序説

1 計画変更の意義

中部圏基本開発整備計画(以下「基本計画」という。)は、圏域内の各地域相互間の産業経済等の関係の緊密化を促進するとともに、首都圏と近畿圏の中間に位置する地域としての機能を高め、我が国の産業経済等において重要な地位を占めるにふさわしい中部圏の建設とその均衡ある発展を図り、あわせて、社会福祉の向上に寄与することを目的として、これまで三次にわたり策定されてきた。

昭和43年に策定された第一次の基本計画は、経済の高度成長の過程で発生した地域間格差、過密・過疎等の諸問題に対処するとともに、産業基盤の強化と生活基盤の整備を推進することをねらいとし、昭和53年に策定された第二次の基本計画は、圏域内のそれぞれの地域の社会的経済的な基盤をいかし、その相互の連帯により均衡ある発展を図ることをねらいとした。また、昭和63年に策定された現行の基本計画は、高次の諸機能を育成し、主体的な地域づくりを推進し、中枢性を向上させるとともに、多様性に富みまとまりのある圏域の形成を基本方針に掲げた。

これまでの計画の実施により、中部圏内の各都市圏を中心に、人口の増加をある程度計画的に受け止めつつ、商業施設等都市機能を支える施設等が充実してきたほか、各都市圏間を結ぶ交通体系の整備も推進されてきたところである。

しかしながら、中部圏を取り巻く状況を見れば、いまだ弱い南北方向の都市圏間の連携・交流、他圏域に相当程度依存した国際交流機能、産業の空洞化による経済力低下への危惧等、解決すべき課題は多い。

また、平成10年3月には新しい全国総合開発計画である「21世紀の国土のグランドデザイン−地域の自立の促進と美しい国土の創造−」(以下「21世紀の国土のグランドデザイン」という。)が閣議決定され、国土構造の在り方や基本的な課題、戦略が示されているところである。

一方、中部圏における近年の北陸新幹線や東海北陸自動車道等の整備の進展は、圏域外との交流の活発化、圏域内における南北間の交流を始めとした新たな連携・交流の実現及び分散的に配置する各都市圏の一体化を期待させるものであり、また、2005年の日本国際博覧会の開催及び中部国際空港の開港等の新たな動きや環日本海交流の活発な取組は、21世紀において中部圏が、世界に向けて大きく飛躍することを感じさせるものである。  

これらの諸状況を踏まえ、今後の中部圏整備に当たっては、経済的発展を目的とする開発から、自然と人間とのよりよい共存や国土の質的向上を含めた発展を図るため、国土の適切な利用・管理へと重点を移すことが重要となる。また、人々の価値観、生活様式に応じ、多様な暮らしを選択できるよう生活者としての視点を大切にするとともに、環日本海交流の蓄積や中部国際空港をいかした世界に開かれた圏域の実現が求められている。

このため、中部圏開発整備地方協議会[1]等地元の考え方を基本としつつ、新たな中部圏の開発整備の方向を示すため、基本計画を変更するものである。

2 計画の性格

この計画は、中部圏開発整備法に基づいて、長期的かつ総合的な視点から今後の中部圏の開発整備の方向性を示すものであり、民間の諸活動に対しては誘導的役割を果たし、関係行政機関及び関係地方公共団体に対しては、中部圏の開発整備に関する諸計画及び諸施策の指針となるものである。

3 計画の対象区域と期間

この計画は、富山県、石川県、福井県、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県及び滋賀県の区域を対象とする。

計画の期間は、今後概ね15箇年間とする。

4 計画の実施

この計画の実施に当たっては、国、地方公共団体のみならず、民間企業、NPO[2]や個人を含む、多様な主体の積極的参加が求められる。そのため、これら多様な主体がこの計画に対する理解を深め、積極的に参加できるよう必要な情報提供や支援策を講じることが重要である。

この計画に位置付けられた施策・事業の広域的な調整については、中部圏開発整備地方協議会の積極的な参画によって推進する必要がある。

また、この計画の実施に当たっての地方公共団体の役割の重要性にかんがみ、地方財源の確保と安定のため、今後とも適切な措置を講ずる必要がある。

 環境への配慮を十分に行う観点から、基盤の整備に当たっては、環境保全に関する各種計画との連携を図るとともに、環境影響評価[3]等を適切に実施する。

なお、この計画は、その進捗状況を点検していくとともに、この計画と関連する主要な計画が策定又は改定された場合や、首都機能移転に関する検討の結果が得られ、中部圏に重大な影響を及ぼす等、社会経済情勢の変化があった場合においては、弾力的な運用又は見直しを行う。

 

第1部 中部圏開発整備の基本方針

第1章 中部圏の諸状況の変化と課題

第1節 我が国をめぐる大きな変化

我が国は、経済成長や人口増加を前提とした右肩上がりの成長の時代から、質や熟度の高さが重視され、ゆとりが尊ばれる成熟の時代へと移行しつつある。中部圏の開発整備に当たっても、以下のような、我が国をめぐる大きな変化を前提に進める必要がある。

(高度情報化と経済、産業のグローバル化)

情報通信技術の飛躍的な進展と情報通信網の整備は、人々の生活や意識、社会の在り方をも大きく変えつつある。活動の時間的、空間的な自由度が、飛躍的に増大し、交流の機会が質的、量的に拡大してきており、個人が世界と直結する状況が生まれつつある。

また、経済のグローバル化により企業や個人が最適な活動の場を求めて国や地域を選択する傾向が強まり、国境を越えた地域間競争が厳しさを増している。民間企業の海外進出、それに伴う産業の空洞化等は、我が国の経済に大きなインパクトをもたらしている。

(多様な価値観に対応した新しい文化と生活様式の創造)

物の豊かさより心の豊かさの重視、個人の自由な選択と自己責任の尊重、自然の価値の再認識、組織よりも家族や地域社会への帰属の重視、男女共同参画社会の実現に対する認識の高まり等人々の意識や価値観の転換が進みつつあり、これらに応じた新しい文化と生活様式の創造が求められている。

(環境問題への取組)

様々な環境問題が顕在化していることを背景に、環境問題について、地球規模で議論がなされ、多方面からの取組が活発化してきているとともに、地域社会においても、身近な自然環境の保全や生活環境の向上のための取組が増えている。環境への負荷を低減し、持続的発展が可能な社会を実現することが重要な課題となっており、地球、国土、都市、地域社会、あるいは流域圏や沿岸域といった様々なレベルでの取組が求められている。

(高齢化の進行、人口減少局面の到来)

我が国の総人口は、少子化等の要因から伸びが鈍化しつつあり、21世紀初頭にピークを迎えた後減少局面に入り、また、高齢化が一層進行すると見込まれている。これに伴い21世紀初頭以降には、経済成長率の低下、投資余力の減少が進行すると予測される。一方で、自由時間が比較的多く、社会参加の意欲が高い高齢者が増加すると考えられ、高齢者が生き生きと活躍することのできる社会の構築が求められている。

(国土づくりの基本的方向)

 「21世紀の国土のグランドデザイン」においては、長期的な視野に立って4つの新しい国土軸の形成に取り組み、現在の一極一軸型の国土構造を多軸型に転換することによって、多様な地域特性を十全に展開させた国土の均衡ある発展を実現し、人々に多様な暮らしの選択可能性を提供することが国土づくりの基本的方向としている。東京を頂点とした都市間の階層構造を、「自立」と「相互補完」の関係に基づくより水平的なネットワーク型構造へと転換する必要がある。

第2節 中部圏の現状と課題

(多様な潜在力の発揮

 中部圏においては、地形的条件や歴史的経緯等から多様で特色ある都市が分散的に展開し、それらの都市が核となり、周囲の豊かな自然環境に恵まれた地域と一体となって、生活圏や活動圏としての都市圏を形成している。また、これらの都市圏は、中部圏内において、海岸線や河川に沿って数珠状の展開をみせている。

しかしながら、それら都市圏の相互のつながりは、東海道沿いの太平洋ベルト地帯を中心とした極めて強い軸状の展開と日本海側に沿ってやや強い軸状の展開がみられるものの、日本海側の各都市と名古屋大都市地域との連携や分散的に配置されている各都市圏相互のネットワークは十分とは言えず、いわば二軸構造となっており、中部圏を特徴づけている多様な地域の潜在力を必ずしも十分にいかしきれていない状況にある。

 「21世紀の国土のグランドデザイン」において提唱された多軸型国土構造を構成する4つの国土軸全てに係わる中部圏においては、我が国の中央に位置する等他の圏域にはない地理的な優位性を有している。中部圏はこの優位性をいかし、圏域内外の連携・交流を活発化させ、各地域の潜在力を圏域全体の総合力へとつなげる圏域整備を行うことが求められている。

(世界的規模の交流

 中部圏は、近年、地理的優位性をいかした環日本海交流や企業の海外進出等諸外国との交流が活発化してきており、圏域全体として世界に向かって開かれつつある。また、2005年日本国際博覧会の愛知県での開催が決定され、さらに、中部圏におけるグローバルゲート[4]として期待される中部国際空港の開港予定等、諸分野における世界的規模の交流は今後ますます活発になると見込まれる。

 しかしながら、中部圏は、現在、国際都市機能やゲート機能等を首都圏や近畿圏に相当程度依存しており、国際交通体系の整備、国際交流の担い手となる人材の育成、外国人にとっての居住性の向上等社会、経済、産業等のグローバル化に対応した圏域整備が求められている。特に、新たに整備される中部国際空港については、空港と各都市圏とをつなぐことにより、中部圏全体のゲートとしての機能を担うことが求められる。また、空港の効果を中部圏全体で享受できるようハード面のみならず、ソフト面も含めた多様な圏域整備が必要である。

(我が国を牽引する産業・技術)

 中部圏は、我が国の基幹産業といえる輸送用機器等の機械製造業を始めとする多様な製造業が集積しており、我が国経済の牽引役としての役割を果たしてきた。現在では徐々に第二次産業から第三次産業に産業構造転換が進みつつあるものの、依然として総生産に占める割合は製造業がサービス業と卸売・小売業を合わせたものよりも大きく、また、三大都市圏の中で人口一人当たりの製造品出荷額及び製造品付加価値額が一番多い等、製造業へ特化した産業構造が続いている。

製造業については、特に加工組立型産業の集積が大きく、太平洋側地域の輸送用機器や日本海側地域の産業機械等の特色ある産業集積、また、内陸部を始めとして圏域内に幅広く分布する電気・電子機器等、各地で多様かつ高度な産業集積等が形成されている。また、東海のファインセラミックス[5]、北陸のアルミ建材等の基礎素材型産業の産業集積、圏域内に幅広く分布する繊維等の産業集積等が形成されている。さらに、陶磁器、織物、漆器、木製家具等の伝統工芸産業も中部圏全域に広く分布している。

 現在、地元企業の海外進出に伴う産業の空洞化が懸念され、また世界的規模での大競争が激化している中、中部圏が今後も産業・技術の牽引役としての役割を果たしていくため、各地の産業・技術の蓄積をいかし、既存産業の高度化や新規・成長産業の振興等による産業の活性化が求められている。

(環境問題に対する認識の高まり

 中部圏は、従来から地域環境保全に対する意識が高く、また、環境保全に関する調査・情報提供事業、国内外の研修・技術指導、研究開発等、諸外国への技術移転に貢献してきている。

 近年、タンカーの油流出事故や廃棄物焼却施設等から排出されるダイオキシン類による環境汚染が大きな関心を集める等、限られた資源と美しい国土を後世に引き継がなくてはいけないという認識が浸透しつつある。産業界でも、部品等のリサイクル、省エネルギー機器の技術開発、資源の循環利用に資する農林水産業の展開等、循環型社会の構築への新しい動きがみられる。中部圏は今まで培った蓄積をいかし、地球環境問題がより一層深刻化する前に、環境への負荷を低減し、持続的発展が可能な社会への移行に貢献することが求められている。

2005年日本国際博覧会は、環境・資源・エネルギー、人口、食糧等の人類共通の課題について、世界の一人ひとりに考える機会を提供する博覧会を目指し、環境創造型のまちづくりや人と自然との新たな関係等の事項について、世界の知恵を集め、来るべき時代の方向性を創造することとしている。このような理念やその成果を圏域整備に活用していくとともに、国土全体ひいては世界全体に発信していくことが求められている。

 

第2章 中部圏の将来像

第1節 中部圏が目標とする社会や生活の姿

1 世界に開かれた圏域の形成

中部圏は、先進的な産業・技術、豊かな自然や居住環境、地理的優位性をいかした多面的な交流の蓄積等の資質や特質をいかすとともに、新たに整備される中部国際空港を圏域全体で活用し、経済、学術、研究、文化、スポーツ、観光等の多様な分野での交流を積極的に展開し、また、環日本海交流においても先導的役割を果たすことで、世界に広く開かれ、独自性のある国際的役割を担う圏域の形成を実現する。

 また、これまでの産業面での中枢性に加えて、国際・文化機能の集積を備えた、暮らしやすく、内外の訪問者に選択される魅力ある創造圏域へと発展する。

2 国際的産業・技術の創造圏域

 自動車産業を始めとする我が国の基幹産業の多くが立地し、高度の製造技術等を誇る中部圏は、各地の産業・研究開発機能の集積をいかしつつ、既存産業の高度化、また、環境関連、情報通信関連等の成長産業の育成を図ること等により、今後も我が国経済の牽引役を果たす。

 さらに、交通、情報通信体系等の基盤整備を通じて、中部圏の各地域それぞれの多様かつ個性的な産業・研究開発機能の集積相互間の有機的な連携・交流を深め、圏域全体としての産業・技術の一層の高度化を実現するとともに、環日本海交流や環太平洋交流の積極的な展開を通じ、国際的産業・技術の創造圏域の形成を目指す。

3 「美しい中部圏」の創出

多彩で豊富な自然環境を美しく健全な状態で次世代に継承するとともに、自然環境や歴史的風土と一体となった美しい景観の形成、歴史的街並みの保全や文化遺産の継承等、地域の風土と調和のとれた質の高い環境を形成する。

また、個人の健康や快適性を高い水準で調和させつつ、環境負荷の低減を重視した循環型社会を実現する。

さらに、国内外の人々に対して、日常生活の中で自然とふれあいつつ、個人が高度で創造的な諸活動を展開する場を提供する圏域としての役割を果たす。

これにより、「美しい中部圏」を創造する。

4 誰もが暮らしやすい圏域

中部圏は生活者の視点を大切にし、中部圏に居住する人々が、性別、年齢にかかわらず誰もが社会に参加できるとともに、個人のライフスタイルやライフステージに合わせて多様な暮らしを選択できる圏域の形成を実現する。

また、東海地震を始めとする様々な自然災害等への対応力を向上させ、災害時の諸機能の代替性を確保し、安全で安心できる生活空間を実現する。

第2節 目指すべき圏域構造

1 世界に開かれた多軸連結構造の形成

 中部圏は、多様で特色ある各都市圏が、その潜在能力を最大限発揮し、自立性の高い魅力ある都市圏へと発展するとともに、4つの国土軸を結節する役割を果たし、また、国際的にもグローバルネットワークの一翼を担う世界に開かれた多軸連結構造の形成を目指す。

世界に開かれた多軸連結構造が創出する重層的なネットワークは、中部圏の各都市圏が程良く分散しながら、広域的かつ多様に連携する水平的ネットワーク社会への展開を可能にするとともに、国土全体を水平的ネットワーク構造へ先導することとなり、我が国が目指すべき多軸型国土形成に向けての新しい流れを、中部圏が先導して創出する。

2 世界に開かれた多軸連結構造の基本的考え方

中部圏内の各都市圏が、それぞれの都市圏の持つ諸機能や自然、文化、歴史や先進的技術等の資質をいかし、その拠点性や個性、魅力を高める。 

また、圏域内における共通の又は異なる資源や魅力等を有する都市圏や首都圏及び近畿圏等の圏域外との多様な連携・交流を深め、相互に機能を補完、分担する。あわせて、各都市圏の特質をいかした国際交流を積極的に行う。

 これら都市圏間の連携・交流や国際交流を支えるため、地形的条件、歴史的経緯等により重層的に形成されてきた圏域内及び圏域外につながる軸状連携を強化するとともに、地形的条件、歴史的経緯を踏まえ、多様で特色ある資源やグローバルゲートとしての中部国際空港を圏域全体での活用を図るための新たな軸状連携を育成する。

4つの国土軸が係わる中部圏においては、国土軸方向の軸状連携及び国土軸をつなぐ方向の軸状連携をより個性的かつ創造的な連携・交流が可能となるよう広域的に育成、強化する。これにより、「日本海国土軸」、「北東国土軸」、「西日本国土軸」及び「太平洋新国土軸」の形成を促進するとともに、国土軸を相互に結びつけ、多様で特色ある地域の資源や魅力を共有し、諸活動等を通じた空間的広がりを持ち、国土軸の形成にも資する軸状のまとまりである6つの圏域軸の形成を図る。

 さらに、新たに整備される中部国際空港を中部圏全体で最大限活用を図りつつ、地域の特性をいかした多様な国際交流を行うことで、中部圏の各都市圏の主体性の向上、誇りの醸成及び国際的資質の向上等を図り、自立的で総合的な交流活動が展開される広域国際交流圏が形成されていく。

 これら4つの国土軸と国土軸を相互に連結する6つの圏域軸の形成、更にこれらの軸が北東アジアや東南アジア、あるいは太平洋諸国とも連携し、中部圏は、「世界に開かれた多軸連結構造」を形成することとなる。

3 圏域軸の形成

具体的には、以下の6つの圏域軸の形成を図る。

上越から長野市、上田市、甲府市、清水市を経て伊豆半島に至る地域及びその周辺地域から成り、首都圏とも連携を図り新産業や余暇活動、マルチハビテーションの創出を目指した連携・交流等の推進により形成される「中部横断軸」。

名古屋市及び豊橋市・浜松市から松本市、長野市を経て上越まで至る地域及びその周辺地域から成り、名古屋、三遠南信及び信越地域の異業種交流による新たな産業の創出、流域を越えた諸活動の展開を目指した連携・交流等の推進により形成される「東海・信越連携軸」。

能登半島から金沢市・富山市、高山市、岐阜市、名古屋市、津市を経て紀伊半島へ至る地域及びその周辺地域から成り、能登、飛騨、紀伊の多様な資源をいかした観光ネットワークの形成、環日本海と環太平洋を結び広域国際交流圏の形成を目指した連携・交流等の推進により形成される「中央横断軸」。

福井市から敦賀市、琵琶湖周辺の大津市等を経て松阪市・伊勢市に至る地域及びその周辺地域から成り、3つの「うみ」の活用を通じた諸活動や、近畿圏とも重なる観光ネットワークの形成等を目指した連携・交流等の推進により形成される「福井・滋賀・三重連携軸」。

福井市・小松市から高山市、松本市を経て甲府市・東京に至る地域及びその周辺地域から成り、豊かな自然・伝統・文化等をいかした観光ネットワークの形成や貴重な生態系の保全活動を通じた連携・交流等の推進により形成される「中部縦貫軸」。

名古屋市及び中部国際空港を拠点とし、伊勢湾沿岸地域の諸都市及び名古屋大都市地域外縁部の諸都市を環状につなぎ、高次の国際交流機能、国際物流拠点、産業・技術の中枢機能等の強化を目指した連携・交流等の推進により形成される「伊勢湾・東海環状軸」。

第3節 中部圏の人口の将来

(中部圏の人口)

我が国の人口が2007年をピークに減少に転じると予想される[6]中で、中部圏の人口については、東京圏[7]への転出が緩和することを前提に推計を行い、1995年の2,116万人から2008年に2,182万人に達したのち減少に転じ、2015年には2,162万人(1995年と比べて46万人増)になると見込む。

年齢別構成)

生産年齢人口(15〜64歳)は、1995年の1,455万人から2015年には1,306万人に減少し、年少人口(0〜14歳)は、1995年の348万人から2015年には309万人に減少すると見込む。老年人口(65歳以上)は、1995年の313万人から2015年には546万人に急増すると見込む。

一般世帯数)

世帯の小規模化の進展により、一般世帯数は1995年の687万世帯(平均世帯人員3.08人)から2015年には850万世帯(同2.54人)に増加すると見込む。

特に高齢化の進展とあいまって、高齢単独世帯(世帯主が65歳以上の単独世帯)は、1995年の28万世帯から2015年には87万世帯に急増すると見込む。

(就業者数)

中部圏における1995年の就業者数[8]は約1,140万人(うち女性約460万人)であるが、2015年においては約1,150万人(うち女性約480万人)と見込む。

 

第3章 中部圏開発整備の主要施策

第1節 世界につながる多様な連携・交流の展開

1 多彩な資源をいかした重層的な国際交流の推進

(1)広域国際交流圏の形成

中部圏においては、中部国際空港の開港や、2005年日本国際博覧会の開催等のインパクトを最大限に活用するとともに、北陸新幹線や東海北陸自動車道等の整備の進展を踏まえ、交流主体の育成、交流の舞台の整備、交流のゲート機能の強化、情報の受発信機能や交流の支援機能の強化等を図りつつ、環日本海交流、環太平洋交流等を重層的に推進し、広域国際交流圏の形成を図る。

中部圏の各地域において、豊かな自然や産業集積等の地域の資源や特性をいかすとともに、国際感覚あふれる人材の育成、外国人のニーズにも対応した都市空間の整備等を図ることにより、観光、文化、産業、学術、研究、スポーツ等の多様な国際交流活動を展開する。また、広域的な地域の連携を推進し、日本海側地域については環日本海交流を先導する拠点地域として、太平洋側地域については環太平洋交流の拠点地域として、内陸地域については多様で特色ある自然や文化をいかした交流の拠点地域として育成、強化していく。さらに、圏域全体としての交流のゲート機能を強化するとともに、多軸連結構造を形成し、地域間の連携・交流を推進することによって中部圏全体が一体となり、自立的で総合的な交流活動が展開される広域国際交流圏を形成していく。

国際交流の推進は、競争の激化やいわゆるグローバルスタンダードへの対応、異なる文化を持つ人々との交流に伴う摩擦への対応等にも適切に対処しつつ進める。

(2)環日本海交流の先導的な推進

新たな発展の可能性を有し、今後更に拡大すべき環日本海交流については、交流の拠点となる富山市、金沢市、福井市が相互に機能分担、連携の下、高次都市機能の充実を図りつつ、中部圏の日本海側地域が先導的に推進する。このため、その地理的優位性やこれまでの対岸諸国との貿易活動を始めとする多面的な交流の蓄積をいかすとともに、空港、港湾等交流のためのゲート機能の強化や道路、鉄道等圏域内外と結ぶ交通体系の整備及び学術、研究、国際観光等のための基盤整備等を推進する。また、経済、文化面での交流を一層加速するとともに、日本海の環境保全のための国際協力、留学生や研修生の受入体制づくり、スポーツイベントの開催等多面的な国際交流を推進する。さらに、太平洋側地域や内陸地域とも連携しつつ、環日本海交流と環太平洋交流を結びつけることによって新たな付加価値や文化を産み出していく。

