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国会等の移転ホームページ

「日本を元気にする首都のあり方」


中邨 秀雄氏の写真中邨 秀雄氏 吉本興業株式会社 代表取締役会長

1932年大阪市生まれ。1955年関西学院大学文学部卒業、同年吉本興業株式会社に入社。花菱アチャコのマネージャーを務めた後、「ヤング・オー・オー」などの人気番組の制作を手がける。取締役制作部長、常務取締役、代表取締役副社長を経て、91年代表取締役社長に就任、99年代表取締役会長。その間、明石家さんま、島田紳助、ダウンタウン、桂三枝、桂文珍など数々の人気タレントを育てる。

著書に『「笑売」心得帖』(東洋経済新報社)、『自分が楽しむ。だから成功する』(PHP研究所)、『元気と勇気とやる気がわき出る本』(小学館)などがある。



限界にきている東京 − 国会等の移転の早急な決断を

政治や経済などがこのまま東京一極集中でいいのかどうか、これは子々孫々を考えた場合、このままでは東京は絶対住みにくいまちになるのは間違いないでしょう。それには今から何とかしないと、50年、100年後に間に合いません。

環境問題一つとっても、このままだと東京は人間が住む土地ではなくなるのではないか。それには今から準備をして、政治と経済の分離をして、国会や省庁等をまず地方へもっていく必要があるのではないかと思います。

なぜ東京に一極集中したかということを考えると、行政も政治も経済もやはり近距離にあるほうがやりやすいからでしょう。しかし、ITの革命ということを考えたら、距離が遠くても、近くにいるのと変わらなくなります。それにリニアモーターカーが走るようになれば、短時間にフェース・トゥ・フェースで話せるような時代が来るのではないでしょうか。将来に向けて東京から何を移転させるかは別としても、東京の人口を減らすことをまず考えないと、人間の住めない土地になってしまうので、できるものから地方へ移すべきではないかと思います。

今までの歴史を見ても、また世界のどの都市を見ても、東京のようにこれだけ何もかもが集まっている都市というのはないでしょう。首都機能が東京になくても差し支えないですし、何を分散させるのかはいろいろ考えられますが、早く手を打たないと、間に合わなくなってしまいます。

この50年で世の中全体がどれだけ変わったか計り知れません。今後、特にITによって世の中が急激に変化していきますので、国会等の移転問題も少なくとも30年、50年先を見据えて考えなければならないでしょう。

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政治、経済だけではなく文化までもが一極集中

東京一極集中は、政治や経済だけの話ではなく、文化の一極集中も起こっています。メディアにおいても、全て東京に集中しています。例えば、広島対巨人の試合にしても、必ず東京をキー局にして全国へ流していますし、名古屋の情報にしても、一度東京へ持っていって、東京のキー局から全国へ流すという仕組みにしてしまいました。

東京は地方とのネットを全部持っていますが、大阪は持っていないため、大阪から地方へ情報を発信しても万遍なくは届かず、どこかで途切れてしまいます。しかし、東京から情報を発信すると、もう沖縄から北海道の隅までいきわたるのです。

特にエンターテイメントの世界というのは一番新しい本物を見る必要があるので、私は、うちの若い連中に対し、何をするにしても「ほんまもん」を見てこい、と盛んに言っています。ところが、外国から来たものは大阪まで来ないのです。全部東京でとまってしまいます。そのため「ほんまもん」を見るために、有給休暇を使って自前で本場まで行ってこい、会社の金で行ったら身につかんぞ、ということになるのですが。

ところで、ブロードウェイにミュージカルを見に行くにしても、関空からのニューヨーク行きがありません。こんな都市に文化が栄えるはずがありません。「ほんまもん」を見てこいといっても全て成田経由です。これは一極集中の弊害の実にいい例ではないかと思います。

また、交通機関の発達で東京と大阪の距離は近くなったので、短時間で見に行けるならとみんな東京へ行ってしまうという弊害もあります。国立劇場も東京につくられていて、大阪にあるのは国立の文楽劇場だけです。文楽は近松ものが多く、近松というのは関西から出たことがないので全て大阪弁だったということから、国立劇場の文楽座だけは大阪につくったということでしょう。

