ホーム >> 政策・仕事 >> 国土計画 >> 国会等の移転ホームページ >> 国会・行政の動き >> オンライン講演会 >> 「国民の生活を豊かにする首都機能移転を」

国会等の移転ホームページ

「国民の生活を豊かにする首都機能移転を」


鳥羽 博道氏の写真鳥羽 博道氏 株式会社ドトールコーヒー代表取締役社長

昭和12年生まれ。昭和33年ブラジルへ単身渡航。コーヒー農園等で3年間働いた後、帰国。昭和37年理想の会社を自らの手でつくろうとドトールコーヒーを設立する。現在、ニュービジネス協議会副会長、日本フランチャイズチェーン協会理事、全日本コーヒー協会理事、日本家庭用レギュラーコーヒー工業会副会長。著書に「想うことが思うようになる努力」。



住宅と住環境を改善する

私の考えは、国民生活を豊かにしたい、特に先進国の中でも劣悪な住宅と住環境を改善したい、その目的を達成する一手段として、国会や中央省庁などを新しい政治都市へ移転することが必要だというものです。

30年ほど前にドイツを訪れたとき、住宅と住環境の美しさに感動したことを覚えています。それに比べて日本の住宅と住環境はどうしてこんなに貧困なのだろうかと考えると、日本は国土が狭いから住宅が狭いんだということで、みなが納得してきてしまった面があるのではないでしょうか。私は若いときにブラジルに渡りましたが、ブラジルは日本の20倍以上の広さがあるにもかかわらず、高層マンションをたくさんつくっているのです。ですから土地が広い狭いという問題ではなく、土地の利用の仕方に問題があると感じたわけです。土地が狭いから住宅が狭いのも仕方がないのではなく、土地が有効利用されていないために貧困な住宅と住環境を余儀なくされているわけです。

それで私は「30歳、3LDK、30坪、3千万円構想」を訴えています。現在の日本の少子化問題も、要は子供を産める環境が整っていないことに原因があると思います。30歳くらいで二人子供を産めるような住スペースが確保できれば、少子化問題もかなり歯止めがかかるのではないでしょうか。住宅と住環境の整備は消費の拡大にもつながってくると思います。ただし、これを実現するためには建ぺい率と容積率に対する抜本的な規制緩和が必要です。東京都心には低層住宅がかなりあります。このうちの10軒が集まって500坪になるとします。建ぺい率は30%にして150坪しか建てられないようにし、そのかわりに容積率を520%にすると、18階建てにすることができます。容積率の優遇策を講じるかわりに1割の50坪は道路の拡幅のために寄付してもらいます。こうすることで道路が整備され、戸数も大幅に増え、300坪の緑地が生まれ、日照権の問題も解決されるはずです。高齢になった家の持ち主は、増えたうちの何戸かを売ったり貸したりするなど、いろいろな選択肢を持つことができます。このようなモデルをつくることによって、なるほど自分たちもそういう生活をしようかということになっていくのではないかと思うのです。

ページの先頭へ

富士の裾野に政治都市をつくる

3LDKに30坪のゆとりあるスペースを確保するとなると、東京への一極集中という過密化の解消が大前提になります。そのためにはアメリカのワシントンD.C.のような政治都市をつくってそこに移動する必要があります。移動する場所は、第二の成田空港のようになってはいけないという見地から、人の住んでいない国有地にすべきです。国有地の中では自衛隊の演習場がある富士の裾野がいいと思います。

富士をバックにして国会議事堂をつくって中核に据える。あわせて議員会館も現在の3倍から4倍の広さにする。私たち国民の代表ですから、執務室、応接室、秘書室、給湯室などゆとりあるものとして、議員の方々が外に事務所など持たなくていいようにすべきです。また、各省庁等、行政機関で働く官僚の人たちの住宅も、クラスに応じたマンションをつくり、次官・局長クラスでは、外国の要人を自宅でもてなすことができるくらいの一戸建てを提供すべきだと思います。

新都市で重要なのは交通です。まず、国際空港を設置して各国の要人が直接乗り入れることができるようにすべきです。余談ですが、現在の成田空港は貨物専用空港とし、関東圏に国内空港とのアクセスを充分に可能とした国際空港を作ることが、21世紀の世界の中心都市となるためにも絶対に必要なことです。

