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ファインダーから見たこれからの首都の姿

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織作 峰子氏の写真織作 峰子氏 写真家

1960年石川県生まれ。1981年ミスユニバース日本代表に。1982年大竹省二写真スタジオに入り、1985・1986年全国二科展入選。1987年独立。以降、女性の優しい視線で世界各国の美しい風景や人物の瞬間を撮り続けている。日本全国で写真展を多数開催するかたわら、テレビや講演に幅広く活躍中。

また、2004年大阪芸術大学写真学科助教授に就任し、2006年より教授。2005年よりテレビ東京放送番組審議会委員、東京都「公共空間において多数の者を不快にさせる行為の防止に関する検討会」委員。

主な著書・作品集に『BOSTON in the time』(光村印刷出版),『Memories of New Zealand』(光村印刷出版),『DIMENSIONS』(講談社),『TURKEY』(橋本確文堂),『IMPRESSIVE PHOTOGRAPH』(広美出版事業部),『MAGYAR』(講談社),『光彩上海』(朝日新聞社)がある。


<要約>

  • 今の東京をビジュアル的な観点から見れば、そんなに悪いとは思わない。ただ、東京に機能が一極集中して過密になっているので、少し息苦しくなっている。ゆったりとした環境も大事ではないか。
  • 私の考える「いい都市」は、人々が憩えるようなイメージのある都市。ゆったりとすごすことのできる大きくて緑豊かな公園が身近にある都市であれば、豊かな暮らしにもつながっていくのではないか。本当の贅沢というのは、ゆったりと時間を楽しむということだと思う。
  • 東京にしても、もう少し緑が増えてくれば、空気の感触が変わってくると思う。自然のあるエリアを増やすことが土地のない日本では一番の贅沢ではないか。これからの都市を考えるときは、一人でも多くの方に自然と触れられるチャンスを与えていただきたいと思う。また、自然が豊かなことも大事だが、交通アクセスも重要。
  • 新しい都市は、100年後、あるいはそれ以上先の姿を見越した都市をつくるようにしてほしいと思う。自分の国の象徴として、さすがと思ってもらえるような日本人として誇れるものであってほしい。

東京のビジュアルと危うさ

今の東京をビジュアル的な観点から見れば、私はそんなに悪いとは思っていません。皇居や国会があるところなどは、東京の中でも心休まるエリアです。最高裁のような重厚で大きな建物もあれば、皇居には緑も沢山あって、お堀の水辺もある。あの一円の景色はすばらしいと思います。東京の中でももっとも好きな場所です。ただ、いろいろなことを考えると国会などの機能を一極集中させておくよりも、移動させておいたほうが安全だろうと思います。

最近は地震も多くなってきていますし、テロも色々な国で起きているのを視ていますと、東京がまだ無事でいるのが不思議なくらいかもしれません。そういう意味でも、この問題は早急に考えなければならないのではないでしょうか。大きな地震が起こったとき、これだけビルが過密に建ち並んでいると、避難場所に行き着くのはラッキーな人だけになってしまうかもしれません。ビルが密集している中で生活するのも、少し息苦しくなってしまいます。ゆったりとした環境で暮らすことも大事ではないかと思います。

これは新聞などで何度も言われていますが、今一番恐れられているのは、危機管理の面で災害やテロなどが起きたときに一極集中していることの危うさではないかと思います。これから東京を改造して、テロや地震に対する対策をといっても不可能に近いのではないでしょうか。膨大な経費もかかりますし、難しいと思います。

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本当の贅沢とは

私の考える「いい都市」というのは、やはり人々が憩え、語らいの生まれる都市です。ヨーロッパのように素敵な文化が生まれている都市では、公園を中心に街をつくっていますし、アメリカのワシントンなども、水辺があって、木があってというような街にデザインされていてとてもいいなと思います。ミュンヘンにしても、まず公園が中心にあって、その周りに人が住むというような形で都市がつくられています。それで、人々は街の中心にある公園に遊びに行くわけです。森の中で人が憩えて、渡り鳥が来るような大きな池があるような公園が街の中心にあれば、豊かな暮らしや人が生きていく上での豊かな感覚の育成にもつながっていくのではないかと思います。

今の日本では人々が郊外に遊び場を求めていますが、私は都市の中心に自然豊かな土地をつくるということがとても大事だと思います。

人生の中で何が一番豊かで贅沢かというと、時間をゆったりと使うことなのだと私は思います。モノを買うことでも得ることでもなくて、ゆったりと過ごすことで時間を優雅に使うことだと思います。世界各地いろいろなところを旅してみて、それが一番の贅沢だと感じます。ここの国の人たちは豊かだなという感触を得るのは、例えば湖の周りを散歩しながら鳥にパンをあげたり、二人で語らいながら歩いている姿を見るときです。今の日本人は、なかなかそうはいきません。自然を愛でるとか、時間をゆったりと楽しむということが非常に下手な国民になっているのではないかと思います。しかし、本当の豊かさというのは時間を、ゆったり優雅に使っているかどうかということにあるのではないでしょうか。

