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国会等の移転ホームページ

第17回国会等移転審議会調査部会議事要旨

1.日時

平成11年7月1日(木曜日)14時0分〜16時0分

2.場所

中央合同庁舎5号館別館共用第23会議室

3.出席者

(審議会委員)

石原部会長、野崎部会長代理、石井(威望)、下河辺、中村(英夫)、溝上、各委員(6名)

(専門委員)

池淵、井田、井手、黒川、鈴木、戸所、森地各専門委員(7名)

谷川政務次官、古川内閣官房副長官(事務局長)、近藤国土事務次官、久保田国土庁長官官房長、板倉国土庁大都市圏整備局長(事務局次長)、他

4.議題

既存都市の関係に係る検討、地震災害等に係る検討について(地震災害に係る検討、我が国の災害への対応力に係る検討)等

5.議事の要旨

既存都市との関係に係る検討結果、地震災害等に係る検討結果について、説明が行われた後、質疑応答が行われた。

(1)既存都市との関係に係る検討について

既存都市との関係に係る検討結果について、戸所専門委員から説明が行われた。

既存都市との関係に係る検討については、国会等移転調査会報告における移転先の調査基準の1つとして、既存都市との適切な距離に配慮することとしており、これに関して既存都市と新都市との位置関係について検討することを目的として行った。

首都機能都市は従来のニュータウンとは本質的に異なるが、今までの開発事例を参考に考えていく必要があると考えている。

新都市のマスタープラン、既存都市との間のおおむねの交通ネットワーク等、整備手法及び土地利用コントロール手法については今後明らかにされることが必要であるが、現在まだその段階に至っていない。本検討を行うにあたっては、国会等移転調査会報告で述べられている事項を前提としていく必要があるだろう。

検討の視点としては2つあり、1つ目は、市街地の連続の抑制、いわゆる連坦の抑制であり、2つ目は、母都市となり得る既存都市との連携に関する可能性である。

市街地連坦に対する考え方としては、まず新都市周辺等におけるスプロールの抑制が挙げられる。開発地周辺で虫食い状態に市街地が拡大していくという、クラスター周辺のスプロールをどう抑制するかが課題となる。このような観点から、新都市の圏域周辺やクラスター間の地域におけるスプロール抑制の見通し及びこれに対する課題を各地域ごとに検討を行った。

次に政令指定都市級の大都市の圏域との市街地連坦の抑制が挙げられる。これは政令指定都市級の大都市との連坦を避ける、つまり新たな大都市、新たな東京圏をつくらないようにするということである。政令指定都市級の大都市の圏域と新都市の連坦抑制の見通しとそれに対する課題について各地域ごとに整理を行ったが、その際には、新都市側における抑制だけでなく政令指定都市級の大都市側における抑制も併せて検討を行った。

既存都市との連携に対する考え方としては、新都市は街びらき段階から魅力ある都市機能を享受できることが必要であること、また新都市には非常に多くの来訪者が見込まれることより、多様なニーズを充足できる母都市の存在によって、新都市の業務及び生活が豊かになる可能性を検討する。

市街地連坦が発生する代表的なパターンとしては、(1)新都市周辺にスプロールが起こってくるもの、(2)沿道への連続的な施設等の立地、(3)新都市と既存都市の中間地域における開発の発生可能性が挙げられる。(2)については、周辺の沿道地域の方が新都市内より規制が緩く、沿道立地が進む可能性がある。

本検討においては、連担に関して、自然地形、既存市街地の状況、交通基盤、現況土地利用規制の4項目より検討を行った。なお、政令指定都市級大都市の圏域との連坦については、仙台市との連坦の可能性がある宮城県、名古屋市との連坦の可能性がある岐阜県、愛知県及び三重県を対象に検討を行った。宮城県は、北部地域は仙台に近いことから、適切なスプロール抑制方策を講じる必要がある。中南部地域は、地形条件や既存都市が存在していないことから、土地利用誘導の適切な方策を講ずれば比較的スプロールが生じにくい状況にあると考えられる。仙台圏域との連坦については、仙台市街地から国道4号沿いに市街地の連坦が進行しつつある。

