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Webニューズレター新時代Vol.73 〜一緒に考えましょう、国会等の移転〜

大使館訪問記

駐日マレーシア大使館へのインタビュー(平成24年3月)

快適な職住環境が創造された首都機能移転都市、プトラジャヤ

マレーシア大使館
駐日マレーシア大使
ダト シャハルディン モハマッド ソム
マレーシア大使館 駐日マレーシア大使 ダト シャハルディン モハマッド ソム

マレーシアの概要

Q.プトラジャヤへの首都機能移転について伺う前に、マレーシアの概要についてまずお聞かせください。

A.マレーシアは1957年8月31日に英国より独立し、13の州と3つの連邦直轄区から成っています。連邦直轄区は、連邦政府行政センターのプトラジャヤ、首都クアラルンプール、そしてサバ州沖のラブアン島です。地理的に言いますと、国土は南シナ海を隔ててマレー半島とボルネオ島に分かれており、二つの地域はほぼ同じ大きさです。半島部ではタイと、ボルネオ島ではインドネシアとブルネイとそれぞれ国境を接しています。また、インドネシア、シンガポール、フィリピン、ベトナムと領海を接しています。

半島部マレーシアは高速道路網が発達しています。北のペルリス州と南のジョホール州を結ぶ南北に長く伸びた高速道路は約20年前に開通し、また半島部の北部のグリクとジュリを結ぶ眺めのよい東西高速道路は30年程前に完成しました。首都クアラルンプールと東海岸各都市を結ぶ東海岸高速道路は、つい5年程前に完成しました。こうした広域高速道路網が半島部マレーシア各地を結んでいます。ボルネオ島側では、サラワク州からブルネイを経てサバ州に至る汎ボルネオ高速道路の一部区間が1997年に完成しました。現在、改良工事が進行中で、完成すればサバ・サラワク州のより多くの都市が高速道路で結ばれ、地域交通はより便利になります。一方、半島部マレーシア西岸の長い海岸線には、クラン港、タンジュンペレパス港、ペナン港など多くの国際港があり、長年にわたり日本をはじめマレーシアの主要貿易相手国との間を行き来する大量の船荷を扱っています。

マレーシアは美しい自然にも恵まれています。長い海岸線の美しい砂浜、眺めのよい山々、保護の行き届いた深い森林にはさまざまな珍しい動植物が生息しています。マレーシアの主な観光地は、パハン州のタマンネガラ国立公園、トレンガヌ州沖のレダン島とティオマン島、サラワク州のムル国立公園、サバ州のキナバル山国立公園とその沖合いのシパダン島などです。中でも、キナバル山国立公園には、東南アジアの最高峰キナバル山ばかりでなく、オラウータン保護センターがあり、日本のNGO等の協力で保護活動が行われています。このような豊かな自然の美しさと多民族・複合文化社会の特性を生かし、マレーシアは観光振興に力を入れ、日本は主要マーケットの一つとして位置づけられています。昨年の東日本大震災の影響にもかかわらず、2011年にマレーシアを訪れた日本人観光客は38万675人に上りました。より多くの日本人をお迎えし、観光ばかりでなく、ホームステイや「マレーシア・マイセカンドホーム・プログラム」等の長期滞在プランにも参加していただきたいと思います。

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プトラジャヤへの行政機能移転の背景

Q.クアラルンプールからプトラジャヤに行政機関を移転された目的や現状について教えてください。

A.マレーシアが新政府行政センター構想に向け模索を始めたのは1980年代の第四代首相マハティール・モハマドの時代です。目的はクアラルンプールから開発を分散し、首都のビジネス金融センターとしての持続的発展に必要な土地を確保することでした。マレーシア最大の都市クアラルンプールの過密と混雑を緩和する狙いもありました。こうして1990年代はじめ、クアラルンプールは国の首都及び主要金融通商センターの座に留まり、プトラジャヤが新連邦政府行政センターの役割を担うことになりました。新都市は第一代首相アブドル・ラーマン・プトラ・アルハジの業績に因み、「プトラジャヤ」と命名されました。

移転により政府機関は近くに集まり、電子政府プログラムなどを通じ政府手続きの効率向上も期待されています。移転はまた、政府機関の悩みの種であったクアラルンプールのオフィススペース不足や家賃高騰を緩和します。

