1月31日の衆議院国会等の移転に関する特別委員会において、永井英慈(ながい・えいじ)委員長が新たに選任されました。
1月31日の参議院国会等の移転に関する特別委員会において、角田義一(つのだ・ぎいち)委員長が再任されました。
国土交通省では、今年度、首都機能移転に関して「情報」「環境」「新都市のあり方」という3つの観点から、検討会を開催しつつ検討を行ってきました。以下では、これら3つの検討会の提言・報告の要点について紹介します。
それぞれ提言の詳細については、国土交通省首都機能移転ホームページをご覧下さい。
「IT(情報技術)を活用した首都機能都市の在り方に関する検討会」(委員長 相磯秀夫東京工科大学学長)が、昨年12月に中間提言をとりまとめ、公表したところ(本誌平成12年12月号にて紹介)、多くの方々からご意見をいただきました。これらのご意見を踏まえて、3月に最終提言をとりまとめました。そのうちの新たに加わった内容である、検討会からの論点の提起の概要を以下に紹介いたします。
今後とも多くの人々の参加を得てIT化と首都機能移転の相互関係の議論が広がり、深められることを期待するところであるが、その一助となるよう、当検討会が議論を通じて認識した留意点及びそれを踏まえた論点を提起する。
第一には、議論に際して時間軸という要素を十分に意識することである。
(1)IT化の進展とともにサイバーテロ等への対応が首都機能にとって重要性を増しており、高度情報化時代ならではの非常事態対策については、首都機能の移転に伴う対応が必要であることはもとより、首都機能移転を待たずとも迅速に取り組むべきである。
(2)我が国は現在、高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する施策を迅速に推進することとしており、国民生活・産業活動ともにここ数年でその様相が大きく変わろうとしている。首都機能移転の意義・効果は、このような現下の趨勢がもたらす変化を展望しながら論じるべきであり、長期的に我が国に定着する高度情報通信ネットワーク社会の姿とともに論じるべきである。
(3)首都機能都市の情報基盤の整備にあたっては、常に最新の技術の導入に対して注意を払うとともに、将来に備えて出来るだけ弾力性を確保すべきである。
第二には、高度情報化時代における現実空間の意味をさらに論じることである。
(1)IT化の進展とともにサイバーテロ等への対応が首都機能にとって重要性を増しており、高度情報化時代ならではの非常事態対策については、首都機能の移転に伴う対応が必要であることはもとより、首都機能移転を待たずとも迅速に取り組むべきである。
(2)アイデンティティを国民に印象づけるような仕掛として、現実空間としての首都機能都市を構想する必要がある。
第三には、議論を通じて首都機能移転の基本思想をより明確にすることである。
(1)首都機能移転は一過性の経済対策や単なる公共事業として捉えるべきではなく、国民各層が知恵を出し合い、キャッチアップ指向からの離脱に向けてパラダイムシフトを果たすための創造的なプロジェクトとして論じられるべきである。
(2)大都市重視か、地方重視かといった二者択一的な考え方ではなく、首都機能移転が国土全体の空間の質的向上の契機となるように論じられるべきである。
首都機能移転先の新都市に関して、環境面から計画に対する適切な配慮を行うために必要な事項等について、環境省の協力を得ながら、環境及び都市計画分野の専門家で構成される「首都機能移転の環境に関する研究会」(座長 井手久登東京大学名誉教授)において検討を行い、提言をとりまとめました。
1.環境に配慮した新都市の在り方
環境に配慮した新都市の目指すべき姿は、「自然と共生し、環境負荷を最小化した循環型の持続的発展可能な都市」とし、都市のコンセプトとする「自然共生型都市」及び「ゼロエミッション都市」の両者を兼ね備えたものである。これは、環境への影響に配慮するのみならず、よりよい環境の創出に向けて積極的に働きかける都市の実現を目指すものである。
(1)「自然共生型都市」
多様な生き物と共存し、ふれあい、豊かで季節感のある景観の中で、風土に根差したライフスタイルを創造していくことを目指す都市。
(2)「ゼロエミッション都市」
新都市活動に起因する環境負荷全体の最小化及び他地域での環境負荷低減への貢献の2つの手段により、トータルでの環境負荷をゼロとすることを目指す都市。
2.首都機能移転における環境に配慮した新都市の計画手法の在り方
