九州地方開発促進計画(第五次)

〜アジアと一体化して発展する個性ある九州〜


 九州地方開発促進計画は、九州地方開発促進法に基づいて作成される総合的な計画です。この度、第5回目の計画が国土審議会九州地方開発特別委員会の調査審議を経て、平成11年3月30日に閣議決定されました。その内容を紹介します。



−目      次−




第1章 計画策定の意義と計画の性格

  1 計画策定の意義

  2 計画期間

  3 計画の性格

  4 計画の推進

第2章 九州地方の新たな発展の基本方向

 第1節 九州を取り巻く状況

  1 国土の中での九州

  2 これまでの九州

  3 これからの九州

 第2節 新たな発展に向けた基本方向

  1 21世紀における新たな発展の基本理念

  2 新たな発展を実現するための重点課題
   (1) 相当規模の都市と豊かな自然が織りなす多様な地域が連携・交流する九州を創造
   (2) 自然と共に安全で安心して暮らせ、誇りが持てる生活圏を創造
   (3) 知識集約化に向けて産業の高度化を促進
   (4) 歴史的・文化的繋がりも生かし、アジアと一体的発展に向けた国際交流を先導する九州を実現

第3章 参加と連携による重点課題への対応

 第1節 対応に当たっての考え方

  1 多様な主体の主体的参加

  2 広域的な発想の下での連携による展開

  3 投資の重点化・効率化

  4 他の計画・施策との連携

 第2節 重点課題に沿った主要施策の展開方向

  1 相当規模の都市と豊かな自然が織りなす多様な地域が連携・交流する九州を創造
   (1) 九州域内の身近な存在としての個性的で魅力的な都市圏の形成
   (2) 多自然居住地域における都市的利便性の向上
   (3) 多様な地域間における連携・交流の推進
   (4) 連携・交流を支える交通・情報通信ネットワークの形成

  2 自然と共に安全で安心して暮らせ、誇りが持てる生活圏を創造
   (1) 広域的な連携による安全で安心できる生活圏づくり
   (2) 九州の自然豊かな環境に親しみ、継承していく地域づくり
   (3) 九州各地の個性を生かした魅力ある地域社会づくり

  3 知識集約化に向けて産業の高度化を促進
   (1) 食料・木材供給基地としての新たな展開
   (2) 九州の新たな発展を担う産業の創出・集積等の促進
   (3) 知的資本の充実と産学官の連携強化

  4 歴史的・文化的繋がりも生かし、アジアとの一体的発展に向けた国際交流を先導する九州を実現
   (1) アジア経済との連携・交流の促進
   (2) 九州の顔が見える多様な国際交流・協力の推進
   (3) 国際交流・物流を支えるアジアへのゲートウェイ機能の充実・強化



−本      文−




第1章 計画策定の意義と計画の性格

1 計画策定の意義

 九州地方開発促進計画は、時代の要請に応えながら、九州地方開発促進法に基づき逐次策定されてきた。前回の計画は、第4次全国総合開発計画に示された多極分散型国土形成の理念に即しつつ、90年(平成2年)に策定されたものである。その後、基盤整備の進捗などを背景に、福岡を始めとする地方中枢・中核都市が人口・諸機能の集積の面で拠点性を高めつつあり、また、流出超過が続いていた九州地方全体での人口移動も93年(平成5年)より流入超過基調で推移したなど、一定の成果をあげてきた。
 翻って国土をめぐる諸状況をみると、歴史的に大きく転換しようとしている。心の豊かさ重視、自然再認識などの国民意識の大転換や、地球時代、人口減少・高齢化時代、高度情報化時代の本格的な到来に適切に対応し、来るべき21世紀の新しい国土づくり、地域づくりを目指していくことが求められている。このため、新しい全国総合開発計画「21世紀の国土のグランドデザイン―地域の自立の促進と美しい国土の創造―」が策定され、一極一軸型の国土構造から多軸型の国土構造への転換と、その実現に向けた基礎づくりの方向が示されたところである。この理念に即しつつ、九州地方を取り巻く経済社会の諸情勢を踏まえ、九州地方の新たな発展に向けた戦略的な対応を図っていくことが必要となっている。
 また、生活行動や経済活動が広域化するとともに、地域の今後の発展にとって必要なサービスや機能は、より一層高度化し、しかも選択の幅の広い多様性に富んだものとなることが求められている。こうした状況に効果的かつ効率的に対応していくためには、既存の行政単位の枠を越えた広域的な発想が重要である。人口減少や地域間競争の高まりの中で、今後の地域づくりに当たっては、このような広域的な発想の下で地域の連携による各種施策の展開を積極的に推進していく必要がある。
 こうした要請に適切に応えていくため、長期的かつ総合的な観点から九州地方の今後の発展の基本方向を展望し、重点的に取り組むべき戦略的な対応の方針及び大綱を明らかにする九州地方開発促進計画を、新たに策定するものである。

2 計画期間

 本計画の目標年次は、概ね2010〜15年(平成22〜27年)とする。

3 計画の性格

 本計画は、九州地方開発促進法に基づいて、全国総合開発計画と地方公共団体が自主的に策定する構想、計画との間に立って作成した九州地方に関する総合的な長期計画である。新しい全国総合開発計画の理念に即しつつ、地域の意見や構想等を踏まえ、九州地方を一体とした広域的な観点から作成した。
 もとより、九州地方の発展は、国、地方公共団体に加えて、民間事業者、ボランティア団体、地域住民等多くの主体の取組によって達成される性格のものである。特にこれからの地域づくりは、「参加と連携」の下で地域が自らの選択と責任で行うことが基本となっていくが、その実現に際して効果的と考えられる各種施策を総合的かつ計画的に展開していくためには、地域づくりに参加する様々な主体が、地域の発展方向に関する認識を共有していくことが重要である。
 こうした観点から、本計画は、九州地方の発展を促進するために必要な国及び地方公共団体の事業実施の基本となるとともに、地方公共団体が独自に事業を実施するに当たっての指針となり、また、地域振興を図る上での民間事業にとっての指針及び地域住民等による自主的な地域づくりにとっての指針となることが期待される。

4 計画の推進

 本計画の実施に当たっては、その基本性を確保しつつ、九州地方を取り巻く内外の情勢変化や動向に柔軟に対応しながら、計画の実効ある推進を図っていく必要がある。
 このため、国土審議会九州地方開発特別委員会は、毎年九州地方の発展状況及び施策の実施状況の点検を行うものとする。また、特に計画期間の前半は構造改革期であり、経済、財政等の状況を始め、その進捗状況を踏まえ、時代の変化に対応し、必要に応じて適宜見直しを行うものとする。
 
第2章 九州地方の新たな発展の基本方向

第1節 九州を取り巻く状況

1 国土の中での九州

 九州地方は、日本列島の西南端に位置し、東京等の既成大集積地から離れた地域である一方、朝鮮半島とは海峡を隔てて隣接し、上海とは東京とほぼ同距離にあるなど、我が国の中でアジアに最も近い地域でもある。
 全国比でみると、面積11%、可住地面積13%、人口11%(95年(平成7年)国勢調査)、総生産9%(95年度(平成7年度))と、経済規模が相対的に小さいものの、総じて我が国の約1割を占める。
 地理的には、九州本土の周りが海に囲まれ、多くの離島、半島を抱えるとともに、九州山地で東西が分断され、加えて、南部にシラス等の特殊土壌地帯が広がっているなど、地理的、自然的制約下に置かれた地域が多数存在している。
 また、台風常襲地帯であり、梅雨期の集中豪雨、地震、火山災害など、自然災害の発生も非常に多い。一方では、北部九州など、渇水の影響を受けやすい地域も存在する。
 これらは、豊かな自然に恵まれていることの裏返しの面があり、九州地方は5つの国立公園と9つの国定公園を有し、変化に富んだ美しい自然が残っている。
 他方、福岡・北九州を中心とする圏域において3大都市圏に次ぐ都市集積が進むとともに、県庁所在都市を中心に都市集積が九州地方域内に適度な間隔で点在し、しかも規模が比較的大きいところに、他の地方と比べて九州地方の地域構造の一つの特徴がある。

2 これまでの九州

 九州地方は、古くから朝鮮半島、東シナ海、南西諸島を通じた外来文化、技術の受け入れ口として開けてきた。吉野ヶ里遺跡を始め多くの古代文化の遺跡が残っている。中世、近世においても、アジア、ヨーロッパの諸文明の窓口として重要な役割を果たした。
 近代に入ってからは、大陸との交易に適し、また石炭などの資源に恵まれていたことから、北部九州を中心に鉄鋼や化学などの重化学工業の集積が早くから進み、4大工業地帯の一角を形成した。しかし、戦後の高度成長期に石炭から石油へとエネルギー転換が進んだことから産炭地域で閉山が相次ぐとともに、その後の2度にわたる石油危機によって鉄鋼、化学、造船などの基幹産業が構造不況に陥るなど、厳しい産業調整を迫られた。他方で、半導体産業や自動車産業などの生産拠点の展開が進み始め、遅れていた加工組立型産業への産業転換も進展しつつある。80年代終わり頃からの工場立地には目覚ましいものがあり、工業出荷額の全国シェアが90年代に入って上昇傾向で推移している。ただし、そのシェアは依然6%台にとどまっている。
 農林水産業は、就業者数の大幅な減少が続いているが、農業粗生産額、林業粗生産額、漁業生産額は、各々全国の18%、16%、23%(95年(平成7年))を占めるなど、九州地方は我が国有数の食料・木材供給基地として、その役割を担っている。南九州を中心に、産業構造の中で農林水産業の占める比重が他の地方と比べて相対的に高い。
 こうした中で、80年代半ばからの円高を契機に、九州地方からアジアを中心として海外へ進出する企業が増大し、またアジアとの国際分業の動きも進展しつつあり、新たな展開が求められている。一方、農林水産業は、輸入農産物の増加とともに、高齢化による後継者不足などで取り巻く環境に厳しさが増している。
 一人当たりの県民所得でみた所得格差の面では、80年代に再び拡大する動きが続いていたが、90年代に入ると、バブル崩壊の影響を強く受けた大都市圏の所得が低迷したこともあって、縮小傾向で推移している。ただし、95年度(平成7年度)の所得水準は全国100に対して82にとどまっており、依然かなりの格差が存在している。
 人口動態に関しては、石炭産業の衰退と高度成長期の関西圏、東京圏への人口流出により、九州地方全体の人口が50年代後半から60年代を通じて減少する局面を経験した。その後、産業の地方分散が進む中で増加に転じたが、人口移動の面では、70年代後半を除き、流出超過が続いてきた。しかし、その流出超過幅は80年代半ばから縮小し始め、93年(平成5年)から96年(平成8年)にかけては流入超過となり、人口移動の動きが大きく変わりつつある。ただし、97年(平成9年)は再び人口流出が人口流入を上回る動きとなった。
 九州地方域内に目を向けると、中山間地域等で人口の減少が続く一方、福岡都市圏の急速な拡大と各県における県庁所在都市への人口集中が続いており、また、南北間、東西間で発展の差異が生じている。
 また、九州地方では、75年(昭和50年)に山陽新幹線の全線開業により北部九州と3大都市圏とが高速交通で結ばれた後、高規格幹線道路の整備も着実に進められてきた。95年(平成7年)に九州縦貫自動車道が全線開通したことにより、南九州と北部九州とが直結し、さらに96年(平成8年)には九州横断自動車道長崎大分線がおおむね完成し、九州地方の南北方向と東西方向の十文字型の高規格幹線道路体系が確立され、7県庁所在都市が結ばれた。これにより、地域間の交流が活発化してきている。この動きを促進していく上で、遅れている高速交通基盤の整備を進め、域内循環をさらに高めていくことが依然課題となっている。
 他方、生活関連社会資本の整備状況をみると、保健・医療・福祉分野が全国平均を上回っているが、対照的に人口当たりの博物館数や図書館数、大学収容力指数が全国平均を下回っており、特に下水道普及率は全国平均をかなり下回っている。

