中部圏基本開発整備計画(第4次)の概要


新しい中部圏基本開発整備計画は、中部圏開発整備法に基づいて、長期的かつ総合的な視点から今後の中部圏の開発整備の方向性を示すものであり、計画の期間は今後概ね15箇年とする。

計画の実施に当たっては、国、地方公共団体のみならず、民間企業、NPOや個人を含む、多様な主体の積極的な参加が必要である。

 

1 中部圏の諸状況の変化と課題

・我が国では、高度情報化と経済、産業のグローバル化、多様な価値観に対応した新しい文化と生活様式の創造、環境問題への取組、高齢化の進行、人口減少局面の到来、国土づくりの基本的方向等大きな変化が生じつつある。

・日本海側の各都市圏と名古屋大都市地域との連携が未だ弱く、また、分散的に配置されている各都市圏相互のネットワークも十分でない等、中部圏はいわば二軸構造となっており、圏域全体としての潜在力の発揮が不十分である。

・国際交流の機能は、首都圏や近畿圏に相当程度依存している状況にあり、環日本海交流の蓄積や新たに整備される中部国際空港をいかし、自立的な国際交流を進める必要がある。

・世界的規模での大競争が激化する中、各地の産業・技術の蓄積をいかし、既存産業の高度化や新規・成長産業の振興による産業の活性化が求められる。

・環境負荷の低減を目指す持続的発展が可能な社会への貢献をするとともに、2005年日本国博覧会の理念やその成果を圏域整備に活用する必要がある。

 

2 中部圏の将来像

@中部圏が目標とする社会や生活の姿

○世界に開かれた圏域の形成

・先進的産業・技術や豊かな自然等の資質をいかし、独自の国際的役割を担い、内外の訪問者に選択される、魅力ある創造圏域へと発展する。

○ 国際的産業・技術の創造圏域

・今後も我が国経済を牽引する圏域として、環日本海交流や環太平洋交流の積極的な展開を通じ、産業・技術の一層の高度化を実現する。

○「美しい中部圏」の創出

・風土と調和のとれた質の高い環境の形成と循環型社会の実現を図り、高度で創造的な諸活動を展開する場を提供する圏域としての役割を果たす

○誰もが暮らしやすい圏域

・誰もが社会に参加し、安全で多様な暮らしを選択できる誰もが暮らしやすい圏域を実現する。

A 目指すべき圏域構造

○世界に開かれた多軸連結構造の形成

・中部圏は、多様で特色ある各都市圏が、その潜在能力を最大限発揮し、自立性の高い魅力ある都市圏へと発展するとともに、4つの国土軸を結節する役割を果たし、また、国際的にもグローバルネットワークの一翼を担う世界に開かれた多軸連結構造の形成を目指す。

・この構造は、中部圏の各都市圏が程良く分散しながら、広域的かつ多様に連携する水平的ネットワーク社会への展開を可能とし、我が国が目指すべき多軸型国土形成に向けての新しい流れを創出する。

○中部圏が世界に開かれた多軸連結構造を実現する上での基本的考え方

・それぞれの都市圏が豊かな自然、文化、歴史や先進的技術等の資質をいかし、その拠点性や個性、魅力を高める

・都市圏間の交流や国際交流を支えるため、多様で特色ある資源や中部国際空港をいかし、多様な軸状連携の強化・育成する

・国土軸方向の軸状連携の強化・育成により、日本海国土軸、北東国土軸、西日本国土軸及び太平洋新国土軸の4つの国土軸の形成を促進する。

・国土軸をつなぐ方向の軸状連携を空間的広がりを持って育成・強化し、国土軸を連結する6つの圏域軸を形成を図る。

中部横断軸 上越から長野、甲府、清水を経て伊豆半島に至る地域

東海・信越連携軸 名古屋及び豊橋・浜松から長野を経て上越に至る地域

中央横断軸 能登半島から岐阜、名古屋、津を経て紀伊半島まで至る地域

福井・滋賀・三重連携軸 福井から大津を経て松阪・伊勢に至る地域

中部縦貫軸 福井から高山、松本を経て甲府・東京に至る地域

伊勢湾・東海環状軸 名古屋市及び中部国際空港を拠点とし、伊勢湾沿岸地域の諸都市及び名古屋大都市地域外縁部の諸都市を環状につなぐ地域

・4つの国土軸及び6つの圏域軸が北東アジアや東南アジア、あるいは太平洋諸国と連携する

 