(3)中部国際空港の活用

中部国際空港については、我が国の中央部に位置し、国内・国際航空路線が集約され乗り継ぎ利便性に優れ、24時間運用が可能であること等の優位性を最大限に活用する。中部国際空港を中部圏におけるグローバルゲートとして機能させるため、圏域全体とのアクセス性を高めるための交通体系の整備を推進する。また、空港機能と連携しつつ、コンベンション機能、保養機能、物流機能等を高めるための地域整備や国際的に魅力ある産業立地環境の整備等を推進するとともに、名古屋大都市地域の拠点性の向上を図る。さらに、空港のみならず港湾機能の積極的な活用を図ることにより、中部圏の地理的優位性をいかした広域的な国際物流拠点を形成するとともに、空港を契機として、自然との共生に根づいた文化のネットワーク化や地域資源に関する情報発信、地域のもてなし心の醸成等を進め、外国の人々が訪れてみたくなる、また、住みやすく、学びやすい魅力ある圏域を形成していく。

(4)名古屋大都市地域の拠点性の向上

名古屋市とその周囲に環状に展開する四日市市、大垣市、岐阜市、豊田市、岡崎市等の諸都市からなる名古屋大都市地域は、自動車、精密機器、電子機器、航空宇宙やファインセラミックス等の先端的な工業・技術集積を有する。さらに、太平洋ベルト地帯の一翼を担う地域として、首都圏や近畿圏等を結ぶ広域的交通網が発達し、国際交流機能を持った港湾等を擁し、全国を対象とする物流、交流機能が立地する上で有利な条件を備えている。

しかしながら、名古屋大都市地域においては、高次の諸機能の集積の相対的な立ち遅れがみられ、今後一層のグローバル化の進展が見込まれる中、国境を越えた都市間競争の激化や国際交流の活発化に対応し、中部圏が大都市圏として一体的に発展していく上で、名古屋大都市地域の拠点性の不足が懸念される。また、通勤圏の広域化、交通渋滞により、円滑な業務の遂行に支障を来しかねない状況となりつつあり、大都市空間を修復、更新し、有効に活用する「大都市のリノベーション」を推進する必要がある。

このため、教育・文化、国際交流等の高次都市機能の強化と中部国際空港等をいかした国際的物流拠点、既存の産業・製造技術を核とした先端的な産業技術、デザインに関する研究開発拠点の形成を図る。また、地域内の都市間の連携や都市内交通の円滑化に資する環状方向を始めとする交通体系の整備、通勤・通学の混雑緩和を図るための都市鉄道網の整備、世界を対象とする多様な交流に資する中部国際空港及び国際港湾とこれらへのアクセスのための交通基盤の整備等を推進する。大規模低・未利用地においては、土地利用転換や面整備事業等による道路等の都市基盤施設の整備を行い、その有効高度利用を推進する。その際、質の高い空間を形成するため、土地利用制度の的確な運用、基盤施設等の公共投資等と建築物等の民間投資を一体的かつ総合的に行うための制度の活用を図る。都市の地下空間を積極的に活用し、基盤整備における権利調整の円滑化、理想に近い立地・ルートの選択、計画的な事業の実施のため、大深度地下[9]利用に係る制度化を図る。

 さらに、環境と調和した都市空間を創造する観点から、緑地の保全・創出、水環境・水循環の保全・回復、廃棄物の発生抑制・リサイクル、環境負荷の少ない交通体系の形成、省エネルギー等を総合的に推進し、環境共生型都市の実現を図る。

この場合、都市間の適切な機能分担及び連携の下、各都市が特色ある高次都市機能の充実を図るとともに、都市間のネットワーク性を高めることによって、人口、諸機能の過度の一極集中を招くことなく、名古屋大都市地域の総合的な拠点性の向上を目指す。

2 魅力ある都市圏の形成と多様な連携・交流の推進

(自立性の高い魅力ある都市圏の形成)

中部圏は多様で特色ある都市が分散的に展開し、それらの都市が核となり様々な機能を担い、周囲の豊かな自然環境に恵まれた地域と一体となって、生活圏や活動圏としての都市圏を形成している。

各都市圏については、都市圏間の適切な機能分担と連携を図りつつ、都市的サービス機能を始めとした機能の充実や就業機会の提供を図るとともに、それぞれの都市圏の持つ自然、文化、歴史、産業等の特性をいかした、個性と魅力あるまちづくりを進めることが重要である。

このため、各都市圏の規模や特性を踏まえて、業務、情報、教育・文化、医療、福祉等の都市機能の充実を図る。また、これら都市機能の受け皿となる拠点市街地や必要な国際交流基盤の整備を図るとともに、地方定住を促す魅力的な就業機会を提供できるよう高度な生産・研究開発基盤やサービス産業基盤の整備を推進する。

(多様な連携交流の推進)

圏域内に分散的に展開する多様で特色ある各都市圏は、多様な連携・交流を活発化することで、相互に補完、分担しながらその潜在能力を最大限発揮することが重要である。また、地理的条件や歴史的経緯等により既に重層的に形成されてきた都市圏間のつながりにおいて、より魅力的な空間への再生又は機能強化、あるいは、新しい文化や価値の創出、選択性の高い暮らしを可能とする圏域の実現等を目指した広域的な連携・交流を推進し、多軸連結構造の形成を図る。

このため、圏域内における自然や文化、地理的特性等において共通性を有する都市圏相互の連携・交流又は異なった資源や魅力等を有する都市圏や首都圏及び近畿圏等の圏域外との連携・交流を推進する。

具体的には、豊かな自然、文化、歴史、伝統等地域資源をいかした広域観光ネットワークの形成や地域産業の活性化を目指した連携、森林等の生態系の保全活動を通じた連携、地理的特性をいかした特色ある国際交流を通じた連携、既存産業をいかした新たな産業技術の創造圏域を目指した連携、社会教育施設、文化施設、医療施設等の広域ネットワークの形成や交通体系及び情報通信体系の広域的整備を目指した連携等を推進する。

 これら連携・交流は、地方公共団体のみならず、個人、NPO、企業等多様かつ広範な主体の参加が重要であり、多様な主体の参加意識、地域間・主体間の連携意識の醸成を図り、地域の主体的な選択による連携交流活動を促進するとともに、地域間相互の情報の共有化を図る広域情報ネットワークの形成の促進、資金面での支援等広域的な観点でのソフト施策を展開することが必要である。特に地方公共団体においては、施設の効率的・効果的整備を図る上で、広域連合制度等の活用や近隣都市圏等との連携等を通じて、諸施設・機能の共同利用を図る等の行政面の連携を推進することが重要である。また、人、モノ、情報の活発な交流を図るため、都市圏相互を結びつける交通体系の整備及びソフト・ハード両面における情報通信体系の整備を図る必要がある。

(地域連携、県際交流等)

 複数の県間において、文化、歴史、風土等の地域資源や魅力をいかし、活力ある地域社会の形成等を目的とした広範な諸活動による連携・交流についても推進する。

恵まれた自然をいかし観光面での連携を進める山梨、静岡、神奈川の県際地域における広域連携、東三河、遠州、南信地域の多彩な産業集積や自然環境をいかした新たな創造圏域を目指す三遠南信連携、豊かな自然環境と伝統文化をいかし日本の心のふるさとを守り育てる地域づくりを目指す飛越地域における広域連携、地理的優位性や特色ある産業や自然資源等をいかした地域づくりを進める福井・岐阜・三重・滋賀広域交流、京都、滋賀、奈良、三重の4府県にまたがる我が国第一級の歴史文化や豊かな自然等の持ち味をいかした京滋奈三地域広域交流、紀伊半島における海洋、山岳、森林等の恵まれた自然資源や歴史文化的資源をいかし心の豊かさを実感できる地域形成を目指す三重、奈良、和歌山3県の広域交流等を推進する。

第2節 世界水準の産業・研究開発集積の形成

中部圏においては、日本における製造業の中枢的圏域として、多くのリーディングカンパニーを擁する輸送用機器、一般機器を中心とした加工組立型産業から陶磁器、漆器、繊維製品等の生活関連産業や伝統工芸産業まで、各地に特色ある高度な産業集積が形成されている。リーディングカンパニーのみならず、多くの中小企業も高い技術力、商品開発力を有しており、中でも金型、部品製造等の基盤的技術を有する中小企業の集積地では、それらの企業相互の有機的なネットワークにより高付加価値の製品生産、加工技術が維持されている。

さらには、民間研究機関や国公立の学術研究機関の名古屋大都市地域における集積に加えて、圏域内の各地域におけるテクノポリス構想[10]、頭脳立地構想[11]等の推進や地方公共団体による主体的な研究開発集積や産業振興拠点の形成により、これらの地域を中心に、高度技術に立脚した企業や高度な研究水準を有する学術研究機関等の集積が各地に形成されつつある。

今後、国際的大競争が激化する中、インフラの整備、産学官連携等の推進等によりこれらの産業集積や研究開発集積等の活性化を図るとともに、各集積間の連携・交流を推進することにより、研究開発機能の一層の強化、既存産業の高度化と新規・成長産業の振興を図り、世界水準の産業・研究開発集積を形成する。

1 研究開発機能の強化

中部圏における研究開発機能については、各地の研究開発集積の形成等により充実しつつあるものの、生産機能に比較して依然不十分であり、今後、その一層の強化を図る必要がある。    

そのため、各地の研究開発集積等において、世界的水準の学術研究機関や公設試験研究機関等の地域に密着した共同研究、技術指導等を行う研究機関の整備充実・誘致を図るとともに、技術移転機関(TLO)[12]の整備・創設等により、産学官連携を推進する。また、研究開発機能の強化を担う人材を育成するため、大学等において世界水準の研究を行っていく人材の養成等を図るほか、社会人の大学等への再入学による最新の知識・技術の習得、さらには、大学や企業等におけるアジアを中心とした諸外国との人材の交流等を推進する。

2 既存産業の高度化と新規・成長産業等の振興

高度な産業技術の蓄積を有する輸送用機器、繊維、金属、電気機器等の既存産業においては、組立工程の海外移転の進展、国際的競争の激化等に対応するため、商品の高付加価値化やエネルギー・環境関連や情報通信関連分野、新製造技術関連等の新分野への進出を促進する必要がある。これらの新規・成長産業の中でも、エネルギー・環境関連分野については、2005年日本国際博覧会の開催を契機とした、新エネルギー[13]やリサイクルシステム等に関する技術の研究開発の活性化を通じて、その成長が期待される。また、情報サービス、デザイン業等のビジネス支援関連分野やソフトウェア業等、今後の産業構造の転換の中で大きく成長の見込まれる分野については、産業振興拠点における情報・デザイン関連企業の誘致・育成等を始め、各地でその振興に係る取組がなされており、今後、一層その促進を図る必要がある。

そのため、企業のニーズを的確に把握し、それらを大学等で受けとめる際の窓口となるリエゾン機能[14]の強化や技術移転機関(TLO)の創設・活用等を通じた産学官連携の一層の推進により、企業における商品開発や技術の高度化、また、新分野への進出等を支援する。さらに、これらの新規・成長産業を始めとした幅広い産業分野において企業、個人の創業等を促進するため、産業支援機関の統合・ネットワーク化や創業時の資金調達やマーケティングの支援、経営相談の実施、インキュベータ施設の整備等を図るとともに、ベンチャー企業等へのインターンシップ(学生の専門分野への就業体験)の促進等による起業家精神のかん養を図る。

 さらには、2005年日本国際博覧会を始めとする国際イベント開催を契機とし、中部圏の豊かな自然や文化資源等をいかした広域観光ルートの設定等を通じた観光関連産業の振興やこれと連携した保養地域の整備を図る。

3 産業・研究開発集積間の広域的な連携の推進

 中部圏において、今後、研究開発機能の一層の強化、新規・成長産業の振興を図り、我が国の産業・技術の牽引役としての役割を果たすためには、各地の産業集積や研究開発集積等の活性化とともに、交通・情報通信体系の整備等を通じた各集積間の交流連携による効果、例えば太平洋側地域と日本海側地域の集積間のように従前交流の少なかった集積間の連携強化によるインパクト等をいかしていく必要がある。

 そのため、東海地域研究学園都市構想(東海リサーチリンケージ)に関しては、その背後に我が国有数の産業集積が控えているという優位性をいかし、各々の拠点における学術研究機関や都市基盤の整備等を進めるとともに、東海環状自動車道等のハード面の整備や研究交流等ソフト面における連携を通じて拠点間の連携強化を図ることにより、世界的水準の研究開発機能の集積を目指す。また、北陸スーパーテクノ・コンソーシアム構想の推進等を通じて、日本海側地域における企業、学術研究機関等の広域的な連携を強化し、日本海側地域一体としての研究開発機能の強化、新規・成長産業の振興を図る。さらには、これらの広域的な連携構想を基礎として、その連携を中部圏各地の産業集積や研究開発集積等に広げることを通じ、中部圏一体としての発展を図る。

4 地場産業の活性化

(産学官の連携)

中部圏には、地場産業として陶磁器、繊維、瓦、刃物、木工、和紙等、地域を特徴づける産業が多数存在しているが、これらの産業の多くは、海外製品との競合等厳しい環境におかれている。そのため、後継者等人材の育成のほか、産学官連携、特に公設試験研究機関との連携強化等により技術、デザイン力等の強化を図る必要がある。

(まちづくりとの連携)

 地場産業を有する各地域において、産地ならではのサービスや体験を提供する工房ショップ群の整備等を行い、それらを観光資源とした産業観光の振興を図ることを通じて地場産業を楽しめる地域づくりを進める。その一方で、そのような活動を通じた消費者ニーズの的確な把握等により産業の高度化・高付加価値化を図る等、地域の魅力の向上と一体となった地場産業の活性化を推進する。

 さらに、それらの地場産業を有する地域間のネットワーク化を図るとともに、2005年日本国際博覧会等各種関連イベント等の機会をとらえ、中部圏のモノづくりを全国、世界にアピールしていく。

第3節 豊かな自然と共生した循環型社会の構築

雄健かつ変化に富んだ自然環境を、健全な状態で次世代に継承するとともに、快適性の向上及び環境負荷の低減を重視した循環型社会を実現する圏域整備を進める。

1 自然環境の保全・再生

中部圏は、原生自然環境保全地域[15]に指定された大井川源流部等原生的な自然を有するとともに、国立公園、国定公園の箇所数が全国の約1/5を占める等、優れた自然環境を有している。

自然環境は、生物多様性の保全や人と自然とのふれあいの空間等として大きな機能を有しており、健全な状態で次世代に引き継いでいくことが重要である。また、自然環境の保全・再生を図る際には、野生生物との均衡のとれた安定した生態系を成立させるという観点から、様々なレベルでの生態系のまとまりを考慮した生態系ネットワーク[16]の形成を目指すことが求められる。

このため、自然環境保全地域や自然公園地域等において、広域的かつ計画的な視点で自然環境の保全・再生を図る。また、自然との共生の視点、地域住民や民間団体の主体的な活動との協調に配慮しつつ、環境教育・環境学習の取組や生物の生息空間であるビオトープ[17]の整備等による幅広い自然環境の保全・再生を推進する。

地域整備に係る事業の実施に際して、自然環境の保全を図るには、環境影響評価の実施等を通じて、保全すべき場所の改変を避け、あるいは、これを最小にする等の対策を優先しつつ、適切な対策を講ずる必要がある。

2 緑の保全・創出

中部圏は、豊富な森林を有しているとともに、都市地域においても山地部における樹林や平野部における農用地等の緑に恵まれている。

これら緑は、地球環境問題への対応や国土保全、都市環境の改善等に大きな役割を果たしている。また、自然とのふれあいの空間等として、人と自然が共生した健康で快適な環境づくりにおいてかけがえのない存在である。

このため、保護林の拡充等による自然環境の維持・保全、間伐の促進、複層林施業[18]や長伐期施業[19]の推進、保安林の整備等を総合的かつ計画的に推進する。また、上下流連携の下での水源林造成、交流を通じた森林づくりボランティアへ参加できる場の整備等を推進する等、森林の保全・整備が都市住民や地域住民の参加と連携の下に社会全体で支える必要があるとの国民的理解を醸成していくための取組を強化する。

また、大都市周辺にある連坦性の高い樹林地、市街化が進んだ地域に残された里山林等の保全・整備、都市内農用地の保全や都市公園の整備、道路の緑化等、地域の特性に応じた緑の量的確保、質的向上を計画的に推進する。この場合、河川や道路空間等との連携による広域レベルでの緑の骨格・回廊づくり、水と緑のネットワーク[20]の形成、都市間における緑地の確保と効果的な配置、市民緑地制度[21]等による民有緑地の保全、NPOや企業との連携・支援等に配慮する。

(都市的・農業的・自然的土地利用の調和)

大都市部でも比較的緑地等の豊富な中部圏の特性をいかして、人々が身近な自然と親しむことができるとともに、環境と調和した地域構造を維持するため、都市的、農業的、自然的土地利用の調和を図る必要がある。

このため、土地利用関係制度の一層の活用等により、都市的土地利用と農業的、自然的土地利用の適切な配置、組み合わせを図るとともに、開発に当たっては、自然環境の保全に努める等環境への影響の最小化を図る。また、都市部においては、計画的開発への誘導を図り、農地も含めた緑地の適切な保全・創出を図るとともに、既存の市街地の合理的な土地利用を進め、都市の無秩序な外延的拡大を抑制する。

3 健全な水循環系[22]の構築

 中部圏では、降水量の年々変動の拡大や都市化の進展等による水循環系の変化により、通常時の河川流量の減少や渇水、水質汚濁等様々な問題が発生している。このため、河川の流域及び関連する水利用地域や氾濫原を一体とした流域圏[23]において、上下流の地域間交流や行政・住民・事業者等の各主体の連携、水循環系の機構把握、評価及び関連情報の共有を推進しつつ、健全な水循環系の構築に向けた総合的な取組を推進する。

流域の貯留浸透・かん養能力を保全・回復・増進するため、森林の適正管理による水源かん養機能の維持・向上や農地の適切な保全・整備・利用による自然循環機能の維持増進、都市域における緑地の保全・整備、河川護岸の再自然化による浸透能力増進、雨水貯留浸透施設の整備等を推進する。また、水の効率的利活用のため、節水意識の向上や節水機器の普及による水需要の抑制、雨水利用や下水処理水の再利用等による水資源の有効利用を推進するとともに、自然・社会事情の変化に対応した水資源開発、既存施設の有効活用、下水処理水等の河川還元、地下水利用の適正化と代替水源の確保等を推進する。

諏訪湖、伊勢湾等の閉鎖性水域及び河川等の水質保全・向上のため、水質汚濁負荷の発生源対策や汚水処理施設の整備、高度処理の推進、上下水道等の取排水地点の再編、公共用水域及び地下水の直接浄化対策、雨水貯留施設の設置等の非特定汚染源対策[24]、有害化学物質の監視等を推進する。また、水辺環境の向上のため、まちづくりと連携しつつ、都市内の水面確保、河川・水路等の維持流量、環境用水の確保、河川沿いの緑地空間確保等の水辺の保全、多自然型の水辺空間整備を推進する。さらに、水辺の持つ気候緩和、生態系保全等の機能を効果的に発揮させるため、上下流地域が連携して水辺のネットワーク化を推進する。

特に、世界でも有数の古代湖であり、固有種を含む豊かな生態系と優れた景観を有する琵琶湖については、健全な姿で次世代に引き継ぐため、水質の保全、水源のかん養及び自然的環境等の保全に関する取組を総合的に進める。

4 環境への負荷の少ない社会の実現

(省エネルギー等の推進)

 今後、二酸化炭素の排出抑制等、環境負荷の低減に資するためにも、省エネルギー等への取組が必要である。

 産業部門のエネルギー消費量については、製品の高品質化、多品種少量生産の進展等により近年増加基調にある。このため、エネルギー消費量の大きい工場を中心に経済的、技術的に可能な最高水準の省エネルギー設備の導入、省エネルギーに資する廃棄物の再生利用及び廃棄物のエネルギー源としての利用、また、自動車に関連する技術等の蓄積をいかした省エネ率の高いクリーンエネルギー自動車を始めとする高性能の省エネルギー機器の技術開発等を積極的に推進する。

 民生部門のエネルギー消費量については、国民生活の利便性・快適性の追求、OA化の進展等の要因により一貫して増大傾向にある。このため、家電・OA機器等のエネルギー消費効率の向上、住宅・建築物の省エネルギー化、新エネルギーの積極的な導入、コージェネレーションの活用等を推進するとともに、国民一人ひとりが深い理解の下、省エネルギーに資する行動が実践できるよう広報活動の強化を図る。

 また、電力負荷平準化対策を推進するとともに、都市構造や地域構造の改編、就業形態の多様化等によるヒートアイランド化[25]の抑制や通勤交通の削減を図る。

(交通分野における環境負荷の低減)

中部圏は豊かな自然環境を有する一方、他の大都市圏に比べ自動車の利用が卓越的な圏域であり、交通分野における環境負荷の低減を図ることが重要である。

このため、各交通部門における省エネルギー、低公害化と、適正な競争と利用者の自由な選択を通じて、エネルギー効率に優れ、環境への負荷の少ない交通機関の利用拡大を基本とし、交通機関相互の連携強化を図り、環境全般への負荷が少なく、各交通機関の特性がいかされた交通体系を形成する。また、地球環境の保全への対応のため運輸部門における二酸化炭素の排出を抑制するとともに、窒素酸化物、浮遊粒子状物質等による大気汚染、騒音防止等生活環境の改善に努める。

 また、渋滞の解消・緩和に資する道路整備、自動車利用の適正化や平準化を図る交通需要マネジメント(TDM)[26]施策や高度道路交通システム(ITS)[27]の推進等交通対策の推進、低燃費車や電気自動車等低公害車の普及、自転車の安全かつ適正な利用の促進に向けた環境整備、道路緑化、鉄道・バス等公共交通機関の整備と利用促進を図る。さらに共同集配システム[28]の構築、荷捌きのための駐車施設の整備、道路と広域物流拠点の一体的整備、コンテナ船等に対応したターミナル等の港湾整備や貨物鉄道の利用促進等複合一貫輸送[29]に対応した施策等物流の効率化を推進するとともに、環境にやさしい運転方法、短距離自動車交通の徒歩や自転車への転換等について国民の努力を促す等の幅広い対応を図る。

一方、施設の計画、整備に当たっては、自然環境の保全・回復への十分な配慮、周辺地域の良好な生活環境を確保するための環境施設帯等構造面での対応に加え、都市圏全体での環境負荷の低減に配慮し、交通施設周辺にふさわしい土地利用の誘導に努める。

(廃棄物の発生抑制、リサイクル等の推進)

事業者、消費者、地方公共団体及び国において、それぞれの責務を踏まえつつ、それら各主体の連携により、廃棄物等の発生抑制、再使用、リサイクル、適正処理を推進する必要がある。 