また、今の技術を持ってすれば、東名高速道路の上にリニアモーターカーを走らせることも十分可能だと思います。そうすれば東京と富士の裾野も15分くらいで結べることになります。さらに鉄道でも道路でも2つのルートを交差させることが重要です。ブラジルがリオデジャネイロからブラジリアに首都を移転したとき、交通の流れのないところに都市をつくってしまったことが大きな失敗であったと思います。都市というのは回遊しないと栄えませんから、もう一つの地域と結んで環状線のようにするのがいいと思います。

ページの先頭へ

現在の国会議事堂は建国歴史館に

現在の国会議事堂には日本の有史以来の歴史をすべて集め、博物館あるいは美術館にします。英国の大英博物館、フランスのルーブル美術館、米国のメトロポリタン美術館に匹敵するものを日本につくってもいいのではないでしょうか。国会議事堂の前には日本の有史以来の貢献者の銅像をつくり、修学旅行などで来た小学生や中学生が有史以来の美術、文化を学ぶと同時に、日本のために貢献してきた人について学べるようにします。例えば渋沢栄一は日本初の株式会社を作り、総計約500社にのぼる企業の設立・育成に関与し、日本の産業の基礎をつくり上げた人です。そういう人をもっと讃えることが重要だと思いますし、子供たちも先人の功績の一端に触れることで、将来自分もそうなりたいという気持ちにつながっていくのではないかと考えます。移転で空いた永田町の議員会館の跡地には、大インテリジェントビル群をつくって、都内に分散している中央省庁の支部部局、公社公団などをすべて一堂に集めます。そして地下には富士政治都市と直結するリニアモーターカーの駅をつくれば、日常業務の支障もほとんどなくなると思います。

ページの先頭へ

統県置州を同時に進める

権力のあるところに人が集まってくるわけですから、今の政治システムをそのまま移転してもだめだと思うのです。権力の分散が必要だということになると、「統県置州」によって権限を移していくことが必要です。統県置州というのは、関東でいえば一都六県を関東州とし、この州に現在の中央省庁の持つ権限を移行していくことです。権力の分散が必要であることは、アメリカのワシントンD.C.やドイツのボンが肥大化しないことからも明らかです。中央省庁の仕事は国家予算であるとか国防など本来国がやるべきことに限定し、それ以外の職務は州に権限を移していくのです。そして、市・町・村を合併させ、政治を行うべき単位を市・県・州・国とすべきです。さらに言うならば、政治を国民により身近なものとするためにも首相公選制を実施すべきだと思います。

こうしたことを進めていく際に何より重要なのは、国民の生活をどうしたいのかという前提に立つことです。そのための統県置州であり、そのための国会移転でなければなりません。シンガポールがマレーシアから独立したとき、首相であったリー・クアンユーはすべての国民に仕事を与えたい、すべての国民に住宅を与えたい、シンガポールを公園国家にしたい、という国民にもっとも密着した目標を立てました。そしてヒト・カネ・技術の誘致を図り、軽工業からレベルの高い工業に移行する、さらに金融国家を目指す、国際会議場を用意して観光立国を目指すというようにシンガポールの発展と国民の豊かさを追求し、先手、先手を打っていきました。そして30年あまりでシンガポールを世界で最も競争力のある国にしたのです。日本も政策次第でいくらでもできると思います。

ただし、遷都のための遷都になってしまっては何のプラスにもなりませんし、国民の賛同も得られません。いかにして国民のプラスになることをするかということから考えを進めていくことです。国民一人ひとりの生活を豊かにするためには、国民の住宅と住環境をいかに高めていくかが重要な問題であり、首都機能移転はその延長線上にあるべきものです。そこに消費が起き、この時こそ日本の永続的繁栄の強固な基礎を作るべきです。過酷な通勤地獄の問題の解決にもつながり、同時に少子化の問題、さらには防災都市の建設も地震が起きた場合には近くの公園ではなくて、近くの建物に逃げ込めば良いという安全策を取るべきです。なぜなら、阪神・淡路大震災において、新しい建築基準にかなった建物はほとんど到壊しなかったことがそれを証明しております。

このような諸問題を同時に解決するための政治都市の移転であり、21世紀の中心を成す国際都市の誕生となることを強く切望します。

ページの先頭へ