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検討会報告の概要

平成13年3月 国土交通省国土計画局首都機能移転企画課

1 移転先新都市形成の基本的考え方

首都機能移転により創り出す新都市の形成にあたっては、『国会等移転審議会答申』(平成11年12月)において、「新都市は、我が国の進むべき方向を国の内外に示す象徴となるべきものである。」とされているところであり、まちづくりの観点からは、21世紀の新たな都市の姿を国内外に提案できる好機と認識すべきと考えられる。

そのため、移転先新都市形成の基本的な考え方を以下のように設定し、国内外への主張性を持った都市の創造に向けた戦略的シナリオの前提とする。

首都機能移転により創り出す新都市の形成にあたっては、

  • 「今日的な都市問題」の解決や「20世紀型新都市の限界」の打破に先進的に取り組み、21世紀における都市の姿を国内外に対して提示することを目指す。
  • 課題の解決にあたっては、都市づくりに関する各種先端技術の導入等の創意工夫を図ることにより、それらの先端技術を国内外に波及させるとともに、さらなる技術開発の促進を図る。
  • 同時に、移転先新都市においては、新たな技術等に支えられた市民の新しいライフスタイルの発現を喚起するとともに、我が国を代表する都市として、個性的な交流を支える快適性、自然や文化の豊かさなど多様な魅力を具備するものとする。

(1) 都市問題への取り組みのシナリオ

移転先新都市においては、「新たな都市基盤」「新たなライフスタイル・ワークスタイル」「交流の核」「《五感》的魅力」の4つの階層(レイヤー)が相互に連関し合い、好循環を生み出すことで課題解決を図る

すなわち、

a) 新たな時代に向けた都市づくりにあたっては、土地利用、都市施設、市街地開発等の都市計画が、都市づくりの基本として引き続き重要であるが、価値観が多様化し、また都市づくりに関わる各方面の技術が高度に進展し続ける今日においては、新たな概念を取り入れて新都市の計画を組み立てることが重要である。
b) そこで、都市活動のシステム構成を以下の4つの階層(レイヤー)が積層しているものとして捉え、各々の要素が相互に連関し合い、好循環を生み出すことによって、「今日的都市問題」の効果的な解決を図る。
  ・新たな価値観や都市づくりに関わる各方面の技術を踏まえた『新たな都市基盤』(レイヤー1)
  ・そこで展開する『新たなライフスタイル・ワークスタイル』(レイヤー2)
  ・国内外の人や情報の活発な流動を喚起する『交流の核』(レイヤー3)
  ・“人間の息づかい”が感じられる豊かな環境づくりに資する『《五感》的魅力』(レイヤー4)
c) 環境問題への対応、高度情報化への対応、国際化への対応を通じて、他の都市問題(ex.少子・高齢化)の連鎖的な解決を図る。
d) このような新しい都市のあり方や、今日的都市問題の解決への先進的取り組みの中で生まれた技術の、国内外への波及を図る。

というシナリオを提案する。

(注) ここで『《五感》的魅力』とは、五感すべての働きによって感じることのできるような魅力
(例えば、臨場感、人と人とのふれあい、賑わい等)

1)環境問題への取り組みイメージ

(1)我が国だけではなく世界的な重要問題である地球規模での『環境問題』については、近年世界中において様々な観点からの積極的な取り組みが行われているものの、都市及び地域全体の総合システムとしてその解決のあり方を提示する都市は現れていない。

(2)“環境負荷低減”と“環境共生”を、都市及び地域全体という単位で具現化し、国内外に対してその先進性を発揮・主張することは、我が国が今後国際社会に貢献していくべき重要な課題といえる。

(3)したがって、日本固有の自然に対する価値観に基づきながら、技術革新を背景に、ソフト、ハードの両面から都市及び地域全体のシステムとして環境問題の解決に先進的に取り組み、国内外にそのあり方を発信し、新たな技術開発を促すことを、移転先新都市づくりのテーマの一つとし、これにより“世界都市(注)”性を発揮していく。