福島県は、阿武隈高地西部は平坦な低地が多く、郡山市や白河市等の市街地との連坦が発生する可能性があり、適切なスプロール抑制方策を講じる必要がある。阿武隈高地東部の丘陵及び段丘においては、地形の起伏が小さく既存都市とも比較的離れているため、土地利用誘導の適切な方策を講ずれば比較的スプロールが生じにくい状況にある。

茨城県は、北部及び中部地域は地形、既存集落の状況、現況土地利用規制の状況から土地利用誘導の適切な方策を講ずれば比較的スプロールが生じにくい状況にある。南部地域は、水戸市からの市街化の圧力に加えて高速道路の整備進展等によって開発ポテンシャルの上昇が予測されることから、スプロールの発生可能性が高い。

栃木県は、那須野原の開拓の歴史と土地所有の形態により、これまではスプロールがある程度抑制されてきたと考えられる。しかし、西那須野町と大田原市周辺の農地内に既にいくらか建物が立地していること及び人口増加率が高い地域が存在することより、地形的に平坦であることを踏まえると、今後スプロールが進行しやすい環境にある。

岐阜県は、南部地域については地形的に開発の容易な低地は既に市街化しており、更に愛知県寄りを中心に一部の丘陵地も市街化が進みつつある。名古屋市との圏域との間は山地により地形的に分断されているが、市街化のポテンシャルが高く開発規制が弱い地域で部分的に開発が行われている。したがって連坦を防止するためには愛知、岐阜両県の連携により適切な開発規制方策を講じる必要があると考えられる。

静岡県は、国道1号に沿って既に市街地が連続しており、今後も引き続き市街地の拡大が進む可能性が高い。北部地域は、現状で大きな市街地の集積等は見られないが、今後第二東名の開通等によって開発ポテンシャルが高まる可能性もある。

愛知県は、北西部の丘陵地は地形的な制約があるが、名古屋市周辺の都市に近接していることから、開発ポテンシャルは非常に高い。南部地域は、市街化調整区域に指定されている候補地についても部分的にスプロールが進んでいる。名古屋市との圏域の連坦については、名古屋市と調査対象地域の間は既に主要鉄道や主要道路沿いに市街地が連坦している。

三重県は、現状では比較的広範囲に土地利用規制がされている。名古屋市との連坦については、名古屋大都市圏域に位置しており連坦の可能性がある。

畿央地域は、滋賀県の南東部や三重県名張市周辺の市街化がかなり進んでいる。また、人口増加の著しい地域が存在する。奈良及び京都は、地形的な状況から比較的スプロールが生じにくい状況にある。
次に新都市と既存都市との連携に関しては、新都市の発展段階別に検討を行った。

新都市は通常の新都市と異なり人口に比べて来訪者、交流人口が大変多い都市になると考えられる。また、新都市への企業の立地は首都機能都市の特性からそのメリットを目的に、採算性とは別の観点から少なからず行われることが見込まれるため、企業立地は通常より早いと考えられる。

発展段階的に見た新都市と既存都市との関係をまとめると次のようになる。

第1段階の街びらきにおいては、新都市の性格より相当程度の機能を持つ必要がある。公共性の高い施設は先行的に設置を進めるべきだが、すべての生活支援機能や業務支援機能、あるいは首都機能支援機能を新都市内に持つことは困難であると思われる。その場合には、新都市内に調達できない機能を母都市に依存することになる。初期であればあるほど母都市への依存が必要になることが考えられる。

成長段階になると、母都市との緩やかな機能連携の下に大半は新都市内で内部調達できるようになるだろう。母都市との関係が、依存関係から競合関係に変化してくるということが考えられる。

成熟段階では、母都市との関係は適切な分担の下にそれぞれの都市圏が形成されるということが必要になるだろう。それを誘導していく必要があるが、極めて特殊な機能については、文化、経済の中心都市である東京を利用する可能性がある。

検討項目としては、母都市として望ましい都市規模及び交通利便性という観点から検討を行った。
今回の調査地域に含まれる、母都市と考えられる都市における機能立地の状況をみると、政令指定都市とその他の都市では都市機能の充実度にはかなりの差があるということがいえる。

既存都市における機能の立地状況、調査会報告における新都市の姿を踏まえ、民間事業者に対するヒアリング等を行って望ましい母都市の規模及び位置を次のように考えることとした。

