現在、大韓民国では、12部4処2庁の中央行政機関などをソウルから約120km離れた忠清南道(チュンチョンナムド)の燕岐(ヨンギ)・公州(コンジュ)地域に移転するため、行政中心複合都市の建設が進められています(新時代 Vol.55, 57参照)。昨年7月には、行政中心複合都市の建設基本計画が決定されましたので、その概要等を紹介します。
(1) 建設基本計画の4大理念
行政中心複合都市の理念は、「相生」、「跳躍」、「循環」、「疎通」の4 大理念を基礎に、「調和のとれた都市」、「躍動する都市」、「持続可能な都市」、「開かれた都市」を未来像とする『共によく暮らす共生の都市』を追求することとされています。
相生
− 調和のとれた都市 −
跳躍
− 躍動する都市 −
循環
− 持続可能な都市 −
疎通
− 開かれた都市 −
(2) 主な構想の概要
○都市の主要機能を6 つの機能拠点に分散配置し、生活圏も均等に配置して均衡のとれた都市発展を図ることとしています。
○都市中心部に100万坪(330万km2)規模のオープンスペースを設けるとともに、生活圏別に多様な規模・形態の都市公園を造成することとしています。
○自然と都市が調和した魅力的な都市景観を新たに作ることとしています。
○設計競技、試験事業などを通じて優秀な建築物の建設を誘導することにより、優秀な都市景観を作り出し、都市の品格向上を図る計画です。
○ウォンス山、ジョンウォル山などを拠点とする緑地軸と、錦江(クムガン)、ミホ川を中心とする河川軸を連携する「生態ネットワーク(Blue - Green Network)」を通じて、生態系を有機的に連結して住民たちが自然と易しく接することができるようにします。
○一般バス、新交通手段(先端BRT)などの公共交通手段を利用して都市内どこでも20分程度でアクセス可能な公共交通中心の交通体系を構築することとしています。
※BRT:連節バス、バス専用道路等により、軌道系の高速性と小回りの利く柔軟性を兼ね備えたバスをベースとした都市交通システム(Bus Rapid Transit)
(3) 主要指標等
建設主要指標と土地利用構想は次のとおりです。
部門 | 関連項目 | 計画指標 | 備考 |
---|---|---|---|
人口 | 目標人口 | 50万人 | 2030年 |
住居 | 世帯当たりの平均家族人数 | 2.5人/世帯 | |
住宅供給数 | 20万戸 | ||
住居密度(純密度) | 300人/ha程度 | ||
基礎生活圏規模 | 2〜3万人程度 | ||
基礎生活圏個数 | 20個程度 | ||
産業 | 産業・業務 | 予定地域面積の3%程度 | 国際交流、ホテル、流通などを含む |
工業 | 先端知識基礎施設など | 100万m2程度 | |
緑地 | 公園・緑地率 | 予定地域面積の50%以上 | 公園・緑地・河川などを含む |
河川緑地幅員 | 40m程度 20m程度 |
国家河川 地方河川 |
|
近隣公園面積 | 1万m2以上 | 基礎生活圏一つ当たり | |
上下水道 | 1人当たり1日平均給水量 | 300〜350l | |
河川(計画供水頻度) | 200年 | 国家河川 |
※ 開発計画段階でより具体化される予定
区分 | 保全用途 | 開発用途 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
住宅 | 商業・業務 | 中央行政 | 先端産業 | その他 | ||
比率 | 50%以上 | 22%程度 | 3%程度 | 1%程度 | 1%程度 | 21%程度 |
昨年12月、行政中心複合都市の名称を「世宗(セジョン)(Sejong)」(朝鮮王朝第4代国王の名前)とすることが決定されました。
今後、実施計画の策定を経て、2007年下半期には敷地造成工事が着工される予定です。そして、2012〜14年にかけて段階的に庁舎を移転し、2030年には人口50万人の都市を創出することとしています。
国土交通省の国会等の移転ホームページでは、これまで学界、経済界等各界の有識者を講師にお招きして講演会を開催しています。平成18年12月以降、新たに次の講演を追加しましたので是非ご覧下さい。
(ホームページアドレス:http://www.mlit.go.jp/kokudokeikaku/iten/onlinelecture/index.html)
市川 宏雄氏 (明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科長・教授)
テーマ:「国際競争力向上の視点からの大都市政策を」
要約
村井 純氏 (学校法人慶應義塾常任理事・慶應義塾大学環境情報学部教授)
テーマ:「情報インフラのリスク分散につながる首都機能移転」
要約