(4)すなわち都市・地域全体として、より先進的な環境共生・環境負荷低減に持続・発展的に取り組むということであり、例えば、
a) 化石燃料を使わず、自然およびリサイクルエネルギー等クリーンなエネルギーのみを使用する[ex.太陽光・風力、廃棄物発電、バイオマスエネルギーの利用]
b) 資源エネルギーの徹底的なリサイクルを行う[ex.最先端のリサイクルシステムの導入、リサイクル性の高い商品の消費の喚起]
c) 水の効率的リサイクルシステム(ex.雨水・中水利用)を構築する
d) 環境共生型建築物の整備
e) 環境負荷低減型の交通システム(ex.エコカー、LRT)を確立する
f) 環境共生技術に係る国際水準の研究施設・機関を誘致する
g) 自然環境とのふれあいをカリキュラムとした教育の展開を図る
h) コミュニティ主体での自然環境の管理・運営システムを構築する
などを実現していくこととする。

(注) ここで『世界都市』とは、広く海外とのつながりを持つ意味から一般に使われる『国際都市』という表現に対し、より高次な都市環境を提供し、何らかの分野において『国際都市』の中枢的役割を果たすことで、世界的視野の中で極となる都市に対する表現。

2)高度情報化への取り組みイメージ

(1)『高度情報化』については、急速な技術革新を背景に全世界的な規模で取り組みが進展しており、我が国においても市民・企業等の情報ネットワークを活用した多様の需要に応えるべく、急速にIT(情報技術)化への対応を推進しているところであるが、基盤整備の遅れもあり、国民の全てが十分な形で現時点での技術の全てを享受している状況ではない。

(2)今後我が国が迎える急速な少子高齢化の進展、また、特に首都機能都市として発揮すべき危機管理に係る中枢性の確保などを視野に入れながら、急速に進展するITの革新に対応しつつ、都市・地域全体のシステムとして高度情報化に先駆的に取組み、さらなる技術開発を促すことを、移転先新都市づくりのテーマの一つとし、これにより“世界都市”性を発揮していく。

(3)すなわち都市及び地域全体として、より先進的な形で高度情報化に持続・発展的に取組むということであり、例えば、
a) 高度な危機管理(防災および復興システムを含む)システムの構築
b) 行政情報等のバックアップおよびセキュリティシステムの構築
c) 行政情報等の電子化の推進及び公開
d) 国民の意見収集、個別ニーズに対応した行政サービスの提供
e) SOHO、テレワーク、遠隔地間会議の一般化
f) 教育、医療・福祉等を支えるシステムの構築
g) 安全な電子商取引の実施
h) モバイル型消費活動の拡大
i) 高齢者、障害者、および外国人への生活利便支援サービスの提供・充実
j) 交通需要マネージメント(TDM)や物流ネットワークの構築
を実現していくこととする。

3)国際化への取り組みイメージ

(1)既に世界規模での枢要な経済的地位を獲得している我が国においては、今後も引き続き国際的な人・情報・資金・モノの流れを創り出し、また受けとめることが重要な使命であり、そうした中で移転先新都市においては、首都機能を有する都市としての性格を十分に発揮しつつ、新たな時代における都市として国際化に対応していくことが国内外から要請される。

(2)したがって、高度情報技術等の進展を背景としながら、地球規模での活動の舞台となり、多様な人々を迎え入れる都市及び地域のあり方を具現し、国内外にその取り組みを発信し、さらなる新たな技術開発を促すことを、移転先新都市づくりのテーマ(主題)の一つとし、これにより“世界都市”性を発揮していく。

(3)すなわち都市・地域全体として、より先進的な形でのグローバルスタンダード化(以下に例示)に持続・発展的に取り組むということであり、例えば
a) 国際機関や地球環境保全、医療・福祉、教育等に取り組む国際的NGO、それらの活動支援を含め国際規模での政策提言等を行うシンクタンクの立地誘致
b) 国際社会で評価される、質の高い教育、医療・福祉等の展開
c) 都市内における業務施設や住宅施設に係る環境負荷低減性能やバリアフリー性能等に応じたランク付け及びその公開
d) IT(情報技術)等を活用した多言語対応システム(ex.都市案内、店舗・商品内容案内、交通管制)の整備
e) 国内外の多様な人々の日常生活を快適に楽しくする生活密着性の高い商業、サービス等に係るハード、ソフト面の施設、機能[コミュニティ・インフラ]の整備
f) 多様な分野に係る起業や個人のスキルアップのための、専門性の高い教育機関(ex.大学院大学、トレーニングセンター)
g) 短期〜中・長期といった多様な期間で滞在する国内外からの来訪に供する、リーズナブルで快適な滞在施設の充足(ex.サービスアパートメント、レジデンシャルホテル、スモールホテル(シンプルさとアットホームな心地良さを提供する小規模な滞在施設))
h) 国内外の人々が我が国の伝統文化等に触れ、気軽に体験できる場の整備(ex.日本文化ミュージアム、茶の湯や太鼓等の体験プログラムの提供)
i) 我が国の新たな国家像を主張する都市デザイン、建築デザイン、ランドスケープデザイン等の展開
を実現していくこととする。