資源の節約等により廃棄物の発生を抑制しつつ、使用済み製品・部品の再使用、再生品等の利用の促進や効率的な分別収集体制の確立等によるリサイクルの推進により最終処分量を削減するとともに、一般廃棄物についてはごみ焼却施設、最終処分場及びごみ燃料化施設等の整備を推進し、産業廃棄物については公的関与を含めた適切な処理体制の整備を推進する。焼却施設については、ダイオキシン類排出抑制や熱エネルギー利用を推進し、これらを効率的に行うため施設の集約化を推進する。

建設発生土については、発生量の削減に努めつつ、その円滑かつ適正な利用を図るため、有効利用の促進、受入地の確保等の対策を推進する。

さらに、積替拠点の整備、舟運の利用等の廃棄物輸送システムの効率化を検討する。

5 農林水産業の持続的な発展

(農業の持続的な発展)

農業の有する食料その他農作物の供給機能と多面的機能の発揮のためには、農業の持続的発展が不可欠であり、地域特性に応じた生産性の高い農業経営の展開を図るとともに、自然循環機能をいかした持続的な農業生産を推進する必要がある。このため、中部圏農業の持つ先進的な技術の蓄積及び大消費地への近接性をいかし、消費者のニーズに合わせた高鮮度、高品質な農産物を提供していく等農業経営の安定化を図る。また、農地の流動化[30]による規模拡大の推進、多様な担い手の育成・確保及び優良農地・農業用水の確保、地力の維持増進、土地改良施設の適切な整備・更新等農業生産基盤の充実等により、食料供給基地としての機能を強化する。さらに、土づくり等を基本として化学肥料・農薬の使用の低減等により環境負荷の低減に配慮した持続性の高い農業生産方式の導入の促進や有機性資源の循環利用システムの構築等を図る。

中山間地域等において、農業生産活動等の維持を通じて、耕作放棄地の発生を防止し多面的機能を確保する観点から、農業生産条件の不利性を補正するための公的支援を図る。

(林業の活性化)

 森林の管理・経営が安定的に持続できる体制の整備を図ることが重要である。森林所有者、林業経営者等については、林業技術の普及に努めるとともに、流域を基本単位として、上下流関係者の連携の下での森林の流域管理システム[31]を推進し、担い手の確保・育成を図る等、林業の活性化を図る。また、木材利用の促進を図るため、木材の環境への優しさ等について積極的な情報発信を行う等、新たなニーズを生み出すことが必要である。

(水産資源の維持・向上)

水産資源の持続的かつ高度な利用に資するため、生産性の高い沿岸漁場の確保や漁場環境の維持・向上、つくり育てる漁業[32]の推進等を図り、国際的な新海洋秩序化の下での水産資源管理に対する取組を積極的に推進する。また、担い手を確保するため、労働環境の改善、新規参入を促す就職情報の提供等の施策を展開する。さらに、主要な漁港において、陸揚げ・流通機能の高度化、漁獲・資源・衛生管理機能の強化、水産資源の生息環境の保全に資する施設の整備を推進する。

(食料流通基盤等の整備)

食品に対する消費者ニーズの多様化、外食産業等の大型実需者ニーズの増大、農協合併等による産地の大型化の進展等に対応し得る卸売市場等流通体制の計画的整備を推進する。  

6 沿岸域の総合的な利用と保全

中部圏は、伊勢湾、日本海、駿河湾、熊野灘等の多彩な海に恵まれており、これらの海が有する豊かな資質や資源を適切に活用していくことが重要である。

中部圏の沿岸域は、産業、交通、物流、エネルギー供給、レクリエーション、漁業等の多様な活動の場として、また一方では、豊かな自然環境を有し、生物の生息の場や人々にやすらぎと潤いを提供する場としての役割を果たしている。このため、沿岸域については、圏域の貴重な資源として、それぞれの沿岸域の特性を十分に踏まえ、その総合的な利用と保全を図りつつ、望ましい姿で次世代に継承していく。

(1)伊勢湾沿岸域

伊勢湾沿岸域は古くから東西の海上交通ルートとして利用され、地域の文化の形成に寄与してきている。また、近年では我が国の経済発展を支える産業、物流等の場として重要な役割を果たしている。こうした伊勢湾沿岸域を持続的に発展させていくため、安全の確保及び環境の保全と創造を図りつつ、海域又は水際線の有効かつ適切な活用につながり、広域的・公益的な課題に対応した総合的な利用を推進することとし、関係者間の調整を図りつつ、沿岸域の総合的な管理を推進する。

(良好な環境の保全と創造)

閉鎖性の海域で、一部では稠密な利用がなされている伊勢湾は環境負荷の影響を受けやすい海域であり、海域への流入負荷を低減するとともに、貴重な自然環境を保全しつつ、質の高い環境の創造を図る。

 このため、開発に係る事業の実施に際して、自然環境の保全を図るには、環境影響評価の実施等を通じて、保全すべき場所の改変を避け、あるいは、環境への影響を最小にする等の対策を優先しつつ、適切な対策を講ずる必要がある。

伊勢湾の環境を改善し、良好な沿岸域を形成するため、海底に堆積している汚泥のしゅんせつや覆砂、干潟や浅場の造成、浮遊ごみ・油の回収等の海域における環境改善を図る。また、人々が水辺に自由に行き来でき、その魅力を楽しむこと(パブリックアクセス[33])ができる空間の形成を図るため、親水緑地や人工海浜等の整備を行うとともに、マリーナ等の海洋性レクリエーションの拠点となる施設の整備を推進する。伊勢湾地域の諸活動に伴い発生する廃棄物、建設発生土については、発生抑制、減量・減容化、再使用、リサイクルの努力を前提としつつ、適切な処分を推進する。

(地域活力の創出)

臨海部の産業や物流機能等の既存集積を活用・高度化しつつ、新規・成長産業の展開等を図る。

国際的な大競争の時代に対応しつつ、産業の国際競争力や国際交流のゲート機能を強化するため、中部国際空港の整備を推進するとともに、国際海上コンテナターミナル[34]等の整備を推進する。特に物流機能の強化に際しては、交通施設間の連携を強化しつつ、沿岸域全体が一体的かつ効率的に機能を発揮し得るように、各港湾の特性に応じて役割を分担しかつ補完する一つの広域港湾として機能するよう整備を推進する。

沿岸域の諸機能を効率的に発揮させるとともに、一体的な利用の促進を図るため、沿岸域を環状方向に結ぶ道路、鉄道等の整備を推進する。

(安全の確保)

沿岸域の防災性の向上のため、利用や自然環境の保全に配慮しつつ、高潮対策のための海岸保全施設の整備等を推進する。また、震災時の緊急物資等の輸送や一時的避難、がれき処理のための輸送路及び防災拠点等の空間を確保するとともに、経済社会活動の停滞を招くことがないよう耐震強化岸壁[35]、緊急輸送道路等の体系的整備を図る。

 沿岸域は、中部圏の活動を支える電力、ガス、石油等のエネルギーの供給基地でもあり、その安定的供給を図るために、環境との調和及び輸送の安全性を確保するとともに、防災対策を推進する。また、中部圏の物流等を支える海上交通の要である伊勢湾海域の安全な利用のため、中山水道航路の整備や航行安全施設等の整備、海洋情報の充実を図る。

(2)日本海沿岸域

富山湾や若狭湾等を有する日本海沿岸域については、環日本海交流を進めるに当たっての地理的優位性や恵まれた自然等その特性をいかしつつ、地域資源としての多様な利用と環境の保全を図り、安全で快適な空間を形成していく。

 このため、環日本海交流の拠点の形成に向けた港湾機能の強化等を図るとともに、恵まれた自然をいかした観光・レクリエーション拠点の形成を図る。

深層水の活用等海の有する豊かな資質を活用するとともに、海に関する研究開発機能や関連産業の育成を図る。また、水産物の安定的供給や地域の振興等を図るため、漁港を整備するとともに、豊かな水産資源をいかした漁場の開発等を推進する。

沿岸域の防災性の向上のため、利用や自然環境の保全に配慮しつつ、侵食対策のための海岸保全施設の整備等を推進するとともに、震災時における対策として、耐震強化岸壁、緊急輸送道路等の体系的な整備や防災拠点等の確保を図る。

(3)太平洋沿岸域

太平洋沿岸域については、駿河湾沿岸域における諸機能の集積、伊豆半島や熊野灘沿岸域等における恵まれた自然等の特性をいかしつつ、地域資源としての多様な利用と環境の保全を図り、安全で快適な空間を形成していく。

駿河湾沿岸域において、国際交流のゲート機能を強化するため、国際海上コンテナターミナル等の整備を推進するとともに、伊豆半島沿岸域において、恵まれた自然をいかした観光・レクリエーション拠点の形成を図る。また、熊野灘沿岸域において、恵まれた自然をいかしつつ、観光・レクリエーション機能の充実を図る。

深層水の活用等海の有する豊かな資質を活用するとともに、海に関する研究開発機能や関連産業の育成を図る。また、水産物の安定的供給や地域の振興等を図るため、駿河湾における遠洋漁業基地等漁港の整備を進めるとともに、豊かな水産資源をいかした漁場の開発等を推進する。

沿岸域の防災性の向上のため、利用や自然環境の保全に配慮しつつ、海岸保全施設の整備等を推進するとともに、東海地震を始めとした震災時における対策として、耐震強化岸壁、緊急輸送道路等の体系的な整備や防災拠点等の確保を図る。

第4節 創造性豊かな諸活動の展開

多彩な自然景観や風土と調和した景観をいかし、美しい空間の形成を図るとともに、自然環境や文化等とのふれあいの中で、個人が高度で創造性豊かな諸活動を行い、多様な生活様式の展開を図る。

1 景観と一体となった美しい地域づくり

中部圏は、多変多様な美を内包する自然景観を有し、加えて、合掌造り集落を始めとする伝統的建造物群や歴史的街並み、散居村、棚田等地形条件や多様な気候、歴史的経緯等の中で育まれた、地域風土と調和した美しい景観が数多く残されている。これら景観は、国内外に誇れる中部圏の美しさを象徴するものであり、また、地域の有する個性の形成、あるいは、地域住民がゆとりと美しさに満ちた暮らしを営む上で貴重な存在となっている。

これら美しい景観が中部圏共有の資産であることを認識し、地域住民との主体的な取組との連携を図りながら次世代に継承する必要がある。また、自然景観や地域風土と調和した景観をいかした地域づくりや、美しい景観を創り出す地域づくりを行うことが重要である。

地域独自の景観を形成する里山林や鎮守の森の保全・管理や地域の特性をいかした田園空間の整備を推進する。なお、これら保全・管理については、ボランティアによる森林づくりや棚田の景観保全等都市住民も参画する方策を検討する必要がある。

地域の自然、文化、歴史等との調和に配慮した公園、水辺空間、道路等の整備、電線類の地中化等を推進する。

 地区計画[36]、風致地区、建築協定[37]、屋外広告物条例等の活用を推進するとともに、景観条例等の地方公共団体独自の取組を推進する。あわせて、地域住民の取組を支援する。

2 自然と親しむ多様な生活様式の展開

(マルチハビテーション、田園居住の展開)

 近年の自然環境に対する国民意識の高まりや、物の豊かさより人と人とのふれあい等心の豊かさを重視する価値観や自然とのふれあいを重視するというライフスタイルの多様化により、自由時間を過ごしたり、子供を育てる場として自然の豊かな地域を高く評価する人々が増加している。

中部圏においては、多数の自然公園を有し、また、自然をいかした余暇施設が数多く存在する等、その潜在能力も高いことから、グリーン・ツーリズム[38]やブルー・ツーリズム[39]等の多様な交流活動を継続することにより、マルチハビテーション[40](複数地域居住)や田園居住等への展開を積極的に推進する。

このため、地域の風土等個性や独自性をいかした魅力ある美しいむらづくり・まちづくりを推進し、快適かつ総合的な居住環境の整備を図る。その際、優良な田園住宅の供給促進、元の地形や植生を尊重した宅地の整備促進等により、豊かな自然環境と美しい自然景観を満喫できる居住環境の実現を図る。

(高度情報通信の活用による多様な就業形態の創出)

個人の価値観の多様化に伴い就業意識も変化していく中、中部圏の優れた自然環境、快適な住環境、豊富な文化的刺激をいかし、就業形態を個人の価値観やライフスタイルによって選べるような多様な選択肢を広げる必要がある。また、デザイン、ソフトウェア、環境、観光産業等新産業の創出に向けて、次代を担う創造力豊かな人材を育成・確保する必要がある。

このため、高度な情報通信基盤の活用によって、知的生産関連企業の誘致を推進するとともに、SOHO[41]、テレワーク[42]等多様な就業形態を推進し、優れた自然環境をいかした新たな産業や就業機会を創出することが必要である。

(都市と農山漁村の連携交流の推進)

ゆとりややすらぎの場としての農山漁村や、教育的役割を有する農林漁業体験等に対する都市住民の関心の高まり等を踏まえ、滞在型の交流や農林漁業体験を通じた交流活動を推進する。

このため、作業、生活、文化に接する多様な機会の確保及び交流の機会についての情報提供の充実・強化、交流の場や交通、情報通信体系の整備等、これら交流活動が定着していくためのハード・ソフト両面からの条件整備を推進する。また、子ども達の「生きる力」の育成等の観点から、自然体験、環境教育、農作業体験等の機会を充実する。さらに、都市住民のニーズに応え、市民農園[43]の広範な整備・普及を推進する。

なお、水産資源の維持・向上等において、上流から下流までの各地域事情に対する相互の共通認識を深め、農林漁業関係者を始めとした地域相互の連携と交流を進める必要がある。

3 文化財、歴史文化活動の保存・伝承とその利活用

中部圏の各地域には、それぞれ特色ある自然環境に加え、古来より東西交流の回廊としての役割を果たしてきた中で育まれてきた独自の歴史、文化が重層的に蓄積されている。各地域においては、それらに依拠する生活や産業等に密接に関連して形成、伝承されてきた有形、無形の文化財、歴史文化活動、例えば、世界遺産にも登録された白川郷・五箇山の合掌造り集落等の伝統的建造物群、民俗芸能、史跡、美術工芸品、あるいは雪吊り等の雪から生まれた技や知恵等が数多く残されている。さらに、産業及び土木に係わる構築物等の近代の文化遺産も各地に多様な形で大量に残されている。これらの文化財等は、一度その価値が損なわれると回復できない貴重な国民全体の財産であり、また、中には、消滅や散逸の危機にさらされているものもあるため、その適切な保護を図る必要がある。

このため、修理技術や原材料・用具等の生産・製作技術等の保存に配慮した上での建造物や美術工芸品等の管理・修理、伝統芸能・工芸等の後継者の養成、開発事業と埋蔵文化財保護との円滑な調整、更に多様な保護手法等を講じることにより、それら文化財等の適切な保存・伝承を図る。また、保存・伝承に当たっては、地域内外の多様な団体や個人の参加を促進する。

さらに、文化財等の利活用を図るため、適切な保存・伝承を図りつつ、その公開を促進し、人々が触れ、親しむ機会を提供する場の整備を推進する。また、伝統工芸等の制作過程を来訪者に公開、体験させたり、それらを他の分野の産業と融合させ新たな製品等を創作する等、観光や交流イベント、産業等においてその価値を更にいかすような利活用を推進する。

4 個性豊かな文化・芸術活動の振興

中部圏を、そこに住む人々が本当に心の豊かさを実感できるような圏域とするためには、中部圏の豊かな自然環境の保全・創出等による美しい地域づくりに加えて、人々が文化・芸術に身近に接し、かつ、自らが個性豊かな文化・芸術活動を行うことのできるような環境を整備する必要がある。

そのため、住民に質の高い芸術文化を提供するとともに、住民による新たな文化の創造を支援する美術館、博物館等の文化施設については、その活動を支える人材の育成等のソフト面を重視し、また、地域連携、既存施設の活用等に留意しつつ、地域住民が誇りうる施設として、その整備・運営を図る。

さらに、世界と中部圏の歴史や文化の相互理解を増進するため、民俗芸能、舞台芸術等の海外公演や海外におけるそれらの招致等を通じて、多様な交流や連携を図る。

第5節 誰もが暮らしやすい圏域づくりの推進

1 暮らしやすい居住環境の形成

(1)宅地のストックの再生と供給

今後、計画期間中に圏域人口が減少に転じ、2015年における市街地面積(人口集中地区面積)及び市街地人口(人口集中地区人口)は、微増程度にとどまるものと見込まれる。

また、世帯数の増加が今後、鈍化しつつも、引き続き見込まれることを踏まえ、新たに必要となる住宅戸数、宅地面積も減少傾向で推移し、中部圏において1996年度から2015年度までの20年間に必要となる住宅戸数は、建て替えを含め約400万戸、同じ期間に必要となる宅地面積は、戸当たり敷地面積等の推移を基に、約4.0万haと見込む。この間、建て替え・再開発に係る住宅戸数の住宅戸数全体に占める割合は、次第に増加するものと見込む。

このように市街化圧力が低下していくことから、市街地整備の重点を既存の市街地の再編整備に移す。既存の市街地においては、都心居住、低・未利用地の有効活用、老朽木造密集市街地の解消等の課題に対応しつつ積極的に再開発を推進する。新市街地の整備においては、低・未利用地や市街化区域内農地を活用した宅地供給の推進と併せて、高次の諸機能の集積の受け皿として、交通利便性、各種サービスへの近接性、自然との共生、良好な景観の形成、バリアフリー化[44]等の多様なニーズに応える良質な宅地の供給を促進する。

(2)住宅及び住環境等の整備

(良質な住宅ストックの形成)

 ライフサイクルコストの低減、環境負荷低減の観点から、耐用年数が長く維持管理やリフォームのしやすい住宅ストックの形成を図るとともに、既存ストックを有効に活用しつつ居住水準の向上を図るため、住み替えの円滑化とリフォームを促進する。

今後、建て替え時期を迎える分譲マンション等の増加が見込まれることから、適切な維持管理及びリフォームを促進するとともに、大規模修繕、建て替えを円滑に行うための仕組みを検討する。

さらに、環境との調和を図るため、自然エネルギーの活用等により環境への負荷を低減した住宅の普及を促進する。

テレワークによる在宅勤務等の住まいに対する新たなニーズを踏まえ、住宅の情報化等を推進する。

(地域特性を踏まえた良好な居住環境の整備)

ライフスタイルやライフステージに応じて居住環境を幅広く選択できるよう地域特性を踏まえ、住宅単体のみでなく、周辺の自然環境や都市景観、交通利便性、生活関連サービスへの近接性等も含めて、暮らしやすい居住環境の整備を促進する。

このため、都心部においては低・未利用地の有効活用を図り、都心居住を推進するとともに、郊外部においては身近な自然に囲まれ、計画的な施設配置により日常的生活利便性の高い住宅・宅地の整備を推進する。自然的土地利用の卓越した地域においては、マルチハビテーション、田園居住等のニーズにも応えつつ、豊かな自然環境と美しい自然景観を満喫できる多自然型居住環境の実現を図る。

また、地区の特性に応じて、適切な道路、公園等や生活関連施設を備えた良好な住環境の整備を推進する。地域資源、地域の住文化をいかした個性豊かな住宅・住環境の整備を支援する。老朽木造密集市街地については、住環境の改善の必要性が高いだけでなく、防災性の向上にも資することから、住環境の整備を積極的に推進する。

さらに、地域住民の住環境に対するニーズに的確に応えて、良好な住環境を整備するため、地区計画、建築協定等の活用、NPO活動の活発化等により、地域住民の自発的活動を支援するとともに、地域住民との連携を促進する。

(高齢化、少子化等への対応)

 高齢者、障害者、健常者等の区別なく、誰もが使えるように配慮されたデザイン(ユニバーサルデザイン[45])による、住宅、公共施設、市街地、公共交通機関の整備を推進する。高齢者のみ世帯の増加を踏まえ、高齢者向け公共賃貸住宅の供給を推進するとともに、生活支援機能が付加された高齢者向け公共賃貸住宅の供給等、福祉施策と住宅施策との連携促進を図る。

また、一部のニュータウン等で生じている一斉高齢化に対応するため、小学校等を高齢者福祉施設にも利用する等施設の弾力的活用を進める。

さらに、単独世帯の増加への対応、女性の社会参加促進の観点から、公共賃貸住宅と保育所等の子育て支援施設との合築・併設等の推進を図る。

(身近な生活圏づくりの推進)

安全・安心でゆとりのある暮らしの実現のためには、日常生活における移動等が、安全かつ短時間に済ませられるとともに、安全に歩いて行ける身近なところに、魅力的な賑わいと憩いの場があることが重要である。

このため、鉄道やバス等の公共交通機関の活用を図りつつ、生活に密着した諸機能を徒歩圏に配置するとともに、それらを連絡する歩行空間のネットワークを整備することによって、安心して歩ける空間を身近に配したまちづくりを、地域住民の主体的な参加の下で推進する必要がある。

(ゆとりのある生活空間の整備)

ゆとりを感じられる生活を実現するため、潤いのある快適な都市環境の形成、健康、福祉の増進、地域コミュニティの醸成、防災性の向上等に資する都市公園、水辺空間、道路等の整備を推進するとともに、商業地、住宅地を中心に、電線類の地中化を推進する。

さらに、余暇意識の高まりや多様化する余暇需要、余暇時間の拡大への対応、地域間交流の拡大等に資するため、レクリエーション施設の有する地域活性化への波及効果等も踏まえ、南加賀・白山麓、奥越高原、佐久、富士山麓、三河湾、伊勢志摩、琵琶湖等の自然をいかした総合保養地域等において、地域特性をいかしたレクリエーション施設等の整備を推進する。

(3)農山漁村地域の整備

農山漁村地域においては、農林水産業を含む地域の特性をいかした多様な産業活動による経済的な活力の向上を図るとともに、都市的サービス機能の充実や立ち後れている生活環境の整備を推進する。加えて、今後一層の進展が見込まれる情報通信技術の活用とそのための条件整備を推進する。これらの整備に関しては、交通条件の改善等により生活圏域が広がりつつあることを考慮して、中小都市と周辺の農山漁村の機能分担連携を図りながら、圏域全体として発展していくことが重要である。また、農村は農業生産の場であることから、優良農地の確保に留意した計画的土地利用を図りつつ、生産基盤と生活環境の総合的な整備が必要である。

(4)積雪地域における快適な生活の展開

自然環境の保全に配慮しつつ、克雪対策の充実を図るとともに、雪を資源として活用し、雪国の特性に応じた地域づくりを進める。

このため、冬期の安全で快適な交通の確保に向け、都市間交通から歩行空間に至る交通基盤の整備を推進するとともに、除排雪、防雪対策及び消融雪の適切な実施、防雪施設等の計画的な維持・保全に努める。生活の利便性の向上、産業振興の観点から、情報通信の高度化へ向けた基盤整備を推進する。さらに、情報発信機能の強化等に努め、雪国の特性をいかした地域間交流や国際交流を推進する。

