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「大災害に備え首都機能を移転しよう」


水谷 研治氏の写真水谷 研治氏 中京大学 経済学部 教授、(株)東海総合研究所 理事長

1933年生まれ。1956年名古屋大学経済学部を卒業。東海銀行へ入行。ニューヨーク支店長、調査部長、専務取締役を歴任。1994年(株)東海総合研究所 代表取締役社長、1998年同代表取締役会長。1999年4月から現職。現在、公務員制度調査会委員、資金運用審議会・道路審議会の専門委員。経済学博士。最近の著書に「日本経済 大転換への覚悟」「ドル大崩落」など。



魅力あふれる東京

東京は魅力のあふれる都市である。一年中、東京はお祭り騒ぎで賑わっている。それが上野から銀座へ、六本木から渋谷へと場が移ることがあるにしても、毎日華やかなお祭りが続いている。昼だけではない。深夜に至るまで人々が寄り集まり活気にあふれている。

東京は若者の町である。若者が一度この魅力に取りつかれたら東京を離れることはできない。

しかも東京は単に若者だけのものではない。すべての人にとって楽しい都市である。年寄りにとっても住みやすい。アパートを下へ降りれば、そこでは何でも売っている。

音楽、芸術、演劇などあらゆる文化が集まっており、毎日楽しむことができる。鉄道網あるいは道路網が整備されており、便利に楽しく毎日を過ごすことができる街である。

その魅力を求めて全国から人々が集まってくる。そして集まった人々がまた都市の魅力を作り出す。東京から離れることは難しい。

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過密に伴う不都合

人々が集まってくると、それに伴って問題が発生する。その問題が人々を苦しめる。大勢の人々が困っていることは解決する必要がある。最大多数の最大幸福を追求するのが民主主義である以上、多くの人々が直面する問題に対処しなければならない。

問題が解決されていく。たとえば交通渋滞がある。それを緩和するために鉄道網が整えられていく。地下鉄が縦横に走り、それが整備されていく。列車の本数も多く、それが深夜まで動いており、極めて便利である。高速道路網が作られ、従来の道路の整備も進んでいる。

多くの問題が発生する都度、それに素早く対応するのが東京である。全国のどこも真似のできない早さである。

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課題の解決と残る魅力

深刻な課題が生じるたびに次々と解決されていく。すると魅力が残る。その魅力を求めて人々が全国から集まってくる。そして新しい課題を生み出す。しかし心配はいらない。それらの課題は早々に解決されていく。すると魅力だけが残る。それが人々を全国から吸引する。このようにして大東京は拡大を続けてきたわけである。

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解決不能の問題

ところが、すべての問題が解決されていくわけではない。解決不能の問題がある。一つは水の問題である。

これだけ多くの人口が使う水は単に生活のためだけではない。膨大な水を地下から汲み上げれば、やがては地下水がなくなってしまう。長い期間を考えれば、しょせん水は天からの貰いものである。関東地方の水の賦存量から考えると、現在はすでに限界に近づいている。

すなわち特別の大きな台風でもないかぎり、首都圏は原則として水不足が続き、それがより厳しくなることは明らかである。

水不足の問題を解決する方法として海水の淡水化がある。技術的にはできないことではない。しかしそれには相当な費用が掛かることを忘れてはならない。もはや大東京が効率の面で維持できなくなっているのである。

さらに大きいのは災害対策である。幸いにも、このところ極端な大災害は起こっていない。しかし、どのような地域でも天災や人災が起こることを前提にしておく必要がある。特に我が国の歴史を見ると南関東地区にかなり大きな地震が起こる可能性がある。

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大災害の被害は全国的

一定の周期で起こるとされる南関東で大地震が発生した場合、どのような事態になるかをNHKと共同で東海銀行がシュミレーションをしたことがある。国土庁の想定を元にしているものであるが、その結果は惨憺たる状況になる。その有様をNHKのテレビで見た多くの国民が衝撃を受けた。

要するにこれほど巨大化した都市は防災の面では対処不能なのである。

好きなように集まってきている人々が死んでいくのは勝手であるという意見もある。しかし、その可能性が強いにもかかわらず放置しておくことは良いことではない。

大東京には情報をはじめ、すべてのものが集中している。そこが大災害によって被害を受けた場合、全国の機能が麻痺してしまう。それが世界全体にも影響を及ぼす。その意味では大東京の問題はすでに一東京地方の問題と静観しているわけにはいかない。全国的な問題として考える必要がある。

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政治機能は便利な所へ

現実問題として人々が勝手に行動するのを止めるわけにはいかない。ところが人間が変えることのできる部分がある。首都機能がその代表である。首都機能は何も大東京になければならないわけではない。したがってせめて首都機能だけでも移しておくことが必要であると考えられる。

新しい首都は便利なところが良い。その意味で今の東京は便利過ぎるということが言えるかもしれない。それは首都であり、全国の人が集まりやすい機能が整備されているからである。その首都機能を他へ移すとすれば、すべての人が不便と感じるであろう。その不便さを小さくしなければならない。

多くの人々が集まるのに一番望ましいのは人口の重心である。それは岐阜県の郡上郡にある。その近くが望ましい。

幸いなことに、交通については極めて便利になっている。東海道新幹線があり、将来的にはリニア中央新幹線が通るはずである。東名高速道路と中央自動車道さらには東海北陸自動車道が走っており、目下、第二東名、第二名神高速道路が建設中である。中部国際空港の建設計画も進んでいる。これが人口の重心の近くにあるのである。

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既存都市の機能利用

新しい首都を人跡未踏の場所に作り出したいという魅力に駆られることがある。白紙に都市計画を作るのは技術者の夢である。

かつて多くの世界の首都が作られた。しかし現実にはなかなか都市は機能しない。それは人の問題を余りにも物理的に考えるからである。人間の生活には、それなりの営みがあり、“赤ちょうちん”が必要なのである。それを既存の都市機能を利用することによって求めることができるのが理想である。

このように考えると名古屋の東部丘陵地帯は一つの適地である。

幸いにして水資源は豊富である。それは中部山岳地域と言う膨大な水瓶を抱えているからである。それは又勇壮な山岳リゾート地帯でもある。山があって海がある。志摩半島のリアス式海岸はまた有名な海洋リゾート地域である。

ここには古くからの文化が存在する。伊勢神宮、熱田神宮がその代表である。このような地域を地域住民だけの利用に任せておくのは、もったいないことである。日本の首都として国民全体が将来にわたって利用するべきであると考える。

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