■参考:移転先新都市の最重要課題に係る知見の要約

1) 環境と共生する都市のあり方

〈自然環境と共生する都市〉

  • 生態系の保全・創造技術の導入が必要である.
  • 生態回廊やビオトープなどによる都市内での多様な自然のモザイク的整備が必要である。等

〈環境負荷低減型都市〉

  • 環境負荷を低減するための都市計画(コンパクトな都市、土地利用の混在化)が必要である。
  • リサイクルに係る新技術、システムの導入が必要である。
  • CO2排出量削減技術の導入が必要である。等

2) 高度情報化時代における都市のあり方

  • IT(情報技術)技術のますますの発展により、地球上における立地格差が無くなる中で、大容量の情報ネットワークとのアクセス性が場所の価値を決める。
  • 充実した情報のある都市に人々は引き寄せられ、そこで生まれる様々な交流により新たな情報が創出され、発信される。
  • 通信では再現できない《五感》性のようなものが都市の大きな魅力であり、情報化が進んでも都市に人が集まり、交流し、文化を創造する。このため、交流の場として、人を惹きつけるような界隈性が必要である。等

3) 国際都市のあり方

  • 文化をはじめ何らかの分野における世界的な中枢性・中心性を担い、世界に対して様々な情報を発信することが必要である。
  • 異文化、異民族への寛容性が必要である。
  • 快適な生活環境、自然や文化の豊かさ、良好な景観等多面的・総合的な魅力が必要である(子育て、介護、高等教育の観点も含めて)。
  • 国際空港との容易なアクセスが必要である。等

(2) 移転先新都市の成長のシナリオ

移転先新都市については、国会都市と周辺既存都市が都市ネットワークを構築し、適切な機能・活動面での相互補完的連携を図っていく。それにより、時代の変化や社会経済的な需要に柔軟に対応しながら、また財政支出増を可能な限り避けながら、段階的かつ漸進的に整備を進める

すなわち、

a) 移転先新都市(=首都機能移転展開地域)は、主要な首都機能を内包する国会都市及び周辺における中小規模の都市(=周辺既存都市)で構成され、それらが都市ネットワークを構築し、適切な機能・活動面での相互補完的連携を図る。
b) 移転先新都市においては、国会都市及び周辺既存都市とも固有の自然環境を確保しつつ、無秩序な外延・連坦(スプロール化)を抑制する形で、土地利用の誘導策を運用していく。
c) 移転先新都市においては、首都機能関連の移転従業者が周辺既存都市における風土に根差した暮らしぶりに魅力を感じて居住したり、周辺既存都市の住民が国会都市の新しい都市環境を享受するといった、相互補完的な機能連携関係を街びらき当初から構築していく。
d) 国会都市と周辺既存都市の間においては、相互補完的な機能連携を支える交通・情報基盤が整備されており、都市間のネットワークが構築されている。
e) 国会都市においては、周辺既存都市との適切な連携を継続的に図りながら、初期段階において首都機能都市としての一定水準の都市性を確保する。また社会経済情勢の需要に適切に対応しながら、“世界都市”性を発揮していく整備を行い、成熟を期待する。
f) また、国会都市においては、自然との共生や施設間の移動に係るエネルギー消費を可能な限り低減するという意味から、ある程度まとまった都市の機能を、一定の地域に集約して立地させる。
g) 周辺既存都市については、固有の風土に根差した生活環境の維持を図りつつ、国会都市との連携に基づく持続的発展が図られている。
h) 移転先新都市の成熟に伴う居住・交流人口の増加が生じた場合に、国会都市と周辺既存都市との間にその受け皿となるべき小都市が建設出来るよう、スプロール化の抑制策を講じつつ、十分な空間的余裕を当初から確保していく。

