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火山災害に係る検討について

(1)検討対象火山

検討対象としては、平成10年1月16日の第9回国会等移転審議会において設定された調査対象地域に対して、火山噴火により大きな被害を及ぼしうる火山について、火山噴火が発生した場合に直接影響を受ける範囲を検討するものとする。
火山災害には、降下火砕物、溶岩流、火砕流、火山泥流・土石流などによる被害が考えられる。ここでは、調査対象地域に広域的な被害を及ぼす降下火砕物や、局地的な被害を及ぼす火砕流等を発生させる可能性のある火山として、蔵王山、吾妻山、安達太良山、磐梯山、那須岳、日光白根山、高原山(以上、北東地域)、富士山、御嶽山(以上、中央地域)を選び、被害到達範囲等を検討することとする。

(2)検討の進め方

「火山噴火と災害」(宇井忠英編)を参考に、各種火山災害について整理を行った。
表1で、それぞれの火山現象ごとに生じうる災害の種類を示す。

表1 火山現象ごとの災害の種類
火山現象 災害の種類
降下火砕物 埋没、破壊、付着
溶岩流 埋没、火災、破壊
火砕流 埋没、火災、破壊
火山泥流・土石流、岩屑なだれ 流失、埋没
噴石 落下衝撃による破壊、火災、埋没
火山性地震 施設損壊
地殻変動 隆起沈降、施設損壊
津波 流失
空振 窓ガラス破壊等
火山雷 施設損壊
火山ガス・酸性雨 ガス中毒、大気汚染

過去の被害事例において、襲われた地域の人命・財産に大きな被害を及ぼす火山現象としては、降下火砕物、溶岩流、火砕流、岩屑なだれ、火山泥流・土石流などがあげられる。これらの現象は、噴出物の到達距離が場合によっては数10kmにも達する火山現象である。噴火に伴う津波も大災害を起こす可能性があるが、今回の調査対象地域でそれが起こる可能性はない。本検討においては、過去の噴火実績をもとに火山の噴火規模をいくつか設定し、火山の周辺地域における災害発生の危険性について検討を行う。ここでは、以下の火山現象による被害を及ぼす危険性について検討を行う。

(1)降下火砕物 (2)溶岩流 (3)火砕流 (4)火山泥流・土石流 (5)その他(岩屑なだれ、噴石等)
ここで、大規模な被害を及ぼしうる火山現象については、頻度は低いものであっても、実績を示すこととし、岩屑なだれについて(5)その他で示すこととした。

【参考】

(火山噴火に伴う諸現象)

マグマが液体状態を保って噴出すると溶岩流になる。爆発的な噴火では、マグマは細かく破砕され、空気と混合して噴煙状になる。それが高く上昇して広域に降下したものが降下火砕物である。噴煙状の混合物質が浮力を失って火山斜面を流下すると火砕流となる。冬季に火砕流が氷雪を融かすとそれがもとになって融雪泥流が発生する。また、火山斜面への降雨によって泥流・土石流が発生する。
速度の目安としては、溶岩流は1km/h程度、火砕流は100km/h程度、火山泥流・土石流は30〜40km/h程度である。また、温度は、溶岩流は1,000℃前後(800〜1,200℃)、火砕流は数百℃程度である。ちなみに、降下火砕物は風向きに大きく影響され、風下側に降下・堆積する。
火砕流、火山泥流・土石流、岩屑なだれは、一瞬の内に都市を破壊しつくすことがある。このような災害は、20世紀にも以下の2例が発生している。

・プレー火山
西インド諸島マルティニク島のプレー火山の1902年噴火は、火山学的に初めて火砕流現象が認識された噴火である。5月8日に発生した火砕流はブランシェ川の谷に沿って山腹を流下して海岸に達し、火砕サージは海岸沿いに広がって人口2万9,000人のサンピエール市街を襲った。市街地にいて助かったのは2人だけだった。この市街地を襲った火砕サージ堆積物の厚さは1m未満である。その後、火砕流は年末まで繰り返し発生した。

・ネバド・デル・ルイス火山
南米コロンビアの北部アンデス山脈にあるネバド・デル・ルイス火山は1985年9月6日にアレナス火口から水蒸気爆発が始まった。噴火は約7時間続き、融雪泥流が27km流下した。11月13日に噴火が再開し、軽石噴火で始まり、小規模火砕流、火砕サージが発生して氷河を融かし融雪泥流を誘発した。この泥流は東麓のアルメロ市を襲い、人口2万9,000人のうち2万1,000人が泥流の犠牲になった。
次ページ以降に、各火山現象の被害事例を示す。

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