日常的な機能を依存する母都市として、人口20〜30万人規模の都市及び都市圏が、新都市から交通距離30分程度に存在し、さらにグレードの高いものを依存する母都市して、政令指定都市級もしくは100万都市級の都市圏が1時間程度のところに存在することが望ましい関係であると思われる。

以上の検討をまとめると、市街地連坦に関して、新都市周辺におけるスプロールは、現行土地利用規制を前提とした場合、いずれの地域においても完全に抑止することは困難と予想される。そのため、新たな制限誘導のための措置を関係者の理解を得た上で導入することが必要と考えられる。

政令指定都市の圏域との連坦については、新都市と政令指定都市の中間地域の市街化圧力が高まるものと考えられるため、政令指定都市等の大都市の圏域の周辺にも新たな制限を措置することを検討する必要がある。

既存都市との連携に関しては、初期的街びらき段階における生活利便性の確保について、いずれの地域も周辺に20〜30万人規模の都市及び都市圏が存在しない地域はないが、クラスターの立地状況よっては現状の交通条件ではおおむね30分程度で到達できない地域も出てくる。そのような地域については、母都市と連絡する交通機関の整備を計画的、優先的に進め、アクセスの改善を図ることが必要と考えられる。

新都市の多様なニーズの補完については、現状において、いずれの地域も地域内主要駅から政令指定都市まで鉄道で1時間程度で到達可能であり、望ましい位置関係の条件を満たしていると思われる。

今後の課題としては、新都市の移転先が決定した後の具体的なクラスター配置の検討に合わせて、再整理が必要であると考えられる。市街地連坦の抑制に関しては、実効性のある土地利用誘導方策や規制手法を検討することが必要であり、さらに地元自治体が強力に取り組んでいくことも必要であるが、この点に関しては受入れにかなり地域差が出るのではないかと感じている。既存都市との連携に関しては、首都機能を支えるのに必要な機能は何かを検討する必要があるだろう。

移転に向けてのアクション・プログラムとしては、移転の当初段階からまとまった規模の移転を行って需要規模をまとまったものにし、都市機能の事業採算性が高くなるよう図っていく必要がある。

周辺地域の整備の必要性に関しては、母都市の側においても都市基盤の整備、市街地の再開発など必要な施策を新都市整備と並行的に実施し、圏域としてともに発展できるように努めることが必要であろう。

地域社会と調和した新都市の形成を図るには、従来のニュータウン等で取り組まれてきた街びらき後のソフト的な融合方策のみに依存するのではなく、都市構造の在り方、公務員に対抗して十分な発言力を持つ市民層を形成するための都市構成の誘導の在り方も含めて検討する必要があるのではないか。

従来の都市建設とは違って、最初の段階からかなり大規模に建設が行われるとすると、建設労働者の規模も相当大きくなると考えらるため、建設段階についても配慮する必要がある。

以上のように、既存都市とのスプロールによる連坦の防止及び連携については、単独ではどの地域が一番すぐれているとは言いにくい面があり、土地開発手法や規制の仕方によって変化するものであるので、他の評価軸との関連において今回の評価が生きてくるものと考えている。また、土地利用コントロールに関する地元の協力やその受け入れ方がかなり影響してくるのではないかと感じている。

この後、以下の質疑応答が行われた。

・土地利用規制の内容について、もう少し具体的かつもっと厳しい方向で述べるわけにはいかないのだろうか。また、結果に関して、もっとはっきりと優劣はあるように思うがどうか。

→規制については現行規制との関係等でこれから詰める必要があり、今回は規制そのものについては十分検討はしていない。首都機能移転都市の場合には、当然現行よりも相当厳しい規制が必要であるというふうに認識している。優劣は当然あるが、他の評価軸と関連させるともう少しはっきり結論が出てくると認識している。

・戦後50年のスプロールの状況が今後も発生するという前提で議論しているようだが、果たしてそうか。首都移転都市だけが華やかにスプロールが発生するという前提でいいかどうかは議論があると思う。

もう一つは母都市論で、母都市としての機能が何かという議論が必要である。戦後50年の環境の中でできた母都市が次の50年に対応し切れないという段階が来ており、今回の新都市もそうならないとは必ずしも言えない。スプロールと母都市から議論されたことは大歓迎だが、時代背景ということをもう少し加味するほうがよいかと思う。

