将来の人口変化については、社会経済環境の変化等の構造的な要因により、実体との乖離を生じることもしばしばあり、また、そういった前提の中で首都機能移転の効果を踏まえて試算することは必ずしも容易ではない。しかしながらここでは、参考として、移転に伴う東京圏のおおよその人口変化を把握するとの観点から試算を行った。
試算は、東京都市圏の地域生産関数を推計し、これを用いて、首都機能移転に伴う東京都市圏の人口変化を推計する方法を中心に行った。
東京都市圏の地域生産関数のモデルの考え方
都市圏の地域総生産は、従業者(雇用)数、民間資本ストック、社会資本ストックにより説明されるとする。ただし、中央省庁など首都機能の存在が東京都市圏の地域総生産を拡大させていると考える。首都機能移転により東京都市圏の従業者数及び人口がどの程度減少するかを試算する。
1) 全都市圏の地域生産関数をコブダグラス型の式により構築し、時系列及びクロスセクションのデータをプールして回帰分析
地域総生産
=F (従業者数、民間資本ストック、社会資本ストック、東京ダミー変数、ブロック中枢都市ダミー変数、年)
2) 推定した生産関数を用い、移転に伴う東京都市圏の従業者の増減数を推計
従業者数(移転なし)−従業者数(移転あり)
=f (東京ダミー変数〈移転なし〉、その他の説明要因)
−f (東京ダミー変数〈移転あり〉、その他の説明要因)
3) 移転に伴う東京都市圏の人口の増減数を推計
人口の減少数=従業者の減少数/人口に占める従業者の割合
試算の結果、首都機能移転開始10年後で、東京圏の人口は数十万人程度減少するものと見込まれた。