また、克雪住宅の普及促進、降積雪を考慮した都市計画の策定による雪に強い都市づくり、克雪用水の確保等により、居住環境の向上を図る。個性豊かで魅力的な活力ある地域づくりを進めるため、新たな雪国文化を形成するとともに、雪国ならではの景観の創造・保全に努める。

2 中心市街地の再生

近年空洞化が進みつつある中心市街地が、地域住民の生活及び経済活動の基盤、更には地域コミュニティの場としての機能を有していることを踏まえ、まちづくりの目標等を地域住民、事業者、地方公共団体等の間で共有し、地域の要となる都市空間として再生し、都市の再構築を図る。

この場合、都市が人口や産業の集中に伴って外延的に郊外部へ拡大する段階から、人口動向の安定化等に伴って成熟すべき段階への転換期を迎えていることに対応して、都市の再構築を図ることが今後の重要課題であることを踏まえ、都市全体の将来像を描いた上で、中心市街地の役割を位置付けておく必要がある。

このような考え方の下、商業、業務、居住等の都市機能の集積・再配置を進めるための面整備事業や道路、公園、駐車場等の整備、電線類の地中化等による美しい景観の形成を推進するとともに、商業活性化のための商業施設等の整備や中心市街地に集まる個人消費者や事業者等のニーズに対応した商品・サービスの提供を行う都市型新事業の立地促進のための施設の整備を推進し、さらに、公共交通機関の利便性の増進等を推進することにより、都市的魅力を創出する。その際、地域の歴史的・文化的な資源の活用、バリアフリーを考慮した快適な歩行空間の確保等に留意するとともに、イベントとの連携等、様々な創意工夫に努める。

3 生涯学習環境と福祉サービスの充実

(教育環境等の充実)

少子化の進展は、経済活力や社会保障への影響のほか、子供同士のふれあいの機会の減少等により子供の社会性の育成阻害等の問題にも係わっている。今後、子供を安心して産み育てることのできる環境づくりのため、子育て支援について社会全体で、ハード・ソフト両面にわたり総合的に取り組む必要がある。

そのため、保育所における延長保育や低年齢児保育、保育所と幼稚園の施設・運営の共用化等、多様な保育ニーズに対応した施設の運営や整備、また、地域における子育て等に関する相談・情報提供体制の充実を図る。さらには、育児を考慮した雇用環境の整備、SOHO・テレワーク等による就業形態の多様化を図るとともに、安全な道路交通環境や遊び場、子供連れにとって利用しやすい公共施設の整備等により、育児のしやすい生活環境の形成を図る。

初等中等教育については、自ら学び、考える教育、また、国際化や情報化等の社会の変化に適切に対応する教育やボランティア教育等を推進するとともに、学校、家庭、地域社会が連携・協力しつつ、他者への思いやりや社会性、独創性を育む心の教育の充実を図る。また、このような教育内容・方法の多様化に対応した施設づくり、ゆとりと潤いのある施設づくり等、学校施設の質的充実のための整備を推進する。さらに、完全学校週5日制の実施のための施設整備や、生涯学習ニーズの高まり、高齢化社会への対応等の観点から、学校施設の地域への開放、余裕教室の高齢者福祉施設等への転用や施設の複合化を推進する。

大学等高等教育については、社会・経済の高度化・複雑化等が一層進む中で、大学院の整備充実を始めとする教育研究機能の強化を図るとともに、地域社会や産業界等との連携を促進するため、産学官の連携の推進、社会人のリカレント教育[46](再学習・研究等)、生涯学習ニーズに対応した公開講座等を推進する。

健康の保持増進等の住民ニーズに応じたスポーツ施設については、施設運営やそれらの活動を支える人材の育成等のソフト面を重視し、また、民間部門との適切な役割分担や地域連携、既存施設の活用等の観点を踏まえつつ、その整備を推進する。

(保健・医療・福祉サービスの充実)

 住民の健康保持・増進から疾病予防、治療、リハビリテーションまでの包括的、継続的なサービスの供給体制の整備を進める。その際、サービスの地域間格差の是正に配慮するとともに、サービスの広域化に努める。

 高齢化の進展に対応して、ホームヘルプサービス[47]等在宅介護に重点を置いたサービスの拡充を図るとともに、在宅では十分介護できない高齢者のための施設を整備・拡充し、家族介護負担を軽減する福祉サービスを充実させる。さらに、保健、医療、福祉にわたる介護の各サービスが一体的かつ効率的に提供される体系を確立する。

 障害者については、住まいや働く場の確保、介護サービス、施設の整備・拡充を図ることによって、障害者の自立の支援と社会参加のための施策を促進する。

4 女性・高齢者等の社会参画の支援

就業等の社会生活と育児等の家庭生活を両立することができるよう保育施設における低年齢児保育等多様な保育ニーズに対応した施設運営や整備、介護サービスの充実、さらには、職場、家庭等における男女の固定的役割分担の是正等を推進する。

また、就業意欲のある高齢者が就業しやすい環境整備を推進するとともに、高齢者自身の生きがいとなり、また、地域の活性化にも資する郡上踊等の民俗芸能を始めとする地域の文化活動や自然保護活動等への支援を行う必要がある。

さらに、民間・公共施設や公共交通機関等におけるバリアフリー化の推進等により、高齢者、障害者等様々な人々が安全で安心して活動できる環境を整備する。

5 活動のための資源供給機能の充実

(1)エネルギー供給体系の整備

 増大するエネルギー需要に対し、各種の省エネルギー施策、新エネルギーの積極的な導入や電力負荷平準化施策等を最大限かつ強力に推進しつつ、原子力発電を始めとした安定的、効率的な供給に資する電源の立地、送変電施設の増強等必要なエネルギー供給体系の整備を推進する。

 なお、エネルギー供給体系の整備に当たって、エネルギー供給事業者は、効率的かつ効果的な設備形成、既存設備の高度化、事業者間の広域的な連携等に努めることとする。

 また、原子力発電に対する国民の理解と協力を得るため、定期的な検査の実施等により安全の確保に万全を期すよう努める。さらに、生活、産業活動に不可欠な電力供給を行う原子力発電所等の立地地域の重要性にかんがみ、その自立的かつ持続的な発展が可能となるよう関係機関が連携を図りながら、産業振興、住民福祉の向上等における地域の主体的な取組をソフト・ハード両面にわたり支援する。また、エネルギー需給に関する現状と課題を自らの問題として考え、判断する契機を提供するため、都市部等の電力消費地を始めとする国民一般に対する幅広い広報活動の強化等を促進する。

 さらに、風力発電、太陽光発電、廃棄物発電[48]、温度差エネルギー[49]等の新エネルギーの積極的な導入、コージェネレーション[50]の活用、廃熱の効果的な利用等エネルギーの多段階利用の推進等により、エネルギーの有効利用を図る。

(2)水資源の供給・保全・再利用体系の整備

(水供給体系)

中部圏においては、一人当たりの水資源賦存量(理論上利用できる水資源の最大量)は全国平均より多いものの、生活様式の変化等により水需要量が増大しているとともに、ひとたび渇水が起きた場合の社会的影響が増大している。

このため、木曽川を始めとする各河川の流域圏において、水需要の増大に対しては、節水意識の向上や節水機器の普及による水需要の抑制、下水・産業排水の再生利用等による水資源の有効利用を推進するとともに、社会経済状態の変化等を踏まえた事業評価を行いつつ、水源地対策、環境保全に対し十分に配慮した水資源開発、既存施設の有効活用を計画的に進める。渇水については、利水者間相互の水の融通や渇水対策容量を持つダムの建設等渇水対策を推進する。中部圏では地下水への依存度が高いため、雨水浸透等による地下水かん養、表流水への水源の転換等により地下水源の保全を図る。水源かん養機能の維持・向上のため、重要な水源地域においては、森林の保全・整備を推進する。

さらに、安全でおいしい水の確保のために、水源地域における森林の保全・整備や汚水処理施設の整備等により、琵琶湖や諏訪湖等の水源となる水域の水質保全・改善施策を推進するとともに、浄水処理の高度化等の水道水質管理の充実を推進する。

(汚水処理体系)

生活環境の向上を図り、公共用水域の水質汚濁防止に資するために、汚水処理施設の整備、老朽化した施設の改築・更新を推進する。特に、伊勢湾等の閉鎖性水域、木曽川等、上水道水源となっている河川の水質を保全するため、高度処理を積極的に推進するとともに、降雨時の汚濁軽減のために、雨水貯留施設の設置等の非特定汚染源対策や雨水と汚水を同一管きょで排除する合流式下水道の改善を推進する。

 また、処理水の雑用水等への有効利用、汚泥の再生利用等を推進するとともに、処理場の上部利用や管きょを光ファイバ[51]網の敷設可能な空間として開放する等の資源・施設の有効利用を推進する。

6 災害に強く、安全な圏域づくりの推進

(1)治山治水等

中部圏においては、温暖多雨な太平洋側から豪雪地帯である日本海側まで、河川の流域特性は多岐にわたっている。また、木曽川や庄内川、梯川等の河川の氾濫域では、人口・資産が集中しているため、降雨等による洪水の影響が広域化し、被害が深刻化する状況にある。このため、流域及び関連する水利用地域や氾濫原を一体とした流域圏において、環境の保全に配慮しつつ、河川事業、ダム事業等を計画的に推進する。特に、計画規模以上の洪水等に対して壊滅的な被害を回避する減災の観点から、越水や浸透に対する耐久性を強化した質の高い堤防の整備や洪水・土砂災害危険区域図の作成・公表等を推進する。また、日本最大のゼロメートル地帯である濃尾平野等の沿岸域では、高潮等による被害防止のため、環境の保全に配慮しつつ、高潮堤防の整備等の海岸事業を推進する。

 さらに、地下利用の進展、電子機器の普及、舗装面積の増加等に伴い、都市の水害に対する脆弱性が増しているため、都市河川の改修を推進するとともに、下水道施設の建設、適正な保水・遊水機能の確保、地下施設への浸水防止対策等を推進する。

また、天竜川、常願寺川や黒部川を始めとして、中部圏には日本アルプス等の峻険な山々から流下する河川が多く、土砂災害が発生しやすい状況にある。このため、流域圏全体を考慮した総合的な土砂管理を行うために環境と調和のとれた砂防事業、治山事業、保安林整備等の推進や、災害時に情報を緊急に把握、分析し、初期動作を迅速に行うシステムの構築を検討する。

さらに、農用地等が適切に保全管理されるための基礎的条件を整備する。

 これらに加え、水防、警戒避難等の防災体制を充実・強化するため、情報通信の高度化や住民との協力等による情報の収集・提供体制の強化を推進しつつ、水防団、消防団等との平時からの連携を促進し、広域防災拠点の設置等の避難・物資輸送支援体制の整備を推進する。

 また、これらの施策を行う際、災害弱者が安全に暮らせるように配慮する。

(2)震災対策

(基盤施設の耐震性向上とリダンダンシーの確保)

東海地震等地震災害が発生した際には、基盤施設の機能確保が重要となる。

交通基盤については、国際海上コンテナターミナルや幹線道路、幹線鉄道を始め、施設の重要度に応じて耐震強化を図る。さらに、リダンダンシー[52]の確保を図るため、機能を代替し得るルートの整備、異なる交通機関の相互補完が可能なネットワークを形成する。また、震災のみならず風水害等の自然災害に対しても粘り強いしなやかさを持つ交通体系を形成するため、危険個所の点検及び所要の施設整備等を推進する。

情報通信基盤については、拠点施設の耐震化を図るとともに、有線系施設の地中化等の推進による耐震性確保を図る。また、固定、移動、衛星の各通信系の連携や通信手段のバックアップ機能整備により、リダンダンシーを確保する。

さらに、避難、救急・消防、緊急輸送、延焼防止、応急復旧のための道路網の整備や防災拠点となる公園、港湾施設等の整備、防災拠点や関係機関を連絡する交通、情報通信網、災害時の道路交通管理体制等の整備を推進する。

河川及び海岸については、堤防、護岸の耐震性の向上等を推進するとともに、河川敷通路の整備等により人員・物資輸送のバックアップシステムを確保する。

電力・ガス・上下水道等のライフラインについては、設備ごとの耐震性の向上やリダンダンシーの確保、対応・復旧活動の迅速化、利用者の立場に立った広報活動の強化等を推進する。また、関係機関と密接な連携を取りつつ、共同溝[53]・電線共同溝[54]の整備を推進する。

災害時の雑用水、消火用水等の確保のため、耐震性貯水槽の整備を推進するとともに、下水高度処理水等の利用方策や河川取水に資する護岸の設置について検討する。

(地域構造の改善、市民活動との連携)

都心居住の推進、テレワークの促進等により、職住の近接化を図り、地域の災害対応力の向上を図る。老朽木造密集市街地の防災性を向上するため、整備目標等を都市計画等に位置付け、地区の特性に応じた市街地の面的な更新又は段階的な修復を進める。住宅を始め既存の建築物の耐震性向上を促進する。

さらに、被災時の応急対策活動を効果的に実施するため、防災活動拠点の確保及びネットワーク化を図る。民間施設の活用、ヘリコプターの運用、食料、水及び生活必需品等の備蓄・調達体制等に留意しつつ、身近な施設の防災拠点化を進めるとともに、官公庁等の災害時の中枢機能や情報機能の強化、災害拠点病院の整備、大規模オープンスペースの確保等を図る。災害対策活動の拠点となる建築物等について、耐震性能に余裕を持たせるほか、非常用自家発電設備の設置を推進するとともに適切な保守管理を図る。

加えて、圏域を視野に入れた被害想定の実施等により、広域的・実践的な連携体制を確立するとともに、広域支援活動に資する圏域レベルの防災拠点機能を確保する。仮設住宅の建設可能地、がれきの運搬ルートや処理・処分用地等の課題への対応方法についても事前に検討・計画する。

平常時から、自主防災組織等を育成、強化し、併せて防災知識の啓発等により防災意識の普及、啓蒙を図る。また、防災ボランティアの活動拠点確保への支援等によって、その活動環境の整備を図る。

(東海地震対策の推進)

東海地震に係る地震防災対策強化地域においては、地震防災基本計画等に基づき、避難地、避難路、消防用施設等地震防災上緊急に整備すべき施設の整備を推進するとともに、防災活動体制の維持、充実を図る。

(3)雪害対策

雪崩、融雪出水等による災害を防止するため、防災施設の整備を推進する。災害の予知・予測技術の研究・開発を推進するとともに、気象、交通等に関する情報を適切かつ迅速に収集、提供する雪情報システムの構築を図る。

また、自然環境の保全や景観に配慮しつつ、除排雪体制の強化、防雪施設や消融雪施設の整備、路面凍結対策の充実等により、冬期間の降積雪時等における都市間交通から歩行空間に至る安全で円滑な交通を確保するとともに、高齢者世帯等の住宅の除排雪等への支援等きめ細かな雪害対策を推進する。

第6節 多様な連携・交流を支える交通、情報通信体系の整備と良質な社会資本の形成

1 交通体系の形成

(1)連携交流や多彩な活動を支える交通体系の整備

  世界に開かれた多軸連結構造の形成等望ましい中部圏の将来像実現のため、国外及び圏域内外との往来を容易にし、人や企業の多彩な活動や地域の多様な連携・交流を支える交通体系の整備を推進する。

このため、国際交流、全国的な交流、圏域内の連携を支える交通体系がそれぞれの役割に応じて相互に補完、分担し、十分な機能を発揮する一体的なネットワークを形成する。また、最先端の優れた科学技術の活用、複数の交通機関の連携、既存ストックの有効活用等を進めつつ、多様なニーズに対応した安全で利便性や快適性の高い交通体系の形成を図る。

(物流の効率化)

物流については、国際的な大競争時代、物流に対するニーズの高度化・多様化等に対応するとともに、物流効率化、コスト縮減等に資する物流機能の高度化を図ることが必要である。このため、高規格幹線道路[55]等世界に開かれた多軸連結構造を支える交通体系、交通結節点を中心とする物流拠点、増大する輸入貨物に対応した国際海上コンテナターミナル等の社会資本等の整備を推進するとともに、各種輸送機関が相互に連携した交通体系を確立するマルチモーダル施策[56]を推進する。さらに、物流分野の電子商取引や国際物流諸手続のワンストップサービス化、物流機器や情報コード等の国際標準化等、物流システムの高度化に関する施策を講じる。

さらに、国際物流については、手続の簡素化・情報化、輸入促進地域[57]における総合輸入ターミナル等の物流拠点の整備等により、コストの低減及び所要時間の減少等を図る。

地域間物流については、船舶の近代化等による内航海運の一層の効率化、海陸輸送を結節する物流拠点の整備、主要幹線鉄道の貨物輸送力の増強、高規格幹線道路のインターチェンジ周辺等における広域物流拠点と道路の一体的整備、幹線におけるトラックの共同運行、車両の大型化に対応した道路整備を推進する。

都市内物流については、物流拠点の整備、自家用から営業用トラックへの利用の転換、市街地における荷捌きのための駐車施設の整備や共同集配、鉄道貨物の活用等を図る。

(2)広域国際交流圏の形成に資する交通体系の形成

 様々な分野において、圏域の特質をいかした自立的・総合的な国際交流が可能となる広域国際交流圏を形成するため、人流、物流両面にわたり、国際的な交通体系を整備する。

中部国際空港の整備を推進するとともに、名古屋港等において国際海上コンテナターミナル等の整備を推進する。また、これら空港、港湾と連結する道路、中部国際空港連絡鉄道等鉄道等の整備を推進するとともに、圏域全体から中部国際空港へのアクセス性を高めるための交通体系等広域国際交流圏の形成に資する交通体系の整備を推進する。さらに、中部国際空港や名古屋港等の機能を活用しつつ、高度化・多様化する物流ニーズに対応するための国際物流基地の形成可能性について検討する。

(3)多軸連結構造の形成に資する圏域内外の交通体系の整備

(全国的な交通体系)

 4つの国土軸が係わる中部圏においては、日本列島の中央に位置する等の地理的優位性をいかしつつ、国土軸の形成促進に資する大都市圏相互や他の地方圏との多様な交流を支えるため、人流、物流両面にわたる全国的な交通体系の整備を推進する。

 このため、道路については、東西方向等の交通網を形成する第二東名高速道路、第二名神高速道路、北陸自動車道等高規格幹線道路、地域高規格道路[58]の整備を推進するとともに、空港、港湾と連結する高規格幹線道路等の整備を図る。伊勢湾口道路の構想については、長大橋等に係る技術開発、地域の交流、連携に向けた取組等を踏まえ調査を進めることとし、その進展に応じ、周辺環境への影響、費用対効果、費用負担のあり方等を検討することにより、構想を進める。

 鉄道については、北陸新幹線について、政府・与党検討委員会検討結果に基づき、糸魚川・魚津間、石動・金沢間及び長野・上越間について着実に整備を進めるとともに、それ以外の区間については所要の事業を進める。また、新幹線の輸送力増強等を図る。さらに、中央新幹線について調査を進めるほか、科学技術創造立国にふさわしく、超電導磁気浮上式鉄道[59]の実用化に向けた技術開発を推進し、21世紀の革新的高速鉄道システムの早期実現を目指す。

 空港については、全国的な交流を支えるため、航空ネットワークの拠点空港として中部国際空港の整備を推進する。また、静岡空港、能登空港の整備を推進する。

港湾については、御前崎港等において複合一貫輸送に対応した内貿ターミナルの整備を推進する。

紀伊半島の東岸から西岸に至る東海、南海を結ぶ地域での連携推進を図るための交通体系の強化について検討する。

(圏域内の交通体系)

 圏域内においても多軸連結構造の形成に資する国土軸方向及び圏域軸方向に沿った人、物の連携等を支える交通体系の整備を図る。

  このため、道路については、中部圏の地域間の連携を支える東海北陸自動車道、近畿自動車道、中部横断自動車道、関越自動車道、中部縦貫自動車道、伊豆縦貫自動車道、能越自動車道、三遠南信自動車道等高規格幹線道路、小松白川連絡道路等の地域高規格道路等の整備を推進するとともに、名古屋大都市地域周辺における環状方向等の連携を支える東海環状自動車道、名古屋環状2号線、名古屋高速道路等の整備を推進する。

また、最先端の情報通信技術等を活用し、道路交通の安全性、輸送効率、快適性を飛躍的に向上させるため、道路交通情報通信システム(VICS)[60]整備、有料道路におけるノンストップ自動料金収受システム(ETC)導入、ドライバーの安全運転の支援に資する自動運転実用化、交通管理最適化等を目指す高度道路交通システム(ITS)について研究開発・導入を推進するとともに、道路管理用の光ファイバ及びその収容空間の整備を推進し、さらにこれらの機能を統合的に備えた道路(スマートウェイ)の導入を図る。地域レベルにおいても、その地域の特性やニーズを踏まえ、駐車場案内システム等の高度道路交通システム(ITS)の導入を積極的に推進する。

 さらには、交通事故の抑止を図るため、事故多発地点における事故削減策の集中的実施、住居系地区等における通過交通の進入を抑え、暮らしの安全を確保する良好なコミュニティ・ゾーンの形成等による重点的かつ効率的な交通安全施策を推進するとともに、利用者の安全性、利便性向上等を図るため、道の駅の整備、地域活性化のための高速道路インターチェンジの追加整備、高速道路やその休憩施設への民間の集客施設等の連結等を推進する。

 鉄軌道については、地域における公共交通サービスの向上等を図るとともに、名古屋大都市地域における拠点性向上や混雑緩和等に資する効率的な鉄軌道網の形成を図るため、愛知環状鉄道線等環状方向の路線、上飯田連絡線等鉄軌道間を結節しネットワークを形成する路線等の整備を進めるとともに、複線化や電化等により、輸送力の増強、サービスの向上を図る。

 また、既存ストック活用等を図るため、西名古屋港線等路線整備に当たり貨物線を活用して旅客利用を図るとともに、オフピーク通勤[61]を推進し、さらに相互直通運転や地域として共通の乗車券の整備等による乗り換え円滑化等を推進し、異なる交通機関相互を含めた事業者間の連携を図り、利用者にとっていわばシームレスな交通網として機能する交通体系を形成する。

一方、鉄軌道の運転事故は、一旦事故が発生すると、甚大な被害を生じるおそれ等があることから、運転保安設備の整備等による一層の安全性向上、緊急時に備えた安全対策を推進する。

中小都市、中山間地域等においては、住民の日常活動を支える交通体系として、自動車の利便性向上等に資する交通基盤施設の整備を推進するとともに、公共交通等地域における生活交通のサービスの確保を図る。

(4)都市圏等の活動を支える交通体系の整備

都市圏内では、鉄道、都市モノレール、新交通システム[62]、LRT[63]を始めとする路面電車、コミュニティバス、ガイドウェイバス[64]を含むバス等公共交通機関を都市の規模や特性に応じ適切に組み合わせ、効率的に機能する公共交通体系を整備する。