→スプロールが首都機能都市の周辺で起こり得るかどうかについては、首都機能都市の周辺はポテンシャルがかなり高い地域になることを念頭に置いて考えていく必要があるという点から、スプロールが発生することを前提に検討を行った。

母都市については、街びらき段階、成熟段階と段階的に新都市との関係が変化し、首都機能移転を通じて21世紀の新しい都市の在り方という開発方式も考えていかなければならないことから、当然周辺地域と連携してリフレッシュしていくことが必要であると考えている。

・新都市として10万という人口が移動してくるのはかなりのインパクトである。新都市の機能立地が官主導で行われれば、恐らくスプロール現象は発生するが、逆に民主導であれば、新都市周辺というよりは新都市内に様々な機能が立地する可能性があり、それらが審議会における新都市イメージとどう違うのかということが問題となってくる。

母都市論については、新都市がある程度成長したときに、むしろ母都市ではなくて新都市にその周辺が依存するような形態が、かなり早い段階ででてくる可能性があるというところで、本検討は止めている。

・これからの都市は放射状同心円形的にスプロールするというよりも、街道筋にスプロールする形の方が実際的ではないかと思う。

・新都市が、単純にクラスターが幾つか集まるという形であれば、非常にコントロールしにくい、あるいは効率が余りよくない、あるいは自動車に完全に依存しないと成立し得ないような構造となる。むしろ公共交通主導型とすれば、ベルト状に伸びた構造の方が現実的ではないかという気がする。

→母都市に関しては、首都機能都市が最初からどのような機能を持つか、またどれだけ自立的になれるかによっても母都市との関係は変わってくるため、そのあたりは今後の課題になってくると思っている。

(2)地震災害等に係る検討について

地震災害等に係る検討結果について、溝上委員から説明が行われた。

本検討は、地震災害に係る検討と首都機能移転による災害対応力の強化に係る検討という2つに分かれている。

地震災害に係る検討では、大規模な地震が発生した際、大きな被害が生じる地域を避けるということと、東京に地震が起きたとき、同時に災害を受ける地域を避けるということを検討の目的とした。

日本を広く見回してみると歴史上地震がない地域があるが、その様な地域もいずれ地震が起きる可能性があり、そういった意味で日本において100%地震に対して安全な地域はない、という観点に立ち検討を行っている。

対象項目は地震動、既に審議会で報告されている地盤の安定性、津波である。地震動に関しては、検討対象地震をピックアップし、検討を行った。

「検討方法の概要」は、調査対象地域と周辺についての最近の地震活動、過去に発生した地震及びその地震被害、そしてなかなか難しいことだが、長期予測。時間軸で言うと、現在、過去、将来という視点により、地震の被害を整理している。

予測震度は、検討対象地震をピックアップした上で、各々地震の過去の実績と今までに分かっている知見によってシミュレーションを行い、予測した。

東京との同時被災については、同じ地震で東京と新都市が同時に被災するという狭義の同時被災と、東京あるいは新都市のいずれかが、ある地震により被災し、その機能が復旧する前にもう一方の都市が別の地震により被災するという広義の同時被災、の2ケースを検討した。

地盤の安定性については、特に液状化に着目し、検討した。

津波については、過去の実績及び、三陸沖、十勝沖等々で起きた地震を想定したシミュレーションを行うことにより、過去の実績と比較する手法も取り入れて検討した。

また本検討では、マグニチュード8規模の海溝型巨大地震を想定し検討しているが、マグニチュードについては、兵庫県南部地震が7.2であり、マグニチュード8クラスとは、兵庫県南部地震を約30個束ねたものが1個の地震の規模ということを念頭においていただきたい。

被害を起こす地震には、海溝型の巨大地震と内陸で起きる地震の2つに区分することができる。海溝型の巨大地震は、海溝に沿って100年、200年の間隔で繰り返す。内陸で起きる地震は、こういったプレートの運動の2次的効果で歪みが蓄積され、数千年、あるいは数万年に1回という頻度で起きる。

海側のプレートが沈み込むことによって陸側のプレートが下方へ引きずり込まれ、それが限界に来るとはね返り、地震が起こる。また、震源が海底にあることから、陸側のプレートのはね返りにより津波が起きる。

