テキスト ボックス: news release
国土交通省

2001年8月22


増加し続けるソフト系IT産業

〜ネットバブル後も増加するインターネット業〜

(1年半で5,279事業所増加、インターネットは4倍に)

 

〜全国に拡がるソフト系IT産業〜

国土交通省国土計画局大都市圏計画課
担当:垣見(直通 03-5253-8361)

 

 

 

本調査のポイント

 

●ITバブル崩壊後も増加し続けるソフト系IT産業

(1)ITバブル崩壊後も全国的に増加し続けるソフト系IT産業
(2)意外と多い地方都市への分布(地方都市に4割、政令指定都市に3割が立地)
(3)ソフト系IT産業最大の集積地である東京23区の動向

●ターミナル駅に集積するソフト系IT産業

(1)ターミナル駅に集積するソフト系IT産業
(2)営業先・駅へのアクセスの良さが立地の決め手


●狭いエリアで移転するソフト系IT産業

(1)ソフト系IT産業の移転はほとんどが地域内
(2)今後希望する移転先もほとんどが地域内


●意外と高い社長の年齢

(1)意外と高い社長の年齢
(2)ここ10年で半数が誕生
(3)売上高1億円以下が半数
(4)6割近くが専用線を利用してインターネットと接続
(5)6割以上の事業所が同業者とは交流なし
(6)行政に対しては「通信インフラの整備」を半数が希望

◎調査の方法

○タウンページデータにより全国のソフト系IT産業を把握
タウンページデータの中からソフトな情報通信産業として「ソフトウェア業」、「情報処理サービス」、「インターネット」の3業種いずれかに登録している事業所を抽出しました。

○全国の3分の1のソフト系IT産業の事業所に対しアンケート調査を実施
2000年9月のデータをもとに全国のソフト系IT産業の事業所数の約3分の1に相当する13,548事業所にアンケート調査票を送付し、2,854事業所から回答を得ました(回収率21.5%)。

◎調査の名称
本調査の名称は「ソフト系IT産業の実態調査」で、平成12年度に実施した調査結果をもとに、国土計画局内で企画編集したもの。

◎HPへの掲載
国土交通省のHPにて調査結果を公表します。

 


調査結果

 

●ITバブル崩壊後も増加し続けるソフト系IT産業

(1)ITバブル崩壊後も全国的に増加し続けるソフト系IT産業

  • ITバブル崩壊後もソフト系IT産業は増加しており、2001年3月現在、事業所数は35,207カ所となっています。
  • 業種別に見るとインターネットが大きく増加しており、ソフトウェア業、情報処理サービスは微増となっています。
  • 2000年度下期には伸び率が鈍化しています。

図1 ソフト系IT産業の業種別事業所数の推移

 (注)1.複数の業種に属する企業については重複削除を行った

    2.1999年9月時点の事業所数を100とした

 

(2)意外と多い地方都市への分布(地方都市に4割、政令指定都市に3割が立地)

  •    都市別に見ると、東京23区に9,713事業所(27.6%)が立地しており、大阪市をはじめとする政令指定都市に9,516事業所(27.0%)が、その他の都市(東京23区及び政令指定都市を除く)に15,978事業所(45.4%)が立地しています。

図2 ソフト系IT産業の都市規模別分布状況

         (注)1)数値は2001年3月時点の事業所数
            2)( )内の数値はソフト系IT事業所総計(35,207)に占める割合

 

  • 事業所数の推移を見ると、大都市よりも地方都市の事業所数の伸び率が高くなっています。

図3 ソフト系IT産業の都市規模別伸び率

       (注) 1999年9月の事業所数を100とした

 

  • 都道府県別に分布状況を見ると東京都が他の道府県よりも際だって多く、1万事業所を超え、全国の事業所数の約30%を占めています。次いで大阪府、神奈川県、愛知県、福岡県、北海道が1,000以上で続いています。

図4 ソフト系IT産業の都道府県別集積状況(事業所数と構成比)

