<調査結果概要>
国連の技術協力プログラムの一つ「都市管理プログラム」(Urban Management Programme,UMP)の概念や手法、およびアジア太平洋地域での活動とその成果等について調査した。また、これをもとに、都市管理の分野における我が国を含めた各国政府、自治体、関係機関等の連携・協力の可能性について検討した。
都市管理プログラムは、過密や貧困の拡大、都市環境(環境汚染や水道、衛生、ゴミ問題、公共輸送機関等)、都市行政など、世界各地の都市が急速な都市化の過程で直面するさまざまな問題の解決に向けて、住民参加型の「まちづくり」を始めとした全国・地方レベルの都市管理能力強化を目的としている。
同プログラムのアジア・太平洋地域における活動は、主に都市コンサルティングを通して自治体の能力を高め、市民社会や民間との連携を促進することにより、都市貧困削減や都市環境管理、都市ガバナンスの改善を支援してきた。
プログラムの横断的な分析から得られた教訓には、以下のようなものがある。
アジア各都市における都市コンサルティングの事例に共通して認められる教訓としては、政治、行政、市民社会の各層におけるリーダーシップの重要性が挙げられた。リーダーシップを巡る問題は、外部からのコントロールが困難であり、外部から支援を行おうとする場合は、対象都市のリーダーシップの状況について把握しておく必要がある。
プログラム実施にあたってはその国や都市特有の問題に直面することも多い。このような問題に対処するためにも、地元パートナーと緊密な協力関係、信頼関係を築くとともに、国際的、地域的な政治経済状況についても最新の情報を得ることが重要である。
また、プログラムに対する参加者の主体性と当事者意識の必要性も明らかになった。
自治体やコミュニティ、NGO 、民間企業など地元のさまざまな関係者による参加、および地元機関や援助機関などのパートナーシップの構築がプログラムの成功に不可欠であることが明らかになった。このような参加とパートナーシップを促進するためには、以下のようなアプローチが有効である。
・コミュニティや草の根・地元NGO、都市管理に関わる関係者の効果的な動員
・官・民・市民社会のパートナーシップ
・タテとヨコの連携・協力
・地元財源の動員と支援
・地元および国際的なマスメディアの協力
・都市間ネットワーク団体との連携
・援助機関間のパートナーシップ
・地元の活動とグローバルな活動との統合
さらに、プログラムの成功に欠かせないのが、地元の言語や文化に詳しく、市民やNGO 、民間企業など地元のさまざまな関係者を取りまとめる調整役の役割を果たすことができる地元パートナー機関の存在である。
また、能力開発の重要性も明らかになった。職場での実践トレーニングや実地研修などは効率的かつ継続性の高い能力開発の手法の一つである。モデル事業の実施も地元の関係者の能力開発に有効であり、またその経験を広く他の地域に普及させることができる点で効果が大きいといえる。
国レベルの政策支援も持続可能なプログラムの成功のために重要である。地方分権政策や国レベルの開発計画およびイニシアチブの策定支援、行政職員の能力開発、そして都市間ネットワーク組織の結成促進などは、日本が大きな役割を果たしうる分野であろう。さらに、女性の地位向上を含めた公正な社会の実現もプログラムの効果的な実施に不可欠である。国レベルでジェンダーやその他の社会問題に関する政策を確立することも効果的な手段の一つである。
○平成14年度 アジア・太平洋地域における居住政策支援調査(全文)
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