現在、審議会では、国会等の移転先候補地の選定に向け、地形、景観、水供給、地震・災害など多くの分野についても調査・検討を進めています。
ここでは、最近審議が行われたテーマについて、その概要をお知らせします。
調査対象地域(北東地域、東海地域、三重・畿央地域)を500m四方に細かく区分し、その区画ごとに、河川のはん濫や高潮、地すべりや崖崩れ等に対する安全性を5段階で評価しました。
水害については、地形分類において「一般低地」など一定の区分に属する土地の多くで、これまでに水害が発生していることに着目し、これらの土地を水害への危険性が比較的高い地域と評価しています。
また、土砂災害については、下図のような4つの観点からそれぞれの土地を評価しています。
ただ、いずれの災害も被災する範囲が比較的限られるものであるため、今後、エリアの限定等が進んだ段階で、絞られたエリアを対象にあらためて評価を行うことが課題となります。
水の供給の可能量は、ダム開発や流域外からの導水等を行えば、どの地域においても大きく変化するものであるため、現段階で各地域ごとの将来の水需給のバランスを正確に評価することには困難な面があります。このため、今回は、水資源の豊かさや水利用の実態など、次の項目ごとにデータの整理・検討を行い、現在及び将来における水の供給の安定性について、各地域(各流域)ごとにおおよその評価を試みました。
国会等の移転先となる新都市は、国内外から容易に訪れることができることが望ましく、東京と十分な連携を確保できることが必要です。
衆・参両院の国会等の移転に関する特別委員会(以下「国会等移転特別委員会」といいます。)においては、各界から参考人を招き、様々な観点から活発な議論を行っています。(いずれにつきましても、詳細は衆議院又は参議院の発行する議事録をご覧下さい。)
ジャーナリストの内仲英輔氏は、首都機能移転が国民の間にある東京志向の意識改革の面から大変有意義な政策であること、一括移転方式と比較すると分都方式には「誘致競争の緩和」「地域活性化への一層の貢献」「開発費用や環境負荷の低減化」等のメリットがあることを指摘されました。
これを受け、東京中心主義の国民意識は移転でどの程度変化しうるか、分都方式の課題、国政全般の改革という移転の意義等を中心に議論が展開されました。
照明デザイナーの石井幹子氏は、本年1月に審議会が公表した移転先新都市のイメージ図について、「国民や世界に開かれた政治・行政」「にぎわいと文化の香り」「やさしさに満ちたコミュニティ」「自然環境との共生」という基本的なコンセプトを中心に説明されるとともに、海外の事例(ワシントン、キャンベラ、ブラジリア)も紹介されました。
これを受け、新都市における生活環境整備の在り方、移転と国政全般の改革との関係、国民的合意形成の進め方等について議論が展開されました。
宮城県知事の浅野史郎氏は、(1) 首都機能移転は、この国の21世紀の進むべき方向を示すものであり、日本再生のカギであって、財政的な問題に左右されるべきではない、(2) 21世紀のフロンティアである北東地域ならば、環境共生都市を実現し、ゆとりと落ち着きのあるライフスタイルを内外に示すことができる、と指摘されました。
愛知県知事の神田真秋氏は、(1) 日本の閉塞状況の打開のためにも、首都機能を移転することで日本の社会システムを変えることが不可欠、(2) 中央地域は、4つの国土軸が集結し、東日本と西日本とが接し、交通インフラが整備された地域である、と指摘されました。
三重県知事の北川正恭氏は、(1) 農業革命・産業革命に匹敵する情報革命の時代にはキャッチアップ型の価値観からの脱却が必要で、まず首都機能移転により新しい日本の姿、国家像を明示すべき、(2) 三重・畿央地域は、4つの国土軸の結節点に位置し、既存の都市機能を活用して簡素で効率的な都市を造り、環境共生、バリアフリー等への対応を内外にアピールできる、と指摘されました。
これらを受け、移転の必要性について県民に理解を得るための取組状況、移転先以外の地域・国土全体に与える影響、国における検討への要望等について議論が展開されました。
平成11年6月2日
衆議院・国会等の移転に関する特別委員会参考人質疑
(宮城県知事 浅野史郎氏、愛知県知事 神田真秋氏、三重県知事北川正恭氏)
平成11年6月10日
衆議院・国会等の移転に関する特別委員会 参考人質疑
(栃木県商工会議所連合会会長 簗郁夫氏、中部経済連合会副会長須田寛氏、
関西経営者協会顧問 金森茂一郎氏)
平成11年6月30日
衆議院・国会等の移転に関する特別委員会 参考人質疑
(栃木県知事 渡辺文雄氏、静岡県知事 石川嘉延氏、滋賀県知事國松善次氏)
平成11年6月17日 第19回国会等移転審議会・第16回調査部会 合同会議
平成11年6月18日 第9回国会等移転審議会公聴会(金沢)
平成11年7月1日 第17回国会等移転審議会調査部会
首都機能移転にはどのくらいの費用がかかるのですか?
国会等移転審議会は、平成9年10月に、次のとおり、モデル的な試算を行っています。
移転費用は、公的負担と民間投資・負担を合わせたて、行政改革等を全く行わずに現行の行政機関が全て移転する場合を前提にすると約12.3兆円(うち公的負担4.4兆円)、現行の行政機関の半分が移転する場合を前提にすると約7.5兆円(うち公的負担3兆円)となります。
しかし、数十年の超長期にわたって段階的に行われる移転事業の費用計算には不確定要素が多いのも事実です。
1年当たりの費用は、現実的費用としての試算が可能な第1段階の事業(建設開始後10年程度で国会を中心として移転する事業)についてみると、公的負担額は「年当たり2〜3千億円」となります。
この額については様々な評価があるかと思いますが、首都機能移転は、21世紀の新しい日本をつくっていくための質の高い事業であり、毎年約49兆円の行政投資(「平成8年度行政投資実績」)が行われている中で、我が国の経済力からみても決して負担できない額ではないとの考えもあります。
また、当然のことながら、実際の事業の実施に当たっては、経済性、効率性に配慮しながら進めることが重要です。
(注)費用には、新幹線、高速道路、空港等の整備費用も含まれます。人口や面積は、試算の前提となったものです。