また、海のプレートが陸側へ押してくる影響が内陸に及んでくると、断層運動が内陸でも起きる。この断層運動で大きな地震が繰り返して起きると、断層のずれが地表にまで及び、活断層となって地表にそのずれが累積して、六甲山のような山ができたり、非常に大きな断層地形がはっきりと目に見えるようになってくる。

海溝型の巨大地震は、100〜200年の周期で繰り返すと説明したが、西南日本の南海トラフ沿いでは、7世紀までさかのぼってこういった繰り返しが知られている。同じタイプの地震が、白鳳の時代から宝永、安政、昭和と続いており、現在駿河トラフ付近で地震の発生が切迫していると言われている。

このような海溝型の地震が起きるところは、大きく分けて2つあり、1つは中央地域周辺がこれにあたる。もう一方北東地域の周辺では、若干スタンスが違っており、確かに海溝型の地震は起きるが、その規模は、マグニチュード7や7.5程度である。場合によってはプレートの沈み込みがずるずると落ち、群発地震のようになって、日頃から少しずつ解消していくことで、中央地域周辺で起きる海溝型の地震とは、随分と様相が異なる。

東北日本の方では三陸地震という津波を起こす地震がある。1896年の明治の三陸地震はプレート境界の地震であったが、ずるずるとプレートが滑り、地震の揺れは小さかったものの、大きな津波が発生し、大きな被害を起こした。

海溝型の地震の起き方という意味では、東北日本の沖合と、中央地域周辺では異なる。

内陸地震に着目すると、活断層に焦点が当てられる。活断層の研究は、現在盛んに進んでおり、活断層を区分するときに、活断層の存在の確実度が〜と分類されている。誰が見ても間違いなく存在すると判断できるもの、活断層である可能性はあるがはっきり判断できないもの、また、活断層の活動度という観点に立ち、活動が非常に活発でどんどん歪みを蓄えていると判断できるもの、歪みが本当に蓄えられつつあるのか人によって意見が変わるというもの等、同じ活断層でもその姿は様々である。

本検討において議論の対象となる活断層のうち、特に大きな巨大地震につながってくる活断層は、東海地域の富士川河口断層である。富士川河口断層は、日本で活動度の高い最大級の活断層だと言われており、安政の江戸地震の際には、その部分がずれ動き、土地が盛り上がった。また、富士川河口断層により発生する地震の規模は、マグニチュード8±0.5程度の可能性があり、その地震は数百年以内に起きる可能性があると長期予測で推測されている。本検討において対象とした活断層の中で、富士川河口断層はとりわけ目を引くものである。また、中央地域には、活動度がB、あるいはA〜Bという活断層が幾つも存在する。

東京周辺の活断層に着目すると、例えば東京では立川断層が挙げられるが、立川断層は再来周期が約5,000年であり、直近の地震が起きてから約1,000〜2,000年ぐらいしか経っておらず、次の地震発生までに、まだ残り何千年もの期間があると言われている。

神縄・国府津−松田断層は、東海地域の富士川断層と並んで注目される活断層である。これも活動度Aの断層であり、関東地震のときにここの地域は割れ残ったという表現をとる方もいる。

いずれにしても、神縄・国府津−松田断層と富士川河口断層というのはプレート境界の地震が内陸へ突っ込んだ部分の活断層であり、同じ内陸の活断層でも非常に活動度が高く、仮に地震が発生すると巨大地震になる可能性がある。また、実際に長期予測においても、これから先数百年のうちに起きる可能性が高い地震と言われているものに含まれている。

富士川河口断層や神縄・国府津−松田断層はまさに海溝の延長のところにある活断層だが、正真正銘の内陸の活断層についても、海溝型の地震が起きると内陸で地震が起きるということが経験的に分かっている。今回の検討会にも御参加頂いている京都大学大学院理学研究科の尾池教授の研究結果では、京都付近で発生した複数の海溝型の地震が起きた時点をそれぞれゼロに合わせ、内陸の地震を足し合わせていくと、だんだん内陸地震の発生頻度が増えてきて、海溝型の巨大地震が起きるという傾向が見られる。この傾向は、京都だけではなく、近畿一円、中部、近畿を含んだ地域でも見られるものである。つまり、海溝型の巨大地震と内陸のマグニチュード7ぐらいの地震は決して無縁ではなく、海溝型の地震の起きる前、あるいはその後しばらくは内陸で大きな地震が起きる可能性が極めて高い傾向があるということが、経験的に言える。