 

  • 全国においてソフト系IT産業の事業所数が伸びており、その伸びはインターネットの増加が支えています。特に佐賀県、奈良県、福井県、石川県、鳥取県は1999年9月〜2001年3月までの年平均伸び率が25%以上となっています。

図5 都道府県別にみた事業所数の伸び率

  

       (注)1)伸び率の最小値〜最大値の範囲を4段階に区分
         2)( )内数値はそれぞれの伸び率の範囲に含まれる都道府県数

 

(3)ソフト系IT産業最大の集積地である東京23区の動向

  • 港区では事業所数の伸びが3期とも20%(年率)前後となっており、集積が急速に拡大しています。
  • 渋谷区では2000年度上期に27%(年率)で増加した事業所数が、2000年度下期には7%(年率)と4分の1程度に落ちており、いわゆるビットバレーへの熱狂的な関心が一段落したためであると考えられます。新宿区についても同様の傾向がうかがえます。千代田区、中央区はコンスタントに10%程度増加しています。

図6 東京23区における伸び率の推移−伸び率上位5区

 

  • ソフト系IT産業の事業所数の上位5区ではインターネットが急激に増加している様子がうかがえます。

図7 東京上位5区の業種別伸び率

     (注)伸び率:1999年9月〜2001年3月までの伸び率を年平均伸び率に換算 

 

●ターミナル駅に集積するソフト系IT産業

(1)ターミナル駅に集積するソフト系IT産業

  • 全国におけるソフト系IT産業の分布状況を見ると、大都市のターミナル駅周辺に集積しています。東京では、秋葉原、新宿、渋谷、茅場町、池袋、田町駅周辺、大阪では心斎橋、新大阪、南森町駅周辺、福岡では博多駅周辺、名古屋では栄・錦付近が半径1圏内にソフト系IT産業が300事業所以上立地する集積地となっています。
  • 一方、新潟、静岡などの地方中核都市においても核となる駅を中心に100程度の集積があります。

表1 ソフト系IT産業の集積地について

 

(2)営業先・駅へのアクセスの良さが立地の決め手

  • ソフト系IT産業の事業所が立地にあたり考慮した要因は、「賃料の妥当性」が一番高く(91%)、続いて「営業先企業へのアクセスの良さ」、「最寄り駅までのアクセスの良さ」、「鉄道によるアクセスの良さ」(70%以上)となっています。
  • ソフト系IT産業が集積している大都市部のターミナル駅周辺はこれらの条件を満たしています。 
  • 一方、集積要因と優位な関係があるのではないかと考えられていた、「若年層の文化に接しやすい」、「大学・研究機関との近接性」、「自治体の誘致策」は8割以上の事業所が考慮していないとしています。

                      図8 事業所を立地する際に考慮した要因 

  

 

●狭いエリアで移転するソフト系IT産業

(1)ソフト系IT産業の移転はほとんどが地域内

  • ソフト系IT産業の事業所の内、当初から現在地に立地している事業所は43%であり、移転してきた事業所は57%です。移転してきた事業所の内、同一市区町村内からの移転が70%、同一都道府県内からの移転が14%であり、比較的狭い地域内での移転が多くなっています。

          図9 事業所開設の経緯                 図10 移転前の地域

 

 

 

 

 

 

 

  • 移転した理由としては「オフィスが手狭になった」が53%と過半を占めており、企業の成長にあわせてオフィスを移転している様子がうかがえます。

                        図11 現在地への移転理由

    

 

(2)今後希望する移転もほとんどが地域内

  • ソフト系IT産業の事業所の内、今後の事業所の移転については60%が「移転の予定・希望はない」とする一方、「移転を予定している」事業所が12%、「移転の予定はないが移転したい」とする事業所が28%となっています。

図12 事業所の移転意向

 

  • 今後、事業所を移転したいとしている移転希望地域については、「現在と同一市区町村内」が7割近く(68.3%)を占め、「現在と同一都道府県内」(16.5%)とあわせると8割以上の事業所が比較的狭い地域内での移転を希望しています。

