新たな近畿圏基本整備計画は、計画期間を2015年までの15箇年とする。
・我が国は、21世紀に向けて、高度情報化、グローバル化、地球規模での環境問題の広がり、少子・高齢化、国民の意識の変化等の劇的変化を迎えている。
・近畿圏では、産業をとりまく環境の変化、大都市問題、中枢性の低下、南北近畿の活力の低下が生じている一方、関西広域連携協議会等の様々な連携の取り組みが行われている。また、阪神・淡路大震災を教訓として防災への意識が高まっている。
・今後の地域間競争や世界経済の激動に耐え、柔軟に対応し、人々に経済的な豊かさをもたらすことのできる「強さ」と「しなやかさ」を持った「産業経済圏域」の形成を目指す。また、これを通じて我が国全体の経済の活性化にも大きく寄与する。
・海外や国内の多くの人々が訪れ、にぎやかで活気にあふれる「交流・情報発信圏域」の形成を目指す。また、我が国の世界との交流の中心の一つとしての役割を担う。
・歴史文化の香りと学術の創造性にあふれ、人々に心の豊かさをもたらすことのできる「文化・学術の中枢圏域」の形成を目指す。また、我が国において、新たな学術研究を先駆けて創造する役割や歴史文化の教育の場を提供し将来へと継承する役割を担う。
・歴史的風土、文化、自然と調和した安全で良好な居住環境の形成と自然の適切な保全・再生により、歴史、自然が日常生活に溶け込み、「安全で快適な生活空間」の形成を目指す。
・近畿圏は、現在、京都、大阪、神戸を中心とする三極一軸の構造であり、この中で京阪神大都市地域では産業活力や全国的中枢機能の低下、南北近畿では地域産業の低迷、人口減少、高齢化等が生じている。
・このためそれぞれの都市・地域が個性を磨きつつも、水平的なネットワークで結ばれた一体的な圏域を形成し、これら諸課題の解決を図ることが必要である。
・すなわち、各都市・地域が個性を育てるとともに、切磋琢磨し競い合い、「核」となることを目指し、それらが散りばめられた「多核」である近畿圏を形成する。また、各都市・地域間の重層的な連携により圏域各地域で「連携軸」を形成する。
・各地域で形成されたこれらの「連携軸」の状況を圏域全体で見ると、あたかも東西方向、南北方向に広がる「格子状」となる。このようにして、近畿圏は「多核格子構造」を形成する。
・多核格子構造の形成に当たっては、播磨地域から神戸、大阪、京都を経て、琵琶湖東部、さらには名古屋大都市地域に至る連携軸を始め、各連携軸の形成を図っていくが、近畿圏全体の一体的な発展のために、大阪湾環状軸、関西内陸環状軸、若狭海道軸、吉野熊野歴史自然軸、T・TAT連携軸、福井・滋賀・三重連携軸を戦略的に形成する。
・圏域の一体化の中で、人々の生活と産業の活力が再生され、さらに近畿圏全体の再活性化が実現する。併せて災害時の機能の代替性の確保を可能とする。
水平的なネットワークの中で各都市・地域は、個性をいかした地域づくりが可能となり、多様性を持った近畿圏が実現する。
・圏域外へのネットワークの広がり、また、近畿圏各地から海外へのネットワークによって、近畿圏は一体となって他圏域、さらには国際的な連携、交流の活発化が実現する。他圏域との連携、交流の強化は、ひいては、日本海国土軸、西日本国土軸、太平洋新国土軸の形成に寄与し、さらには我が国を「多軸型の国土構造」へと導く。
・近畿圏の全人口は、2007年に、約2,367万人とピークに達したあと、人口減少局面に入り、2015年には、約2,344万人(1995年と比べて約14万人増加)となることを見込む。
・世界的規模の都市間競争の激化に対応し、国際的な魅力を備えた事業環境の整備
・公共交通機関の活用を図りつつ、生活に密着した諸機能を徒歩圏に配置したまちづくり、都心部や臨海部の低・未利用地の計画的な土地利用転換の推進
・老朽木造密集市街地の解消等による防災性の向上、都心居住の推進
・大阪湾ベイエリアの総合的な開発整備等によるアミューズメント・レジャー産業、情報通信・映像関連サービス業等の新たな産業の創出
・東大阪を始めとする各地の特色ある中小企業集積の活性化、鉄鋼、金属等の基礎素材型産業の高度化、医療・福祉分野、環境等の新規成長産業の振興
・関西文化学術研究都市を中核とする近畿リサーチコンプレックス構想の推進による研究開発機能の強化とともに技術移転機関(TLO)の創設・活用等による学術研究成果の企業等への移転の促進
・個人等の創業支援の強化、地場産業の活性化
・農林水産業の持続的な発展
(集客交流の推進)
・歴史文化資源、自然資源等を活用した観光・レクリエーションの振興
・都市型アミューズメント施設、国際会議場等の整備と活用による都市の集客交流の推進
・接遇・サービスの改善、情報提供、施設のバリアフリー化
(国際交流の推進)
・産業、文化、環境等の各分野の技術協力や人材育成、国際的なスポーツイベントの開催
・様々な分野におけるNPO等による交流の推進
・ボランティアによるガイドの配置、外国人向けの教育、医療機関の整備等
(豊かな地域資源をいかした交流の推進と地域の整備)
・南北近畿等の資源をいかした地域産業の振興、集客交流の推進、マルチハビテーションの促進
