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「首都機能移転は地方分権優先で」


ケント・ギルバート氏の写真ケント・ギルバート氏 カリフォルニア州弁護士

1952年アメリカアイダホ州に生まれユタ州で育つ。ブリガムヤング大学大学院で法学博士号・経営学修士号を取得。企業の法律コンサルタントとして活動中に、外国人劇団にピンチヒッターで出演したのがきっかけでテレビ番組に出演。一躍有名となる。最近は国際的視点を持ったニュースパーソナリティとして、日米関係をはじめ多数のテーマで執筆・講演活動を展開中。著書に「国際化途上国ニッポン」「不思議な国ニッポン ケントギルバートの素朴な疑問」など多数。



地方分権を最優先に

首都機能移転の意義の一つに掲げられている一極集中の問題は私も感じていますが、それを解決する方法は首都機能移転だけではありません。一極集中を解消するためには、地方分権がもっとも効果的だと思います。思い切り地方分権をして、極端な話をすれば、国税と地方税の比率を逆にして、補助金制度をやめる。そして過剰となった国家公務員を地方公務員に移すことで、かなりの効果が見込めると思います。

これからは地方の政府機関になるべく任せることが必要です。中央で決めていることが多すぎます。言葉は良くないかも知れませんが、「参勤交代」をやめたいのです。各県が東京都内に会館を持っているのはなぜでしょうか。しょっちゅう東京に陳情にきているからです。東京にいなければならない理由がみつからない省庁や機能の一部は移転してもいいと思いますし、東京は一番災害を受けるところですから、災害対策を行う機能は東京にない方がいいと思います。しかし、思い切り地方分権をすることこそ私が考える究極の解決方法です。そうすると首都機能を移転した場所だけでなく、各都道府県が活性化できます。

これに対する反論としては、県ごとにばらつきがでるのではないかという意見もあります。けれども、それでいいのです。ばらつきが出るということは比較する材料ができるということです。比較材料が出ると善し悪しが分かるのです。アメリカでは2年前に福祉改革を行い、国の権限を州に委譲しました。その結果、50の州がそれぞれ異なった福祉政策を実施しています。5年もすればどれがもっとも優れているかわかるようになります。どれが失敗だったかもわかります。これは実施してみないとわからないことです。最終的な判断を下すのはまだ早いかも知れませんが、とりあえず今の時点では良い成果を生んでいます。同じお金を使うにしても地方でやった方が効果が出ると思います。なるべく国民に近いところでやると効率が良くなるのです。私は税率を下げろとは言っていないのです。効率を上げましょう、同じ税金を使うのであれば一番効率が良いところで使いましょうということです。競争させることによって、いい政策がどういうものかということがそれなりにわかってくるはずです。

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議論をミックスしないで順番を明確に

首都機能移転を国政全般の改革のきっかけにするということもわかりますが、地方分権や行革はきっかけがなくてもやるべきなのです。私が普段から疑問に感じていることは、日本ではよく二つの問題をミックスして議論することです。そうすると焦点がぼやけます。首都機能を移転するかどうかは地方分権や行革とは別の話です。首都機能移転をやるから改革が進むというと議論がミックスされてしまうのです。

万博のように大きなイベントや催しを仕掛けない限り、大きな変革を起こすことができないという考え方にも反対です。ここでも議論がミックスされています。再開発をする意味合いがあるのであれば万博をやるやらないにかかわらず、再開発をすべきです。それは冷静に考えてやればいいことです。地方分権や行革は移転をしようがしまいが重要な課題ですから、やるべきなのです。私が言いたいのは、地方分権と行革を先にすべきだということです。その上であれば首都機能を移転することもいいと思います。いっしょにするのではなく、順番を明確にすることが必要だと思います。

そして、物理的なものと政治的なものとは区別しなければいけません。行革はきわめて政治的な話ですから実現できる可能性はあるかも知れないし、ないかも知れない。物理的なこととして、災害対応はしなければいけないので、これは政治的な要素はほとんどありません。

災害の問題に関連して言えば、災害対応機能の移転も必要ですが、中央だけが危機管理の素晴らしい計画を持っていても、地方に実施できる力がなければ仕方ありません。中央がすることは管理ではなく、あくまで支援です。日本の交通網は一つの動脈が中心になっているので、真ん中を切断されたときに西と東が分断されてしまいます。阪神・淡路大震災のときも道路も鉄道も遮断され、飛行機で飛び越えるしかありませんでした。今度東京が被害を受けたら、地方で大変な混乱が起きると思うのです。その意味でも地方の強化が必要だと思います。

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透明性を確保し、国民が誇りに思える首都機能移転に

本来的に私は首都機能移転の考え方には賛成です。アメリカがニューヨークを首都にしなかったことで、アメリカの各都市が発展できたように、東京をニューヨークとワシントンのようにうまく機能分離できればいいと思います。ただ、今の議論を見ていると、利益誘導型の公共事業になってしまうのではないかという危惧がぬぐえないために、全面的に賛成できないところがあります。実施するのであれば徹底的に腐敗を排除して欲しいと思います。談合はいっさいあってはなりません。談合があれば今試算されている費用よりずっと多くのお金が必要になります。外国の建設会社も入れて、国際コンペを実施することで、談合はいっさいないようなシステムを作るべきです。移転する場所も政治的な力関係で決めるのではなく、そこを機能的な場所にできるという自信のもとに移転先を決定して欲しいと思います。

そして、象徴的な建物をつくるのであれば、100年、200年、500年誇れる素晴らしいものにして欲しいと思います。今の最高裁判所は建築物として、そのような素晴らしいものだと思います。あのようなレベルのものにしていただきたいと思います。毎年必要な人件費と違って一時的な出費ですから、多少お金がかかってもいいと思います。木造建築の国会をつくるというのもおもしろいアイデアだと思います。環境に配慮し、機能性に富んだ、国民が誇りに思えるものにぜひして欲しいと思います。

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