3 これからの九州

(我が国を取り巻く時代の潮流)
 21世紀への移行の中で、我が国を取り巻く時代の潮流が大きく転換しようとしている。国民意識は、心の豊かさ重視や自然の再認識、多様性の重視といった新しい価値観への転換が進みつつある。地球全体が様々な意味で一つの圏域と化しつつある、いわば地球時代を迎えてきており、地球環境問題への対応が求められ、国境を越えた地域間の競争が一層活発化し、個人レベルでも広く世界を舞台とする活動が日常化しつつある。さらに、我が国の総人口は、少子化を主因に21世紀初頭にはピークを迎え、人口減少・高齢化時代が到来する。また、高度情報化時代を迎えつつあり、時間と距離の制約が克服され、対面に近い双方向の交流環境が実現するなど、経済社会の様々な面において情報通信の果たす役割が飛躍的に高まろうとしている。
 こうした変化の中で、地域の個性が重んじられ、地域が自らの将来を切り拓くことが求められる時代となっている。九州地方は、地域主導の先駆的な地域づくりの実績を有する地域であり、今後とも我が国において先導的な役割を担っていくことが期待される。また、豊かな自然、歴史、文化に恵まれた九州地方は、ゆとり、環境、多様性といった新しい価値観を享受できる社会を構築するポテンシャルは高く、全国に先駆けてその実現を目指していくことが期待される。さらに、地球時代、高度情報化時代などに対応し、活力ある地域産業の構築と雇用機会の確保を図るため、九州地方の産業構造をこれまで以上に積極的に転換していくことが求められる。

(アジアの時代の到来)
 我が国を取り巻く潮流の中でも、特に、アジアの時代の到来は、これからの九州地方にとって大きな意味を持つ動きである。
 97年(平成9年)のASEAN諸国や韓国での通貨危機による混乱が続いており、現時点では不透明な部分もあるが、21世紀はアジアの大いなる発展が期待され、我が国とアジアとの経済関係の緊密化が一層進展し、様々な分野で交流が今後飛躍的に増大していくものと見込まれている。
 九州地方は、アジアとの地理的近接性とともに、歴史的・文化的な繋がりも深く、我が国とアジアとの交流を先導していくポテンシャルを十分備えている。既に、東アジアの経済発展に伴い、近年、再び東アジアとの交流が急速に活発化してきている。
 アジア諸国の興隆は、同時に九州地方の産業活動などに厳しい国際的な地域間競争をもたらしているという側面も有しているが、「日本の九州」という発想を越えて、今後は、「アジアの九州」との視点に立って、経済、文化等の多面的な交流を積極的に推進することを通じて、アジアと共に九州地方の新たな発展を目指していくことが重要である。

(人口減少・高齢社会)
 また、全国と同様、九州地方においても、人口減少局面へと移行し、高齢化が一層進行していく。
 こうした人口減少・高齢化によって、都市集積から離れた中山間地域等を中心にコミュニティの維持が懸念される地域が拡大するとともに、労働力供給の減少などを通じて、経済的な活力の低下等がもたらされる面がある。他面では、高齢化には、豊かな知識、経験を有する人材が増大するほか、社会参加の意欲も高く、自由度の高い生活を享受できる人々の増加を通じて新たな需要が生み出されるといった積極的な側面もある。
 高齢者が安心でき、暮らしやすい生活環境を整えていくとともに、高齢者や女性を始め、性・年齢にかかわらず社会に参加し活躍できる地域社会を実現していくことが必要である。また、高度な知識、技能を有する人材の育成や、高度情報化時代の到来を生かしつつ、技術革新の促進などを通じて生産性の一層の向上を図っていくことも課題である。さらに、地域の活性化に当たっては、既存の行政単位の枠を越えた広域的な発想の下で地域が連携して課題に対応していくことが重要であり、また若年層を中心とする定住人口の確保とともに、今後は他の地域との交流に着目した交流人口の増大という視点が従来以上に重要となる。

第2節 新たな発展に向けた基本方向

1 21世紀における新たな発展の基本理念

 20世紀の我が国は、欧米諸国へのキャッチアップ過程の中で経済の量的拡大を優先して発展を遂げ、生活水準も大幅に向上した。この結果、我が国は地球社会のフロントランナーの一員となり、また個性の尊重と多様性の重視という観点に立って、人の活動と自然の調和を含めた質的向上を目指す段階に入っている。環境が強く意識される21世紀においては、経済的な豊かさと共に精神的な豊かさを味わうことができる、ゆとりと美しさに満ちた暮らしを実現し、新世紀にふさわしい新しい文明を創造していくことが期待されている。
 こうした観点から、九州地方についてみると、鉄鋼や化学などの重化学工業が集積した北九州工業地帯を始め、20世紀型の都市、産業文明と共に発展してきた一方、その波に洗われることの少なかった地域を数多く有している。世界遺産の屋久島、阿蘇の世界最大級のカルデラ、別府、雲仙などの温泉を始めとする多様性に富んだ美しい豊かな自然に恵まれており、また、陶磁器、焼酎、大島紬に代表される伝統産業のほか、博多祗園山笠、長崎くんち、高千穂の夜神楽などの伝統文化も色濃く残っている。さらに、韓国、中国等アジアを始めとする国際交流の歴史が連綿と続いている。
 こうした特色ある優れた状況を踏まえ、九州地方を我が国の21世紀の新たな発展を切り拓くフロンティアとして位置づける。
 その目指すべき姿は、
@ 変化に富んだ美しい自然と魅力ある相当規模の都市が共存し、ゆとりと利便性をあわせ享受することができ、人々の価値観に応じて多彩な生活や就業が可能な九州となっていくこと、
A しかも活力があり、また世界に開かれ、アジアと一体化して発展する九州となっていくこと
である。
 その実現を目指し、九州地方が有する強い個性とポテンシャルを戦略的に発揮し、多様な地域が連携・交流し、九州地方が一体となって、21世紀における我が国の多軸型国土構造の形成を先導する役割を担っていく。

2 新たな発展を実現するための重点課題

 こうした基本理念の下で、九州地方を取り巻く今後の経済社会情勢の潮流や抱える諸問題に適切に対応し、計画期間中に21世紀の新たな発展に向けた基礎を築くべく、以下の4つを重点課題として掲げ、戦略的かつ重点的に施策を展開する。
  @相当規模の都市と豊かな自然が織りなす多様な地域が連携・交流する九州を創造
  A自然と共に安全で安心して暮らせ、誇りが持てる生活圏を創造
  B知識集約化に向けて産業の高度化を促進
  C歴史的・文化的繋がりも生かし、アジアとの一体的発展に向けた国際交流を先導する九州を実現

 これらを通じ、長期的に、九州地方を幅広く覆う太平洋新国土軸が形成されていき、また、九州地方が西の起点となる日本海国土軸及び西日本国土軸の形成に伴い、西日本における国土軸の結節点になっていく。そして、自然、歴史、文化、技術が融合する美しいガーデンアイランドが形成されていく。
 また、九州地方の人口は、少子化等の影響から計画期間中に減少局面へと移行し、高齢化が一層進行していく。総人口は、2005年(平成17年)前後に1,351万人程度でピークを迎え、2015年(平成27年)には1,336万人程度になると見込まれる。2015年(平成27年)においては、老年人口比率(65歳以上)が25%程度(老年人口339万人程度)にまで上昇し、一方、生産年齢人口比率(15〜64歳)は60%程度(生産年齢人口798万人程度)へと低下するとみられる。しかしながら、我が国の高度成長期に九州地方の総人口が減少した局面と異なり、九州地方の総人口の全国シェアは下げ止まるとともに、海外を含め、域内外との交流人口という面では増大していくと期待される。
 経済面では、今後長期的に着実な成長を続け、依然残る全国との所得格差についても、生産性の向上を通じて縮小されていくことが見込まれる。なお、産業構造は、経済サービス化の進展等により、第3次産業の比率がさらに上昇を続け、職業別就業構造では、直接生産職の比率が低下を続ける一方、専門・技術職の比率が上昇していくとみられる。

(1) 相当規模の都市と豊かな自然が織りなす多様な地域が連携・交流する九州を創造
 九州地方においては、福岡や北九州を中心とした圏域においてかなりの都市集積が進みつつあり、東京圏、関西圏、名古屋圏に次いで我が国第4の大都市圏が形成される可能性を秘めている。さらに、高次都市機能の集積を可能とする人口30〜60万人規模の都市が比較的多く存在し、これらの都市が適度な間隔で九州地方域内に広く点在している。一方、変化に富んだ豊かな自然環境に恵まれ、それを背景とした歴史と伝統ある生活文化を持った多様な地域が、九州地方には存在している。
 第1の課題は、このような相当規模の都市集積と豊かな自然がバランスよく広く存在している特性を積極的に生かし、多様な地域が連携・交流することを通じて、九州地方域内のどこに住んでいても、多大の時間や費用をかけずに、高質な教育・文化、医療・福祉等の生活サービスや就労の機会が享受できるとともに、同時に豊かな自然に容易に触れることができ、九州地方の各地域が全体的に選択可能性の高い多彩なライフスタイルが可能となる社会を創造していくことである。

