのぼると、情報化時代に国会とは何だったのだろうかとか、政府とは何だったのだろうかということが問われるのではないか。大学でも、情報化時代への対応を迫られているが、少なくとも変わって行くべきであるという点では、皆同じではないかと思っている。

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