プトラジャヤの用地としてセパン地区のプランブサールが選ばれた理由は、クアラルンプール市街地とクアラルンプール国際空港の中間という戦略的位置にあることです。新連邦政府行政センターの広さは4,931ヘクタール、クアラルンプールから南に約25キロ、クアラルンプール国際空港の20キロ北に位置します。

Q.プトラジャヤという街のユニークな点は何ですか。

A.1995年の建設開始からわずか5年で完成したプトラジャヤの特徴の一つは、生態系保護を重視し、自然と技術の融合を実現していることです。包括的土地利用計画と、交通、公共施設、インフラ、住宅、公共アメニティー、公園や庭園に関する明確な規定と指針に従って建設されています。

インテリジェント庭園都市として計画されたこの地域の38%は、公園、湖、湿地などの自然の景観を生かした緑地帯です。最も特徴的な景観は市の中心に位置する600ヘクタールの人工湖のプトラジャヤ湖で、気候緩和効果もあります。広場や大通りも計画に沿っています。これはマレーシア最大、東南アジアでも有数の大型プロジェクトで、総事業費は最終的に81億ドルに上るものと予想されます。プロジェクト全体の設計・建設をマレーシア企業が手がけ、資材は10%の輸入資材を除きほぼ国産です。

プトラジャヤのユニークさをさらに高めるのが、サイバージャヤと呼ばれる姉妹都市です。マルチメディア・スーパーコリドーという情報通信技術開発事業の中枢を占めるサイバージャヤは、マレーシアばかりでなく地域の情報通信の中核を成しています。マルチメディア・スーパーコリドー地域に位置するプトラジャヤは、インテリジェント・シティーとしての側面もあります。マルチメディア技術はこれまでも、そして今後もプトラジャヤの発展と密接に関わり、政府機関同士、政府と民間、政府と都市の住民、そして政府とマレーシア国民との間のコミュニケーションを促進します。プトラジャヤとサイバージャヤは、世界の情報通信技術開発における主要な役割を目指すマレーシアの希望の象徴です。

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クアラルンプールとの連携について

Q.今も国会はクアラルンプールに置かれていますが、議会との連携などはいかがでしょうか。

A.国会と王宮はクアラルンプールに留まっていますが、国会議員、政府職員、そして国民は、政府機関移転を好意的に受け止めています。システムを更に改善するため、また国会会期中の閣僚や政府担当官のプトラジャヤとクラルンプールの行き来を容易にするため、ダト・スリ・モハマド・ナジブ・トゥン・アブドル・ラザク首相は毎週開かれる閣議の日程を変更しました。国会会期中、通常水曜に開かれる閣議は金曜に行われます。国会は通常3月、6月、9月に開会され、会期は平均60日から80日です。本会議は月曜から木曜の週4回開かれるため、会期中に金曜に閣議を催すことで、閣僚のプトラジャヤとクアラルンプールの行き来が楽になります。

また国会会期中は、連邦政府の24の省にそれぞれ国会内事務所が最低1つずつ用意され、省内、他省、また国会議員との連絡連携の円滑化が図られます。

クアラルンプールとプトラジャヤ間の頻繁な行き来が必要な場合でも、ほんの25キロの距離ですから問題はありません。以前は、移動には45分から60分かかりましたが、2007年に完成したマジュ高速道路のおかげで30分以内に短縮されました。

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プトラジャヤの展望

Q.プトラジャヤの今後の発展に対して、課題などはありますか。

A.比較的新しい都市のプトラジャヤの短・長期的課題は、人口増加に伴い、そのユニークな生態系と綿密に計画された町との完全なバランスをいかにして保っていくかです。現在のプトラジャヤの人口は6万8千人と推定され、そこで働く人口は約3万5千人です。計画が完了すれば、プトラジャヤでは35万人が暮らし、50万人が働くことになります。

現在のプトラジャヤは何もかもが秩序立っていますが、人口が増加すればそうはいきません。特に交通、駐車スペース、そして治安維持を計画通り確保するのは容易ではありません。課題はありますが、プトラジャヤは今後も最高のデザイン・技術応用の見本として、マレーシア人ばかりでなく世界中から集まる駐在員に選ばれる都市であり続けると固く信じています。

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((c)外務省)

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国土交通省 国土政策局 総合計画課