(九州域内の身近な存在としての個性的で魅力的な都市圏の形成)
 このため、まず、高質の生活サービスや就業の機会という高次の都市的サービスを九州各地の人々に提供する地域の自立的発展の拠点を九州地方域内にバランスよく形成していくことを目指して、県庁所在都市等の地方中枢・中核都市圏において、それぞれの都市圏が、これまでの集積を生かしながら、さらに高次都市機能の充実・強化を図り、個性的で魅力的な都市圏の形成を図る。
 福岡・北九州都市圏は、文化やファッションなどの都市機能を求め、九州地方域内や域外からも人が集まってくるなど、集積が進む高次都市機能の効果を広域的に波及しながら、九州地方の拠点的な都市圏として大きな役割を担っている。東京を頂点とするこれまでの我が国の都市間の階層構造をより水平的なネットワーク構造へと転換させていく上でも、こうした動きが継続していくことが期待されている。また、今後は、東京や大阪だけでなく、釜山、ソウル、上海、台北などの近接するアジアの都市との競争の時代となることも予想される。
 福岡・北九州都市圏においては、引き続き、魅力ある都市的サービスの充実・強化に向けて、福岡と北九州の機能分担と連携を図りながら、アジアの中でも特色ある高度な都市機能を有する都市圏となっていくことが重要である。
 同時に、熊本、鹿児島を始めとする地方中核都市圏において、九州地方域内の一体的な発展に向けて福岡・北九州都市圏も含む各都市圏相互の機能分担と連携を進めながら、各々の都市圏の規模や地域の特性に応じた高次な教育・文化、医療・福祉、業務管理、研究開発、情報、国際交流等の高次都市機能の集積を図る。
 また、これらの地方中枢・中核都市圏では、過密等の都市問題の発生を未然に防止しつつ、住み心地のよい都市空間の形成を進めていくことも重要である。

(多自然居住地域における都市的利便性の向上)
 他方、地方中枢・中核都市圏以外の中小都市と農山漁村等の地域において、豊かな自然とそれを背景とした地域文化の下で、価値観や生活様式の多様化に応じ、豊かな自然やゆとりある居住環境と都市的サービスを兼ね備え、21世紀型のライフスタイルが実現できる圏域として「多自然居住地域」を九州地方の各地域に創造する。
 都市的利便性に関して、多自然居住地域に住む人々は、高次の都市的サービスについては、各々のニーズに応じて、九州地方域内にバランスよく形成される個性的で魅力的な地方中枢・中核都市圏にアクセスし、サービスの提供を受ける一方、基礎的な医療・福祉、教育・文化等一定レベルの都市的利便性については、多自然居住地域内で享受できるようにする。
 このため、多自然居住地域の拠点として地方中心・中小都市を位置づけ、地域の自立の基礎の形成を目指して、そのための都市機能の充実・強化を図る。地方中心・中小都市には産業構造の変化から活動が低下し、また中心市街地の空洞化もみられる都市も少なくなく、新たな産業基盤の確立も含め、地域の個性を生かしながらその再生を図っていくことも必要となっている。
 また、九州地方に広く分布している離島や半島部、山間部等の地理的制約等の大きい地域では、定住条件の改善に引き続き取り組むとともに、地方中枢・中核都市圏や地方中心・中小都市の各種都市的サービスの享受を可能とするため、交通アクセスの改善を図っていく。これにより、地方中枢・中核都市圏に住む人々にとっても、豊かな自然への触れ合いが容易になる。
 さらに、高度情報化社会の到来の中で、情報通信基盤は、時間・距離の制約を克服し、地域間の関係を大きく変化させることが期待され、その整備・活用を図っていくことも重要である。

(多様な地域間における連携・交流の推進とそれを支える交通・情報通信ネットワークの形成)
 さらに、九州地方の地方中枢・中核都市圏や多自然居住地域の各地に住む人々にとってより一層質が高く多彩な活動の選択を可能とし、また地域の新たな発展の機会を創出するため、九州地方域内の多様な地域が個性的で魅力ある資源を広域的に共有し、相互の機能分担と連携を積極的に進める。
 こうした観点から、四国、中国、沖縄の域外の近隣地域との連携・交流も含め、地方中枢・中核都市圏間、地方中枢・中核都市圏と多自然居住地域の間、多自然居住地域間で機能分担・役割分担を図りながら広域的な連携・交流を繰り広げる地域連携軸を形成し、九州地方の縦横に展開する。
 また、類似の地理的・社会的状況にあり、また距離的にも近いにもかかわらず、地形的条件や行政区域の境界により、これまで交流が活発でなかった県際地域において、共通する課題の解決や新たな発展機会の創出等に向けて、連携・交流を積極的に進めることも重要である。
 このような地域間の連携・交流を支援するとともに、九州地方の一体的発展を促進していくため、九州地方の域内循環を活発化させる高速交通体系の形成に向けた整備を進めるとともに、情報通信基盤の整備を図っていく。

(2) 自然と共に安全で安心して暮らせ、誇りが持てる生活圏を創造
 豊かな生活を実現していく上での前提として、日々の暮らしが安全で安心できる生活圏を確立しておくことが不可欠である。
 また、ゆとりと潤いがあり、真に心の豊かさが実感できる暮らしを享受できるようにしていく上では、豊かな自然に親しむことができ、またその自然環境を次代に継承していくとともに、自らの住む地域や伝統・文化に誇りを持ち、生きがいを感じられるような魅力ある地域を創造していくことが求められる。
 これらを実現するための地域づくりを進め、自然と共に安全で安心して暮らせ、誇りが持てる生活圏を創造していくことが、第2の課題である。

(広域的な連携による安全で安心できる生活圏づくり)
 九州地方は豊かな自然に恵まれている反面、台風や集中豪雨による洪水や土砂流出、雲仙・普賢岳、桜島等の火山災害など、自然災害を受けやすい地域である。このため、砂防・治山、治水、防災体制の整備など、災害に強い地域づくりを推進する。
 加えて、北部九州を中心に、渇水に対して脆弱な地域も多い。このため、安定的な水資源の確保と並行して、水の有効利用を進め、水を大切に使う循環型社会の形成を図る。
 また、九州山地などに広く存在する森林は、国土保全、環境保全、水資源のかん養等の面で、重要な役割を果たしており、流域沿いの地域が連携するなどにより、適切な管理のための対応を進めていく。農用地の適切な維持管理も、公益的な効果の発揮にも寄与しうるものであり、その対応を進める。
 他方、少子化、高齢化が進行する中で、子供を安心して生み育てられるとともに、高齢者等が安心して暮らせ、また、社会参加を通じて生きがいを感じることのできる、豊かな長寿福祉社会を実現することが求められている。このため、高齢者等が安心して暮らしていける保健・医療・福祉にわたる総合的なサービス体系の確立や地域における介護サービスの社会的支援システムの構築、高齢者に配慮した住宅や安全で快適な活動環境の整備による福祉のまちづくりの推進、高齢者等の社会参加の推進、子育て支援体制の整備を図っていく。
 これらの課題は各市町村での個別対応が困難な問題も多く、防災を始めとして広域的な対処システムを強化していく必要がある。また、医療・福祉や教育などに関する高度なサービスを提供していく上では、都市機能の充実・強化とともに、広域連合や一部事務組合等による広域的な対応を進めることが重要である。

(九州の自然豊かな環境に親しみ、継承していく地域づくり)
 心の豊かさ、安らぎ、潤いを求めて自然との触れ合いを重視する志向が高まるとともに、地球環境に代表されるように生存基盤としての環境の大切さが強く意識されるようになってきており、九州地方に残っている豊かな自然環境を美しく健全な状態で将来世代に引き継いでいくことが求められる。九州地方の変化に富んだ美しい自然は、国内外から多くの観光客を引きつけているという観点からも、その保全は重要である。 このため、九州地方に数多く存在する国立公園・国定公園を始めとして良好な状態を保っている森林や河川、海岸の生態系のネットワークが形成されるよう自然環境を保全していくとともに、地域整備に係る事業の実施に際して自然環境の保全対策を積極的に推進していく。
 加えて、環境への負荷の少ない社会へ変えていく必要があり、水循環システム、廃棄物リサイクルシステムなどの構築に向けた広域的な取組を積極的に推進していく。また、九州地方が有する自然の浄化能力や自然エネルギーを活用していくことも重要である。さらに、温室効果ガスの排出の少ない都市・地域構造、交通体系等の構築に向けた取組を進めていく。
 他方、身近に自然に親しむことができるようにしていくため、特に都市圏においては、水、緑、土などの自然を再認識し、景観的にも美しく、他の都市の人々にも誇れるような生活空間を創出していく。

(九州各地の個性を生かした魅力ある地域社会づくり)
 地域アイデンティティが形成され、住民が自ら住む地域に誇りと愛着を持ち、生活の充実感が得られる地域社会を構築していくため、美しさとゆとりのある生活空間の形成を進めつつ、地域の文化遺産等を活用した個性豊かな地域文化を守り育てるとともに、地域の創意・工夫により魅力ある地域づくりを進めていく必要がある。
 特に、多彩なライフスタイルの展開が可能な場として創造される多自然居住地域においては、このような個性と魅力あふれる地域づくりの多様な展開が求められる。こうした取組は他地域との交流人口の増大を促し、所得機会の確保と地域の活性化にもつながっていくことから極めて重要である。
 九州地方には、豊かな自然と共に歴史的な遺産に恵まれ、また歴史的町並み景観も多数残されており、全国的に知名度の高い伝統文化、伝統工芸なども多い。さらに我が国でも先駆的な地域づくりが数多く行われ、新たな魅力も付加されてきているが、こうした蓄積を生かし、さらに磨きをかけ、個性と魅力のある地域を創造していく。
 その際、伝統文化等と共に、新しい地域文化を創造、発信していくという観点から、新たな芸術文化活動が生き生きと人々の生活の中に展開されるような環境整備や新しい都市文化の創造を図るとともに、芸術文化に彩られる豊かな生活を創造することも重要である。
 個性的で魅力的な地域づくりを実現する上では、地域文化や地域づくりの本来の担い手であり、地域における生活の主役である地域住民を始め、ボランティア団体、民間事業者等の多様な主体による創意と工夫に基づく取組が重要な役割を果たすと期待されている。九州地方では、博多湾の海浜に松原を復元するための運動を始め、熊本の小国町、大分の大山町や湯布院町、宮崎の綾町等において、住民が主体となった地域づくりの先駆的な取組が行われている。このような取組をさらに拡大させ、多様な主体の参加を基軸とした地域づくりを積極的に展開していくことが重要である。地域づくりへの多様な主体の参加を円滑に進めていくための環境整備や活動に対する支援を行っていくとともに、地域づくりを主導する人材を育成、確保していく。

