<調査結果概要>
瀬戸内海は,我が国最大の閉鎖性内海であり,我が国最初の国立公園として,沿岸部には大小様々な小島や白砂青松などの世界に比類のない豊かな自然環境と美しい景観,歴史的・文化的な資源を有するとともに,近代以降は,国策による重厚長大型産業の配置により,高度経済成長を牽引し,多様な産業技術の集積によって我が国の発展の一翼を担ってきた。
また,瀬戸内海沿岸域は,このように環境上貴重な資源を形成する一方で,内海全体にわたり,産業,観光,レクリエーション等多様な利用が輻輳し,多くの関係者間の調整を要する極めて特殊な国土空間を形成している。
この瀬戸内海沿岸域が,昨今の社会経済情勢の変化により,人口の減少や産業活動の低迷,低未利用地の拡大,観光客の減少といった問題に直面するとともに,水質改善の遅れや赤潮の発生,自然海浜,藻場,干潟の減少に見られるように自然環境が質的・量的に悪化するなど,沿岸域の活力が総じて低下し,環境,経済両面から地域の再生が大きな課題となっている。
こうした課題に的確に対応し,環境,経済両面から地域の再生を図るためには,環境の保全・修復に加え,瀬戸内海の特性を活かした新産業の創出など環境と融合した秩序ある利活用を進めるといった沿岸域の総合管理方策が必要であることから,平成14年度,福山市周辺地域をモデル海域として設定し,現況分析や,現行制度における沿岸域管理上の課題の洗い出しや解決策の検討など,瀬戸内海沿岸域における総合管理の在り方について検討を行った。
その結果,今後,総合管理を推進していくためには,管理の基本的な方向を示す広域管理指針や管理の実践に向けた沿岸域圏総合管理計画の策定など総合管理システムの構築が必要であること,また,システムの構築にあたっては,共通認識の醸成のもと,「多様な主体の参画」,「総合管理手法の確立」,「各既存制度との調整」及び「総合管理体制の整備」といった実効性の確保に向けた課題があること等が明らかとなった。
このため,平成15年度調査では,総合管理システムの構築に向け,「広域管理指針」及び「沿岸域圏総合管理計画」の試行的・モデル的な検討を通じて,実効性の確保に向けた諸課題の解決策を探るなど,新たな枠組みを含め,具体的かつ総括的な検討を進めるとともに,今後,総合的な管理を実現していく上での取組方針(課題)等について検討することを目的として実施した。
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