環境面の先導的な都市を目指すため、環境影響評価法に基づく環境影響評価手続きが実施されるより早期の新都市計画を具体化していく段階において、積極的に環境配慮を盛り込むための仕組みの一つである戦略的環境アセスメント(注)の考え方を適用し、計画等の早期段階から適切な環境配慮を行うための仕組みを検討する必要がある。
(1)新都市基本方針(仮称)段階
主に環境配慮チェックリストを参照して適切な評価を実施。
(2)新都市マスタープラン(仮称)段階
主に概略的な土地利用や機能配置等について、複数案の設定等の環境影響の検討手続きを実施。
(2)新都市マスタープラン(仮称)段階
主に概略的な土地利用や機能配置等について、複数案の設定等の環境影響の検討手続きを実施。
(注)戦略的環境アセスメントとは
戦略的環境アセスメント(Strategic Environmental Assessment)は、個別の事業計画に枠組みを与えることとなる政策や上位計画の段階で環境への影響を評価・把握し、環境への配慮が十分に行われることを確保するための手続です。我が国でも環境影響評価法案の附帯決議において「国際的動向や我が国での現状を踏まえて、制度化に向けて早急に具体的な検討を進めること」と指摘され、環境省では、平成10年度から、「戦略的環境アセスメント総合研究会」を設置して、その制度化に向けて、国内外の関連制度の実施状況について総合的な調査研究を行っています。
【研究会の構成】
井手 久登 東京大学名誉教授、早稲田大学客員教授 <座長>
亀山 章 東京農工大学農学部教授
小林 正明 環境省総合環境政策局環境影響評価課長
細見 正明 東京農工大学工学部教授
水口 俊典 芝浦工業大学システム工学部教授
森田 恒幸 国立環境研究所社会環境システム部長、東京工業大学大学院教授
我が国の進むべき方向を国の内外に示す象徴となるべきものとしての移転先新都市のあり方について、都市計画、都市文化、ライフスタイル等の専門家で構成される「新しい都市論を踏まえた移転先新都市のあり方に関する検討会」(座長 大西隆東京大学先端科学技術研究センター教授)において検討を行い、移転先新都市形成の基本的考え方を整理した上で、都市問題解決の取り組みによる課題解決のシナリオ、移転先新都市の成長のシナリオ及び移転先新都市における≪五感≫的魅力の形成・醸成のシナリオについて報告をとりまとめました。
1.移転先新都市の基本的考え方
移転先新都市の形成に当たっては以下の3つの基本的考え方を設定し、移転先新都市のあり方の検討に当たっての前提とした。
2.移転先新都市形成の戦略的シナリオ
(1)移転先新都市づくりの戦略的シナリオ
移転先新都市においては、「新たな都市基盤」、「新たなライフスタイル・ワークスタイル」、「交流の核」及び「≪五感的魅力(注)」の4つの階層(レイヤー)が相互に連関し合い、好循環を生み出すことで課題解決を図り、固有の都市スタイル及び文化を醸成していく。
(注)≪五感≫的魅力
五感すべての働きによって感じることのできるような魅力のこと(例えば、臨場感、人と人とのふれあい、賑わい等)
都市活動のシステムを構成する4つの階層(レイヤー)の内容イメージ
Layer1
・高速・高容量通信網及びこれを活用した教育、医療、防災等に係る各種システム
・資源、エネルギーに関するリサイクルシステム
・情報技術や環境負荷低減の技術を活用した交通システム
・環境共生を支える都市内における現存する素材、河川等の自然
・女性、高齢者、外国人等による社会活動を新たな形で支援する施設等
Layer2
・自然環境の保全を意識したライフスタイル、ワークスタイル
・高度情報化社会におけるライフスタイル、ワークスタイル
・教育、医療・福祉に関する新たなライフスタイル
・職場中心から家庭・コミュニティ中心のライフスタイル、ワークスタイル等
Layer3
・環境、文化等特定の分野での世界的中枢施設・活動
・環境、高度情報等特定の分野での研究拠点
・特徴的な固有の都市システム 等
Layer4
・人と人が会う場の面白さ、楽しさ
・界隈性、雑然性、喧騒性
・美しさ、質の高さ
・複合、錯綜的な土地利用(機能)展開 等
都市問題への取り組みによる課題解決のシナリオに係る概念図
(2)時間経過に伴う移転先新都市成長のシナリオ
移転先新都市においては、国会都市周辺既存都市が都市ネットワークを構築し、適切な機能・活動面での相互補完的連携を図っていく。それにより、時代の変化や社会経済的な需要に柔軟に対応しながら、また財政支出増を可能な限り避けながら、段階的かつ漸進的に整備を行っていく。
<まちびらき(国会開催)時のイメージ>
居住人口の分布