(3) 知識集約化に向けて産業の高度化を促進
 厳しい雇用情勢も踏まえ、既存産業の高付加価値化や新分野への事業展開を図るとともに、新しい産業分野の発展を促進し、雇用機会の創出を図っていく必要がある。
 このため、我が国の食料・木材供給基地としての性格を有する九州地方の農林水産業について新たな展開を図っていくとともに、単にモノ、サービスを効率的に生産し、提供していくという活動にとどまることなく、時代の潮流変化に対応しつつ、知識集約型の産業の多様な展開により、産業の高度化を促進していくことが第3の課題である。
    
(食料・木材供給基地としての新たな展開)
 九州地方は、気候風土や自然環境から農林水産業が盛んな地域であり、我が国の食料・木材供給基地として重要な地位を占めており、九州地方の産業構造の中でも農林水産業の比重は低下してきているとは言え、比較的高い。しかし、輸入拡大等に伴う経営環境の悪化、従事者の高齢化、後継者不足、耕作放棄地の増大等の問題を抱えている。また、国連海洋法条約の発効に伴い、新たな対応が求められている。
 今後とも我が国の食料・木材供給基地としての役割を担っていくため、規模拡大の推進、生産基盤の整備・高質化、高度情報通信の活用により、経営の安定化・効率化を図り、国際的な競争力を向上させるとともに、魅力ある就業・定住環境の整備を進めつつ、中山間地域等の農林水産業の次代の担い手を幅広く確保していく。
 また、農林水産業の新たな展開に向けてバイオテクノロジー等の先端技術の導入、活用を図る。風味や鮮度、安全性等の消費者ニーズに的確に対応して付加価値を高めるために生産・加工・流通面で生産者と消費者とのつながりを強化するとともに、都市との交流を促進し、観光農業、観光漁業などの産業複合化を図っていく。
 さらに、自然環境の保全に配慮した農林水産業の展開も求められる。

(九州の新たな発展を担う産業の創出・集積等の促進)
 他方、九州地方の工業集積は、他の地域と比べると依然遅れている面があるものの、鉄鋼、造船などの重厚長大型産業に続いて、半導体産業や自動車産業の工場立地が進み、シリコンアイランド、カーアイランドと呼ばれるまでになり、九州地方の製造業の厚みも増してきている。
 しかし、新鋭量産工場という強みを有している面があるものの、民間研究機関の立地は少なく、いわば頭脳に当たるソフト、デザイン、機械設計などの機能は十分有していない。アジアとの国際分業が進む中で、九州地方の工場が海外の工場での生産を支援するなど、世界の拠点工場、母工場としての役割を果たす動きもみられるが、こうした動きを定着させる上でも、先端技術産業の立地とともに、頭脳機能の立地の促進に向けて、環境整備を進めていく必要がある。あわせて、その技術、技能集積を在来型の産業へ幅広く波及させていくことが求められる。
 今後の産業を展望すると、時代の潮流に基づく新たな需要に対応し、情報通信関連、環境・リサイクル関連、医療・福祉関連、さらには高度な教育・文化関連など、より高質なサービスを提供していく産業の発展が期待され、これらの産業を支える機能を有するビジネス支援関連分野、人材関連分野やソフトウェア、企画・設計等の知識財を生産する産業の発展が見込まれる。
 これらの多くは都市型産業の性格を持っており、九州地方には域内各地に相当規模の都市集積を有していることもあって、情報通信関連、環境関連、生活文化関連などの事業所数も全国を上回るペースで増加しつつある。これらの産業の発展は、地域の就業機会の確保の面のみならず、地域の暮らしの充実と魅力等の向上に繋がるものでもあり、九州地方各地域の比較優位を生かしつつ、立地の促進に向けた環境整備を図っていく。
 また、九州地方の特性を踏まえて、航空宇宙分野や海洋関連分野での新たな産業の育成を図る。
 観光産業も、九州地方では重要な位置を占めており、アジアなど海外からの観光客の増加の定着を図りながら、域外からの観光客を誘致するため、温泉、火山などの伝統的な観光地やテーマパークのほかに、歴史・文化や自然環境等地域特性を生かし、広域的な観光ルートや体験型・滞在型の魅力ある観光地の形成などを進める。

(知的資本の充実と産学官の連携強化)
 九州地方において知識集約型の多様な産業を創造していく上では、九州地方自らで技術革新がなされていくようになっていくことが重要である。知的資本ともいうべき、研究開発機能とその活動を担う独創的な人材を格段に充実していくとともに、意識面からも九州地方の内部から自立的に新しい産業の展開を促す「産業創出の風土」を醸成することが必要である。
 このため、九州地方が有する科学技術・学術・文化等の蓄積を生かしながら、国際的な水準の研究開発を進めていくことを目指して、高次の研究開発機能の充実・強化を図るとともに、産学官の連携・協力を強化、推進していく。
 また、九州地方において、時代の潮流変化に的確に対応できる人材の育成・確保を図っていくため、福祉、情報、芸術、外国語などの分野の21世紀に向けた高次の教育機能を充実するとともに、労働力移動の円滑化のためにも専門的、技術的分野を含む多様な職業能力開発を促進するための体制を強化する。
 さらに、新たな産業展開を進めていく上でこれまで以上に起業家の活躍に期待が寄せられ、知識を市場に結びつける人材の育成・確保や、ベンチャービジネスを支援するための環境整備を充実していく。

(4) 歴史的・文化的繋がりも生かし、アジアと一体的発展に向けた国際交流を先導する九州を実現
 九州地方は、歴史的にも、我が国の対外交流の最前線として機能した時期が長く、常に海外からの刺激を受けつつ発展してきた。そして、九州地方は、世界経済の発展の極として期待される東アジアに最も近接している。空路では、東京、ソウル、上海、台北などの東アジアの主要都市までおおむね2時間以内と利便性が高く、海路では、太平洋、黄海・東シナ海、日本海の3つの海を結節する優れた地理的環境にあり、大交流、大競争の新たな国際化の時代を迎え、九州を舞台とした国際交流のポテンシャルは非常に大きなものとなっている。
 第4の課題は、世界に開かれた九州地方の実現を目指し、我が国とアジアとの交流を先導しうるポテンシャルを十分に発揮して、「アジアの九州」との視点に立って、経済、文化等の多面的な国際交流を積極的に推進し、異文化の交流拠点の形成を図り、九州地方の新たな発展につなげていくことである。

(アジア経済との連携・交流の促進)
 アジアNIES、ASEANの経済発展と中国の改革開放以降、九州とアジアとの経済的な結びつきが全国の動きを上回る勢いで強くなってきている。輸出入の貿易量の増大とともに、九州地域産業のアジア進出も増大し、地域的にも業種的にも多様化してきている。近年では、アジア企業の九州進出のほか、海を越えた産学の連携による研究開発の取組もみられ、双方向の連携・交流への動きが芽生えてきている。こうした動きを促進し、21世紀をリードしていくと期待されるアジア経済と一体となって新たな発展を目指していくことが重要である。
 このため、九州地方の電子・機械産業等の製造業では、アジアの中で、製品間、工程間の分業をネットワークする水平型分業を一層深化させるとともに、これまでの産業技術集積を生かし、アジアにおける国際的な研究開発や技術研修等の拠点としての機能を形成、強化する。
 また、九州地方の経済の活力を維持し、雇用の安定を確保する観点からも、投資の双方向での交流を活発化させることが重要であり、アジアの企業を始めとする海外からの企業進出を促進するための立地環境の整備を進める。その際、外国人にも住みやすい環境の整備も図っていくことが重要である。

(九州の顔が見える多様な国際交流・協力の推進)
 経済交流の活発化とともに、九州地方とアジアとの人的交流も盛んになってきているが、アジアとの一体的発展を図っていく上で、相互理解を増進するとともに、新たな発見や刺激を求めていくとの観点から、経済面だけでなく、学術、文化、スポーツ等の幅広い分野にわたって、九州地方の顔が見える多様な国際交流・協力を双方向で積極的に推進していくことが重要である。
 このため、国際的な交流施設の充実・強化を図るとともに、留学生、研修生の受け入れ体制の構築、国際会議、国際競技大会の開催のほか、歴史・文化等のつながりなどの地域資源を生かした草の根交流などにより、幅広い交流を進めていく必要がある。これらを支える国際的感覚を身につけた人材を育成していくことも不可欠であり、九州地方独自でこれらの人材を供給できる体制の整備を推進する。
 また、近年、近隣アジア諸国から九州地方への観光客が増加してきたが、九州地方が有する美しい自然環境、豊富な温泉、有形、無形の文化財等を積極的に生かして、国際的な観光地としての整備を進め、観光を通じてアジアを始めとする諸外国の人々との交流を定着させ、さらに深めていく。
 さらに、九州地方が有する公害克服の経験と公害防止技術の蓄積を生かしたアジア諸国の環境問題の解決に向けた貢献を始めとして、国際協力を積極的に推進していく。
 こうした国際交流・協力を推進していくに当たっては、九州地方の各地が有する資源や蓄積を連携することによってより効果が発揮されることから、九州地方の一体的な取組として推進していくことが重要である。

(国際交流・物流を支えるアジアへのゲートウェイ機能の充実・強化)
 九州地方における国際旅客、物流需要動向は着実に増大かつ多様化しており、それへの対応が求められている。今後の国際交流の活発化を支援するとともに、国際的にも魅力ある産業立地環境の創出に資するため、グローバルなネットワークへの対応も視野に入れつつ、アジアへのゲートウェイ機能の充実・強化に向けて、機能分担と連携の下で国際交流・物流の拠点となる空港、港湾等の基盤の強化を図っていく。加えて、これらの利便性を高めるアクセスのための交通基盤の整備を進める。 