B 中部圏の人口の見通し

1995年の約2,116万人から2008年に約2,182万人に達したのち減少に転じ、2015年には約2,162万人(1995年と比べて約46万人増)になると見込む。

 

3 中部圏整備の主要施策

@ 世界につながる多様な連携、交流の展開

多彩な資源をいかし、環日本海交流、環太平洋交流等を重層的に推進し、広域国際交流圏の形成を図る。

豊かな自然や産業集積等の資質や特性及び中部国際空港の開港や2005年日本国際博覧会の開催等のインパクトをいかした多様な国際交流活動の推進

国際感覚あふれる人材の育成、交流の舞台の整備の推進、交流の支援機能の強化等

○地理的優位性や多面的な交流の蓄積をいかし、環日本海交流を先導的に推進する。

交流の拠点となる富山市、金沢市、福井市が相互連携の下、高次都市機能の充実

環太平洋交流と結びつけることによる新たな付加価値や文化の創出

○中部国際空港を圏域全体での活用を図る。

中部国際空港を中部圏のグローバルゲートとして機能させるための圏域内とのアクセス性を高める交通体系の整備及び空港と連携した物流機能等を高めるための地域整備の推進

○グローバル化の進展の中で、名古屋大都市地域の拠点性の向上を図る。

教育・文化、国際交流等の高次都市機能の強化

中部国際空港等をいかした国際物流拠点及び先端的な産業技術、デザインに関する研究開発拠点等の整備の推進

○自立性の高い魅力ある都市圏の形成と多様な連携、交流を推進する。

都市圏間の適切な機能分担と連携を図りつつ、個性と魅力あるまちづくりの推進

個人、NPO等多様かつ広範な主体の積極的参画による連携、交流の推進

地域連携、県際交流や首都圏及び近畿圏等の圏域外ともつながる連携、交流の推進

A 世界水準の産業・研究開発集積の形成

各地の高度かつ多様な産業集積や研究開発集積等の活性化と集積間の連携、交流の推進により、世界水準の産業・研究開発集積を形成する。

・高度な学術研究機関の整備充実、人材の養成、産学官連携の推進等(TLO等)による研究開発機能の強化

・環境・エネルギー関連、情報通信関連、ソフトウェア業等の新規成長産業の振興

・情報、資金等における創業支援体制の強化による新事業の創出

・豊かな自然環境や文化資源等をいかした観光ネットワークの形成

・東海リサーチリンケージ、北陸スーパーテクノ・コンソーシアム等の広域的連携の推進

・産学官連携やまちづくりとの連携等による各地の地場産業の活性化

B 豊かな自然と共生した循環型社会の構築

豊かな自然環境を健全な状態で次世代に継承するとともに、快適性の向上及び環境負荷の軽減を重視した循環型社会を実現する圏域整備を進める。

・自然環境の保全、再生と事業の実施に際しての環境影響評価の実施

・緑の保全・創出、都市的・農業的・自然的土地利用の調和、健全な水循環系の構築

・省エネルギーの推進、交通分野における環境付加の低減(TDMやITS等)、廃棄物の発生抑制、リサイクル等の推進等による循環型社会の実現

・先進的な技術をいかした農林水産業の持続的発展、伊勢湾等沿岸域の総合的な利用と保全

C 創造性豊かな諸活動の展開

多彩な自然や風土と一体となった美しい空間の形成を図るとともに、創造性豊かな諸活動を行う多様な生活様式が実現できる場を創出する。

・美しい自然景観や地域風土(散居村、棚田等)と一体となった美しい地域づくり

・マルチハビテーションや田園居住への展開、グリーン・ツーリズム、テレワーク等の推進

・農林漁業体験、環境教育等を通じた都市・農山漁村間の連携、交流の推進

・文化財・歴史文化活動(合掌造り等)の保存・伝承と利活用、個性的な文化・芸術活動の振興

D 誰もが暮らしやすい圏域づくりの推進

多様な生活様式や人生の段階に合わせて自由に選択できる居住環境の整備や安心して暮らせる圏域づくりを推進する。

・高齢化、少子化等への対応、身近な生活圏づくりの推進等暮らしやすい居住環境の形成

・中心市街地の再生

・積雪地域における快適な生活の展開

・生涯学習環境や福祉サービスの充実と女性・高齢者の社会参画への支援

・エネルギー供給体系の整備、水資源の供給・保全、再利用体系の整備

・リダンダンシーの確保、東海地震対策の推進等による災害に強く安全な圏域づくりの推進