(うち赤色は首都機能関連の移転従業者+サービス機能従業者+これらの家族の非就業者を表現する[国会等移転調査会では10万人と想定])
(3)≪五感≫的魅力の形成・醸成のシナリオ
移転先新都市においては、我が国を代表する都市としての風格や新都市としての整然性、清潔さ、美しさを確保するとともに、雑然性や喧噪性といった“都市としての面白さ”を新都市でありながら当初から具備するとともに、時代やニーズの変化に対応できる柔軟性を確保することが求められる。特に、≪五感≫的魅力を醸成するために、都市の中に市民・企業が主体的かつ自由に活動を展開しうる部分を十分に確保していくことが必要である。
街びらき時(国会開催時)のイメージ
【検討会メンバー】
大西 隆 (東京大学先端科学技術研究センター教授) <座長>
佐藤 滋 (早稲田大学理工学部教授)
佐藤 友美子 (サントリー不易流行研究所部長)
白石 真澄 (ニッセイ基礎研究所主任研究員)
戸所 隆 (高崎経済大学地域政策学部教授)
村橋 正武 (立命館大学理工学部教授)
国土交通省国土計画局首都機能移転企画課はインターネット博覧会に首都機能移転パビリオンを出展しています。開催から約2ヶ月が経過した現在までの様子をご紹介します。
【企画のご紹介】
国土庁が昨年企画した首都機能都市のCG(コンピュータグラフィック)の中から毎月1場面を取り上げ、その場面の画像に対するご意見を一定期間(2週間程度)インターネット上で募集しています。いただいたご意見は当パビリオン管理者の方で整理し、出来るだけご意見を取り入れた画像を複数案作成し、みなさまに紹介するとともに、これらの複数案に対する投票を行います。それぞれ投票により選ばれた画像は、11月に作成するバーチャル首都機能都市の場面に反映されることになります。今回は、その第1回及び第2回の投票結果を紹介いたします。
【第1回 トランジットモール】
(一般車両の通行を禁止し、バスや路面電車などの公共交通機関と歩行者の通行だけを許す市街地)
12/31〜1/15までに64件のご意見を受け付け、それらに基づき5種類の画像を作成し、インターネットで投票していただいたところ、「建築物の外観やせせらぎなどを和風の落ち着いた街並み」にした画像が選ばれました。
<国土庁が昨年企画したCG画像>
<選ばれたトランジットモール画像>
【第2回 住宅地区】
1/29〜2/13までに14件のご意見を受け付け、それらに基づき5種類の画像を作成し、インターネットで投票していただいたところ、「近隣にビオトープを配置し、身近に自然に触れられるまち」にした画像が選ばれました。
<国土庁が昨年企画したCG画像>
<選ばれた住宅地区画像>
【企画のご紹介】
今までの首都機能都市の様々なイメージ図にとらわれることなく、自由に都市像を描いていただき、その画像を集めてパビリオン内で紹介し、さらにインターネットで人気投票を行っています。小中学生の部と一般の部でそれぞれ募集しています。
<1月の月間優秀作品に選ばれた画像>
市村 和士さん
『僕の夢見る国会議事堂』
<2月の月間優秀作品に選ばれた画像>
中藏 貴彦さん
『世界の人々が自由に行き来し、参加できる”国際新都市”』
【企画のご紹介】
パビリオン内を分かりやすく案内する親しみやすいキャラクターを画面上に登場させることを予定しています。パビリオンのオープンに際し、まずはインターネット上でこのキャラクターを募集し、人気投票によって決定しました。選ばれたキャラクターは、今後、動画で、パビリオン内の企画や画面操作のHELP等を説明する予定です。
<選ばれたキャラクター>
野田 美樹さん
『Chinapple(チャイナップル)』
国土交通省の首都機能移転ホームページでは、これまで学界、経済界等各界の有識者27名を講師にお招きして講演会を開催しています。是非ご覧下さい。
http://www.mlit.go.jp/kokudokeikaku/iten/onlinelecture/index.html
<2月掲載>
寺島 実郎 氏 (三井物産戦略研究所所長)
テーマ: 『首都機能移転論を社会変革の契機に』
宮崎 緑 氏 (千葉商科大学政策情報学部助教授)
テーマ: 『社会の形を問うビジョン形成としてのコンセンサスを』
賀来 龍三郎 氏 (キャノン株式会社名誉会長)
テーマ: 『「共生」の理念を実現する遷都を』
<12月掲載>
八幡 和郎 氏 (評論家)
テーマ: 『首都機能移転論のバージョンアップを』
<10月掲載>
小松 左京 氏 (作家)
テーマ: 『人類の未来に限りない励ましを与えてくれる都市を』