第3章 参加と連携による重点課題への対応

第1節 対応に当たっての考え方

 九州地方の新たな発展の実現に向けた重点課題に対して、次のような考え方に立って、「参加と連携」を基軸に据えながら対応を進める。

1 多様な主体の主体的な参加

 各地域が個性的で魅力的な地域づくりを進めていくため、地域住民、ボランティア団体、民間事業者等の多様な主体による地域づくりを全面的に展開していく。
 その際、公的主体と民間主体の間で適切な役割分担を図り、また公的主体内では、国は、国家的見地から支援するとの基本的考え方の下、基幹的な基盤の整備を進め、地方公共団体は、地域的視点から地域づくりへの多様な主体の参加を支援、調整、活用する。
 また、地域住民の積極的な参加の下、地域が自らの選択と責任で地域づくりを行っていくため、地方公共団体の行財政基盤の強化も含め、地方分権を積極的に推進する。
 さらに、民間資金、能力の積極的な活用を検討するとともに、規制緩和、政策金融等により民間投資の促進、支援を図る。

2 広域的な発想の下での連携による展開

 人口減少・高齢化や地域間競争の中で、多様な人々の要請に応え、質の高い自立的な地域社会を形成していくため、既存の行政単位の枠を越えた広域的な発想の下で、関連する地域の主体的な取組としての連携による施策の展開を図る。
 この地域連携においては、地方公共団体が主体的な役割を担い、国は、地域の取組を踏まえつつ、基幹的な基盤の整備や広域的なサービス提供等の観点から支援する。また、国は、活力とゆとり・潤いのある生活空間の創造に向けて市町村等が広域的な連携の下に策定する地域戦略プランの推進を支援する。
 地域連携の主体の形成という観点から、既存の広域行政制度を活用するとともに、地域連携を効果的にするためにも市町村の自主的合併を積極的に推進する。

3 投資の重点化・効率化

 今後の九州地方の地域整備においては、九州地方の国土資源賦存量、公共施設の整備状況等を勘案の上、厳しい財政事情や長期的な投資余力の減少等を踏まえ、重点的かつ効率的な地域整備を進める必要がある。
 このため、本計画に掲げた重点課題の達成に必要な基盤の整備について重点的に投資を行う。
 この投資の重点化とあわせて、連携投資の推進、建設コストの縮減、既存ストックの有効利用等により効率的な投資を行う。
 また、基盤整備がより一層有効に活用されるよう、あわせて関連するソフト施策を一体的に推進する。

4 他の計画・施策との連携

 本計画は、新しい全国総合開発計画「21世紀の国土のグランドデザイン」の基本的方向に即して策定されたものであるが、本計画を効果的に実施するため、国土利用に関する諸計画、各県の総合計画を始めとする各種長期計画と緊密な連携調整を図る。
 さらに、環境への配慮を十分に行う観点から、基盤の整備に当たっては、環境保全に関する各種計画との連携を図るとともに、環境影響評価等を適切に実施する。

第2節 重点課題に沿った主要施策の展開方向

 以下では、第2章第2節で示した4つの重点課題に沿って、九州地方の新たな発展の実現において、広域的な影響・効果を与えるもの、広域的な連携を図るもの、先導性、発展性を有するものとの観点から、主要施策について、その展開方向を示す。言うまでもなく、九州地方の新たな発展は、ここで示したものに限らず、これまで積み重ねられてきた施策の更なる展開や、地域に密着したきめ細かな施策の展開、内発的な地域の取組など、様々な活動と相まって、全体として達成されるものである。

1 相当規模の都市と豊かな自然が織りなす多様な地域が連携・交流する九州を創造

(1) 九州域内の身近な存在としての個性的で魅力的な都市圏の形成
 九州地方に広く点在している地方中枢・中核都市圏において、これまでの集積や特性を生かし、各都市圏相互の機能分担と連携を進めながら、高次都市機能の充実・強化を図り、九州地方にバランスよく個性的で魅力的な都市圏の形成を図っていく。
 福岡・北九州都市圏においては、福岡、北九州の両都市の機能分担と連携を強化しつつ、アジアの国際交流・文化拠点や国際物流・技術拠点の形成を目指した展開を図る。また、その他の地方中核都市圏においても、その規模や特性に応じた国際交流の拠点機能を果たしつつ、熊本都市圏においては、熊本市と周辺市町村及び地方拠点都市地域等との連携を図りつつ、21世紀の九州地方の新たな拠点の形成を、鹿児島都市圏においては、鹿児島市と国分市等が連携しつつ、九州地方の南の拠点の形成を、長崎都市圏においては、長崎市と周辺市町及び佐世保市等大村湾諸都市との連携を図りつつ、西の起点、平和のシンボル都市といった特性を生かした情報交流拠点の形成を、大分都市圏においては、瀬戸内海地域と交わる東九州の拠点の形成を、宮崎都市圏においては、観光地としての蓄積を生かしたコンベンション・リゾート拠点の形成を、佐賀都市圏においては、鳥栖・久留米都市圏との連携により、有明海沿岸地域の人、モノの交流拠点の形成を目指した展開を図っていく。
 このため、高次都市機能の充実・強化の受け皿となる良好な市街地の形成を図るため、福岡市では博多湾東部における新たな拠点の整備等、北九州市では八幡東田地区の未利用地の活用による整備等、長崎市では港湾地区等の都市空間の再構築、熊本市、鹿児島市、大分市等では駅周辺地域等の再整備に向けて、土地区画整理事業、連続立体交差事業、市街地再開発事業等を進める。また、鳥栖北部丘陵などの新都市開発の計画的な整備や中心市街地活性化の取組を進める。
 都市のコンベンション機能の強化を図るため、福岡市や宮崎市において、既設コンベンション施設や宿泊施設との連携を図りながら、アジアを始めとする諸外国や域内外との交流を図る拠点としてのコンベション施設の充実、受け入れ体制の強化を図る。
 加えて、個性ある地域文化の創造やスポーツ・レクリエーション振興のための拠点的施設の整備を図る。特に、大分市などでは国際的な大会が可能なスポーツ公園の整備、福岡市では海の中道海浜公園の整備を推進する。
 都市内交通の円滑化を図るため、北九州都市高速道路、福岡都市高速道路等の都市圏自動車専用道路やバイパス等の整備を進めるとともに、福岡市の地下鉄整備等を推進する。あわせて、自動車から、鉄道、バス等の公共交通機関への乗り換えを促進するなどのパークアンドライド等TDM(交通需要マネジメント)施策を推進する。また、鉄道駅等交通拠点の改善を始め、交通機関相互の連携等を推進し、公共交通機関の利便性の向上及び利用の推進を図る。
 また、快適で魅力的な都市空間の形成に向けて、北九州市での紫川をシンボルとしたマイタウン・マイリバー整備や鹿児島市での錦江湾の魅力を生かしたウォーターフロントの整備などを推進する。快適で住みやすい居住空間の形成を図るため、公共下水道や都市公園の整備、良質な住宅の供給などを進める。

(2) 多自然居住地域における都市的利便性の向上
 地方中枢・中核都市圏以外の地域では、豊かな自然に接しながら、基礎的な保健・医療・福祉、教育・文化、消費等の都市的サービスや身近な就業機会の提供といった都市的利便性をあわせ享受できるようにし、地域の自立の基礎の形成を図る。

(多自然居住地域の拠点としての都市の整備)
 このため、多自然居住地域の拠点として地方中心・中小都市の都市機能の充実・強化を図る観点からも、久留米、福岡県北東部、唐津・東松浦、長崎県央、佐世保、荒尾玉名、八代宇城、大分県北・日田、大分県南、都城、宮崎県北、川内、大隅等の各地方拠点都市地域の整備を推進し、地域の自立に向けた拠点性の向上を図る。また、宮崎県南地域を始めとして、その他の地域においても、広域的な圏域の中で複数の地方中小都市が機能分担と連携を図ることによって、日常生活上の都市機能や圏域内外との交流機能の整備・充実を図る。
 魅力ある市街地の形成や良好な都市環境の確保のため、自然環境や農業的土地利用との調和を図りながら、街路の整備、土地区画整理事業を進める。また、広域的な商業中心都市としての魅力を向上するため、文化施設、交流拠点、駐車場等、商店街の基盤施設の整備、公共交通機関の利便性の増進などによる中心市街地の活性化を図るとともに、都市内交通の円滑化のための幹線道路の整備や鉄道高架化事業、連続立体交差事業等を進める。
 さらに、若者の定着やUJIターンの促進を図っていく上でも、下水道等の整備により、快適な居住環境の形成を図るとともに、地域が有する人材、歴史、文化、自然、産業等を活用し、地域の創意と工夫により、個性あるまちづくりを通じて都市の魅力と活力の創出を図る。

(離島・半島地域等の利便性の確保・向上)
 離島、半島部、山間部等の地理的制約等の大きい地域においては、都市部へのアクセス条件の改善に向けて道路、港湾、空港等の交通基盤の整備を図るとともに、離島の航路・空路について経営環境の厳しさが増している生活路線の確保を図る。また、域内のバス路線等の生活交通についても維持を図る。
 また、定住条件の改善に向けて、生活環境改善のための生活貯水池、海水淡水化施設、地下ダム等の地域の特性にあった水資源の確保と汚水処理施設等の整備を推進する。地域の有する多様で特色ある資源や文化を活用した産業振興を図り、海洋性気候等に恵まれた自然環境を活用した保養、療養活動(アイランドテラピー)、グリーン・ツーリズム、ブルー・ツーリズム等の振興や、半島文化を生かした個性ある地域づくりを進める。
 さらに、高度情報化社会の到来を生かし、多自然居住地域の多彩なライフスタイルの展開を可能にしていくとの観点も含め、地域情報格差是正のための地域の情報通信ネットワークの整備を図るとともに、阿蘇地域等において、高度な情報通信技術を活用した人の移動を伴わない勤務形態を可能とするテレワークセンターの整備を進めるほか、遠隔地医療や生涯学習などのための利活用を図る。また、マルチメディア社会に対応できる人づくりを推進する。
 筑豊地域等の産炭地域では、交通・情報通信基盤、生活基盤、産業基盤の条件整備等を着実に促進する。