また、都市内道路整備や歩行者、自転車のためのネットワーク形成、自転車駐車場整備を推進する。この際、都市内の道路については、トランジットモール[65]導入や駅、目抜き通りを中心としたまちづくり等により中心市街地のにぎわいや美しい街並み等の形成に寄与すること、公共空間、防災上の延焼遮断帯や避難路、ライフラインの収容空間等都市の貴重な空間としての機能も有することに配慮し、整備を推進する。交通基盤施設の整備と土地の有効活用等を効果的に推進するため、建築物と道路等の一体的整備や土地区画整理、市街地再開発による整備等を推進する。公共交通については、地域を支える交通機関として、利用促進のための広報、利用しやすい乗車券の導入等利便性の向上によりその利用を促進する。また、幅の広い歩道の整備やノンステップバスの導入等により道路空間や公共交通機関のバリアフリー化を推進する。特に鉄道駅等については、その機能の多様化を図るとともに、高齢者、障害者等の移動円滑化を始めとする利便性の向上や交通結節機能の強化等を図るため、エレベーター等の設置、駅前広場、自由通路、歩道、情報提供システム、アクセス道路の整備等、駅と道路等の一体かつ総合的な整備等を推進する。さらに、歩車共存道路の整備等により、住居系地区等における通過交通の進入を抑え、暮らしの安全を確保する良好なコミュニティ・ゾーンの形成等を図り、重点的かつ効率的な交通安全施策を推進する。

都市内における円滑な交通等を実現するため、バイパス・環状道路の整備等交通容量拡大施策、自動車駐車場の整備を推進するとともに、時差通勤、フレックスタイム[66]制導入やパーク・アンド・ライド[67]推進等を行う交通需要マネジメント(TDM)施策、交通結節点整備等複数の交通機関の連携により利便性向上を図るマルチモーダル施策を推進する。また、交通の円滑化やまちづくりの促進に資する連続立体交差等による踏切道対策を推進するとともに、高度道路交通システム(ITS)の導入を進める。さらに、これらを組み合わせて総合的かつ重点的に対策を推進する。

2 情報通信体系の形成

(情報通信体系の積極的活用

中部圏においては、国際的産業・技術の創造圏域の形成等に資する連携・交流の推進、豊かな自然や伝統文化に支えられた魅力あふれる中部圏の暮らし等の国内外への発信、情報通信を活用した公共サービス等の生活利便性向上、テレワーク等による高齢者、女性を含めた就業機会の拡大等を始め、個人・組織・地域の多様な活動や連携・交流を支え、選択の自由度を向上させることが必要である。このため、誰もがどこでも活用可能なようにハード面、ソフト面、人材面の全ての分野で総合的に情報通信体系の整備を進める。これらの整備に当たっては、民間主導で行うことを基本として、公的部門は情報化を推進するための制度的枠組みの整備、民間投資への支援等環境整備を推進する。

(総合的な情報通信体系の整備

ハード面では、光ファイバ網等の整備推進、より高速・高品質な移動通信システム等の導入と普及等、高速、大容量で高度な情報通信ネットワークの整備を推進する。また、地域独自のネットワークについて構築を進める。これらを活用した先導的な取組を推進するとともに、都市部以外の需要の低い地域を含めた圏域内の利用条件均等化への配慮、衛星通信の活用等により系全体の代替性や補完性を確保しつつ、固定及び移動系、有線及び無線系といった各種ネットワーク相互の接続性に優れ、全体としてあたかも一体のように機能するシームレスな情報通信体系[68]の整備、ネットワークの代替性、多重性の確保に努める。さらに、施設整備に当たっては、道路、河川空間等公共空間の一層の活用及び下水道等公的施設管理用等の光ファイバ網の民間事業者による活用のための環境整備を推進する。また、国民生活における情報通信の利活用を図るため、役場、郵便局等既存の公共施設を活用する。

ソフト面では、高度情報化に向けた制度面の環境整備として、電子商取引に向けた制度面の整備や実験、通信費用の低減や多様なニーズに応じた料金体系実現等を目指した競争促進等通信事業に係る環境整備等を引き続き推進するとともに、個人情報保護、セキュリティ確保、知的財産権保護等に配慮した措置を図る。また、地域住民の生活圏域の拡大を考慮し、既存の行政区域を超えた広域的な情報化を推進する。

また、行政情報等情報、知識に関する電子化や誰もが活用可能なデータベース化、教育、医療等各分野におけるソフトウェアの整備を推進する。身近な場所等で各種の行政サービスを受けることができるようにするワンストップサービスについては、制度的・技術的課題を解決しつつ段階的に実施する。

人的な面では、情報産業分野の技術者等の育成、学校におけるインターネット[69]等を活用した情報教育の推進等住民の情報リテラシー(情報活用能力)[70]の向上を図るとともに、高齢者や障害者、外国人等誰もが利用しやすいように、音声、言語等情報伝達方法の工夫、使いやすい端末機器の開発・普及等を図る。

放送については、より高画質で多様な放送の実現に向けて、地上放送について早期にデジタル放送を開始できるよう所要の取組を推進するとともに、衛星放送等のデジタル化[71]を促進し、光ファイバ網等各種通信ネットワークがシームレスに接続する「トータルデジタルネットワーク」の構築を目指す。また、地域の生活・文化面での利便性向上やコミュニティ活動に資するCATV[72]等の普及・充実を図る。さらに、コンテンツ[73]の制作・流通環境の整備を図る。

3 次世代に引き継ぐ良質な社会資本の形成

(効果的な社会資本の形成

 中部圏整備の推進上、社会資本は重要な役割を果たし、その整備を着実に推進する必要がある。しかし、今後の成熟の時代を迎え、少子化・高齢化の進展が見込まれる一方、高い水準での経済成長は見込み難い状況にあり、社会資本整備を巡る環境は厳しい状況にあるため、今後の社会資本整備は真に効果的な整備を効率的に推進する必要がある。

 このため、本計画等により中部圏が目指すべき方向性を明確にし、国と地域あるいは地域間の適切な連携の下、効果的な社会資本整備を推進することが重要である。

(良質な社会資本の効率的な形成

良質な社会資本の整備を効率的に行うため、地方公共団体間の連携等による地域間の役割分担の下、各地域が特色をいかした発展や連携・交流の活発化に資する社会資本整備を重点的に推進するとともに、PFI[74]や受益者負担の手法の導入等官民の適切な役割分担の下での整備を推進する。整備に当たっては、費用と効果の関係等を含めた総合的な評価を実施するとともに、新しい施策の導入に当たり効果の見極めや関係者の理解と協力を得るため、社会実験の活用を図る。また、地域間相互で利用する施設等の整備、多目的利用や弾力的運用等施設の有効利用を推進する。施設整備に当たって、適切かつ合理的な土地利用を図るため、必要に応じて基盤施設等の公共施設と建築物等の民間施設との一体的、複合的な整備を図る。さらに、建設コスト及びこれに維持管理や更新の費用を含めたライフサイクルコスト[75]の縮減、老朽化する社会資本ストックの増大を踏まえた社会資本やそのサービスの安全性、信頼性確保等の観点も含めて計画的な維持管理・更新を図るとともに、地域レベルでのマネジメント等に関する技術やノウハウの蓄積・体系化等により、社会的サービス[76]に関するコスト縮減や運営の効率化に努める。

また、住民や施設利用者等幅広い人々の参加と協力による社会資本整備を推進するため、整備に当たっては、情報を広く開示、提供するとともに、これらの人々が計画段階からより一層の参加が可能となるようにする。特に身近なまちづくりについては、仕組みづくり等も含め、住民による主体的取組を促す。その際、幅広い人々の参加のもと、円滑に整備やまちづくりを推進するため、コーディネート役を果たす専門家の活用、育成等を図る。

 

第4章 世界に開かれた多軸連結構造の形成

 世界に開かれた多軸連結構造を形成する4つの国土軸及び6つの圏域軸を踏まえ、各軸の形成等に資する諸整備を推進する。

1 中部圏における日本海国土軸の形成

中部圏における日本海沿岸に沿った地域は、県庁所在地が近接し、中小の都市圏がつながる等日本海沿岸地域の中では比較的都市の集積がみられ、また、電気機器等の工業集積が形成されている。さらに、環日本海地域の中央として対岸諸国に開かれている等の地理的優位性を有している。

環日本海交流を先導する地域として、それぞれの都市圏の個性や魅力を高めるとともに、新潟(上越市)から富山市、高岡市、金沢市、福井市、敦賀市、小浜市を経て舞鶴に至る日本海に沿ってつながる軸状連携を中心として、多様かつ活発な連携・交流を推進することで、中部圏における日本海国土軸の形成を促進する。

(軸の形成に向けて)

富山市、金沢市、福井市を中心として、環日本海交流の先導に必要な情報発信、学術、研究、芸術、文化、国際交流機能等の高次都市機能を充実するとともに、国際会議、スポーツイベント、国際的な芸術フェステバル、地域の文化財等の海外交流展等のイベントの開催やこれらを企画する組織、人材の育成を行い、環日本海交流を核とした国際交流の質的拡大を図り、特色ある連携・交流を推進する。また、北東アジア地域の自治体レベルにおいても交流・協力のネットワークを形成する等、北東アジア地域における多国間交流を一層推進する。

豊かな自然や歴史をいかし、広域観光ネットワークの形成を推進する。また、立山の自然や山岳文化を提供する自然体験フィールド等の整備、若狭湾と京都を結ぶ鯖街道沿線の歴史的遺産をいかした地域づくり等を推進する。

当地域にはアルミ建材、産業機械、電子・電気機器、繊維等の産業集積における基盤的技術を始めとする多様かつ独自の産業技術が蓄積されている。今後、これらを基礎としつつ、生産機能とバランスのとれた研究開発機能、デザイン機能、情報機能等の強化により、商品の高付加価値化、また、環境関連、医療・福祉関連、新製造技術関連等の新分野の促進を図り、日本海国土軸における産業・技術の中枢を形成する。また、研究開発機能等の強化の拠点として、先端的研究開発拠点の形成を目指すいしかわサイエンスパーク、情報関連産業の集積を目指すソフトパーク福井、デザイン関連産業や情報関連産業等の集積を目指す高岡オフィスパーク等の整備を図る。

 原子力発電施設によるエネルギー供給やLPガス国家備蓄基地の建設等、我が国のエネルギー基地としての役割を踏まえ、立地地域の自立的、継続的発展を図る。

金沢都市圏都心軸の整備、福井駅、小松駅の周辺における鉄道の高架化に併せた市街地の整備等の拠点市街地の整備を推進する。

国際的な交流や全国的な交流を支えるため、富山空港の整備を推進するとともに、伏木富山港、金沢港、七尾港、敦賀港において、多目的国際ターミナルの整備を推進する。また、小松飛行場を拠点とした輸入関連施設・機能を集積させるFAZ計画を推進するとともに、同飛行場の活用策について検討を進める。

軸に沿った方向の連携等を支える交通体系として、近畿自動車道敦賀線、北陸自動車道、富山外郭環状道路、富山高岡連絡道路、金沢外環状道路、福井外環状道路の整備及び西日本旅客鉄道小浜線の電化等を推進するとともに、北陸新幹線については、政府・与党整備新幹線検討委員会の検討結果等に基づき、糸魚川・魚津間、石動・金沢間について、着実に整備を進めるとともに、それ以外の区間について所要の事業を進める。

地域内に先導的な情報通信ネットワークを構築し、多様な連携を推進するとともに、行政を始めとする多様な社会的サービスの高度化を目指す。

2 中部縦貫軸及び中部圏における北東国土軸の形成

中部圏を縦貫し、福井平野から飛騨地域、信濃に至る地域は、中央アルプスに代表される雄大な景観、貴重な動植物等の山岳資源、また、歴史的風土を通じて培われた特色ある文化・伝統を有している。

 貴重な地域資源や特色ある風土をいかして、それぞれの都市圏の個性や魅力を高めるとともに、福井市・小松市から高山市を経て松本市をつなぐ軸状連携及び松本市から中央自動車道に沿って諏訪市、韮崎市・甲府市を経て東京につながる軸状連携を中心として、多様かつ活発な連携・交流を推進することで中部縦貫軸は形成される。日本海国土軸、北東国土軸、西日本国土軸を連結し、首都圏ともつながりつつ中部圏の一体化を促進することで、多様な資源をいかした諸機能の向上が期待される。

松本市から長野市、上田市を経て高崎市へつながる軸状連携の強化及び中部縦貫軸の形成等とあいまって、中部圏における北東国土軸の形成を促進する。

(軸の形成に向けて)

地理的に隔てられていた東西方向を、観光、伝統、文化等の優れた地域資源をいかした連携・交流を推進する。飛騨地域と長野県地域の間において、広域的な観光ルートの整備や地域活性化を目的とした連携を始めとして、観光ルートの創設、温泉等をテーマにしたイベントの開催等観光地間の連携等を積極的に図る。また、農林水産業を基幹とした複合的な地域産業の振興や農山村滞在・体験型観光、森林健康リゾート、雪国リゾート等地域資源をいかした観光関連産業の展開を図る。

北陸東部から南部に広がる北陸山麓地域等において、地域内及び地形的条件から隣接する中信地域、飛騨地域等の他地域との連携を推進するため、広域的な交通基盤の充実を図るとともに、中部山岳等を中心とした北アルプスゴールデンルートの開発、環白山地域の観光振興を目的とした県域を越えた広域的な連携等を推進し、また、これら資源をいかした美しくアメニティに満ちた地域づくりを進める。美しい景観や高山地帯の貴重な動植物の保全を図るとともに、自然との触れ合いの場の提供、森林や貴重な動植物の保全活動を通じた連携・交流を推進する。

軸に沿った方向の連携等を支える交通体系として、中部縦貫自動車道、小松白川連絡道路、福井港丸岡インター連絡道路、上信自動車道等の整備を推進する。

3 中部圏における太平洋ベルト地帯の再生、西日本国土軸の形成

中部圏における東海道に沿った地域は、太平洋ベルト地帯の中枢として、高度な都市機能を持つ都市圏が連坦するとともに、先端的な工業・技術集積、先進的な農業地域を有し、我が国経済の発展に重要な役割を果たしてきた。

今後とも、産業の集積地としての機能強化を図るとともに、三島市、富士市、静岡市、掛川市、浜松市、豊橋市、名古屋市・名古屋周辺都市、岐阜市・大垣市、彦根市、大津市を経て京都・大阪に至る東海道に沿った軸状連携及び鈴鹿市から奈良へつながる軸状連携を中心として、文化、教育、国際交流等の高次都市機能の相互活用により、魅力的な空間として中部圏における太平洋ベルト地帯を再生し、西日本国土軸の形成を促進する。

(軸の形成に向けて)

都市の規模や特性に応じて首都圏、近畿圏との適切な機能分担と連携の下、中枢管理、研究開発、情報、国際交流等の高次都市機能の強化を図る。静岡市、浜松市、名古屋市等の既存の市街地において再開発を推進するほか、沼津市、名古屋市、稲沢市等において、旧国鉄用地を利用した拠点市街地の整備を推進する。

世界水準の研究開発集積や最先端の技術の蓄積を有する産業集積相互間の連携・交流、産学官の連携の推進等により、それらの集積の一層の高度化を図り、世界的な産業技術の中枢を形成する。

東海地震等の大規模災害に備えるため、防災施設の整備や防災体制の強化を図るとともに、交通体系への重大な影響を回避するため、幹線交通の集中している地域において災害対策を推進するほか、交通ネットワークの多重化、多元化を図る。

地域の文化や産業等の特性をいかした国際的イベントの開催を通じて世界との交流や情報発信を推進する。

国際的な交流を支えるため、清水港において国際海上コンテナターミナルの整備を推進するとともに、御前崎港、田子の浦港において多目的国際ターミナルの整備を推進する。  

全国的な交流を支えるため、第二東名高速道路、第二名神高速道路、近畿自動車道名古屋大阪線、静岡空港の整備を推進するとともに、御前崎港において複合一貫輸送に対応した内貿ターミナルの整備を推進する。また、中央新幹線について調査を進めるほか、科学技術創造立国にふさわしく、超電導磁気浮上式鉄道の実用化に向けた技術開発を推進し、21世紀の革新的高速鉄道システムの早期実現を目指す。

軸に沿った方向の連携等を支える交通体系として、岐阜南部横断ハイウェイ、静岡東西道路、名豊道路、甲賀湖南道路、京滋バイパス、金谷御前崎連絡道路、鈴鹿亀山道路、四日市インターアクセス道路等の整備を推進する。

地域内に個人や企業も利用可能な情報通信ネットワークを構築し、多様な連携を推進するとともに、行政を始めとする多様な社会的サービスの高度化を目指す。

4 伊勢湾・東海環状軸及び中部圏における太平洋新国土軸の形成

名古屋大都市地域及び中部国際空港を拠点とし、伊勢湾沿岸、濃尾平野、浜名湖周辺からなる地域は、中部圏の中でも特に人口、産業の集積が図られ高次な都市機能を有しているとともに、海洋性の自然に恵まれている。

高度な産業・技術や都市機能、雄大な自然をいかしつつ、それぞれの都市圏の個性や魅力を高めるとともに、名古屋市及び名古屋市外縁部の諸都市から伊勢湾沿岸に沿って、豊橋市・浜松市、渥美半島、伊勢市、松阪市、津市、四日市市につながる環状連携、名古屋大都市地域の外縁部の諸都市をつないだ環状連携及びこれら軸状連携と中部国際空港とをつなぐ新たに育成する軸状連携を中心として、多様かつ活発な連携・交流を推進することで、伊勢湾・東海環状軸が形成される。西日本国土軸と太平洋新国土軸を連結し、我が国を牽引する産業・技術の中枢圏域、中部圏における国際交流の中枢拠点を形成する機能が期待される。

松阪市から五條市・和歌山市へ至る軸状連携の強化及び伊勢湾・東海環状軸の形成とあいまって、中部圏における太平洋新国土軸の形成が促進される。

(軸の形成に向けて)

国際的な交流を支えるため、中部圏のグローバルゲートとして、中部国際空港の整備を推進するとともに、名古屋港、四日市港における国際海上コンテナターミナル等の整備や衣浦港における多目的国際ターミナルの整備を推進する。また、中部国際空港や名古屋港等の機能を活用しつつ、高度化・多様化する物流ニーズに対応するための国際物流基地の形成可能性について検討する。

 中部国際空港周辺においては、空港と一体的に流通、商業、業務機能等の導入を図るとともに、既存市街地や知多中央丘陵との総合的な都市整備を進める。

当地域には、自動車、航空宇宙等の輸送用機器、化学、電気機器等を始めとする多様な産業分野におけるリーディングカンパニー、中小企業の集積地等において、先端的な産業技術が蓄積されている。その一層の高度化とともに、情報通信、環境関連等の新規・成長産業の振興を図り、世界的な産業技術の中枢を形成するために、研究ネットワーク都市・アークぎふ構想、あいち学術研究開発ゾーン構想、三重ハイテクプラネット21構想等を推進するとともに、東海環状自動車道を軸に、それらの構想に従い形成される研究開発拠点間の連携・交流を活発化させる東海リサーチリンケージ構想を推進する。

名古屋市においては、国際的な交流機能の集積とともに国際・広域交流都市にふさわしい商業・業務の集積を図り、都心機能の強化に努めるほか、志段味地区における研究開発機能の強化等新たな産業の創造・育成や既存産業の高度化を進めること等により、国際的・広域的な交流拠点都市の形成を推進する。瀬戸市南東部において、環境共生型の地域整備を図る。

伊勢湾については、湾岸地域が一体となって、水質改善の取組を進める等、総合的な利用と保全を図る。

伊勢湾から熊野灘にかけての雄大な自然、温暖な気候、神社・仏閣等の観光資源、熊野古道等の街道遺産を始めとした近畿圏を交えた文化・歴史をいかした連携等を推進する。また、宮川にまつわる文化・歴史の承継や環境保全等の流域における総合的な取組や、松阪における総合木材流通拠点の整備等を推進する。

伊勢湾・東海環状軸に沿った地域内の連携に資する交通体系として、東海環状自動車道、濃飛横断自動車道等の整備を推進するとともに、名古屋大都市地域の交通体系としては、環状方向の路線として、道路では名古屋環状2号線等の整備、鉄軌道では名古屋市4号線の整備及び愛知環状鉄道線の複線化等の整備を推進するとともに、都市圏のネットワークを形成する路線として、道路では名古屋瀬戸道路、名古屋高速道路等の整備、鉄軌道では西名古屋港線、上飯田連絡線の整備及び名古屋鉄道小牧線の複線化等を推進するとともに、東部丘陵線の整備について検討を進める。

 また、中部国際空港と連絡する交通体系として、知多横断道路、西知多道路、名浜道路等の整備を推進するとともに、中部国際空港連絡鉄道線の整備及び同路線と他の鉄道路線との乗り継ぎ利便性の向上に関する検討等を推進する。

太平洋新国土軸に沿った方向の連携に資する豊橋浜松道路、伊勢志摩連絡道路等の整備を推進する。伊勢湾口道路の構想については、長大橋等に係る技術開発、地域の交流、連携に向けた取組等を踏まえた調査を進めることとし、その進展に応じ周辺環境への影響、費用対効果、費用負担のあり方等を検討することにより、構想を進めるとともに、紀伊半島の東岸から西岸に至る東海、南海を結ぶ地域での連携推進を図るための交通体系の強化について検討する。

地域の情報通信体系として、全国的な高度情報通信ネットワークと接続した地域独自の高度な情報通信ネットワークの構築並びにその活用等を推進する。また、情報通信関連の産業、研究機関等の集積を図るとともに、専門技術者育成のための教育を実施する。

5 中部横断軸の形成

日本海から北信・東信、甲府盆地、駿河湾湾岸を経て伊豆半島に至る地域は、山岳・海洋資源に恵まれ、多彩かつ豊富なリゾート地を有しているとともに、近年の高速交通体系の整備等により、首都圏との活発な交流が行われている。

豊富かつ多彩な余暇施設や特色ある産業集積をいかして、それぞれの都市圏の個性や魅力を高めるとともに、上越から長野市、上田市を経て佐久市ににつながる軸状連携及び佐久市から、韮崎市・甲府市、静岡市・清水市・富士市・沼津市を経て下田市をつなぐ軸状連携を中心として、多様かつ活発な連携・交流を推進することで、中部横断軸が形成される。日本海国土軸、北東国土軸、西日本国土軸を連結し、創造的な諸活動の展開の場を形成する等の機能が期待される。

(軸の形成に向けて)

山岳や高原を主体とする国際級の観光資源と軽井沢、伊豆に代表される滞在型観光リゾート地をいかし、付加価値の高いリゾート環境の創出等広域的なレクリエーション機能の整備拡充を図ることにより、交流の場の創出を図る。また、首都圏とも連携を図りつつ、これら地域資源と国際交流機能とを相互利用し、新産業の創出や余暇活動、マルチハビテーション等に係る地域整備を推進する。