図13 事業所移転の希望地域

 

  • 今後の移転希望地域について実数推計を行ったところ、ほとんどが同一市町村内を希望しており、例えば大阪市の2,555事業所の内、大阪市内での移転希望が180事業所、大阪府内での移転希望が12事業所となっており、東京23区への移転を希望する事業所は9事業所にすぎません。

 

                      図14 移転希望地域の実数推計表

  

 

●意外と高い社長の年齢

(1)意外と高い社長の年齢

  • ソフト系IT産業の経営者の年齢について見ると、実際には50歳以上が過半を超えるとともに、40歳以上が9割近くとなっています。最も多い年齢層は50〜54歳であり、ついで45〜49歳なっています。この理由としては、実社会である程度経験を積んだ40歳以上の世代が起業しているためではないかと考えられます。 
  • インターネットの経営者の年齢について見てみると、2割程度が40歳以下となっており、比較的若い傾向がうかがえます。

 

                          図15 社長の年齢

  

 

  • 一方で、社員の平均年齢を見てみると40歳以下が8割以上を占めており、中でも25〜29歳が3割以上を占めるなど、いわゆる若者によりソフト系IT産業が構成されていることが分かります。
  • これらのことからソフト系IT産業は、経験豊富な経営者が多くの若者と協力しながら事業を行っている様子がうかがえます。

                        図16 社員の平均年齢  

  

 

(2)ここ10年で半数が誕生

  • ソフト系IT産業の創業年次を見ると、ここ10年で半数(47.9%)が誕生していることが分かります。

                         図17 創業時期

  

 

(3)売上高1億円以下が半数

  • ソフト系IT産業の売上高をみると、1億円以下が半数(47.7%)を占めており、小規模な事業者が多くなっています。

                         図18 売上高の状況

  

 

(4)6割近くが専用線を利用してインターネットと接続

  • ソフト系IT産業のインターネットとの接続形態を見ると、6割近く(56.7%)が専用線を利用しています。特にインターネットではその割合が高くなっており、良質な通信回線を活用していることが分かります。

                 図19 インターネットとの接続形態

 

  • 通信回線の速度を見ると、専用線では「128K」が、ダイヤルアップでは「64K」が中心であり、「1.5M以上」の高速回線の利用割合は必ずしも高くありません。

 

                 図20 通信回線の速度(専用線+ダイヤルアップ)

 

(5)6割以上の事業所が同業者とは交流なし

  • 6割以上の事業所が同業者との交流はないとする一方、半数以上(56.7%)の事業者がIT関連企業との交流会への参加を希望しており、交流会への参加ニーズが高いことがうかがわれます。特にインターネットでは64.2%の事業所が交流会への参加を希望しており、連携に対するニーズがうかがえます。

                    図22 同業者との交流状況

  

                    図23 交流会への参加意向

  

 

(6)行政に対しては「通信インフラの整備」を半数が希望

  • 「通信インフラの整備」をほぼ半数の事業所が希望しており、「税の軽減」、「低利融資」、「オフィスビルの安価な提供」を希望する事業者の割合も40%以上となっています。
  • 自由回答欄の中では、総じて通信インフラの整備に対する要望が多くなっています。通信コストの低減、高速通信網の整備に対する要望だけでなく、特に都市部と地方部での通信インフラの地域格差の是正を求める要望が強くなっています。また、自治体の仕事が大手企業に流れているが、地元のソフト系IT産業に発注することがソフト系IT産業の振興には重要との意見もありました。

                  図24 希望する公的支援策

  

 

 

 

 

○調査データの提供

  • 地域ごとの分析を行うことが可能ですので、求めに応じて自治体等に提供することができます。
  • 全国の自治体が実施しているソフト系IT産業に対する支援策リンク集を国土交通省のHP上で提供し、新規立地を検討している事業者に提供します。