(3) 多様な地域間における連携・交流の推進
 四国、中国、沖縄の域外の近隣地域との連携・交流も含め、地方中枢・中核都市圏間、地方中枢・中核都市圏と多自然居住地域の間、多自然居住地域間で機能分担・役割分担を図りながら広域的な連携・交流を繰り広げる地域連携軸を縦横に展開していくなど、多様な地域間での連携・交流を推進する。

(地方中枢・中核都市圏間での地域連携の展開)
 地方中枢・中核都市圏間を中心に連携・交流を繰り広げる地域連携軸として、福岡・北九州、佐賀、長崎の各都市圏等が連なる九州北部地域において、先進的な国際交流の一層の促進を図るため、研究学園都市や歴史回廊等アジアとの文化・学術・研究面での交流拠点を形成するなど国際色豊かな一体的圏域の形成を図る。
 北九州、大分、宮崎、鹿児島の各都市圏等が連なる東九州地域においては、都市機能、工業集積、観光資源等の集積間の遠隔性を克服し、そのポテンシャルを生かした地域の更なる発展を図るため、交通体系や流通拠点の形成等により魅力ある産業、文化軸の形成を図る。
 福岡・北九州、熊本、鹿児島の各都市圏を始めとする九州中央の諸都市が縦に連なる地域では、高次都市機能の広域的な享受、産業連携の強化等を目指した交流・連携の一層の推進を図る。

(地方中枢・中核都市圏と多自然居住地域との間での地域連携の展開)
 地方中枢・中核都市圏と多自然居住地域の間を中心に連携・交流を繰り広げる地域連携軸として、熊本・大分両県の中九州地域において、交通体系の形成を図りつつ、恵まれた自然を生かした広域観光ルートの強化を始めとして域内の多様な交流・連携軸の形成を図る。
 福岡、佐賀、長崎、熊本、鹿児島の5県にわたる有明海・八代海の沿岸地域においては、沿岸域の防災対策の推進に留意しつつ、域内各拠点を有機的に結ぶ循環型ネットワークの形成やアジアとの交流・物流拠点の機能強化を図るなど地域の一体的発展を目指した圏域の形成を図る。
 東シナ海に面する地域においては、アジアへの近接性や豊かな自然環境、海洋資源等を生かし、水産業や観光を始めとする地域の発展を図るため、長崎、熊本、鹿児島の3県にまたがる九州西岸地域の各拠点を有機的に結ぶ連携軸の形成を図るとともに、長崎・佐賀両県の西岸北部諸都市の都市間連携を進めるなど交流・連携の推進を図る。
 西瀬戸内海や豊後水道に面する西瀬戸地域においては、中国、四国地方との交流と連携を進める観点から、産業、観光等において、海を介した様々なネットワークの形成を図る。

(多自然居住地域間での地域連携の展開)
 多自然居住地域間を中心に連携・交流を繰り広げる地域連携軸として、熊本、宮崎、鹿児島の3県にまたがる南九州地域において、重要な食料供給地域としての高付加価値農業地域の形成、多自然・滞在型の広域観光ルートの形成を目指した魅力ある交流圏の形成を図る。
 南九州から南の海洋に連なる地域においては、産業、観光において海を通じた交流・連携の推進を図る。
 さらに、熊本、大分、宮崎、鹿児島の4県にまたがる九州中央山岳部の地域においても、農林水産業、観光等の振興を通じた多自然居住地域の創造を目指し、全国でも先駆的な地域づくりの蓄積を生かしながら、多自然居住地域間相互の連携・交流により地域の一体的発展を図る。

(川を通じ、また県境を越えた地域間の連携・交流の推進)
 加えて、九州山地に源を発する各水系の流域には豊かな自然や観光・農林資源、地域固有の歴史、文化等地域の活性化に有力な資源が豊富に存在しており、流域沿いの地域が連携してこれらの資源を生かした地域づくりや産業の振興に向けた取組が進みつつある菊池川、白川、緑川、大野川等の流域連携を推進する。
 北部九州や中九州、南九州の県際地域においても、近年の交通体系の整備などを生かし、共有する自然、歴史、文化や鉄道などを生かしたイベントの開催などを始めとして市町村が県境を越えて一体となって地域の活性化に取り組む県際交流を積極的に推進する。

(4) 連携・交流を支える交通・情報通信ネットワークの形成
 多様な地域間の連携・交流を支援する観点から、高度な都市サービスの享受機会や雇用機会等地域自立のための各種機能へのアクセスの均等化を広域的な観点に立って実現するため、交通、情報通信基盤の整備を進める。
 九州地方域内の地方中枢・中核都市圏間等を連結し、域内循環を活発化させるため、九州横断自動車道長崎大分線、九州横断自動車道延岡線、東九州自動車道、西九州自動車道、南九州西回り自動車道の高規格幹線道路の整備を推進する。あわせて、九州縦貫自動車道の4車線化を進める。
 これらを補完し、地域相互の交流促進等の役割を担う観点から、地域発展の核となる都市相互を連結し、地域連携の基盤となる道路、農山漁村等と都市部を連結することにより多自然居住地域の活性化を促す道路、空港、港湾等の広域的交通拠点や都市拠点等と高規格幹線道路とを連結する道路、地方中枢・中核都市圏の環状道路に重点を置き、高規格の道路網の形成を図る。このため、有明海沿岸道路、中九州横断道路、西彼杵道路、南薩縦貫道、熊本天草幹線道路、宮崎東環状道路、北薩横断道路、中津日田道路、島原道路、佐賀唐津道路、熊本環状道路、大隅縦貫道、都城志布志道路等の地域高規格道路の整備を進める。あわせて、高規格幹線道路等の整備を踏まえ、高速バスの運行の充実を図る。
 このほか、日常生活の基盤となる地域的な道路網の整備を引き続き進めるとともに、離島地域における架橋の建設や半島地域における域内を循環する道路等の整備を推進する。また、ITS(高度道路交通システム)の推進を図る。
 九州新幹線については、平成10年1月の政府・与党整備新幹線検討委員会の検討結果等に基づき、整備を進める。鹿児島ルートにおいて新八代・西鹿児島間及び船小屋・新八代間について着実に整備を進めるとともに、それ以外の区間及び長崎ルートについては、所要の事業を進める。また、在来線についても、高速化等を図るとともに、地域連携軸の展開を支える幹線鉄道の機能強化について検討する。
 国内航空ネットワークの形成及び強化、複合一貫輸送等に対応した国内物流基盤の充実などを図る観点から、新北九州空港等の空港・港湾の整備を推進する。また、新種子島空港等の離島空港の所要の整備を図るとともに、コミューター空港の活用を図る。テクノスーパーライナーの実用化の動向を踏まえ、その導入の検討を行う。
 また、九州北部から中央部を経て南部に至る九州を縦貫する地域の交流・連携の強化のための交通体系について既存ストックの利活用を含め検討する。さらに、長期的な視点から、四国との広域的な連携を図るための交通体系について検討する。豊予海峡道路、関門海峡道路、島原・天草・長島架橋の構想については、長大橋等に係る技術開発、地域の交流、連携に向けた取組等を踏まえ調査を進めることとし、その進展に応じ、周辺環境への影響、費用対効果、費用負担のあり方等を検討することにより、構想を進める。
 これらの交通基盤に加え、光ファイバ網等の高度な情報通信基盤の整備を促進するとともに、そのための道路、河川空間等の公共空間の活用のための環境整備を進める。あわせて、市内通話料金でインターネットにアクセスできるようにすることを目指したアクセス拠点の整備を促進し、また教育、医療等の分野における公的アプリケーションの開発と導入、高度な情報通信技術を活用した各種情報発信、提供等を進める。

2 自然と共に安全で安心して暮らせ、誇りが持てる生活圏を創造

(1) 広域的な連携による安全で安心できる生活圏づくり
 日々の暮らしが安全で安心でき、性、年齢にかかわらず、生活しやすい地域の形成を図っていく。

(暮らしの安全の確保等)
 このため、災害に強い九州地方の形成を目指し、洪水等による災害の発生防止のための筑後川等の河川事業や、土石流・火砕流等による災害の防止、森林の水源かん養機能、土砂流出防止機能の強化を図るための雲仙・普賢岳や桜島等の砂防事業、治山事業、高潮等による災害の発生防止のための有明海岸等の海岸保全事業、急傾斜地崩壊対策事業等を推進する。
 また、緊急時に対応した交通基盤や防災拠点の整備を進めるとともに、災害時における住民への迅速かつ的確な情報の提供を図るための災害情報提供体制の整備、災害時におけるボランティア活動が円滑に行われるための活動環境の整備等の減災対策を進める。その際、災害弱者について配慮する。
 洪水被害の発生を防止するとともに、流水の正常な機能の維持、水資源の安定的な確保等を図るため、川辺川ダム、嘉瀬川ダム等の多目的ダムの建設を促進する。また、北部九州などでの水資源の安定的な確保を図るため、流域住民の理解を得ながらダム群連携等既存ダムの有効活用、海水淡水化施設の導入等を推進する。
 あわせて水を大切に使う循環型社会の形成を目指し、都市部における雨水、下水処理水の有効利用を図るため、再生水利用を促進する。また、渇水時対策の強化を図る。
 一方、地盤沈下対策事業を推進するとともに、地下水障害を発生させないよう地下水の保全と適正な利用を図る。また、生活排水対策や下水道の普及等により、閉鎖性海域である有明海や大村湾、鹿児島湾等の公共用水域の水質の保全を推進する。
 さらに、水源かん養、土砂崩壊防止等の公益的機能の発揮が期待される森林、農用地の適正な管理を図る。

(暮らしの安心の確保等)
 暮らしの安心の確保の面では、高齢者等が安心して暮らせ、活動できるようにするため、高齢者に対する総合的・一体的な保健・医療・福祉サービスの充実と、多様なニーズに応じた施設整備を進めるとともに、住宅、公共施設、交通機関・施設等のバリアフリー化を図った福祉のまちづくりを推進する。また、交通安全施策を推進する。
 高齢化社会に必要な福祉・介護等のサービスを適切な知識や技術を用いて提供できる人材の育成を図るため、延岡市における大学の整備などを推進する。
 また、高齢者、障害者等が意欲に応じて積極的に社会参加活動を行い、健康で生きがいを持って暮らしていけるよう、シルバー人材センター等の高齢者の就業機会確保のための環境整備や、高齢者、障害者等の生きがい、ふれあい、健康づくりのための文化・スポーツ活動、ボランティア活動等、地域社会への参加を容易にする環境整備を進める。また、生涯を通じて学習に対する関心・意欲に応えていくための中核センターなどの整備とともに、大学等、公設試験研究機関等の活用や連携も図りながら、多様で高度な学習機会の充実を図る。
 加えて、少子化が進行する中で、安心して子供を生み育てることができるよう、仕事と育児の両立のための雇用環境の整備、多様な保育サービスの提供等、社会で共に支える子育て支援体制の整備を図る。