 電気機器、医薬品、製紙等における産業技術の蓄積をいかし、産学官連携の推進等により、既存産業の高度化や新産業の創出を図る。

上田駅の周辺における再開発等の拠点市街地の整備を推進する。

軸方向に沿った連携に資する交通体系として、中部横断自動車道、伊豆縦貫自動車道、関越自動車道上越線、松本糸魚川連絡道路、静岡南北道路等の整備を推進するとともに、北陸新幹線について、政府・与党検討委員会検討結果に基づき、長野・上越間について着実に整備を進めるとともに、それ以外の区間については所要の事業を進める。また、駿河湾地域の港湾機能と内陸地域の産業等との連携を推進する。

6 東海・信越連携軸の形成

名古屋・三遠南信地域から中信・北信を経て日本海に至る地域は、名古屋大都市地域が持つ高次都市機能や先進的な産業集積、三遠南信地域の産業・研究開発機能の集積等を有しているとともに、自然環境をいかした多様な生活環境を有している。

豊富かつ多彩な余暇施設や特色ある産業集積をいかして、それぞれの都市圏の個性や魅力を高めるとともに、名古屋市から多治見市、飯田市、松本市を経て長野市につながる軸状連携及び長野市から上越につながる軸状連携並びに豊橋市・浜松市から飯田市につながる軸状連携を中心として、多様かつ活発な連携・交流を推進することで、東海・信越連携軸は形成される。環日本海と環太平洋を結びつつ、4つの国土軸全てを連結し、地域資源をいかした多様な国際交流機能等が期待される。

(軸の形成に向けて)

電気機器、精密機械、輸送用機器、楽器、繊維等の産業集積に蓄積された基盤的技術を始めとする多様な産業技術の蓄積を基礎として、光技術、エレクトロニクス、新素材、情報通信、海洋バイオテクノロジー等の先端的分野において、産学官連携の強化等による研究開発機能の強化や関連産業等の蓄積を図り、産業・技術の先進地域を形成する。また、研究開発機能の強化の拠点等の形成のため、豊橋において産学連携の拠点の形成を図るサイエンスクリエイト21計画、あいち学術研究開発ゾーン構想、浜松地域における光技術等の高度技術に立脚した工業開発の拠点形成への取組等を推進する。

浜松地域における楽器産業等地域の特色ある産業をいかしたイベントやまちづくりを通じた連携・交流を推進する。

豊かな自然や伝統的な民俗芸能等をいかした広域観光ルートの形成や各種イベントの連携開催による広域観光の展開を図る。

松本市において、公共施設の整備改善、商業の活性化を目的とした市街地整備を推進する。

流域界を越えて、自然環境の保全活動、森林づくりボランティア等を目的とした市民活動の展開を図る等の流域間交流等を推進する。

三河港における自動車の輸出入や技術協力、リサイクル等の複合的な拠点の形成を図る国際自動車コンプレックスを推進する。このため、三河港において多目的国際ターミナルの整備を推進するとともに、中山水道航路の整備を推進する。

軸方向に沿った連携に資する交通体系として、三遠南信自動車道、伊那木曽連絡道路、衣浦豊田道路等の整備を推進する。

7 中央横断軸の形成

日本の中央にあって北陸と東海を直結し、能登半島から飛騨地域を経て紀伊半島に至る地域は、優れた産業技術集積、多彩で美しい景観、伝統、文化等の蓄積に恵まれているという特徴を有している。

多彩な地域資源をいかして、それぞれの都市圏の個性や魅力を高めるとともに、輪島市から金沢市・高岡市・富山市、高山市、岐阜市を経て名古屋市をつなぐ軸状連携及び名古屋市から伊勢湾岸沿いに桑名市、四日市市、鈴鹿市、津市、松阪市・伊勢市、尾鷲市を経て熊野市につながる軸状連携を中心として、多様かつ活発な連携・交流を推進することで、中央横断軸は形成される。4つの国土軸全てを連結し、国土全体を水平的ネットワーク構造へ改編する国土再編機能、また、環日本海の拠点と環太平洋の拠点とを結び、中部圏の中央を南北につなぐ軸として圏域の活性化を促進するとともに、広域国際交流圏を形成する上で枢要となる機能等が期待される。

さらに、交通、情報通信体系の整備等を契機とした、北陸と東海の産業集積や研究開発集積間における人、企業、学術研究機関等の連携の活発化等により、中部圏全体としての産業の活性化や研究開発機能の高度化が期待される。

(軸の形成に向けて)

環日本海地域の拠点と環太平洋地域の拠点との多様な交流を推進しつつ、情報、文化・スポーツ、保健、医療、福祉等の南北方向の連携強化を図る。

県域を越えた医療・福祉施設の連携や病院建設の共同実施等、健康で安心して暮らせる地域づくりに向けて、広域的かつ総合的な施策の展開を図る。

多彩な自然環境や景観、伝統工芸や文化の域まで達したモノづくり、神社・仏閣等、歴史的文化遺産等を観光資源として活用し、国際的な観光ネットワークの形成等、国際・国内観光の振興に向けた施策を積極的に推進する。また、国営木曽三川公園の整備を図る。

豊かな地域資源をいかし、グリーンツーリズム等の観光関連産業の活性化を図る。

 全国的な交流を支えるため、能登空港の整備を推進する。

軸に沿った方向の連携等を支える交通体系として、東海北陸自動車道、近畿自動車道紀勢線、能越自動車道、月浦白尾IC連絡道路、金沢能登連絡道路、能登空港インター道路、高山下呂連絡道路、富山高山連絡道路、名岐道路、一宮西港道路、高岡環状道路等の整備を推進する。

8 福井・滋賀・三重連携軸の形成

福井平野から琵琶湖周辺を経て伊勢湾(太平洋)に至る地域は、古くから交通の要衡であり、交通の利便性をいかした工業集積を有するとともに、日本海、琵琶湖、太平洋の「うみ」に代表される豊かな自然環境を有している。

3つのうみや交通の利便性をいかして、それぞれの都市圏の個性や魅力を高めるとともに、福井市から敦賀市、彦根市・大津市、上野市、松阪市を経て伊勢市をつなぐ軸状連携を中心に、多様かつ活発な連携・交流を推進することで、福井・滋賀・三重連携軸が形成される。近畿圏とも重なりつつ、日本海国土軸、西日本国土軸、太平洋新国土軸を最短で連結するとともに、その地理的優位性等をいかして多様な連携・交流を発展させることで、新たな活動空間を形成する等の機能が期待される。

(軸の形成に向けて)

3つのうみに代表される多様な自然や食、陶芸、俳句等の多彩な文化のネットワーク化を図るとともに、岐阜県や近畿圏とも連携を図りつつ、歴史的文化遺産等をいかした共同イベントの開催、歴史街道計画の策定等の国際的広域観光ルートの設定、整備等を一体的かつ総合的に推進する。

四日市の大気汚染対策、琵琶湖の水質保全対策、若狭湾のエネルギーの利用に関する安全対策等環境問題に対する先駆的な取組の蓄積をいかし、エコツーリズム等環境保全活動のネットワーク化を推進する。また、琵琶湖の水質保全対策、水源かん養対策及び自然的環境・景観対策等について琵琶湖の総合保全にむけた取組を推進する。

輸送用機器、化学、電気機器等の産業集積に蓄積された基盤的技術等を始めとする多様な産業技術の蓄積を基礎として、研究開発機能、情報機能等の強化を図り、既存産業の高度化とともに、情報通信関連、海洋関連産業、また、環境関連に関する研究等の蓄積をいかした環境関連産業等の特色ある新規・成長産業の振興を図る。また、研究開発機能の強化等の拠点として、高度技術産業の集積を図るびわこサイエンスパーク、三重ハイテクプラネット21構想に基づく鈴鹿山麓研究学園都市、ソフトパーク福井等の整備を推進する。

軸に沿った方向の連携に資する交通体系として、近畿自動車道伊勢線、びわこ空港自動車道、琵琶湖西縦貫道路、伊賀甲賀連絡道路等の整備を推進する。また、東海道新幹線の新駅設置の構想については、引き続き地域において検討を進める。

 

第2部 施設計画及び区域の指定

第1章 施設計画

1 道路

(1)全国的な交流を支える道路

多軸型国土構造の実現等を支援し、他圏域との多様な交流を支える道路の整備を推進する。

このため、第二東名高速道路、第二名神高速道路、北陸自動車道等の高規格幹線道路について、整備を推進する。

伊勢湾口道路の構想については、長大橋等に係る技術開発、地域の交流、連携に向けた取組等を踏まえ調査を進めることとし、その進展に応じ、周辺環境への影響、費用対効果、費用負担のあり方等を検討することにより、構想を進める。

(2)圏域内の連携を支える道路

世界に開かれた多軸連結構造の実現を支援し、圏域内の多様な連携を支える道路の整備を推進する。

1)高規格幹線道路については、日本海国土軸に沿った地域における連携に資する道路として、近畿自動車道敦賀線の整備を推進する。中部縦貫軸に沿った地域における連携に資する道路として、中部縦貫自動車道の整備を推進する。西日本国土軸に沿った地域における連携に資する道路として、近畿自動車道名古屋大阪線の整備を推進する。伊勢湾・東海環状軸に沿った地域における連携に資する道路として、東海環状自動車道、名古屋環状2号線の整備を推進する。中部横断軸に沿った地域における連携に資する道路として、中部横断自動車道、伊豆縦貫自動車道、関越自動車道上越線の整備を推進する。東海・信越連携軸に沿った地域における連携を支える道路として、三遠南信自動車道の整備を推進する。中央横断軸に沿った地域における連携を支える道路として、東海北陸自動車道、近畿自動車道紀勢線、能越自動車道の整備を推進する。福井・滋賀・三重連携軸に沿った地域における連携を支える道路として、近畿自動車道伊勢線の整備を推進する。

高規格幹線道路を補完し、地域の自立的発展や地域間の連携の支援、空港・港湾等の広域的交流拠点や地域開発拠点等の連結に資する地域高規格道路の整備を推進する。

2)このため、名古屋高速道路の整備を推進し、上信自動車道、伊那木曽連絡道路、松本糸魚川連絡道路、富山高山連絡道路、高岡環状道路、富山外郭環状道路、富山高岡連絡道路、金沢外環状道路、金沢能登連絡道路、小松白川連絡道路、濃飛横断自動車道、岐阜南部横断ハイウェイ、高山下呂連絡道路、名岐道路、豊橋浜松道路、名古屋瀬戸道路、静岡東西道路、伊賀甲賀連絡道路、鈴鹿亀山道路、福井外環状道路、琵琶湖西縦貫道路、甲賀湖南道路、京滋バイパス、知多横断道路、西知多道路、一宮西港道路、名浜道路、名豊道路、月浦白尾IC連絡道路、能登空港インター道路、静岡南北道路、金谷御前崎連絡道路、衣浦豊田道路、伊勢志摩連絡道路、四日市インターアクセス道路、福井港丸岡インター連絡道路、びわこ空港自動車道等について、事業中の区間の整備を推進するとともに、その他区間の調査を推進する。

3) 高規格幹線道路や地域高規格道路網の整備と合わせ、これらと一体的に機能する広域的な幹線道路については、一般国道1号、8号、18号、19号、20号、21号、22号、23号、25号、27号、41号、42号、52号、138号、139号、141号、142号、150号、153号、155号、156号、157号、158号、159号、160号、161号、246号、248号、249号、258号、307号、359号、419号、477号等の一般国道の整備、及び主要地方道新湊平岡線、松任宇ノ気線、坂本高浜線、上田丸子線、岐阜環状線、浜松環状線、名古屋岡崎線、弥富名古屋線、湾岸桑名インター線、大津能登川長浜線等の整備を進める。

(3)その他

1)都市部等を中心に、道路交通の円滑化と良好な市街地形成のため、市街地整備の一体性にも配慮して、都市内の道路を始め、連続立体交差、モノレール道、駅前広場、駐車場等の総合的整備を図る。

都市内の道路については、呉羽町袋線(富山県)、小立野鈴見線(石川県)、福井縦貫線(福井県)、東豊線(長野県)、環状線(岐阜県)、静岡駅賤機線(静岡県)、広小路線(名古屋市)、衣浦岡崎線(愛知県)、富田山城線(三重県)、南大萱月輪線(滋賀県)等の整備を推進する。

連続立体交差事業については、名古屋鉄道名古屋本線、同常滑線、近畿日本鉄道名古屋線、東海旅客鉄道東海道線、同中央線、同関西線、西日本旅客鉄道北陸線、遠州鉄道鉄道線等の整備を推進する。

都市モノレール等については、東部丘陵線の整備について検討を進める。

2)道路交通の安全性の確保や交通の円滑化を推進するため、環状道路、バイパス、交通安全施設、自転車道等の整備や防災対策等を進める。

渋滞の解消・緩和に資する道路整備、自動車利用の適正化や平準化を図る交通需要マネジメント(TDM)施策を推進する。

高度道路交通システム(ITS)については、「高度道路交通システム(ITS)推進に関する全体構想」に基づき、研究開発・導入を推進する。ノンストップ自動料金収受システム(ETC)については、東名高速道路、名神高速道路等、整備効果の高い路線の料金所に導入する。道路交通情報通信システム(VICS)については、圏域内の主要なエリアで情報提供サービスを展開する。また、駐車場案内システムや公共交通情報提供システム等地域レベルでのITS導入を積極的に推進する。さらに、ドライバーの安全運転の支援に資する自動運転実用化、道路管理用の光ファイバ及びその収用空間の整備を推進し、これらの機能を統合的に備えた道路(スマートウェイ)の導入を図る。

都市における日常的な交通手段として、名古屋市、静岡市等において自転車が快適かつ安全に走行できるための自転車利用空間ネットワークの形成を推進する。

大規模自転車道については、富山朝日自転車道、手取キャニオンロード自転車道、長良川清流自転車道、静岡御前崎自転車道、武豊大府自転車道等の整備を推進する。

都市景観の向上、基盤施設の耐震性向上等のため、地域の特性に応じて共同溝・電線共同溝の整備を推進する。

沿道環境への対策として、遮音壁等の道路構造対策を進めるとともに、緩衝建築物の誘導などの沿道整備を推進する。

2 鉄軌道

(1)幹線鉄道

圏域内外の多様な連携等を支える広域的な鉄道網の整備を推進する。

このため、北陸新幹線について、政府・与党検討委員会検討結果に基づき、糸魚川・魚津間、石動・金沢間及び長野・上越間について着実に整備を進めるとともに、それ以外の区間において所要の事業を進める。また、中央新幹線について調査を進めるほか、科学技術創造立国にふさわしく、超電導磁気浮上式鉄道の実用化に向けた技術開発を推進し、21世紀の革新的高速鉄道システムの早期実現を目指す。

また、東海旅客鉄道・西日本旅客鉄道・東日本旅客鉄道東海道線、東海旅客鉄道・東日本旅客鉄道中央線、東日本旅客鉄道篠ノ井線、東海旅客鉄道・西日本旅客鉄道関西線、同高山線、東海旅客鉄道紀勢線、西日本旅客鉄道北陸線、同草津線、東日本旅客鉄道信越線等において、輸送需要に応じて線増、電化、列車運行の高頻度化、長編成化等により輸送力の増強、サービスの向上を図る。

東海旅客鉄道東海道線、同中央線、同関西線、西日本旅客鉄道北陸線において連続立体交差事業を推進する。

(2)名古屋大都市地域

名古屋大都市地域における連携や活動を支えるとともに、混雑緩和や利便性向上等のため、事業者間の連携のもと、相互直通運転や乗り継ぎ利便性の向上等を図りつつ、以下のとおり効率的な鉄軌道網の整備を進める。

名古屋市4号線、上飯田連絡線上飯田連絡線、名古屋臨海高速鉄道西名古屋港線の整備を推進するとともに、名古屋市6号線、同上飯田線、同東部線の整備について検討を進める。

中部国際空港のアクセス路線として、中部国際空港連絡鉄道中部国際空港連絡鉄道線の整備及び同路線と他の鉄道路線との乗り継ぎ利便性の向上に関する検討等を推進する。

名古屋鉄道小牧線、愛知環状鉄道愛知環状鉄道線の複線化、高蔵寺駅(愛知環状鉄道愛知環状鉄道線・東海旅客鉄道中央線)における相互直通運転化による乗り継ぎ円滑化のための施設整備を推進するとともに、東海旅客鉄道関西線、名古屋鉄道西尾線、同三河線の複線化について検討を進める。

都市モノレール等として、東部丘陵線の整備について検討を進める。

その他の路線についても、輸送需要に応じ、信号施設等の施設整備や列車運行の高頻度化、長編成化等により、輸送力の増強、サービスの向上を図る。

名古屋鉄道名古屋本線、同常滑線、近畿日本鉄道名古屋線等において連続立体交差事業を推進する。

(3)その他の地域

大都市地域をはじめとする様々な地域との連携を進めるとともに、地域における交通サービス水準の向上を図るため、西日本旅客鉄道小浜線の電化を推進する。また、その他の路線についても、輸送需要に応じ、信号施設等の施設整備や列車運行の高頻度化、長編成化等により、輸送力の増強、サービスの向上を図る。

遠州鉄道鉄道線等において連続立体交差事業を推進する。

3 港湾

 国際交流拠点としての機能強化や物流の効率化等を図るとともに、良好な環境等を形成するための整備を推進する。

 このため、国際海上コンテナターミナル、多目的国際ターミナル、複合一貫輸送に対応した内貿ターミナル等の整備を推進するとともに、緑地、廃棄物海面処分場、耐震強化岸壁等の整備を推進する。

(1)伊勢湾の港湾

 国際交流拠点としての機能強化等を図りつつ、一体的な広域港湾として機能するよう各港湾の特性に応じて整備を推進する。

  また、船舶航行の安全確保等を図るため、中山水道航路の整備を推進する。

1) 名古屋港については、中部圏を代表する国際貿易港として、国際競争力の強化等を図るため、西部地区における国際海上コンテナターミナル、多目的国際ターミナル、臨港道路等の整備を推進するとともに、海域環境の改善事業を推進する。また、内港地区における複合一貫輸送に対応した内貿ターミナル、緑地等の整備や港湾再開発を推進する。さらに、金城地区における港湾再開発を推進するとともに、内港地区と金城地区を結ぶ臨港鉄道金城ふ頭線の整備を推進する。

2) 四日市港については、国際交流拠点としての機能強化等を図るため、霞ヶ浦地区における国際海上コンテナターミナル、多目的国際ターミナル、臨港道路等の整備を推進するとともに、富双地区における緑地の整備を推進する。

3) 三河港については、自動車関連の国際的流通拠点としての機能強化や海洋性レクリエーション拠点の形成等を図るため、多目的国際ターミナル、臨港道路、マリーナ、緑地等の整備を推進する。また、周辺海域も含めて海域環境の改善事業を推進する。

4) 衣浦港については、地域の産業、物流を支える拠点としての機能強化等を図るため、多目的国際ターミナル、臨港道路、廃棄物海面処分場等の整備を推進する。

5) 津松阪港については、地域の物流を支えるための整備を推進する。

6) 鳥羽港については、観光及び海上交通の拠点として魅力的な空間を形成するため、小型旅客船ふ頭、緑地等の整備を推進する。

7) 東幡豆港については、地域の物流を支えるための整備を推進する。

8) 中部国際空港への海上アクセスのための施設について検討を進める。

(2)日本海沿岸の港湾

環日本海交流の拠点としての機能や地域の産業、物流等の拠点としての機能を強化するとともに、良好な環境の形成、観光・レクリエーション拠点の形成等を図るための整備を推進する。

1) 伏木富山港については、環日本海交流の拠点としての機能強化等を図るため、新湊地区及び伏木地区における多目的国際ターミナル、臨港道路、緑地等の整備を推進するとともに、富山地区における運河緑地等の整備を推進する。

2) 金沢港については、環日本海交流の拠点としての機能強化等を図るため、多目的国際ターミナル、廃棄物海面処分場等の整備を推進する。

3) 七尾港については、物流機能の強化や観光拠点としての機能強化等を図るため、多目的国際ターミナル、旅客船ふ頭、緑地等の整備を推進するとともに、LPG備蓄基地の整備を推進する。

4) 敦賀港については、環日本海交流の拠点としての機能強化等を図るため、多目的国際ターミナル、臨港道路、緑地等の整備を推進する。

5) 福井港については、国家石油備蓄基地としての機能や嶺北地域の産業、物流基盤としての機能の活用を図るとともに、良好な環境を形成するため、緑地等の整備を推進する。

6) 和田港については、若狭湾の恵まれた自然をいかした海洋性レクリエーション基地を形成するため、マリーナ、緑地等の整備を推進する。

7) 輪島港については、避難港としての機能の充実を図るとともに、地場産業を活用した観光拠点の形成を図るため、旅客船ふ頭、緑地等の整備を推進する。

(3)太平洋沿岸の港湾

国際交流機能や地域の産業、物流等の拠点としての機能を強化するとともに、良好な環境の形成、観光・レクリエーション拠点の形成等を図るための整備を推進する。

1) 清水港については、駿河湾における国際交流拠点としての機能強化等を図るため、新興津地区における国際海上コンテナターミナル、緑地等の整備を推進するとともに、日の出地区における港湾再開発を推進する。

2) 御前崎港については、静岡県中西部地域の物流拠点としての機能強化等を図るため、多目的国際ターミナル、複合一貫輸送に対応した内貿ターミナル、緑地等の整備を推進する。

3) 田子の浦港については、地域の産業、物流を支える拠点としての機能強化等を図るため、多目的国際ターミナル、廃棄物海面処分場等の整備を推進する。

4) 尾鷲港については、地域の産業を支えるための整備を推進する。

5) 松崎港については、観光及び地域の物流を支えるための整備を推進する。

6) 下田港については、避難港としての機能の充実を図るための整備を推進する。

(4)琵琶湖沿岸の港湾

 長浜港については、良好な環境を形成するため、海域環境の改善事業を推進する。

4 漁港

 漁業、水産物の流通加工及び生活の拠点としての漁港機能の増進を図るため、陸揚げ・流通機能の高度化、漁獲・資源・衛生管理機能、水産資源の生息環境の保全の強化等に資する整備を推進する。このため、日本海沿岸の氷見、新湊、橋立、狼煙、富来、舳倉島、小浜、越前等及び太平洋、伊勢湾沿岸の焼津、用宗、網代、稲取、福田、形原、赤羽根、波切、和具等において防波堤、岸壁、遊漁船等を分離・収容するための施設等の整備を進める。