地震と火山の連動性については、1707年10月に起きた宝永地震はマグニチュード8.4という、日本で最大級の地震があるが、この宝永地震が起きた後、2か月後に富士山が大噴火した。また、安政年間に起きた複数の地震と同じ年に規模は小さいものの富士山が噴火した。このことから、富士山と南海トラフの巨大地震とは無関係ではないと考えられる。

地震が起きると津波被害が発生することがある。津波の被害は事例を挙げれば大小様々だが、例を挙げると、明治の三陸津波、あるいは昭和の三陸津波を発生させた地震がある。この2つの津波地震は実は全然性質が異なり、津波としては同じように攻めてくるわけだが、明治の三陸津波はプレート境界で起きた地震によるもので、プレート境界の地震の断層がゆっくり動いたために振動、揺れは小さいものの津波が意外に大きかったという非常に恐ろしいものであり、災害の面から言いうと、すきを突かれるタイプの津波地震であった。

東海地域についても、多くの巨大地震がこれまでにも津波を伴って被害を生んでいる。

三重・畿央についても東海地域と同様、南海トラフの巨大地震による津波というものが歴史上繰り返している。

東京周辺では、勿論関東地方の津波というのがあるが、東京湾を考えてみると、東京湾は地形的に外に対して閉じているため、大きな津波に襲われる可能性が比較的低いと言われている。

震度の面からそれぞれの地震についての地域的な特性、分布を資料中に整理している。震度6以上の範囲、震度5〜6の範囲、あるいは局所的に震度5〜6の記録があるものというように、地域的な違いがある程度はっきりと読み取れる。

更に、地震被害による死者の数だが、1,000人を超える地震というと相当限られるが、今世紀に入り、関東地震以降と言ってもいいが、死者が1,000人以上超えた地震を資料中に整理している。東北地方では三陸津波地震という津波災害に伴った人的被害が出ており、それ以外は関東以西に限られている。

とりわけ、1943年鳥取地震で1,000人以上、翌年東南海地震、これは南海トラフの巨大地震だが1,200名、また翌年終戦の年に三河地震で2,300名、そして南海地震が1946年に発生。それから福井地震と、5つ地震が南海トラフから内陸にかけて起きた。概ね鳥取地震から福井地震に至るわずか数年の間に1万人が地震で命を落としており、内陸と海溝型の地震との連動する地震の活動期が、ここからも見てとることができる。

「将来予想される地震・津波に関する安全性」の検討について、国土庁によって開発された、一般に公開されている「地震被害想定支援ツール」に基づき、震度予測のシミュレーションを行った。ここでは、これまでに公にされたデータ、そして広く使われている解析手法を用い、事実に即して整理していくという方針をとった。

資料中に震度予測のシミュレーションを行った断層に番号をつけ、地震名、活断層名を示したが、実際にまだ地震を起こしていなくても、その活断層の習性が分かっていれば震度予測のシミュレーションを行うことが可能であり、そういった形で地震の揺れの計算を行った。

東京との同時被災の可能性のうち、東京で地震が起きた場合、新都市が全く同時に被災するという狭義の地震の同時被災については、調査対象地域を設定する際に、関東地震時に東京と同時に震度6以上を記録した地域を既に除外しており、それ以外に狭義の同時被災というものが考えられる可能性は非常に小さいと言える。

広義の同時被災、つまり、比較的短い時間の間に東京とほかの地域が被災するということについては、1703年の元禄の関東地震と1707年の宝永の東海・南海地震が4年をおいて発生している。また、1854年の東南海・南海と翌年の安政の江戸地震も同時に起きている。伊豆半島を挟んで西と東で地震がこのように連動して起きるという過去の事例がある。さらに、西の方では南海トラフの地震が何時間か、ほとんど同時、あるいは1〜2年をおいて起きる傾向がある。勿論東海から四国に至るまで一連の連動作用で地震が次々に起きるということはよく知られた事実である。