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東京にももっと緑を

東京にしても、国会のあるエリアにもっと緑が増えてくれば、だいぶ違うのではないでしょうか。もちろん、近くの皇居には緑がたくさんありますが、市民のために開放された広大な土地があれば、本当の意味での空気の感触というものが違ってくると思います。今の東京は少し殺伐としていて、隣の人がだれなのかも知らなかったり、いろいろな事件が起きたりしていますが、そういうものも変わってくるのではないかという気がします。

もっと優雅に暮らすという意味でも、国会などが移転した跡地は、それこそ乗馬ができ緑生い茂るくらいの公園に、ぜひ有効利用していただければと思います。

都内には緑が少ないと言われていますが、私が今の住まいを決めたのは、隣に大きな庭園があって、その風景に感動したからなのです。新緑の季節には向こうの風景が見えないくらい緑でいっぱいになって、春には桜が咲き、空気が桃色になります。その環境が少しでも多くなればと思います。私は家を選ぶときでも常に自然環境を中心に選んでいるのですが、そういう人は多いのではないでしょうか。すばらしい自然のあるエリアを増やすことが、土地のない日本においてはある意味で一番の贅沢かなと感じます。ですから、これからの都市を考えるときには、一人でも多くの方に自然と触れられるチャンスを与えていただきたいと思います。

そういう意味で、国会などを移転させるのであれば、テロや地震などが起きたときの首都機能の混乱を少しでも軽減するということとともに、東京の中心部に自然をもう少し増やせるとよいと思います。

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交通アクセスの重要性

私は石川県生まれなのですが、県庁所在地である金沢市は人口約46万人の都市で、とても過ごしやすいところです。もし国会などが移転したとしても、東京の人口がすぐに減るということはないと思いますが、今はコンピュータの時代になって、地方で仕事をする方もだいぶ増えてきています。私の友人でも、石川県にいて、スケールの大きな仕事をしている人がいます。その方は十数年前東京にも数少ない高額で最新鋭のコンピュータシステムを入れて、コンピュータグラフィックスをつくっているのですが、東京よりもコストが安く、環境もいいということで、地方で作品を制作しています。何も東京でなくてもできる仕事はあるのです。

ただ、その方も東京にはよく飛行機で出てきています。ですから、交通アクセスは非常に大事で、それは国会などを移転するときも重要課題として考えていただかないといけないかと思います。2時間くらいまでならあまり不便も感じませんし、そのくらいの距離感がちょうどいいという気がします。移転の候補地としては新しい都市をつくりやすい場所ということが第一なのでしょうが、東京との交通アクセスをどう考えるかということも重要だと思います。自然豊かなところに移転するにしても、もし何か事故が起きたときに山奥から出てくるような感じでは駄目だと思います。移転する人にしても、全員が自然志向派ではないでしょうし、そこにいくことで落ち込む人だっているかもしれません。特に国の中心機能を移すということであれば、ビジュアル的な面も大事だとは思いますが、絶対に不便があってはならないと思います。

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先の姿を見越した、日本人として誇れる象徴を

今の国会議事堂の形は嫌いではないですけれども、外国を見ると、最近ようやく修復が終わった、ハンガリーのブタペストにある国会議事堂は、ドナウ川のほとりに中世の建物そのままというたたずまいで非常に美しいですね。歴史を経ているものというのは、それだけで印象がすばらしいということはあると思います。国会を移転して国会議事堂を新しく建てるのであれば、歴史が加味されてどのように味わいが出てくるか、将来の姿を見越してデザインを考えるべきだと思います。

首都機能を移転する新しい都市というのは、東京に比べれば、新規に事がおこしやすい場所だと思います。東京を見ていると、今日の都市をまったく想像せずにつくった街だということがとてもよくわかります。毎週のように突貫工事をやって、我々はそのたびに迷惑を被っています。ここまで車が増えるとは想像していなかったのでしょうが、首都高速にしても今のキャパシティでは全く足りません。そこで、今度は、100年後、あるいはそれよりも先の姿を見越して都市をつくる必要があるのではないかと思います。自然を増やすために木を植えるにしても、木はだんだん育っていくわけですから、育ったときの木の姿も想像しながら街をつくっていかなければならないのではないでしょうか。

それから、特に政治における中心地なのですから、やはり「さすが」と思ってもらえるようなものであってほしいと思います。そのためにも、優雅さがあるだけでなく、それこそ見えないエリアまでの気配りがあってほしいと思います。国旗や国歌もそうですが、国会議事堂も自分の国の象徴だと思います。象徴はとても大事なものですから、日本人として誇れる象徴を作っていただければいいなと思います。

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