(暮らしの安全・安心の確保のための広域的対応の推進)
 以上のような暮らしの安全・安心を確保していく上で、過疎地域を始め、各市町村での個別対応が困難な場合も多く、広域的な連携による対応を推進する。九州地方では、大分、熊本の両県において医療・福祉等の分野での広域連合の設置による対応が全国に先駆けて積極的に進められており、今後も、このような広域的な対応をさらに進める。また、ダイオキシン問題への対応が急がれており、ごみ処理の広域化を推進する。
 国土の保全・管理においても、流域圏に着目し、上下流地域が各種交流を通じた流域意識や上下流意識の再構築を図り、両地域の連携による水源地域における国土管理を充実する。このため、筑後川等を介した都市と水源地域との上下交流を推進するとともに、九州山地に源を発する耳川、大淀川を始めとする宮崎県下の水系等において流域圏を基本単位とした森林の整備や山村の活性化に向けた多様な取組を進める。

(2) 九州の自然豊かな環境に親しみ、継承していく地域づくり
 九州地方が有する雲仙天草、瀬戸内海、霧島屋久、阿蘇くじゅう、西海の国立公園や耶馬日田英彦山、日南海岸、玄海、祖母傾、壱岐対馬、北九州、日豊海岸、奄美群島、九州中央山地の国定公園等を始めとする豊かな自然環境に親しむとともに、そうした自然を美しく健全な状態で将来世代に引き継いでいく。
 このため、世界遺産屋久島や大隅半島南部の照葉樹林帯、国内希少動植物が数多く分布する奄美地域等の生態系や自然景観の保全を図るとともに、そのための調査研究や自然体験型の環境学習のための施設整備等を進める。また、雲仙・普賢岳の噴火災害により損なわれた自然環境の再生、修復を図る。
 環境への負荷の少ない社会を実現していく上では、北九州、大牟田地域におけるエコタウンプランを始めとして、環境産業の育成などを図りつつ、リサイクルを基調に廃棄物をゼロとすることを目標に掲げた環境と調和したまちづくりを進める。また、水俣・芦北地域等における豊かな自然環境を生かし、環境との共生も重視した地域づくりの取組等を進める。
 また、人・まち・環境にやさしいバスの機能の活用、公共交通機関の利用促進、共同集配システムの構築等物流の効率化、低燃費車・低公害車の普及、都市内の交通の円滑化を図るための新交通管理システムの構築など、環境負荷の少ない交通体系の形成・環境にやさしいまちづくりを推進するとともに、省エネルギー対策等の施策を推進する。さらに、廃棄物の減量化や再資源化に向けた処理施設の整備などを広域的な取組として進める。
 一方、河川、港湾等の整備において、河道の再自然化、多自然型川づくり、海水交換型防波堤等を進めつつ、親しみの持てる水辺空間の整備、創出や、生態系や景観に配慮した海岸づくりを推進する。あわせて、公園、緑地の整備等により、自然とふれあえる都市空間の創造を図るとともに、パブリックアクセスの確保、マリーナ等の整備を図る。
 地域整備に係る事業の実施に際して、自然環境の保全を図るため、環境影響評価の実施等を通じて、保全すべき場所の改変を避け、あるいは、これを最小にするなどの対策を優先しつつ、適切な対策を講じる。

(3) 九州各地の個性を生かした魅力ある地域社会づくり
 個性と魅力のある地域社会を創造していくため、地域住民、ボランティア団体、民間事業者等の多様な主体の参加の下で、地域の創意と工夫に基づく地域づくりを展開していく。
 九州地方では、多様なコミュニティ活動を基軸とする美しい農村づくりのための佐賀農業・農村むらぐるみ発展運動や、民間と行政が一体となって策定した島原地域再生行動計画に基づく地域の復興・振興、北松浦半島における都市連携を目指した海洋クラスター都市構想の実現に向けた多様な主体の参画による取組を始めとして、長崎街道を媒介とした様々な活動により新たな地域アイデンティティの構築と活性化を目指した地域づくり、地域からの産業づくりやこだわりのふるさとづくりを目指した熊本の卓越のムラづくりなど、多様な主体の参加による地域づくりが進められている。
 また、宮崎では山村固有の生活文化を生かしつつ、人と森林が共生する森林理想郷を目指すフォレストピア構想、鹿児島では農村の持つ生産・交流・学習・保養等の多面的機能に着目した新しい田園社会の創造の取組が進められ、大分では適正な規模の人口のもと自然と産業と文化が共生する自立した地域社会となる適正共生社会の創造を目指した取組を進めようとしている。
 このような全国でも先導的な地域づくりを推進することによって、個性的で魅力的な多自然居住地域の創造を図っていく。また、多様な主体の参加による地域づくりを推進するため、ボランティア活動のネットワークづくりや活動拠点の整備等環境整備を進める。
 県境を越えた取組についても、熊本と宮崎両県からなる九州山地を中心とした地域の自然、歴史、生活文化を観光資源として活用し、都市住民との多様な交流の促進や地域産業の活性化を図る九州ハイランド構想や熊本、大分、宮崎の3県にまたがる77市町村を中心とする連携・交流活動を始めとして、玄界灘に面した福岡・佐賀両県の市町からなる玄界ウエストコースト都市圏会議、関門地域や南九州地域、奄美群島・沖縄北部における県際交流などの取組が進みつつある。地域の特色ある発展に向けてこのような県際の連携・交流による地域づくりの動きを積極的に促進する。
 さらに、地域の誇りと生活の充実感が感じられるとともに、域外との交流促進に繋がる地域づくりの観点から、吉野ヶ里遺跡、西都原古墳群、原の辻遺跡、上野原遺跡等の我が国の代表的な古代遺跡や大宰府跡、名護屋城、舞鶴城・鴻臚館、出島和蘭商館、鞠智城等の史跡について、国営吉野ヶ里歴史公園の整備を始めとして、建造物等の保存、復元とともに、周辺地域と一体となった歴史的風土の保全と活用を積極的に推進する。
 また、個性と伝統のある地域文化の継承と発展、それを活用した地域づくりを進めるとともに、霧島地域における豊かな自然を生かした音楽・彫刻等の芸術文化の多様な創造活動と交流の展開を目指した地域づくりや熊本における建築文化の向上を通じた地域づくりなど、個性豊かな新たな地域文化を創造し、情報発信していく地域づくりを推進する。 

3 知識集約化に向けて産業の高度化を促進

(1) 食料・木材供給基地としての新たな展開
(農業の新たな展開)
 農業の新たな展開を図るため、農業生産性の向上や農業経営の安定化を目指して、農地の流動化による経営規模の拡大を推進するとともに、都城盆地地区、大野川上流地区、曽於東部地区等のかんがい排水事業や佐賀中部地区の総合農地防災事業等の推進や農道の整備などにより、農業生産基盤の整備と高質化を図る。
 また、多様な農業の担い手の確保と育成を図るため、女性の役割の正当な評価や農業の担い手と高齢者等の役割の明確化等に留意しつつ、幅広く人材が参入できるような魅力ある農業を確立する。新規就農希望者に対する研修等関係機関が一体となった受け入れ体制、経営の支援体制の整備、農業に対する理解の促進を進める。また、経営の熟度に応じた農業経営の法人化を推進する。
 農業の技術開発や新たな技術の導入・活用を図っていくため、農業試験場の研究開発機能の強化を図るとともに、農業技術開発や教育研修機能の充実・強化と農業情報ネットワークの構築を図り、特に、鹿児島において総合的な技術拠点の整備を推進する。
 さらに、健全な土づくりを基本に減化学肥料や減農薬などによる栽培技術を確立し、安全で安心できる農産物の安定的な供給を目指し、環境にやさしい農業を積極的に推進する。あわせて、産地間競争の激化、消費者ニーズの多様化に対応した信頼される産地としてのブランドの確立を推進する。
 また、中山間地域等においては、宮崎等における標高差などの立地条件等を活用した野菜、花き等の周年出荷などの特色ある農業の展開を図るとともに、グリーン・ツーリズムや体験農園等の推進などによる都市と農村の交流の促進を通じて、複合的、多角的な経営の展開を推進する。その際、近年増加している耕作放棄地についても、都市住民が農作業体験できる場として提供するなど、その利活用を図る。

(林業の新たな展開)
 林業の新たな展開を図るため、木材の生産、加工、流通等に一体的に取り組む森林の流域管理システムの推進、林道整備と間伐との一体的促進などによる森林の整備や森林環境の保全、第三セクターの活用等による林業の担い手の育成・確保を進める。
 また、林業と木材産業の一体的な活性化に向けて、宮崎などにおけるスギ等の国産材供給基地としての木材工業、木材関連産業の技術力・研究開発機能向上や加工拠点づくりの取組を進める。あわせて地域内の木材需要を掘り起こすとともに、大消費地での木材の利用促進を図る。
 さらに、森林空間や景観そのものも活用した森林レクリエーションなど、森林を総合的に活用した産業展開を図る。

(水産業の新たな展開)
 水産業の新たな展開を図るため、海洋の持つ生産力を最大限に生かし、持続的かつ高度な利用を目指し、沿岸漁場の整備、栽培漁業、資源管理型漁業、養殖漁業等のつくり育てる漁業を総合的かつ有機的に推進する。新しい栽培魚種の開発や種苗の量産技術開発等の研究開発機能の強化を図るとともに、水産業の担い手の確保のため、作業の省力化、安全性の確保等、労働環境の改善を図り、高齢者や女性にも配慮しつつ、漁業者の就労条件の改善を図る。
 また、漁村の良好な自然環境を生かした豊かなウォーターフロントの形成や水揚げから流通・加工までの一貫した水産物供給基地としての機能充実に向けての漁港の整備を進める。
 さらに、海洋レジャー、観光などの他産業との複合的な取組を推進する。