という成長・展開イメージを描いていく。

1)移転前段階のイメージ

1 国会都市及び周辺既存都市を含む地域が、移転先新都市(=首都機能移転展開地域)として選定されている。
2 移転先新都市においては、無秩序な外延・連坦(スプロール化)化の抑制策を講じることにより、全体として自然環境の保全が図られている。
3 国会都市をはじめ、首都機能移転に伴う都市づくりに必要な土地については、首都機能都市建設の公的事業主体がまとまった規模の国公有地を含む開発用地区を包括的に取得している。また、その周辺の民有地については、都市づくりに伴う地価上昇を当てこんだ土地投機の防止策が講じられている。

まちびらき(国会開催)時のイメージ

2)発展・成熟段階のイメージ

移転先新都市は、将来にわたり我が国の政治・行政の中心地として、常にその時代において求められる首都機能性を発揮していくことが必要であり、発展・成熟段階においては、現時点では予測できない将来における様々な社会経済的な変化に、柔軟に対応していくことが必要である。
ここでは、下記のような状況の想定に留める。

1 国会都市において、周辺既存都市との機能・活動面の相互補完的な連携を保ちながらも、首都機能をはじめ商業・居住・レジャー・教育等の各種機能が時間の経過に伴い拡充されてきている。
2 同時に周辺既存都市も、国会都市との相互補完・連鎖的効果により、人口増加、都市機能の充実等といった発展を遂げている。
3 移転先新都市の成熟に伴う居住人口や交流人口の増加を吸収する小規模な都市群が、国会都市と周辺既存都市との中間域に、スプロールではない形で整備され、各々都市として総合的に自立しながらも、特徴的な中核機能(ex.芸術活動、医療福祉)を持つことにより、個性を発揮している。
4 国会都市と周辺既存都市・小規模な都市群を結ぶ環境負荷低減型の新たな交通システムのネットワークが強化されることで、移転先新都市全体の移動に係る利便性が一層高まっている。

(3) 《五感》的魅力の形成・醸成のシナリオ

移転先新都市においては、固有の風土を背景とした首都機能都市にふさわしい質の高い都市デザインのコントロールを適切に行いながら、景観の美しさ、楽しさに加え、機能複合的な形での界隈性や雑然性といった《五感》的魅力を、市民や企業が国会都市及び周辺既存都市それぞれにおいて、自由な街づくり活動を通じて生み出し、維持し、醸成する仕組みを用意していく

すなわち、

a) 20世紀型の新都市づくり(ニュータウン、海外の新首都)について指摘される、ハードの偏重や機能純化型の土地利用計画を背景とした“都市としての面白さ”“生活者主体の発想”の不足等に対応することが、新時代につくる移転先新都市の課題である。
b) したがって、移転先新都市については、我が国を代表する都市としての風格に加え、ニュータウンとしての整然性、清潔さ、美しさを確保していくことは当然であるが、同時に既存の都市が持つ雑然性、雑居性、喧騒性といった“都市としての面白さ”を新都市でありながら当初から具備するとともに、時代やニーズにすぐに対応できる柔軟性等を確保することが望まれる。
c) 特に、整然さと雑然さが混沌とする中で生み出される『《五感》的魅力』を醸成していくためには、都市の中に、市民や企業が主体的かつ自由に活動を展開しうる部分を、十分に確保していくことが必要である。
d) 国内外におけるこれまでの新都市の多くのように、全てが計画的であり、また首都機能都市建設に係る公的事業主体が強い土地利用コントロールを行う場合には、整然性は確保されるものの、例えば角を曲がったところに新たなお店を発見したり、住宅地の中に美味しいレストランがあるといった“都市としての面白さ”は実現しがたいと考えられる。
e) そのため、公的主体による都市環境全体の適切なコントロールという発想と、市民や企業(商業者を含む)など民間の自由な活動に委ねるという発想とをうまく組み合わせる仕組みを構築、運営していくこととする。
f) その際、国会都市と連携する周辺既存都市においても、固有の風土に根差した生活スタイルや文化を背景とする魅力をより高めていくことにより、新しい生活者と従前からの生活者との交流性を確保していくこととする。