5 空港等

 中部圏における空港等の整備については、航空による国際交流の増大と国内航空ネットワークの充実に対する要請等に対応した整備を推進する。

 中部国際空港については、中部圏における航空需要の増大に対応するため、空港島の造成、滑走路等の整備を推進する。

  静岡空港及び能登空港については、国内航空ネットワークの充実を図るため、整備を推進する。

 富山空港については、需要動向に対応しつつ、必要に応じターミナル地域拡充整備を図る。

 福井空港のジェット化整備及びびわこ空港の整備については、計画、地元条件等が整ったものについて必要に応じその整備を図る。

 また、機動性の高い交通手段であり、かつ災害時の緊急輸送手段としても有用なヘリコプターの役割を踏まえ、岐阜地域におけるヘリポートの整備等について検討を進める。

6 自動車ターミナル

 トラック等による広域的な都市間の輸送効率を向上させるとともに、あわせて都市内における物流の効率化や中心市街地の活性化を推進するため、集配拠点として機能するターミナル施設等の整備についての検討を進める。

7 情報通信施設

情報通信の国際・国内、遠近を問わず個人間を直結にする機能をいかし、外国や圏域内外との連携・交流の促進を図る。誰もがどこでも活用可能なようにハード面、ソフト面、人材面の全ての分野で総合的に情報通信体系の整備を進める。これらの整備に当たっては、民間主導で行うことを基本として、公的部門は情報化を推進するための制度的枠組みの整備、民間投資への支援等環境整備を推進する。

(1)  民間主導原則の下で、光ファイバ網等の整備、より高速、高品質な移動通信システムの導入と普及等を進め、高速、大容量の通信が可能なネットワークインフラの整備を推進し、それらの利活用を図る。特に、研究開発用ギガビットネットワークについては、接続装置設置場所の活用等を推進する。また、地域において、高度な情報通信の利活用環境を整え、各地域がこれにより個性的な地域づくりを進めるため、いしかわマルチメディアスーパーハイウェイ構想、岐阜情報スーパーハイウェイ構想、しずおか情報ネットワーク等県内各地域を結ぶ先導的な情報通信ネットワークの整備を推進する。施設整備に当たっては、道路、河川空間等公共空間の一層の活用及び下水道等公的施設管理用等の光ファイバ網の民間事業者による活用のための環境整備を推進する。

(2)  情報通信の活用や、これを通じて一層の技術開発を図るために、ソフトピアジャパン等研究開発拠点において、高度な情報通信機能の整備、情報通信関連産業や研究機関等の集積の促進、専門技術者を育成する教育施設の整備を推進する。また、生活における多様な社会的サービスや産業活動の高度化を目指すため、公共施設の予約等双方向性をいかした行政サービスや、遠隔医療、福祉、商取引等の各種の分野において情報通信を活用したシステム整備を推進する。また、圏域住民の情報リテラシー(情報活用能力)の向上を図るため、学校におけるインターネット等マルチメディアを活用した情報に関する教育を推進する。

(3)  放送については、中山間地域における情報化や、地域の生活・文化面での利便性向上、コミュニティの活動に資するCATVの普及・充実や、異なるCATV間の接続を推進するとともに、全放送メディアのデジタル化を積極的に推進する。特に、地上放送については、早期にデジタル放送を開始できるよう所要の取組を推進する。

(4)  地震時等の安全性、信頼性の向上を図るため、拠点施設の耐震化を図るとともに、有線系施設の地中化等の推進による耐震性確保を図る。また、各通信系の連携や通信手段のバックアップ機能整備により、リダンダンシーを確保する。

(5)  地域の情報発信力を強化するとともに、各地域の特性に応じた情報の産業、文化利用を図るため、デジタルコンテンツの制作や流通に関する情報提供や共同利用施設の充実等を推進する。

(6)  郵便については、送達の迅速化等多様なニーズに対応して、郵便物処理及び輸送の効率化、局舎の改善等を図る。

8 住宅、住宅用地及び市街地

(1)  居住ニーズの多様化への対応、低・未利用地の有効活用、防災性の向上等に配慮しつつ、良質な住宅及び住宅用地の供給を推進するとともに、必要な都市機能の充実を図るために良好な市街地の整備を推進することが必要である。このため、地域の実情に応じ、市街地開発事業や住宅建設事業等によって、整備を進める。

(2)  既成市街地においては、金沢駅武蔵、上田駅お城口、大曽根駅前、瀬戸記念橋周辺等における市街地再開発事業、福井駅周辺、松本中央西、浜松東、大曽根、太田川駅周辺等における土地区画整理事業、八田・高畑等における住宅市街地の総合的な整備、公営住宅建設事業、住宅地区改良事業や大曽根北等における密集住宅市街地の整備等を推進し、良好な市街地の形成と住宅の供給を進める。

  都市再開発の実施に当たっては、国公有地、鉄道施設跡地、工場、倉庫等の移転跡地等の活用を図る。

(3)  新市街地においては、金沢西部、森田北東部、志段味等における土地区画整理事業等を推進し、良好な市街地の整備を進めるとともに、多様化するニーズに応える住宅の供給を進める。瀬戸市南東部において、環境共生型の地域整備を図る。

9 工場用地

(1)  工場用地については、地域産業を振興し地域の活性化を図るための産業拠点として計画的な整備を推進する。工場用地の整備に当たっては、高速交通体系へのアクセスの容易性や高度研究施設の近接性等ハード面に加え、事業活動を支援する産業支援機関との連携、さらには快適な都市的環境や美しい景観の存在等ソフト面に配慮しつつ、計画的に行う。 

(2)  小矢部フロンティアパーク、金沢テクノパーク、関テクノハイランド、浜北新都市産業用地、岡崎東部地区工業用地、ニューファクトリーひさい工業団地、近江水口第2テクノパーク等の工場用地の整備を推進する。

10 水資源の開発及び利用

中部圏では、生活様式の変化等により水需要が増大しているとともに、ひとたび渇水が起きた場合の社会的影響が増大しているため、各河川の流域圏において、社会経済状態の変化等を踏まえた事業評価を行いつつ、水源地対策、環境保全に対し十分に配慮した水資源開発及び渇水対策事業を計画的に推進する。

水資源開発基本計画に基づき木曽川水系において徳山ダム、愛知用水二期、木曽川用水施設緊急改築(以上木曽川)、豊川水系において設楽ダム、豊川総合用水、豊川用水二期(以上豊川)、淀川水系において川上ダム、大戸川ダム、丹生ダム、愛知川(以上淀川)の建設等を推進する。さらに、浅川ダム、小仁熊ダム、角間ダム(以上信濃川)、宇奈月ダム(黒部川)、丹生川ダム、大島ダム(以上神通川)、利賀ダム(庄川)、長島ダム(大井川)、三峰川総合開発、下諏訪ダム(以上天竜川)、木曽川導水(庄内川、木曽川)、横山ダム再開発(木曽川)、新愛知川(淀川)、九頭竜川鳴鹿大堰、足羽川ダム、浄土寺川ダム、日野川総合開発(以上九頭竜川)、河内川ダム(北川)、九谷ダム(大聖寺川)、北河内ダム(町野川)、太田川ダム(太田川)、伊勢路川ダム(伊勢路川)等の多目的ダムの建設等を推進する。 

11 河川

 各河川の流域及び関連する水利用地域や氾濫原を一体とした流域圏において、水害等の防止、健全な水循環の確保、環境の整備と保全を図るため、以下の事業等を計画的に推進する。

(1)  黒部川、常願寺川、神通川、庄川、小矢部川、手取川、梯川、九頭竜川、北川、信濃川、天竜川、木曽川、富士川、狩野川、安倍川、大井川、菊川、豊川、矢作川、庄内川、鈴鹿川、雲出川、櫛田川、宮川、淀川、新宮川の大河川においては、流域の特性に応じて、概ね100年から200年に1度発生する規模の降雨に対する治水施設整備を計画目標に置き、当面の河川整備計画の目標を定め、流域内の洪水調整施設の建設や、堤防、護岸の整備等を推進する。また、流域全体を考慮した土砂移動等の実態を把握するとともに、必要な対策を推進する。

また、いたち川、安原川、浅水川、浅川、長良川、都田川、日光川、三滝川、日野川等の中小河川においては、流域の特性に応じ、概ね30年から100 年に1度発生する規模の降雨に対する整備を計画目標に置き、当面の河川整備計画の目標を定め、流域内の洪水調整施設の建設や、堤防、護岸の整備等を推進する。

(2)  流域の都市化の著しい境川(岐阜県)、巴川(静岡県)、新川、境川(以上愛知県)等の河川においては、河川改修を推進しつつ、流域の土地利用計画等との有機的な連携、調整の下に、森林、水田等の保全、貯留、浸透施設の設置等により、保水・遊水機能の維持・確保を図る等総合的な治水対策を推進する。

(3)  愛知県西部地区、桑名地区、諏訪地区の河川においては、排水機場の設置等の地盤沈下対策を、駿河湾地区の河川については、耐震護岸の築造等の地震対策を、伊勢湾地区の河川については、防潮水門、高潮堤防の設置等の高潮対策を推進する。

(4)  各河川の河川整備計画に従い、宇奈月ダム、九谷ダム、足羽川ダム、三峰川総合開発、徳山ダム、長島ダム、設楽ダム、川上ダム、丹生ダム等の多目的ダム等の建設及び姉川ダム等の治水ダムの建設を推進する。

(5)  河川環境の整備と保全を図るため、黒部川、常願寺川、神通川、庄川、小矢部川、手取川、信濃川、天竜川、木曽川、富士川、狩野川、大井川、菊川、豊川、矢作川、庄内川、雲出川、宮川、淀川、新宮川、河北潟放水路、三方湖、諏訪湖、水門川、佐鳴湖、油ヶ淵、琵琶湖等において、河川浄化、河道整備等を推進する。

12 海岸保全施設

 津波、高潮等による被害からの防護、海岸環境の整備と保全及び適正な利用の調和した海岸事業を推進する。

下新川海岸、石川海岸等日本海に面する海岸において、離岸堤、人工リーフ等の整備による侵食対策を中心に海岸保全施設の整備を推進する。伊勢湾西南海岸、津松阪港海岸、富士海岸、駿河海岸等太平洋岸の海岸については、海岸堤防等の整備による津波対策、高潮対策及び緩傾斜護岸等の整備による侵食対策を中心に海岸保全施設の整備を推進する。これらの整備に当たっては、砂浜による消波機能等をいかした面的な防護を推進する。

熱海港海岸、雨晴海岸、用宗漁港海岸、伊良湖海岸等において、海岸環境の整備と保全及び適正な利用を図るため、養浜、緩傾斜護岸、人工リーフ、緑地等の整備を推進する。

13 砂防設備

ぜい弱な山地を中心に、土砂災害の未然防止を図り、地域の安全性を高めるため、砂防事業を推進する。さらに、流域圏全体を考慮した総合的な土砂管理を推進する。

常願寺川、黒部川、手取川、九頭竜川、信濃川、姫川、天竜川、木曽川、富士川、神通川、庄内川、越美山系、安倍川、狩野川、富士山、淀川等の荒廃地域において、環境の保全に配慮しつつ、砂防ダム、床固工群等による流出土砂抑制・調節、山腹工による土砂生産抑制等の砂防事業を推進する。

14 地すべり防止施設等

地すべり災害の未然防止を図るため、甚之助谷地区、入谷地区、此田地区、長野西部地区、由比地区等において、アンカー工、排水工等の地すべり対策等事業を推進する。また、がけ崩れ及び雪崩災害の未然防止を図るため、急傾斜地崩壊対策等事業を推進する。

15 保安施設

 荒廃地、荒廃危険地等の整備を実施するとともに、災害時の警戒避難態勢強化のための山地災害予知施設の設置を推進する。加えて、山地災害のおそれのある地域やダム上流等の水資源確保上重要な地域において、森林の防災機能の強化や水源かん養機能の高度発揮を図るための植栽、本数調整伐等の森林整備等を実施する。

 このため、常願寺川、手取川、天竜川、木曽川、大井川、淀川等の各流域の特性に応じて、山地治山、保安林整備、水源地域整備、環境保全保安林整備等の治山事業を推進する。

16 都市公園

(1)  都市公園等は、都市の緑の中核として、活力ある長寿・福祉社会の形成、都市のうるおい創出、都市の防災構造の強化に資するとともに、自然とのふれあい、コミュニティの形成、広域レクリエーション活動等国民の多様なニーズに対応する国民生活に密着した都市の根幹的施設であり、緑の基本計画等に基づき、計画的整備を進める。

(2)  国営公園については、一の県の範囲を超えるような広域の見地から設置する公園として、国営木曽三川公園、国営アルプスあづみの公園の整備を進める。

(3)  広域的なレクリエーション需要の増大及び多様化に対処し、災害時における広域防災拠点となる等の機能を有する大規模公園(広域公園、レクリエーション都市)の整備を進める。このうち、広域公園として、白山ろくテーマパーク、能登歴史公園(以上石川県)、南信州広域公園(長野県)、平成記念緑のふれあい広場、花フェスタ記念公園(以上岐阜県)、小笠山総合運動公園(静岡県)、大高緑地、小幡緑地、牧野ヶ池緑地、尾張広域緑道、東三河ふるさと公園、岡崎総合公園(以上愛知県)、北勢中央公園(三重県)、湖岸緑地(滋賀県)等、また、レクリエーション都市として、熊野灘レクリエーション都市(三重県)の整備を進める。

(4)  歩いていける範囲の公園ネットワークを構成し、災害時の一次避難地となる等の機能を有する住区基幹公園(街区公園、近隣公園、地区公園)及び都市住民全般の休息、鑑賞、散歩、遊戯、運動等の利用に供し、災害時の広域避難地となる等の機能を有する都市基幹公園(総合公園、運動公園)の整備を推進する。このうち、総合公園として、富山県富岩運河環水公園、金沢城址公園(石川県)、丹南地域総合公園(仮称)(福井県)、戸田川緑地(愛知県)、大仏山公園(三重県)、春日山公園、びわこ文化公園(以上滋賀県)、また、運動公園として、富山県総合運動公園等の整備を進める。

(5)   地域の特性に応じて、特殊公園(風致公園、動植物公園、歴史公園、墓園)や大気汚染、騒音等の公害の防止及び石油コンビナート地帯等における災害の防止等を図る緩衝緑地、都市の自然環境の保全及び都市景観の向上等を図る都市緑地、動植物の生息地等の保護を目的とし、都市の良好な自然的環境の形成を図る都市林、市街地における良好な居住環境の確保、災害時における避難路の確保等を図る緑道、商業・業務系の地域において都市景観の向上、周辺施設利用者の休息等の利用に供する広場公園の整備を進める。

17 水道

需要の増大への対処、安全な水質の確保、渇水対策、災害対策のため、以下の事業を推進する。

富山県西部水道、石川県水道、福井県日野川地区水道、長野県湖北行政事務組合水道、岐阜県可茂上水道、静岡県大井川広域水道、愛知県水道、三重県北中勢水道、滋賀県南部上水道等の水道用水供給事業及び水道事業等の整備を推進する。

18 下水道

生活環境の改善、公共用水域の水質保全のため、普及の遅れている中小市町村の下水道整備、閉鎖性水域等における高度処理を推進するとともに、安全で安心できるまちづくりのため、総合的な下水道雨水対策施設の整備を推進する。また、下水処理水・下水汚泥や施設の上部空間等、下水道資源・施設の有効利用を推進するとともに、地震対策、再構築等の下水道施設の高度化を推進する。

このため、圏内の小矢部川、加賀沿岸、九頭竜川、千曲川、木曽川右岸、西遠、矢作川・境川、北勢沿岸、琵琶湖等の流域下水道、及び圏内各市町村等の公共下水道、特定環境保全公共下水道等の整備を推進する。

19 廃棄物処理施設

 多量の廃棄物等の発生に対処し、循環型の社会を構築するため、地域の生活環境へ配慮しつつ、以下の処理施設等の整備を推進する。

 一般廃棄物のうち、ごみ処理については焼却施設等を、ダイオキシン類排出抑制、熱エネルギー利用等を推進しつつ整備するとともに、最終処分場の確保を推進する。し尿処理については、下水道整備との調整を図りつつ、処理施設の整備を推進する。浄化槽の維持管理についても一層の適正化を図る。さらに、下水道の整備が当面困難な地域において、合併処理浄化槽等の整備を推進する。

産業廃棄物については、その再生利用等の促進により、最終処分対象量の減少を図り、公的関与を含めた適正な処理体制の整備を図る。建設系廃棄物については、計画・設計段階から施行段階までの各段階において、発生抑制、再生利用、適正処理を推進するとともに、減量化、リサイクルを行う拠点施設の整備について検討する。

建設残土の円滑かつ適正な処理を図るため、発生量の削減、再利用及び有効利用の促進、処理場の確保等総合的、かつ、合理的な対策について検討する。

20 病院

 住民の健康保持・増進から疾病予防、治療、リハビリテーションまでの包括的、継続的なサービスの供給体制の整備を進める。

人口の高齢化、疾病構造の変化等による医療ニーズの多様化、医療技術の高度化等に対応し、地域間格差の是正に配慮しつつ、保健・医療施設の整備・充実を図るため、南砺中央病院(富山県)、福井県総合医療センター(仮称)、静岡県がんセンター(仮称)、愛知県小児保健医療総合センター(仮称)、名古屋市立大学病院等の整備を推進する。

21 公害の防止

大気汚染、水質汚濁、騒音、土壌汚染、地盤沈下等の公害を防止し、住民の健康の保護及び生活環境の保全を図るため、ばい煙処理施設、排水処理施設等の維持管理の適正化を図るとともに、緩衝緑地、監視測定体制、下水道及び廃棄物処理施設の整備、また地下水の代替水の確保等を推進する。

これらの施設整備とあいまって、排出・排水規制や濃尾平野における地下水取水の規制等の各種規制の実施、監視取締りの強化等により、適切な公害防止対策の推進を図る。

22 大学等高等教育機関

大学については、教育研究の質の高度化等を図るため、金沢大学の総合移転、滋賀県立大学等についての整備を推進する。また、大学院については、卓越した学術研究の拠点の形成や高度専門職業人等の養成を図るため、新増設や研究科の増設等を進める。

23 教育・文化施設

 生涯学習時代における人々の学習活動の拠点、美術作品や音楽、演劇等の鑑賞機会及び文化活動の成果の発表の場等を充実させ、地域における教育的及び文化的環境の向上を図るため、石川コンサートホール・邦楽会館(仮称)、福井県立図書館・公文書館(仮称)、飛騨・世界生活文化センター、静岡県立総合武道館(仮称)等を始めとして、地域の自然、歴史、風土等を背景とした特色ある教育・文化施設の整備を図る。

24 職業訓練施設

 産業構造の変化、技術革新の進展、高度情報化、国際化、労働力人口の高齢化・高学歴化等に伴う労働市場の需給変化に対応し、地域の産業特性等に対応した訓練内容の充実、労働者の生涯を通じた職業能力の開発、民間支援機能の充実等、職業能力開発体制の整備・充実を図るため、福井県立敦賀産業技術専門学院、愛知県立東三河高等技術専門校等の整備を推進する。

25 自然公園等

(1)  自然とのふれあいを求めるニーズの高まりと多様化に適切に対応し、自然公園がもつ機能を多元的に発揮させるため、すぐれた自然環境の保全の強化を図るとともに、野外レクリエーションの場の確保を図る。

このため、白山、中部山岳、上信越高原、南アルプス、富士箱根伊豆、伊勢志摩の各国立公園、能登半島、越前加賀海岸、若狭湾、妙義荒船佐久高原、八ヶ岳中信高原、天竜奥三河、飛騨木曽川、揖斐関ヶ原養老、愛知高原、三河湾、鈴鹿、室生赤目青山及び琵琶湖の各国定公園及び各県立自然公園において、それぞれの特性を踏まえた保全と利用の方策を計画的に実施する。

(2)  また、国民が自らの足で自然や史跡等を訪ねることにより、健全な心身を育成し自然保護に対する理解を深めることを目的とし、近畿自然歩道(三重県ほか)を長距離自然歩道として整備を進める。

26 観光・レクリエーション施設

国民の多様なレクリェーションに関する需要に対応するため、中部圏の自然・文化・伝統工芸等地域の特徴をいかしながらキャンプ場、スキー場、マリーナ等のレクリェーション施設の整備を推進する。

また、中部圏の豊かで良好な自然環境の中で滞在しながらレクリェーション等を楽しむことができるよう民間活力の活用に重点を置きつつ、総合保養地域の整備を自然環境の保全等に配慮しながら着実に推進する。

さらに、国際観光の振興のため、案内施設や宿泊施設等の充実により広域的な観光ルートの整備を図る。

27 文化財保存のための施設

石動山、一乗谷朝倉氏遺跡、斎宮跡、安土城跡等の史跡の復元や史跡公園等としての整備を図る他、興国寺城跡等の史跡の土地の公有化を図る。また、勝興寺等の歴史的建造物等の修理を図るとともに、上中町熊川宿、南木曽町妻籠宿、五個荘町金堂等の伝統的建造物群について修理、修景等を図る。

さらに、歴史文化教育の場や集客交流の推進に資するため、清洲貝殻山貝塚資料館等の歴史博物館等の整備を図る。

28 中央卸売市場

 生鮮食料品等の流通の合理化を図るため、中央卸売市場の計画的な整備を進める。大都市の老朽過密化市場については、道路等関連公共施設の整備、周辺土地利用との調整等に配慮しつつ、再整備を推進する。その他の既設市場については、取扱品目の適正化及び施設の改善を進める。

29 かんがい排水施設及び農用地

農業を取り巻く状況の変化に対応し、効率的かつ安定的な農業経営を実現するため、農業用水の確保と適切な供給、適期に必要な排水が可能な水利条件の確保及び農地防災等に資するかんがい排水施設や、農業経営の規模拡大、生産性の向上、農地の再編成を通じて、農山村地域の活性化に資する農用地再編開発等の農業生産基盤の整備を、地域の特性に応じて、環境との調和に配慮しつつ総合的、効率的に推進する。

(1)かんがい排水施設

日野川用水、九頭竜川下流、安曇野、大井川用水、新矢作川用水、宮川用水第二期、新愛知川、新湖北、愛知用水二期、木曽川用水施設緊急改築、豊川総合用水、豊川用水二期等の地区において整備を推進する。また、農地防災にも資するため、射水郷、加賀三湖周辺、邑知地溝帯、常願寺川沿岸、新濃尾、野洲川沿岸の地区において国営総合農地防災事業を推進する。

(2)農用地開発

 養老地区において国営農地再編事業、また、飛騨東部第一地区において国営農地開発事業を推進する。

30 社会福祉施設

高齢化の進展、福祉ニーズの多様化に対応するため、特別養護老人ホーム、老人保健施設等在宅では十分介護できない老人のための施設の整備、デイサービスセンター、老人訪問看護ステーション等の在宅介護支援施設の整備、障害者福祉施設や児童福祉施設等の各種社会福祉施設の整備を推進する。