(2) 九州の新たな発展を担う産業の創出・集積等の促進
 先端技術産業の立地やソフトウェア業、情報処理サービス業、エンジニアリング業等の知識財産業の立地の促進を図るとともに、これまでテクノポリス地域及び頭脳立地地域において整備されてきた基盤や産業集積を生かしつつ、新事業創出支援体制の強化を図ることにより、産業のより一層の高度化、新事業の創出を促進する。
 また、地域の産業集積における技術の高度化や新分野への進出等を促進するため、北九州地域、熊本地域の基盤的技術産業集積の活性化を推進する。
 研究開発型企業の地域展開や高度情報通信技術を生かした産業の高度化を図るため、中核的研究開発拠点や様々な研究開発機能、産業機能が集積し、交流するサイエンスパーク等の整備を推進する。
 また、流通、工業集積の促進を図るため、空港、港湾、高規格幹線道路網の整備の進展を生かし、広域的な商流、物流、情報流の拠点としての大分等の流通業務団地や中核的な工業団地の整備を進めるほか、産炭地域においては新しい産業の創出等による地域活性化を図るとともに、三池港の整備・活用等を図る。
 今後大幅な需要増が見込まれる医療・福祉、教育・文化等の社会サービス分野においては、公的サービスの充実に加え、民間事業者による多様なサービス提供を促進する。また、九州地方に蓄積された技術、情報、人材や、立地特性等を生かし、今後の発展が期待される情報通信、環境・リサイクル関連産業の振興を図るとともに、航空宇宙関連産業、海洋関連産業等の育成を図る。
 また、九州地方には、我が国でも一大産地を誇る家具や窯業等の多彩な地場産業が展開されており、消費者の多様なニーズに対応するため、新しい技術の導入等により、地場産業の高度化を図る。
 観光産業の振興を図っていく上では、日南海岸、玄界灘沿岸、長崎、佐賀、天草、別府・くじゅう、薩摩半島・屋久島・種子島の各地域において、自然景観等を保全しつつ、総合保養地域の形成を図るほか、阿蘇の世界最大級のカルデラや奄美群島のマングローブ原生林などの豊かな自然や歴史的な遺産を生かした魅力ある観光地づくりや観光・レクリエーション拠点の整備を進める。さらに、九州地方が連携して新たな広域観光ルートの形成を進め、観光客の誘致活動等に取り組む。
 また、エネルギーの安定供給の確保を図るとともに、地球環境問題等に資する地熱発電や太陽光発電、風力発電等の新エネルギーの開発・導入の促進を図る。畜産廃棄物の利用可能性についても検討を進める。

(3) 知的資本の充実と産学官の連携強化
 九州地方において研究開発機能の充実・強化とその活動を担う独創的な人材育成・定着を図っていくため、大学を始めとする高等教育機関や試験研究機関等の教育・研究施設の整備を推進する。中でも、九州北部地域においては、多様な産業、優れた学術・文化・科学技術等の集積を生かし、福岡・佐賀両県の7つの拠点地域が機能分担と連携を図ったネットワーク型の学術研究ゾーンの形成を図り、九州大学などの産学官の多彩な研究機関の連携による学術・文化・研究開発機能の整備・強化を進める。
 地域の研究開発ポテンシャルを結集し、新たな産業の展開に結びつけていくため、既設の産学官の研究機関の連携を強化する。公設試験研究機関において、県を越えた共同研究等の広域的な連携の推進を図るとともに、異分野の研究機関間での共同研究等による研究開発を推進する。また、大学等の技術シーズを地域の特性を生かしつつ産業化に向けて展開させていくため、研究共同体を組織し、産学官の強力な連携の下での研究開発を促進する。
 また、企業の持つ技術シーズと市場のニーズとを結びつける人材の育成・確保や、地域内外の人材、企業、地域資源等と結びつけるコーディネート機能の強化、地域企業の技術高度化を支援するインキュベート機能の強化を図るとともに、ベンチャーキャピタルによる資金供給の円滑化を図り、起業化の環境整備を図る。
 さらに、情報通信システムを活用した情報提供や、既存の高等教育機関や社会教育施設等の広域的な連携による総合的な生涯学習の振興などを通じて、学習や職業能力開発に係わる知的機会の充実を図る。

4 歴史的・文化的繋がりも生かし、アジアとの一体的発展に向けた国際交流を先導する九州を実現

(1) アジア経済との連携・交流の促進
 21世紀をリードしていくと期待されるアジア経済と一体となって新たな発展を目指していく。
 アジアにおける国際的な研究開発や技術研修等の拠点の形成、強化を図るため、環境・人間・アジアをコンセプトに九州北部地域におけるネットワーク型の学術研究交流拠点の形成を図るほか、九州地方の有する研究開発、技術集積等を生かし、長崎では東シナ海、黄海、日本海の水産資源等に関する試験、研究、研修機関の集積による国際的な海洋総合研究ゾーンの形成を、熊本では医・薬分野における伝統と集積、バイオ技術の集積、環境保全技術の集積を生かした生命科学に関する研究開発の促進を図る。また、鹿児島では世界的水準の火山観測機能・防災技術の集積を生かした火山に関する国際的な研究・研修・情報ネットワークの構築に向けた取組を進める。
 外国企業の九州地方への立地を促進するため、国際的な研究開発拠点の形成や、交通・情報通信基盤と住宅・都市基盤の整備等により、産業立地環境を国際的にも魅力あるものとしていくほか、海外企業誘致の積極的活動とともに、国際感覚豊かな人材の育成や海外企業のためのビジネスサポート体制の整備を図る。
 あわせて、外国人が安心して生活できるようにするため、外国人に対する医療、防災等の生活情報等のインフォメーション機能の充実、外国語表示の案内標識等の整備、外国人児童・生徒の教育環境の整備等により、言語や文化、安全・生活面に配慮した外国人にやさしい地域づくりを推進する。

(2) 九州の顔が見える多様な国際交流・協力の推進
 九州地方においては、国際的なイベントとして、福岡市におけるアジアの文化、芸術、学術を中心に各種イベントを集中的に行うアジアマンス、熊本におけるアートポリスの成果を発表する国際建築展、大分におけるアジアの新進彫刻家を対象としたアジア彫刻展、宮崎国際室内楽音楽祭、霧島国際音楽祭、アジア太平洋こども会議イン福岡などの取組が定着しつつある。
 海外の自治体との間においても、福岡、佐賀、長崎3県の連携による日韓海峡沿岸県市道知事交流会議、アジア九州地域交流サミット、アジア太平洋都市サミット等が継続的に開催され、さらに、鹿児島におけるからいも交流、宮崎における百済の里づくりを通じた交流、長崎における対馬国際ラインを活用した交流などの草の根交流の蓄積も進むなど、アジアとの交流を基軸に国際交流が活発化してきている。
 これらの交流を一層発展させていくほか、2002年ワールドカップサッカー大会、北九州博覧祭2001、長崎の日蘭交流400周年を記念したイベント等、国際的なスポーツ大会や国際会議の開催などにより、特色ある多彩な交流を推進する。
 このため、九州地方の歴史的蓄積、地理的特性を生かしたアジアとの学術・文化の交流拠点としての太宰府市における特色ある博物館を始めとして、国際的な文化、スポーツ等の交流拠点の整備・充実を進める。国際展示場、国際会議場、宿泊施設の集積や施設間の連携等を強化し、国際的なコンベンション機能の充実を図る。
 また、観光を通じた海外との交流を促進するため、美しい自然、伝統文化、さらに数多く存在するテーマパーク等の九州地方の特色を生かし、個性的で質の高い観光・リゾート施設とともに、外国人観光客のニーズに対応した受け入れ体制の整備等、国際的な観光地としての環境整備を推進する。また、隣接する海外地域との連携も視野に入れ、外国人観光客を念頭に置いた広域観光ルートの形成を図り、外国人観光客の誘致活動等を推進する。
 国際協力の面では、北九州市における環境技術の移転等これまで蓄積した技術や経験を生かした地球環境問題に関するアジアへの積極的な協力や、九州地方に事務所を開設している国際機関と連携した国際協力などを通じて、国際貢献活動を積極的に進める。また、鹿屋市におけるアジア太平洋農村研修村の整備を活用した海外への農業技術移転等の取組を進める。
 こうした国際交流・協力を支える、国際感覚豊かな人材を育成するため、別府市におけるアジア・太平洋地域の人材育成の拠点としての大学の整備に向けて準備を進めるなど高等教育機関の整備・充実を図る。また、国際的感覚を身につけた人材を育成するための英語等に慣れ親しむ機会を充実させる取組などを推進するとともに、通訳・翻訳・ホームスティ受け入れ、国際交流イベントへの手伝いなど国際交流に積極的に参加する国際交流ボランティアの育成を図る。

(3) 国際交流・物流を支えるアジアへのゲートウェイ機能の充実・強化
 着実に増大かつ多様化している国際旅客・物流需要動向等に対応するため、空港、港湾等の国際交流・物流の拠点となる基盤の強化を図る。
 このため、九州地方のアジアを始めとするグローバルゲートとなる国際空港機能の強化方策について十分調査検討を行う。また、港湾については、北九州港、博多港において、我が国の国際的な中枢拠点機能を強化する大水深で高規格の国際海上コンテナターミナルの整備を推進するとともに、交流拠点の形成を図る。志布志港においても地域のコンテナ輸送等に対応するため、国際海上コンテナターミナルの整備を推進する。また、地域の需要に応じて、伊万里港、佐世保港、八代港、細島港等の多目的国際ターミナル等の整備を進めるとともに、有明海・八代海の沿岸地域においてアジアとの交流・物流拠点の機能強化を図る。このほか、物流動向に対応し、新たな流通港湾として中津港の整備を図る。さらに、輸入の促進や対内投資事業の円滑化を通じて地域活性化を図るため、北九州港、長崎空港、熊本港、大分港を拠点とし、輸入関連施設・機能を集積させるFAZ計画を推進する。
 あわせて、これら空港、港湾へのアクセスを強化するため、高規格幹線道路や地域高規格道路等の交通基盤の整備を進める。
 加えて、税関、出入国管理、検疫等の国際交流・物流をサポートする機能の充実・強化を図るとともに、今後予想される航空輸送需要の増加に伴うアジア等近隣諸国との国際航空路線や東京、大阪を始めとする国内航空路線の拡充を図る。


問い合わせ先
 国土交通省 国土計画局 地方計画課
 TEL. 03-5253-8364 FAX. 03-5253-1572


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