という発想を導入していく。

1) 《五感》的魅力の形成・醸成に向けた具体的発想

(1)時間の経過とともに美しさや面白さが増すような都市デザインによる全体統合および重層的土地利用方策の展開

  • 移転先新都市形成にあたっては、新たな時代における我が国を表現・主張する都市デザインの考え方を、固有の風土に基づきながら確立し、国会都市ならびに既存都市を含む地域全体の整備に際し、運用していく。
  • 特に、施設や都市内の自然が、時間の経過とともに重厚さや美しさ、面白さが増していくような、いわば“時間を織り込んでいく”ことを見据えた都市のつくり方をしていく。
  • 国会都市においては、新都市の開発にあたって一般的であった機能純化型の考え方と、できるだけ重層・錯綜的な機能展開と密度の高い界隈形成を促す、新たなタイプの土地利用誘導方策を組み合わせながら、社会経済情勢の変化に対する柔軟性と機動性を備えた計画手法を導入していく。

(2)美しさや質の高いデザインの先導整備

  • 新規に建設する国会都市については、我が国を代表する都市として、固有の自然との調和を図る中で「日本」らしい都市美を具備していくことが重要であるため、都市全体の組み立てにあたり、我が国固有の空間デザインの概念(ex.布石、方位)や技法(ex.見え隠れ、折れ曲がり、生けどり)等を、今日的な感性でアレンジしながら導入していく。
  • また、首都機能都市建設に係る公的事業主体や地元地方公共団体等が整備を行う、首都機能関連施設をはじめとする公共性の高い主要な施設・空間に係る建築デザイン、ランドスケープデザイン等については、世界最高水準のデザイン性を展開するべく、国内外の知恵や技術を結集することにより、国際的な観光資源ともなる都市環境としての美しさや質の高さを先導的に実現していく。

(3)民間活動の自由な展開の誘発

  • 《五感》的魅力のうち、特に“都市としての面白さ”を規定する界隈的、雑然的な部分については、市民や企業の自由な展開に期待する。
  • 公的事業主体が包括的に保有する土地のうち、市民(個人)・企業に対して一定長期にわたる定期借地型の利用権を設定する、いわゆるリースホールド方式を採用する場合であっても、民間整備によって住宅、商業・サービス、業務等の機能展開を期待する部分については、民間の自由度の高い利用を可能とすることによって、多様な年齢や国籍等の都市生活者が、日曜休日や夜間においても、様々な活動舞台として街なかで賑わう状況を期待していく。
  • ただし、これら民間による建築等の展開にあたっては、都市全体に係る都市デザインの考え方を背景に、適切な単位毎のゆるやかなデザイン方針だけを規定しながら、およその統一・連続感を誘導していく。

(4)開放的な空間の形成に係る自発的ルールの設定

  • 民間が利用する土地のうち、公共的な空間に面した一定の土地については、後背する部分での利用内容を問わず、都市環境としての美しさや楽しさを左右する重要な空間の1つである。
  • そのため、公共的な空間に面した一定の土地の利用については、開放的な空間が形成されるよう、適切な単位毎に民間同士での一定のルールを取り決めてもらいながら、各々創意工夫に基づく整備・管理を期待していく。

(5)“都市の土地”における民間活動の柔軟で自由な活動展開

  • 一般的に公共の広場的空間において、特に商業的な活動を規制する従来のスタイルに対し、国会都市においては、積極的に賑わい活動の利用等に供する、都市自体に属した「共有地」(いわば“都市の土地”)といった、新たな概念による中間領域を都市内に分散的に確保し、民間利用に供していく。
  • すなわち、公的主体が土地は保有しながらも、一般の公共空間のように利用の制限をせずに、むしろ積極的に都市市民に管理・運営させる空間を確保することにより、例えば屋外マーケットの開催や、多様な市民のパフォーマンス等が自然発生するような“仕掛け”としていく。

(6)長期継続的な街の質に係るマネージメントの展開

  • 街は、その環境の質の維持・発展に対し、長期継続的に管理・運営を図っていくことが、ひいては《五感》的魅力を高めていくことにつながる。
  • そのため、官民の協力を背景としながら、市民が創造性を持って管理・運営に参画することにより、日常生活の視点による街としての賑わいや交流の質を常に高めていく機会を、適切な単位毎にシステム化し、実施していく。

(7)周辺既存都市における固有の風土に根差した魅力の維持・拡充

  • 周辺既存都市において、風土を背景に長い歴史を通じて培ってきた生活スタイルや文化、あるいは景観は、何にも代え難い固有の魅力であり、これを維持し、発展させていくことが重要な課題となる。
  • そのため、移転従業者を含む新しい生活者と従前からの生活者双方における市民活動の交流を通じて、既存の文化・景観等の保全あるいは発展に貢献する機会が発現することを期待していく。

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