第1編の地震災害に係る検討をまとめ整理したものが、資料中にある。

地震現象の整理について、北東地域と中央地域、に区分しており、北東地域ではM8程度の地震の発生頻度は低いが、M7程度の地震が比較的多数発生する。北東地域は中央地域に比べて活断層が少ない。中央地域は、プレート境界の巨大地震、M8の地震が繰り返し起きる。活断層は北東地域と比較し、相対的に多い。主な活断層の中で、神縄・国府津−松田断層と、富士川河口断層が挙げられ、両断層による地震が発生すると東京とを結ぶ幹線が寸断さす大きな被害を起こす可能性を有している。

調査対象地域の主な地震履歴の記録は、中央地域では震度7の記録があるのに対し、北東地域では震度6以上の記録がある、震度6以上の記録がないという整理をしている。

中央地域では、地震と火山の連動性、複数の地震の連動性について整理している。

海溝型地震、内陸活断層に伴う地震のシミュレーション結果の整理として、とりわけ中央地域については震度6弱ないしは震度7の地域が含まれるということ、また、来るべき東海地震について地震対策強化地域にかかわるさまざまな対策がとられているということについて整理している。

第2編の首都機能移転による災害対応力の強化に係る検討では、人とモノの流れが地震によってどのように阻害されるかという視点に絞って検討した。具体的には、新都市と、仙台、東京、名古屋、大阪それぞれについて、道路と鉄道のルートを設定し、第1編で対象とした地震が発生した際、これらルートや代替ルートが確保できるのかといった観点に立ち、整理した。

震度6以上になるとそこに交通障害が起きると仮定し、それぞれの地震ごとに検討した。評価基準としては、代替ルートをとらざるを得なくなった場合に、代替ルートが通常ルートのどのくらいの距離になるか、あるいは鉄道の場合は時間になるかということで評価の基準を区分けし、整理した。

最後にいくつか提言としてまとめた。これからどういう地震が起きてくるかということの長期予測も念頭に置きながら、施設の適切な配置、耐震化・多重化、情報システムや防災体制の整備、広域的な防災性の確保、これらが考えられる重要なポイントであるとでまとめている。

この後、以下の質疑応答が行われた。

・震災が起きるかどうかということは、地震動もさることながら、地盤条件がローカルには非常に重要だと思う。

海溝型地震の場合、影響範囲が非常に広いが、その中でローカルな違いというのは全部地盤条件にかかわる。地盤条件を考えた場合に、山地丘陵斜面と低地が考えられる。山地や丘陵においては山崩れ、山津波といった斜面災害が非常に多くなる。段丘の上においては、地盤は非常に安定している。
低地では、地盤の強度、地下水の水位、それらに非常に影響を与えるものは粒径であり、いわゆる軟弱地盤地帯に注視する必要がある。軟弱地盤地帯がどこにあるのかについては、低地のでき方、日本でいえば、海でできた低地と川でできた低地がある。それぞれの地盤条件において、これまでの南海地震等については、定性的ではあるけれども経験則がある。従って、地盤のうち低地については、地形と地盤区分で大体見当はつくと考えられる。

もう一つは、活断層の変位そのもので破壊が起こる場合、従来濃尾地震、丹那地震等では、15〜20キロまでぐらいが変位で壊れている。その活断層の変位による直接的な被害についてのデータは整理しなかったのか。

→活断層がどういう形で被害を起こしているかについて、兵庫県南部地震の現地を見てきた。実際の活断層による地震が起きている場所というのは、地上よりも5キロから十数キロ深いところである。

例えば、淡路島の北淡町などに行ってみると、非常に脆弱な材木置場が活断層のそばにあっても倒れていなかった。これをどのように解釈するかというと、断層がざっと切れ、激烈な断層のずれがあるが、活断層の真上の田んぼや畑の地盤がずれるのは若干時間がずれ、ゆっくりと変位する。変位そのものは結構大きいな変位だが、それで衝撃な破壊が起きるとは言えない。

活断層に関しては、我々が変位について脅えて活断層の真上が危険だと思っていると、地震が深いところで起きて、真上ではなく、ある一定の範囲を平等にいためつけるといった側面に目を向けておかないといけない。また、変位と速度と加速度、震度の継続時間というものを総合して考えないと、活断層を避けて逃げ回るという奇妙な構造につながる。現在、いろいろなところで、いろいろな方が議論されており、なかなかとらえがたいところである。