・中小都市における都市機能の充実、ゆとりある生活環境の実現、農山漁村の整備
・「街の顔」である中心市街地の活性化
(歴史文化資源の保全とその価値の再発見)
・文化財や旧跡、歴史的景観、伝統芸能、伝統技術等の適切な保全
・集客交流を推進するため、史跡の復原、歴史街道計画の推進等
・歴史文化教育を推進するため、体験学習の場の提供等
・デジタルアーカイブによる歴史文化資源の保存と活用
(文化・学術研究の推進)
・関西文化学術研究都市等の学術研究集積の整備の推進
・近畿リサーチコンプレックス構想の推進による医療、光量子、アジア文化等の分野での学術研究機能の強化
・大学等高等教育機関における教育研究機能の強化と産業界等との連携
(緑の保全・創出)
・水と緑のネットワークの形成、調和のとれた土地利用、都市緑地の整備、ビオトープの整備、里山林の保全等
・河川上下流連携の下での水源林の造成等様々な観点からの森林整備の推進
(流域圏の総合的保全と整備)
・淀川等の河川の流域及び関連する水利用地域や氾濫原を一体とした流域圏における健全な水循環系の構築に向けて総合的な取組の推進、琵琶湖の総合的な保全の推進
(環境負荷の少ない社会の構築)
・コージェネレーション等の促進、都市部における交通需要マネジメント(TDM)や物流効率化の推進等による交通分野における環境負荷の軽減
・廃棄物等の排出抑制、リサイクル、適正処理の推進
(沿岸域の総合的な利用と保全)
・環境の保全と創造、地域活力創出のための新しい都市型産業の展開や交通体系の整備等総合的な利用と保全の推進
(安全で安心な生活空間の形成)
・都市間の緑地の保全、老朽木造密集市街地の解消、基盤施設の代替性・多重性の確保、地方公共団体間の連携、市民活動との連携等の推進、治山治水事業の推進
(快適な居住環境の整備)
・多様な居住ニーズに応える住宅ストックの形成、リフォームや住み替えの円滑化の推進
・地域資源、地域の文化をいかした個性豊かな住宅・住環境の整備、良好な景観の創出
・ユニバーサルデザインによる住宅、公共施設、市街地、公共交通機関の整備
・医療・福祉施設の充実、育児・介護支援等による女性、高齢者等の社会的活動の支援
(教育・文化の充実)
・育児環境、教育環境の充実、博物館等における既存施設の活用と適切な整備・運営の推進
(水・エネルギー供給体系の整備)
・水資源開発の計画的な推進と汚水処理施設等の整備、エネルギー供給体系の整備
(連携、交流を支える交通体系の整備)
・関西国際空港、国際港湾等の整備、これらと圏域全体とのアクセス性を高めるための交通体系の整備、道路、鉄道等交通体系の整備の推進
・高度道路交通システム(ITS)の推進、利便性の高い公共交通体系の整備
(情報通信体系の積極的な活用と整備)
・様々な分野における情報通信の積極的な活用
・高度な情報通信ネットワークの整備、通信事業や電子商取引に係る環境整備、学校におけるインターネット等を活用した情報教育等の推進
・圏域や地域が一体となった情報発信、外国語での情報提供等による情報発信力の強化
(効率的、効果的な社会資本整備の推進)
・地域の自立や連携、交流の活発化に資する基盤について重点的な整備
・客観的評価、官民の適切な役割分担等のもとでの整備、施設等の効率的な利用・運営やコストの縮減等の推進
・大阪から関空・泉州、和歌山、さらに紀淡海峡、淡路島、明石海峡を経て、神戸、大阪にかけて、集客交流、中枢業務、国際交流、物流、産業、学術研究等高次都市機能の充実とそれぞれの機能における連携の強化によって大阪湾環状軸を形成する。
・播磨科学公園都市、姫路から、北神・三田、京都、関西文化学術研究都市、奈良、五條、和歌山にかけて、産業、学術研究等の諸機能の充実とそれぞれの機能における連携の強化によって関西内陸環状軸を形成する。
・敦賀から小浜、宮津・舞鶴にかけて、自然資源や歴史文化資源、環日本海交流をいかした集客交流、マルチハビテーション(複数地域居住)の推進等に係る連携の強化によって若狭海道軸を形成する。
・「癒し」「蘇り」の地である、和歌山から田辺、新宮、松阪を経て伊勢にかけて、及び伊勢から五條を経て和歌山にかけて、歴史文化資源や自然資源をいかした集客交流の推進等に係る連携の強化によって吉野熊野歴史自然軸を形成する。
・丹後・但馬から阿波、土佐にかけて、諸機能の充実とそれぞれの連携の強化によって地域の活性化、日本海から太平洋にかけての様々な交流の活発化を図りT・TAT連携軸を形成する。
・福井から滋賀を経て三重にかけて、諸機能の充実とそれぞれの連携の強化によって地域の活性化、中部圏との連携の強化を図り福井・滋賀・三重連携軸を形成する。
・前述の総合的かつ基本的な方針に基づき、広域性を有し、かつ、根幹となるべき道路、鉄軌道、港湾、空港、河川、住宅等の30の施設について、事業の実施に当たっての配慮事項を踏まえつつ、その整備の方向付けを行う。
・近畿圏整備法の規定に基づき、圏域全体の均衡ある発展を図る上で必要な近郊整備区域、都市開発区域及び保全区域の指定について細目的な基準を定める。