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「政治・行政改革をともなった首都機能移転を」


福岡 政行氏の写真福岡 政行氏 白鴎大学 教授

1945年生まれ。1968年早稲田大学政治経済学部卒業、73年早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了。

1980年駒沢大学法学部助教授、1992年より白鴎大学法学部教授。専門は政治学。全国各地から得た生の情報をもとに実証的政治学を研究。また、ボランティア活動にも積極的に関わっており、阪神淡路大震災被害者等の支援活動をゼミ学生とともに行ってきている。「アシスト(ジャパン)の会」事務局長を務める。

最近の主な著書は、「日本の選挙(増補版)」「十年後ニッポン」「もう首相はテレビ討論で決めよ」など。



集中の是正が必要

現在私は栃木県の大学に勤めているので、地元JCや若手議員さんや市長さんたちと、また、岐阜県の大学で客員教授をしている関係などで岐阜の方々とも何回か会合の機会がありました。その中での私の感じですが、首都機能移転に対する地域の関心が高いという印象を持っています。

「一極集中論」という論があるけれども、私自身の基本的な考え方は、日本は実は「三極集中」ではないかと思っています。すなわち、まず全国的には東京に集中し、次にブロックの中では、東北地方なら仙台、中国地方だと広島、九州地方では福岡に集中していると思います。さらに県の中では、県庁所在地を中心に人が集まっています。

平成2年前後は、集中の弊害で様々な意味での混雑現象がありました。そして、日本経済が常に右肩上がりで行くという前提で、そのような混雑現象も続くだろうと考えられていました。今日、日本経済は右肩上がりではなくなりましたが、そうだとしても依然として日本の集中現象には非常に大きな問題があると思います。

例えば、東京にこんなに大学がある必要はありません。少なくとも地方の国立大学や有力大学が地方教養部をつくるといいと思います。例えば、北海道の苫東あたりに有名大学が合同で教養部をつくります。そこで自分に合っていないと思えば、試験を受けて都市部の大学に移ることができるという形にすれば、地方がもっと活性化し、学生たちの勉強も変わってくるでしょう。地方には学生たちのアルバイト先がないなど、いろいろな問題はありますが、少なくとも東京に大学が集まる必要はないと思います。

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「分都」で連携・ネットワーク型の都市づくりを

本年9月のニューヨークでの同時多発テロに、子供たちが平和のメッセージを世界何十箇国からニューヨークの子供たちに送っています。今はそういうインターネットの時代です。これだけ情報交換のツールが多様化し普及して、ブロードバンドになってきて、SOHOのような勤務形態が増えてくる社会では、首都機能は一箇所に集中している必要はほとんどありません。

また、省庁が霞が関に集中し、霞が関が日本を動かすという発想もいけないと思います。21世紀の日本のあるべき姿は、分散型でネットワーク型と言われます。また環境の面からも日本の再生につなげるということで、一括して首都機能を移そうとしなくてもいいのではないか、少なくとも「分都」に近い形で論ずべきではないかと思います。

例えば農水省は東北であれ、新潟であれ、どこかに出た方がいいだろうし、外務省や経産省は東京と別にあってもいいでしょう。国土交通省も含めて、東京でなくてもそれこそ日本の中心部の岐阜あたり、日本全体を見るという観点から第2東名の地域に移転してもいいと思います。国会も、飛行場の整備を前提に、東京から短時間に新幹線で行ける場所に移すのがいいでしょう。そういうことも含めて、首都機能が全部一緒である必要はないと思います。またそのとき、同時に無駄なこともやめるべきです。

新都市のイメージは、人口100万人を超えない方がいい。市町村は合併し、50万人から100万人以下、小さいところはせいぜい10万人にします。連携・ネットワーク型の都市をつくっていくことを考えると、中央官庁の分散を含めて、首都機能の形を変えながら、整理をしていくことが必要だという気がします。

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「変える」勇気を

財政面を考えると、必要な公共事業と必要でない公共事業を峻別すべきです。道路や新幹線は都市と都市を結ばないと意味がないので、それはそれとして認める。「国土の均衡ある発展」という発想は古いかもしれませんが、それもある程度必要だと思います。また、無駄につくられている建物なども峻別しないといけません。もう右肩上がりで何でもつくっていいという時代ではないのだから公共事業のプライオリティーをつけ、「変える」「捨てる」という勇気を持つことが必要です。

小泉内閣になり、都市再生論が出てきて、道路特定財源の一般財源化と、地方交付税の整理の問題が出てきました。これは全部改革に向けて軌を一にしている問題ですし、そのことは道路公団の民営化の問題にもつながってくると思います。また、都市に住む人からすると、都市で集められた税金が地方で使われていることに不満が高まっているのではないでしょうか。そこで若い人の間には都市新党をつくってほしい、といった考えも強まっています。

これらの問題の根源には、様々なものが過度に東京に集中していることがあります。日本人の心の中には、「みやこ志向」的なものがあり、都市に集中する傾向があることは理解できますが、こうした傾向を変えることがいま必要になっていると思います。そのためには、大規模な首都機能移転でなくてもかまいません。小規模な分散型の移転でよいと思います。

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首都機能移転をすればどうなるかを明確に

首都機能移転をきっかけとして、国会議員や官僚も「痛みを分かち合う」「率先して痛みを受ける」ということになれば、国民に理解されるのではないでしょうか。国会の移転に合わせて、国会議員も削減するとか、人事院勧告を3年ぐらい凍結すれば、浮いた人件費を例えばITに関する補助教員の採用など雇用の創出につなげることができるのではないでしょうか。

必要な公共事業と必要でない公共事業を峻別した上で、「このように首都機能移転すればこうなる」ということを、わかりやすくプレゼンテーションすることも必要です。そして、そのプレゼンテーションを通じて、「皆で日本をよくしよう」という気持ちを国民全体が持てるかどうかが、移転実現への大きな鍵になるのではないかと思います。

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