「土地の円滑な取得の可能性」は土地利用に係る法規制や土地の収益性、あるいは地権者の価値観など、様々な側面の要素から決定づけられていると解される。
ここでは「土地の円滑な取得の可能性」に関する構造把握に当たって、これを「構成軸」、「特性項目」、「要素」に段階的に掘り下げていくこととする。
図3.1 要素の構成
従前の土地所有者の生活に与える影響を極力小さくすること
【特性項目の設定】
「従前の土地所有者の生活に与える影響」の程度を、影響を受ける人数、生活・生産基盤としての土地利用が変更されること、あるいは失うことによる影響及び、例えば先祖伝来の土地を手放すことに対する抵抗感・精神的影響、の3つの側面から検討し、次の特性項目を設定した。
【要素の設定】
・「影響を受ける人数が少ないこと」を構成する要素
一般に、関係地権者数が多い場合には、地権者交渉も大変になる傾向にあると思われる。また、土地の権利に着目すると、借地人の存在は一般的に土地取得の困難性を高めるといわれている。
さらに、土地に着目すると、地権者一人当りの所有面積が大きくなるにつれ、土地の取得交渉相手である地権者数が少なくなる。また、国公有地の存在や、その規模は影響を受ける人数とも関連する。
このため、「国公有地の規模と分布の状況」、「大規模土地所有状況」を要素として考えることができる。この他、「土地所有者の状況」、「生活基盤としての土地利用の状況」についても関連してくる。
・「生活・生産基盤としての土地利用への影響が少ないこと」を構成する要素
生活基盤でない土地、生産基盤でない土地であるならば、その土地を手放しても従前の生活を継続するうえで、それ程大きな影響は受けないと思われる。逆に、現在生活している宅地や、現在耕作している農地等を手放す場合は従前の生活を継続する上で大きな影響を受ける。
生活に与える影響把握には、現況の土地利用を要素として設定することが可能である。また、生産基盤としての土地の状況に着目するならば、土地からもたらされる収益額が少ないほど円滑な取得の可能性が高いと解され、農家・林家と土地の関わりの状況を要素として設定することが考えられる。
なお、土地の収益性は地価に反映されているものと考えられる。しかし、地価には他の要因も影響しているため、異なる地域間での比較は慎重な判断が必要とされる。
このため、「生活基盤としての土地利用の状況」、「生活・生産基盤としての土地との関わりの状況」を要素として考えることが適切である。この他、「国公有地の規模と分布の状況」、「土地所有者の状況」についても関連してくる。
・「土地を手放すことに対する抵抗感」を構成する要素
農業や林業を営む人々の中には、先祖伝来の土地を手放すことに抵抗感を抱く人々は少なくない。地域の特性としてそのような価値観を有している地域もあると推測される。このような「土地に対するの価値観」も要素と考えられる。
また、生活・生産基盤としての土地を手放すことに対する抵抗感を緩和するためには、生活再建の支援方策の内容も重要な要素であり、「生活再建の支援方策」も要素とする必要がある。
この他、「国公有地の規模と分布の状況」、「大規模土地所有状況」、「土地所有者の状況」、「生活基盤としての土地利用の状況」、「今後の土地対策の内容」についても関連してくる。