南アフリカ共和国(以下「南ア」という。)は、国会がケープタウン、行政府がプレトリア、最高裁判所がブルームフォンテインに分散立地しており、各々数百〜千数百キロ離れています(ケープタウンとプレトリアは約1600キロ(航空機で2時間)の距離)。首都機能が分散立地している海外の事例として、その概要を紹介します。
20世紀初頭、現在の南アは2つの英国植民地(ケープ植民地、ナタル植民地)及び2つの蘭系移民の共和国(トランスバール共和国、オレンジ自由共和国)の4領地に分かれていた。1910年、第二次ボーア戦争の結果、これら4領地は併合され、「英自治領南アフリカ連邦」が発足した。
この際、英系と蘭系の融和政策の一環として、2つの旧共和国の首都に行政府、司法府を置くこととしたのが現在の分散立地の経緯である。
1910年南ア独立当時の4州と1994年憲法改正以降の9州
左図:1910年〜1994年
右図:1994年〜現在
(1)立法府
国会は二院制で、上院、下院とも議員の任期は5年である。
下院(国民議会)は、国民の代表として国政全般に係わる広範な事務を所掌する。
上院(全国州評議会)は、南アを構成する9つの州の議会から選出され(州知事も含まれる)、州の利益を代表する議会として機能する。
(2)行政府
大統領は国家元首、行政府の長、そして国防軍の最高指揮官でもある。大統領は下院議員の中から選出され、任期は5年である。なお、大統領は、選出に伴い下院議員としての職位を失う。
大統領は、副大統領及び大臣を下院議員の中から任命する(ただし、大臣は2名まで下院議員以外でも可)。
(3)司法府
司法府の最高機関は、憲法に関わる事項を所管する憲法裁判所(ヨハネスブルグに所在)と、憲法事項以外を所管する最高裁判所(ブルームフォンテインに所在)である。
(1)国会と政府の連絡調整
各省は、国会議事堂に隣接したビル(1棟)内に、各々国会対応連絡事務所(大臣、出張者等の執務室)を設けている。そこには必要最小限の職員が常駐している。
議員からの質問を国会事務局が取りまとめ、ここから各省の連絡事務所に情報が流れる。連絡事務所と本省(プレトリア)とのやり取りは、電子メールやファックス等により行われる。
(2)国会会期中のケープタウンとプレトリア間の移動
大臣、副大臣及び一部の政府幹部は、国会対応のため、ケープタウン(火曜日から木曜日)とプレトリア(月曜日と金曜日)を移動する。
かつて、各省から数百人規模の政府職員が大移動していたが、1994年以降は経費節減のため、移動者数を最小に抑えている。
大統領は施政方針演説及び代表質問が終われば立法府に関与しないため、会期中であっても主たる執務場所はプレトリアである(ケープタウンにおける滞在場所は国会議事堂敷地内の大統領第二官邸)。
副大統領は、会期中ケープタウンに常駐し国会の各種会議に出席するため、移動は少ない。
上院(全国州評議会)
下院(国民議会)
大統領府の“ユニオン・ビル”(Union Building)
国会議事堂に隣接の国会対応連絡事務所ビル
国土交通省の国会等の移転ホームページでは、これまで学界、経済界等各界の有識者を講師にお招きして講演会を開催しています。2月以降、新たに次の講演を追加しましたので、是非ご覧下さい。
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織作 峰子氏 (写真家)
石川県生まれ。昭和60、61年全国二科展入選。昭和62年独立。以降、女性の優しい視線で世界各国の美しい風景や人物の瞬間を撮り続けている。日本全国で写真展を多数開催するかたわら、テレビや講演に幅広く活躍中。
テーマ:「ファインダーから見たこれからの首都の姿」
要約
鈴木 修氏 (スズキ(株)取締役会長)
取締役、常務取締役、専務取締役を経て、昭和53年に取締役社長に就任。平成12年より現職。併せて、(財)スズキ財団及び(財)スズキ教育文化財団理事長。
テーマ:「企業経営における決断の重要性と国会等の移転問題」
要約