E 多彩な連携、交流を支える交通、情報通信体系の整備と良質な社会資本の形成

○中部圏が世界に開かれた多軸連結構造を実現するため、多彩な連携、交流を支える交通、情報通信体系の形成を図る。

・中部国際空港、国際港湾やこれらと圏域全体とのアクセス性を高める交通体系の整備の推進

・北陸新幹線、東海北陸自動車道等交通体系の整備の推進

・物流機能の効率化、高度道路交通システム(ITS)の推進、利便性の高い公共交通体系の整備

・誰もがどこでも活用可能なように総合的に情報通信体系の整備を推進

○次世代に引き継ぐ良質な社会資本を効果的、効率的に推進する。

・地域の自立や連携、交流の活発化に資する基盤について重点的な整備

・客観的評価、官民の適切な役割分担の下での整備、施設等の効率的な利用・運営やコストの縮減等の推進

 

4 世界に開かれた多軸連結構造の形成

@ 日本海国土軸の形成

・日本海に沿った地域において、環日本海交流を先導するための国際交流機能等高次都市機能の充実を図るとともに、豊かな自然や伝統・文化をいかした観光ネットワークの形成等を目指した連携、交流を推進し、中部圏における日本海国土軸の形成を促進

A 中部縦貫軸及び北東国土軸

・福井平野から飛騨地域を経て信濃に至る地域において、貴重な自然資源や特色ある風土をいかした地域づくりを進めるとともに、地理的に隔てられた東西方向の連携、交流を活発化させることにより中部縦貫軸を形成

・中部縦貫軸の形成等と相まって、中部圏における北東国土軸の形成を促進

B 太平洋ベルト地帯の再生、西日本国土軸

・東海道に沿った地域において、最先端の産業・技術の集積地としての機能強化を図るとともに、文化、教育、国際交流等の高次都市機能の相互活用により、魅力的な空間として中部圏における太平洋ベルト地帯を再生し、西日本国土軸の形成を促進

C 伊勢湾・東海環状軸及び太平洋新国土軸

・名古屋大都市地域及び中部国際空港を拠点とし、伊勢湾沿岸、濃尾平野及び浜名湖周辺からなる地域において、高度な産業・技術、高次都市機能、海洋性の自然をいかした地域づくりを進めるとともに、東海リサーチリンケージ構想の推進による世界的な産業・技術の中枢の形成、国際交流拠点の形成等を図ることにより伊勢湾・東海環状軸を形成

・伊勢湾・東海環状軸の形成等と相まって、中部圏における太平洋新国土軸の形成を促進

D 中部横断軸

・日本海から北信・東信、甲府盆地、駿河湾沿岸を経て伊豆半島に至る地域において、豊富な余暇施設や特色ある産業集積をいかした地域づくりを進めるとともに、首都圏とも連携を図りつつ、マルチハビテーションの展開等による創造的な諸活動の活発化により中部横断軸を形成

E 東海・信越連携軸

・名古屋・三遠南信地域から中信・北信を経て日本海に至る地域において、高度な産業・研究開発機能集積や多様な生活環境をいかした地域づくりを進めるとともに、産学官連携の強化、伝統的な民俗芸能をいかした広域観光の展開等を目指した連携、交流を推進することにより東海・信越連携軸を形成

F 中央横断軸

・能登半島から飛騨地域を経て紀伊半島に至る地域において、多彩な地域資源をいかした地域づくりを進めるとともに、中部圏全体としての産業の活性化や研究開発機能の高度化を目指して、環日本海の拠点と環太平洋の拠点を連結した多様かつ活発な連携、交流を推進することにより、中央横断軸を形成

G 福井・滋賀・三重連携軸

・福井平野から琵琶湖周辺を経て伊勢湾に至る地域において、3つのうみや交通の利便性をいかした地域づくりを進めるとともに、近畿圏とも重なりつつ、多様な活動空間の形成を目指した連携、交流を推進することにより、福井・滋賀・三重連携軸を形成

5 施設計画及び区域の指定について

@ 施設計画

○広域性を有し、かつ、根幹となるべき各種施設の整備及び開発に関する計画を定めた部分であり、道路、鉄軌道、港湾、空港、河川、住宅等の34の施設について、事業の実施に当たっての配慮事項を踏まえつつ、整備の方向付けを行う。

A 区域の指定

○中部圏開発整備法の規定に基づき、圏域全体の均衡ある発展を図る上で必要な均衡整備区域、都市開発区域及び保全区域の指定について細目的な基準を定める。


トップページへ