また、テレビというメディアが発達し、特にこのごろはハイビジョンという映像が発達したことによって、東京から来た情報で大阪でも辛抱してしまうようになりました。東京の人も、上方の文化であってもわざわざ大阪にまで見に行く必要はないということで、ここ最近は大阪の劇場がたくさん閉鎖しています。交通やメディアの発達によって、東京が一人勝ちしてきたため、逆に、大阪に人を引き寄せるパワーが小さくなってしまったように感じます。

交通もこれだけ発達してくると、これからは専用機の時代になるだろうと思います。関西でも神戸沖の第2空港が予定されていますし、建設予定のものも含め多くの空港が立地する時代が到来すれば、恐らく経済界でも、大臣でも、プライベートの飛行機を持つことが当たり前にようになってしまうのでしょう。そうすると、移動などというのは実に簡単なことです。アメリカでは経済人やゴルファー、球団などが飛行機を持っているのが当たり前ですし、政治の中心ワシントンと経済の中心ニューヨークが400キロも離れていても、何の不便も感じずに行き来できます。間もなく日本もそういう時代がやってくるかもしれません。

しかし、これにより東京一極集中がますます進んでしまうのは問題です。このまま放置していたら、子々孫々に禍根を残すのではないでしょうか。

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大衆に受け入れてもらうためにはメディアを利用すべき

首都機能を移転させることは、東京一極集中の問題を解決するためにとてもインパクトがあり、できるところから進めるべきだと思いますが、一般の人々の間ではほとんど話題になっていません。このような話題を大衆に近づけていくには、マスメディアを使うのが一番早いのですが、面白くなければ一般国民はついていきません。娯楽の中にこういうものを入れていくと、一般国民はいくらでも興味を持ちます。このような堅い話でも、やりようによってはいくらでも面白くできるのです。例えば、徳川夢声さんと金語楼さんが「こんにゃく問答」というのをやっていました。徳川夢声さんが知識人で、金語楼さんが一般国民という立場での質問をしていたのですが、夢声さんが実に上手に解説をなさったのです。そういうものがテレビの初期にありました。

やすし・きよしの頃にも、第二臨調の土光敏夫さんの秘書の方がお見えになって、臨調のPRに土光さんとやすし・きよしが対談するという企画を持ってこられました。土光さんが言っていることを、やすし・きよしの口を通すことによって、国民の方々にもよく分かるのではないかということでした。堅い話でも面白おかしくすることによって、大衆に受け入れてもらえるわけです。ただ、残念なことに、その秘書の方がやすし・きよしの漫才を見て、あまりにもアドリブが多いことに驚いて、結局この企画はやめようということになってしまいました。

政治などの大事な問題を国民に近づけるためには、わかりやすく、面白くしないといけないですし、それにまじめに取り上げないといけない。最近はそのような硬派な番組も多くなってきましたので、この問題を大衆に受け入れてもらう方法も工夫しだいで数多くあると思います。

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女性にやさしく、住みやすいまちづくりを

これからは高齢化社会に入っていくのと同時に人口が減ってきて、2050年には1億人を切るであろうと言われています。将来、高齢化社会になっていかざるを得ないわけですが、その場合、労働力が不足していきます。そうすると必然的に、特に女性のお力をおかりする以外にないのです。これからの世の中は女性を中心に考えないと、うまくいくはずがないと思います。これからのまちづくりを考えた場合、バリアフリーはもちろんのこと、特に女性にやさしいまちにすることを心がけなくてはいけません。新都市づくりの際には、特に必要なことです。

汐留や品川のような高層住宅も都市の機能としてはあっていいのですが、何もかもそこに集中したら、住みにくいまちになってしまうことが容易に想像できます。政治、経済、文化を分散し、それらの跡地を活用して、東京をもっと住みやすいまちにしていくことを考えていけばいいのではないでしょうか。

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