それから先ほど御指摘の地盤に関しては、震度の予測のところには勿論地盤条件が入っている。過去の震度というものはあらゆるものが含まれているが、地盤、地形の方とすり合わせをし、再度よく吟味した方が良いと考える。

・今の御説明でよく分かるが、丹那トンネルの真ん中を丹那断層が通っていて、在来線の丹那トンネルを掘っているときに2メートル40センチずれたことを知っている。いつとは言えないけれども今後も動くであろう。しかし我々は丹那トンネル怖いから箱根八里を馬で越すということはできない。我々は承知の上で新幹線に毎日乗っている。

今の説明のように、活断層の真上だからといって変位はないかもしれないし、逆に壊滅的な破壊があるかもしれない。だから我々は活断層の真上に本当に重要構造物をつくるかとなったら、やはり避けるべきだと個人的に思う。しかし、通過する間には活断層を切って通過しなければならない。それは日本の宿命だから仕方がない。そのことはどの地域に首都機能を移転するにしても国民の皆さんにはそういうことをきちんと納得してもらった上でないと、なぜ活断層のそばにつくったのだというようなことになる。その点においては説明をしておく必要があると考える。

→活断層の評価については、資料中表にも出ているが、活動度と確実度とがあり、個々の活断層において非常に差がある。そして、活断層は数千年、数万年に一度という繰り返し周期を持っており、人間の寿命から言うととんでもなく長い。海溝型の地震はまだ100年、200年の周期であり、人間の一生の長さと比べてはかり得るものである。地質学的なスケールを持った現象で、同じ地震といっても全く違うものと考えなければいけない面がある。

活断層については、研究が進んできており、それを国民の皆さんに理解していただいた上で、国土をうまく利用していく必要がある。

・地震に関して、専門的ではない一般の人たちにとっては、首都機能移転と地震という関係のときに、東京は南関東直下型地震が発生し危険であるという認識を持っていると思う。本検討の報告書には南関東直下型地震という活字は一字もないが、検討しなかったのか。

→南関東直下型地震の種類の区分というのは報告書に載っていないが、検討会において議論はしている。そのいきさつは、まず最初に東京との同時被災という視点に立ち、関東地震発生時に震度6になる地域を除外し、それ以外の地域、特に候補地について検討していくという前提に立っている。

関東地震発生時に震度6になる地域については、必要ならば検討しなければならないと認識しているが、今回の検討では、震度6になる地域は、東京と同時被災の可能性があるということで、検討の最初の時点で除外している。もし議論するのであれば、その部分はもう少し分かりやすく詳細に議論しなければならないと認識している。

・一般の人は、それだけを心配しているといってもいいのではないかと思う。そして、1923年の地震データで言うと、都市の状況も経済の状況も現在と全く異なるので少し不信感が出ると思う。地震の専門家はあのときの影響地域で今度の直下型地震も同じだとみなしたのか。

一般の人に説明する際に、南関東直下型地震と関東の大震災との比較から見て、どういう状態だと見るかを説明していただく必要があると思う。

→経験的事実では、元禄、大正の関東地震ともに、地震の発生後10年ぐらい余震が起きる。それ以降は南関東一帯は非常に静かになった。その後、地震のない期間が何十年も続き、大体関東の大地震が起きてから80年ぐらい経つと、関東の周辺からマグニチュード6や7の地震がぽつぽつと発生するという時期に差し掛かかる。そして関東地震が再び近づいてくると、地震の発生回数が増加し、やがて関東地震が発生する。そのような特徴が関東地震にはある。

現在どの時点にいるかというと、ちょうど平穏期が終わってそろそろ活動期に入りつつある。

長年にわたる地殻変動のプレートによる歪みの蓄積を見ても、大体関東地震のときに開放した歪みの3分の1はまた戻ってきている。3分の1ぐらい戻ってくると、あちこちで目立った地震が起きてくるのは当然であり、観測事実から言っても、活動期に差し掛かっていることは間違いない。

ただし、いつどこでそういう地震が起きるかということは、とても言えない。マクロ的に見て今が決して安心できない状況に差し掛かりつつあって、このような状況下で過去にこういう地震が起きたという事例は挙げ得る。その程度以上のことは言えない。

以上
(文責 国会等移転審議会事務局)

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