31 駐車場

 道路交通の安全と円滑化を図り、中心市街地の活性化に寄与するため、路上駐車の著しい中心市街地の商業業務地区等を中心に駐車場を整備する。

 このため、片原町駐車場、高岡中央駐車場、静岡駅前地下駐車場、大曽根駅前地下駐車場等の整備を推進する。

32 工業用水道

(1)  工業用水については、需要者における回収利用等合理的な利用を促進しつつ、工業開発等に伴う新たな需要への対応、地盤沈下防止のための地下水利用から工業用水への転換等を踏まえ、安定的な供給を確保するため、水資源開発を推進するとともに、計画的に工業用水道の整備を行う。

(2)  愛知(第4期)、尾張(第1期)、中伊勢等の工業用水道の整備を推進する。

33 流通業務施設

 国内外の広域的かつ効率的な流通、物流ネットワークの形成を図るとともに、都市における道路交通の円滑化、都市機能の維持および増進等に寄与するため、空港、港湾等の国際的な交通施設、高規格幹線道路のインターチェンジ付近等において、流通、物流施設及び関連する業務施設等の計画的な配置による流通、物流等の拠点機能としての整備についての検討を進める。

34 林道

 森林の適正な維持管理、林業生産性の向上及び山村地域の活性化等を図るため、林道整備等を推進する。このため、大山・福光線、高山・大山線、朝日・大山線、八幡・高山線、関ヶ原・八幡線、高成線、安谷線、奥越線、白馬小谷東山線、尾城山線、八高山線、豊富線、国見能見坂線、落合柏原線等の整備を推進する。


第2章 区域の指定

都市整備区域及び都市開発区域は、中部圏における将来の都市配置形態を考慮し、地域の中核都市を中心に開発整備を必要とする区域として、また、保全区域は、開発によって優れた自然資源、文化財等が損なわれないよう保全に努めるとともにその利用のために計画的な開発整備を必要とする区域として、将来の人口及び産業の配置、これら区域相互の関連並びに首都圏及び近畿圏との結び付きを配慮して指定するものとする。

なお、区域の指定に当たっては、農林漁業等への波及効果を大ならしめるよう配慮するものとする。

第1節 都市整備区域

産業開発の程度が高く、更に予想される経済発展の進展に応じ、都市の機能が十分に発揮されるよう計画的に基盤整備する必要がある地域のうち、次の各号に該当するものを都市整備区域として指定するものとする。

1 自然的、経済的、社会的に密接な関連を有する一帯の広域的な地域であること。

2 既に相当程度の人口の集積がある地域であること。

3 既に相当程度の第二次産業又は第三次産業の集積があり、これらの産業の比重が高い地域であること。

4 人口及び産業の集中に伴う市街化が著しい地域であること。

第2節 都市開発区域

都市整備区域外の地域であって、中部圏の均衡ある発展を図るため工業等の産業都市その他当該地域の中心的な都市として開発する必要のあるもののうち、次の各号に該当するものを都市開発区域として指定するものとする。

1 自然的、経済的、社会的に密接な関連を有し、一体的な発展が見込まれる地域であること。

2 相当程度の人口増加の可能性があり、当該地域の周辺地域の開発の拠点となる地域であること。

3 第二次産業又は第三次産業の優れた立地条件を有し、工業等の生産機能、流通文化等の都市機能を備えた都市の形成が可能な地域であること。

4 幹線交通施設が整備されている地域又はその可能性がある地域であること。

第3節 保全区域

次の各号のいずれかに該当する地域を保全区域として指定するものとする。

1 優れた自然景観を有し、観光及びレクリエーションに供するために観光資源等を計画的に保全し、又は開発する必要があると認められる相当規模の広さの地域であること。

2 都市整備区域内又はその周辺であって、市街地の無秩序な拡大の防止、生活環境の保全又は住民のレクリエーションのために、相当規模の広さの近郊緑地を確保する必要があると認められる地域であること。

3 特に重要な文化財である建造物、史跡、埋蔵物等をそれらを取り巻く自然環境と一体として保全する必要があると認められる地域であること。

 

【脚注】

※ 本計画に記載されている脚注については、用語解説として挿入したものであり、計画内容には含まれておりません。



[1] 中部圏開発整備地方協議会:中部圏開発整備法第8条第1項の規定により、富山県、石川県、福井県、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県、及び滋賀県が設置。中部圏開発整備地方協議会は中部圏の開発及び整備に関する重要事項を調査審議する。

[2] NPO(Non Profit Organization):民間非営利団体。営利を目的とせずに様々な活動を自主的・自発的に行う団体・組織。

[3]環境影響評価: 開発事業による環境悪化を未然に防止する観点から、開発事業の実施に先だって、予め、その事業がもたらす環境への影響について調査・予測又は評価を行い、その結果に基づき、環境保全措置を講じようとするもの。

[4] グローバルゲート:世界各国と多方面多頻度の航路で結ばれた国際的な規模と機能を有した国際空港、国際港湾。

[5] ファインセラミックス:無機非金属材料から精製された人工原料を用いて、誘電性や強度等の特定の機能を最大限に引き出すよう加工されたもので、IC基盤や人工骨等に用いられる。

[6] 我が国の人口は、1995年は1億2,557万人(国勢調査)であるが、国立社会保障・人口問題研究所の中位推計によると、人口は今後も緩やかに増加し、2007年に1億2,778万人に達した後、減少すると推計している。

[7] 東京圏:東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県

[8] 就業者数:就業者(賃金、給料、内職収入など収入になる仕事を少しでもした人)を常住地による地域区分で計った人数。

[9] 大深度地下:土地所有者によって通常使用されることのない深い地下(少なくとも地下40m以深)のこと。

[10] テクノポリス構想:産・学・住が有機的に結合され、地域の豊かな伝統と美しい自然に近代工業文明が調和的に融和した技術と文化に根ざす新しい都市づくりの構想をいう。当構想を規定する高度技術工業集積地域開発促進法(テクノポリス法)に基づき、中部圏においては、富山テクノポリス、浅間テクノポリス、浜松テクノポリスの3つが承認されている。(現在、高度技術工業集積地域開発促進法は、新事業創出促進法の中に発展的に移行されている。)

[11] 頭脳立地構想:近年の経済の高度化・ソフト化によるソフトウェア業等の産業の「頭脳部分」を地方圏において集積させることにより地域産業の高度化を図る構想をいう。当構想を規定する地域産業の高度化に寄与する特定事業の集積の促進に関する法律(頭脳立地法)に基づき、中部圏においては、富山、石川、岐阜、浜松の4地域が承認されている。(現在、地域産業の高度化に寄与する特定事業の集積の促進に関する法律は、新事業創出促進法の中に発展的に移行されている。)

[12] 技術移転機関(TLO):大学等の研究成果の特許化とその企業化を図る技術移転を促進するための機関であり、技術移転を通じ大学等と産業界を結びつける役割を果たす。(大学等技術移転促進法 平成10年8月1日施行)

[13] 新エネルギー:自然エネルギー等の再生可能エネルギー、リサイクル型のエネルギー等。例えば、太陽光発電、廃棄物発電、風力発電、波力エネルギー等。

[14]リエゾン機能: 新規産業の創出や既存産業の新規分野への事業展開の促進するため、大学等が有する高度な技術や研究成果を民間事業者などへ移転する機能のこと。

[15] 原生自然環境保全地域:人の手が加わっておらず、原生の状態が保たれている自然環境の保全を図るため、自然環境保全法に基づき指定された地域。平成12年度末現在で、遠音別岳、十勝川源流部、大井川源流部、南硫黄島及び屋久島の5地域が指定されている。

[16] 生態系ネットワーク:生態系のバランスや安定性の維持・向上という観点から、国土に系統的に配置された野生生物の生息・生育空間全体を指す。孤立した形で残る自然性の高い森林についてその連続性を確保すること、異なる地域に位置する湿地を連携して一体的に保全すること、などにより形成される。

[17] ビオトープ:特定の生物群集が生存できるような、特定の環境条件を備えた均質なある限られた生物生息空間のこと。具体的には池沼、湿地、草地、里山林等さまざまなタイプのビオトープがある。

[18] 複層林施業:複層林(年齢や樹種の異なる樹木で構成された森林)を人為により造成するため、森林を構成する樹木を部分的に伐採し、その後に更新を図ること。

[19] 長伐期施業:通常の伐期齢(例えばスギの場合40年程度)の概ね2倍に相当する林齢で伐採を行う施業のこと。

[20] 水と緑のネットワーク:都市化の進展等に伴い健全な水循環が損なわれている都市近郊地域において、既存の河川、都市下水路等のネットワーク化を図り流水を相互に融通するとともに、隣接する都市公園とも一体的な整備を行うことにより、都市内河川・水路の水質浄化、流況改善、良好な緑地環境の創出を図る。

[21] 市民緑地制度:良好な都市環境を確保するため、地方公共団体等が、都市計画区域内における緑地の所有者と市民緑地契約を締結して、当該土地に住民の利用に供する緑地(市民緑地)を設置し、これを管理することができる制度。

[22] 健全な水循環系:流域を中心とした一連の水の流れの過程において、人間社会の営みと環境の保全に果たす水の機能が、適切なバランスの下に、ともに確保されている状態。

[23] 流域圏:流域圏は、その圏域の対象とする範囲が「流域および関連する水利用地域や氾濫原」で示される地域において、水質保全、治山・治水対策、土砂管理や、森林、農用地等の管理などの、地域が共有する問題について、地域が共同して取り組む際の枠組みとして形成される圏域。「21世紀の国土のグランドデザイン」(平成10年3月)で提示された概念。

[24] 非特定汚染源対策:特定の汚染源から排出される工場排水や生活排水と異なり、面としての広がりを持つ市街地、土地造成現場、農地などから、降雨等により流出する汚濁に対する対策のこと。

[25] ヒートアイランド化:自然の気候とは異なった都市独特の局地気候で、郊外に比べ都心部ほど気温が高く、等温線が島のような形になるのでこの名がついた。都市での高密度のエネルギー消費により大量の熱エネルギーを放出すること、都市の地面の大部分がコンクリートやアスファルト等に覆われているため水分蒸発による温度の低下がなく、日中蓄えた日射熱を夜間に放出するため夜間気温が下がらなくなることなどによる。

[26] 交通需要マネジメント(TDM):道路交通混雑の解消・緩和を図ることを目的に、自動車を含む各種交通機関の輸送効率の向上や交通量の時間的平準化など需要の調整を図る施策の総称。パーク・アンド・ライド、自動車の相乗りの促進、時差出勤、フレックスタイムの導入促進などもその例。

[27] 高度道路交通システム(ITS):最先端の情報通信技術等を用いて人と道路と車両とを一体のシステムとして構築することにより、ナビゲーションシステムの高度化、有料道路等の自動料金収受システムの確立、安全運転の支援、交通管理の最適化、道路管理の効率化等を図るもの。安全、快適で効率的な移動に必要な情報を迅速、正確かつわかりやすく利用者に提供するとともに、情報、制御技術の活用による運転操作の自動化等を可能とするシステム。

[28] 共同集配システム:個別に行われていた物資の集配を共同集配センターで行い、また、共同集配用のトラックが各店舗等を回ることにより、貨物車の積載効率を高め、効率化を図るシステム。

[29] 複合一貫輸送:トラックの持つ戸口までの機能と鉄道、海運の大量性、低廉性という特性を組み合わせ、ドア・ツー・ドアでの輸送を完結するもので、輸送の効率化、低廉化を図る一貫輸送方式。

[30] 農地の流動化:農地の流動化は、経営規模を拡大する農業者に農地に関する権利を移すことであり、農地の流動化のねらいは規模拡大と同時に、農地の有効利用にある。また、各農家が利用する農地が分散している場合、農業委員会などが農地の権利調整を行って各農家の農地を集団化して所有・利用できるようにすること。我が国の農家の所有耕地面積は狭小で、しかも農地が多数の箇所に分散している場合が多い。分散している農地の集団化を図る有効な手法として、ほ場整備等に伴う換地処分及び交換分合がある。

[31] 森林の流域管理システム:流域を単位として、その流域内の市町村、林業、木材産業等の様々な関係者による合意の下で、木材の生産から加工、流通にわたる川上から川下の連携を進め、民有林と国有林とが一体となった森林整備と林業、木材産業の活性化を総合的に展開。

[32] つくり育てる漁業:資源の維持培養や漁業生産の安定を図るため、増養殖場の造成・魚礁の設置等「海の畑づくり」である沿岸漁場の整備開発事業、魚介類の種苗生産・放流等「海の種づくり」である栽培漁業、さけ・ますふ化放流事業といった増殖事業、一定の区画の中で企業的に魚介類を養成する養殖業等を取り込んだ新しい漁業のあり方をいう。

[33] パブリックアクセス:人々が海辺へたどりつくための道路等の手段と、たどりついてからそこで憩い、遊ぶことができるような海辺環境を包括した概念。

[34] 国際海上コンテナターミナル:国際的な規模、機能を有する海上コンテナ輸送のための港湾施設。大型岸壁、コンテナクレーン、コンテナヤードなどで構成される。

[35] 耐震強化岸壁:大規模な地震にも本来機能を失わずに活用できるよう、特別に設計・建設された岸壁。

[36] 地区計画:良好な環境の市街地を整備し又保全するため、地区の特性に応じて建築物や身近な道路、公園等に関する計画を定め、建築行為や開発行為をきめ細かくコントロールする制度。

[37] 建築協定:住みよい環境づくりや個性あるまちづくりを行うために、土地や建物の所有者が敷地や建築物に関する基準についての協定を締結して、お互いが守り合うことを約束する制度。

[38] グリーン・ツーリズム:緑豊かな農山漁村地域において、その自然、文化、人々との交流を楽しむ滞在型の余暇活動のことで、具体的には、都市住民等が農山漁村の民宿などに滞在し、森林や河川等の自然を舞台にしたレクリエーションやスポーツ、農林漁業体験、農山漁村の生活体験、伝統芸能や伝統工芸の体験等を楽しむ旅行をいう。

[39] ブルー・ツーリズム:漁村における豊かな自然環境、漁村生活、漁村文化等のストックを生かし、漁業活動や漁村の生活と調和した余暇活動のこと。近年、漁村や海辺で憩い滞在することやスポーツ活動を行うこと等の海洋性レクリエーションに対する国民の志向も高まっており、漁村地域の活性化の新たな展開として期待されている。

[40] マルチハビテーション:都市部において常時居住する住宅に加え、週末利用のために郊外に住宅を取得したり、郊外に常時居住の住居を持っている人が、職住近接の住宅を都心部に持つこと。一世帯で複数地域に住居を持ち、曜日、季節等によって居住場所が変化する居住形態。

[41] SOHO(Small Office  Home Office):小規模オフィスや自宅オフィスでの勤務形態。個人起業家や自営業者が小規模オフィス等でビジネスに取り組むことを称する場合が多い。

[42] テレワーク:情報通信を活用した遠隔勤務。情報通信で仕事の成果、連絡等をやりとりすることにより、場所にとらわれず仕事を行えるような勤務形態。

[43] 市民農園:一般には、都市の住民等農業者以外の人々が農地を利用して農作業を行うことを通して、レクリエーションや児童の教育等の多彩な目的に利用される農園。 市民農園整備促進法では、特定農地貸付けの用に供される農地又は、相当数の者を対象として定型的な条件で、営利以外の目的で継続して行われる農作業の用に供される農地とそれらに付帯して設置される施設の総体。

[44] バリアフリー(化):障害者や高齢者が行う諸活動に不便な障害(バリアー)を取り除くことの総称。例として、階段の代わりに緩やかなスロープをつけたりすることが挙げられる。

[45] ユニバーサルデザイン:あらゆる人々が社会の重要かつ対等な構成員であるとの認識のもと、障害者、高齢者、健常者などの区別なく誰もが使えるように配慮する設計思想。

[46] リカレント教育:技術革新の著しい進展や産業構造の変化等に対応して行われる教育のこと。ここでは、社会人や職業人が必要な知識・技術を修得するために、大学等に再入学して学習・研究等を行うことをいう。

[47] ホームヘルプサービス:日常生活に支障のある高齢者がいる家庭を訪問介護員(ホームヘルパー)が訪問して提供する、介護・家事サービス。

[48] 廃棄物発電:廃棄物を燃焼させることにより得た熱エネルギーを用いて発電を行うシステムをいう。最近は、炉壁を強化して高温燃焼を可能としたもの、ガスタービン廃熱により蒸気温度を高めるもの(スーパーごみ発電)、広域の廃棄物を固形燃料化して発電するもの(RDF発電)等、高効率発電が可能なシステムの建設も進展している。

[49] 温度差エネルギー:海水、河川水等の持つ熱を熱源として利用し、冷暖房、給湯等の熱利用を行うことをいう。

[50] コージェネレーション:1つの燃料から電気と熱という2つ異なったエネルギーを同時に発生させ、それを利用するシステム。具体的には、エンジン、ガスタービンなどを用いて発電を行い電気エネルギーを得ると同時に、発生する廃熱を回収し熱エネルギーとして冷暖房や給湯などを行うシステムをいう。

[51] 光ファイバ:光信号により情報を伝えるための伝送路に用いられる高純度のガラス繊維。光ファイバケーブルは長い距離を伝送しても信号(光信号)の減衰が小さい(低損失性)、周波数帯域が広い(広帯域性)、外部からの雑音妨害を受けにくいという特性を持っている。

[52] リダンダンシー:自然災害等による障害発生時に、一部の区間の途絶や一部施設の破壊が全体の機能不全につながらないように、予め交通ネットワークやライフライン施設を多重化したり、予備の手段が用意されているような性質を示す。

[53] 共同溝:昭和38年に制定された共同溝の整備等に関する特別措置法に基づく施設で、占用工事に伴う交通渋滞や道路の不経済な損傷を防ぐため、電話線、電力線、ガス管、水道管、下水道管等の公益事業のための物件を道路の地下に共同で収容するもの。

[54] 電線共同溝:安全かつ円滑な交通の確保と景観の整備を図ることを目的として、道路地下に光ファイバ、電力ケーブル等をまとめて収容する空間。

[55] 高規格幹線道路:全国的な自動車交通網を構成する自動車専用道路であり、高速サービスの全国的な普及、主要拠点間の連絡強化を目標とする。高速自動車国道及び一般国道の自動車専用道路で構成される。

[56] マルチモーダル施策:複数の交通機関の連携による交通施策を推進し、利便性を向上することにより、都市全体の交通を円滑にする手法。空港、港湾、駅等の交通拠点へのアクセス強化、鉄道と高速バスの結節強化などもその例。

[57] 輸入促進地域:「輸入の促進及び対内投資事業の円滑化に関する臨時措置法」に基づき、輸入促進を目的として指定される地域で輸入品の荷捌き、保管施設展示場、情報通信センター等の輸入インフラを集積した外国貿易港湾や国際空港及びその周辺の地域。中部圏においては、小松飛行場、清水港の2地域が承認されている。

[58] 地域高規格道路:高規格幹線道路を補完し、地域相互の交流、促進等の役割を担う規格の高い道路。具体的には、4車線以上の車線で、60〜80km以上の速度サービスを提供できる自動車専用道路またはこれと同等の機能を有する道路。名古屋高速道路等もこれに含まれる。

[59]超電導磁気浮上式鉄道:極低温(−269度)で電気抵抗が0になる超電導現象による強力な電磁石の磁力を利用して車両を浮上走行させる鉄道のこと。超高速・低公害等の特性を有し、新しい時代にふさわしい輸送手段として期待されている。なお車両の推進力は、リニアモーターと呼ばれる車両側と地上側に分かれた動力装置によって得られる。現在、実用化に向けて、東海旅客鉄道(株)、(財)鉄道総合技術研究所及び日本鉄道建設公団が山梨実験線で走行試験を行っている。

[60] 道路交通情報通信システム(VICS)(Vehicle Information and Communication System):ドライバーが移動中、リアルタイムな道路交通情報を取得し、適切な経路の選択等を可能とする情報通信システム。情報として、各経路の渋滞情報、所要時間、交通規制情報、駐車場の満空情報等が提供される。中部圏では平成12年3月現在、高速道路及び長野県、静岡県、愛知県の主要な一般道路において情報提供を行っている。

[61] オフピーク通勤:勤務時間を通常とずらすこと等により、通勤のピークとなっている時間帯の前後である比較的乗降客の多くない時間に通勤すること。いわゆる時差通勤。

[62] 新交通システム:中量輸送軌道システムともいわれ、鉄道とバスの中間の輸送力を有する公共交通機関。主に専用ガイドウェイ上をコンピュータ制御された車両が走行する。

[63] LRT(Light Rail Transit):従来の路面電車の走行環境、車両等をグレードアップさせた、人や環境に優しく経済性に優れた公共交通システム。

[64] ガイドウェイバス:従来の路線バスの車輪に案内装置を取り付け、専用軌道上をガイドレールに案内されて走行するシステム。ドイツやオーストラリアで実用化されており、日本ではガイドウェイバスシステム志段味線で初めて導入されている。

[65] トランジットモール:商店街への自動車の乗り入れを制限し、歩行者専用空間としたショッピングモール等に、路面電車、バス等路面を走行する公共交通機関を導入した空間。

[66] フレックスタイム:勤務時間を自主的に決定できる制度。種々の形態があるが、一定時間帯を核時間(コアタイム)として含め、出退勤を自由とするのが一般的である。

[67] パーク・アンド・ライド:都心部等の自動車交通混雑の緩和を図るため、都心部へ乗り入れる鉄道の郊外駅、バスターミナル等の周辺に駐車場を整備し、自動車を駐車(パーク)させ、鉄道、バス等の公共交通機関への乗り換え(ライド)を促すシステム。

[68] シームレスな情報通信体系:携帯・自動車電話とPHSが相互に通話可能になったように、独立している個々のネットワーク相互が接続されることによって、あたかも一つのネットワークであるかのように利用できるいわば継ぎ目のない情報通信体系。

[69] インターネット:世界的に統一されたルールに基づいてコンピュータ同士等が相互に接続されているネットワークの集合体。電子商取引、研究開発情報の交換、電子メール、遠隔教育等幅広く用いられている。

[70] 情報リテラシー(情報活用能力):情報化社会の特質の理解やコンピュータ等を活用した情報の入手、加工、発信等に関する能力。

[71] デジタル化:情報を決められた2つの値しかとらない情報(信号)に変換すること。デジタル化によって情報を効率的に伝送することができるようになる。

[72] CATV(Cable Television):有線テレビジョン放送施設。

[73] コンテンツ:情報ネットワーク上を流通する映像、音声、文字等の情報の内容のこと。

[74] PFI(Private Finance Initiative):民間の資金、経営能力、技術的能力を活用するため、これまで公的部門が行ってきたサービスやプロジェクトの建設や運営を民間主体に委ねること。

[75] ライフサイクルコスト:初期投資にあたる建設コストに、維持管理コスト、廃棄及び更新にかかるコストを加えた、構造物のいわば一生にかかるコスト。

[76] 社会的サービス:電力、ガス、上下水道、公共交通、医療・福祉、教育・文化等の社会生活、日常生活上必要となる分野のサービス。公共等によって提供されることが多い。