平成13年3月27日
「新しい都市論を踏まえた移転先新都市のあり方に関する検討会」(座長:大西 隆 東京大学先端科学技術研究センター教授)は平成12年7月25日に設置され、都市計画、都市文化、ライフスタイル等の観点から首都機能の移転先新都市のあり方について検討してきましたが、今般、検討会報告を取りまとめましたのでお知らせします。
報告においては、移転先新都市の形成に当たっては、「今日的都市問題の解決策」と「新たな時代に向けた都市づくりの方向」を踏まえて計画を組み立てるべきであるものとし、この考え方に基づき、(1)都市問題への取り組みのシナリオ、(2)移転先新都市の成長のシナリオ及び(3)≪五感≫的魅力の形成・醸成のシナリオを移転先新都市形成の戦略的シナリオとして提案しています。
大西 隆 (東京大学先端科学技術研究センター教授)<座長>
佐藤 滋 (早稲田大学理工学部教授)
佐藤 友美子 (サントリー不易流行研究所部長)
白石 真澄 (ニッセイ基礎研究所主任研究員)
戸所 隆 (高崎経済大学地域政策学部教授)
村橋 正武 (立命館大学理工学部教授)
以下の基本的考え方に基づき、首都機能の移転先新都市のあり方を検討する。
<移転先新都市形成の戦略的シナリオ>
移転先新都市においては、「新たな都市基盤」、「新たなライフスタイル・ワークスタイル」、「交流の核」及び「≪五感≫的魅力(注)」の4つの階層(レイヤー)が相互に連関し合い、好循環を生み出すことで課題解決を図る。
図1 都市問題への取り組みのシナリオの概念図
移転先新都市においては、国会都市と周辺既存都市が都市ネットワークを構築し、適切な機能・活動面での相互補完的連携を図っていく。それにより、時代の変化や社会経済的な需要に柔軟に対応しながら、また財政支出増を可能な限り避けながら、段階的かつ漸進的に整備を進める。
<まちびらき(国会開催)時のイメージ>(図2)
<発展・成熟段階のイメージ>
移転先新都市においては、我が国を代表する都市としての風格や新都市としての整然性、清潔さ、美しさを確保するとともに、雑然性や喧騒性といった“都市としての面白さ”を新都市でありながら当初から具備するとともに、時代やニーズの変化に対応できる柔軟性を確保する。特に、≪五感≫的魅力を醸成するために、都市の中に市民や企業等が主体的かつ自由に活動を展開しうる部分を十分確保していくことが必要である。
公共性の高い主要な施設・空間に係る建築デザイン、ランドスケープデザイン等については、世界最高水準のデザイン性を展開するべく、国内外の知恵や技術を結集することにより、国際的な観光資源ともなる都市環境としての美しさや質の高さを先導的に実現していく。
民間整備によって住宅、商業・サービス、業務等の機能展開を期待する部分については、リースホールド方式を探る場合であっても、民間の自由度の大きい利用を可能とすることによって、”都市としての面白さ”を規定する雑然的・猥雑的な部分を醸成していく。
都市環境の美しさや楽しさを左右する公共的な空間に面した一定の土地については、開放的な空間が形成されるよう、適切な単位毎に民間同士で一定のルールを取り決めてもらいながら、各々創意工夫に基づく整備・管理を図ってもらう。
公的主体が土地を保有しながら、都市市民に管理・運営させる都市の共有地(いわば”都市の土地”)を、都市内に分散的に確保することにより、都市市民の自発的でユニークな活動を喚起していく。