「21世紀の国土のグランドデザイン」 第1部 第3章 第2節 2


2 地域特性を踏まえた効果的な基盤投資

  (特色ある地域の発展を目指した投資)

 多様性のある国土を築く基本は、地域が主体となり、その自然的、社会的特性を生かしつつ、創意と工夫を競い合い進める特色ある地域づくりに置かれなければならない。

 このため、まず、地域の自立を促す国土基盤を一定の条件内で整備するなど機会の均等化を図る必要があり、生活環境施設の地域間の不均衡の是正及び高次な都市機能等の享受を広域的に可能とするための拠点施設、アクセス施設等について、重点的な投資を進める。

 つぎに、地域のニーズを尊重することが創意と工夫を発揮する地域づくりに基本的に重要である。このため、地域が自らの責任と選択により地域づくりを行えるよう地方分権を積極的に進め、補助金等の整理合理化や必要な地方一般財源の確保について不断の努力を行うとともに、補助事業等について地方公共団体が選択、活用ができる仕組みの充実、地域の諸条件や創意工夫を反映できるような施設の構造基準の弾力化、国の行う事業について地域ニーズ反映のための仕組みの強化等基盤投資に係る幅広い施策の推進を図る。

 さらに、多くの課題を抱える地域について戦略的な対応を図るための投資の推進が必要であり、中小都市と中山間地域等を含む農山漁村等を多自然居住地域として創造していくために必要な基盤への投資、並びに大都市地域の再生に資する基盤への投資を確実に進める。


  (地域のストックと調和した投資の推進)

 各地域においても相当なストックが蓄積されてきており、これらストックの有効活用を図りつつ地域への計画的な投資を進めることが必要である。特に、交通、情報通信体系の活用等により市町村や県等の境界を越えて施設の広域的利用が可能となってきていることから、地域連携軸の展開の取組等を通じ、地域連携の下での既存施設の相互利用の促進を図るとともに、新規の基盤整備を行うに当たっての広域的観点に立った既存施設の利用可能性の点検や広域利用を前提とした連携投資の推進を図る。


3 次世代に備えた効果的な基盤投資
  (新技術の開発に係る投資)

 我が国の発展にとって欠くことのできない新しい技術の開発、導入に向け、関係投資を一層進めることが重要である。このため、基盤となる研究開発機能の強化を進めるとともに、その利用の高度化、効率化を促す情報通信技術の活用を積極的に進める。これらの研究開発基盤の基で、超電導磁気浮上式鉄道、ITS、TSL(新形式超高速船)、新物流システム、光通信システム技術等の21世紀の国土づくりに新しい可能性を拓く交通、情報通信技術、低公害車、新エネルギー、省エネルギー、廃棄物のリサイクル等の環境負荷の低減に資する技術及び、都市の防災・環境改善、生物、バイオテクノロジーを活用した環境改善や生産性向上、超大型浮体式海洋構造物等自然との共存や国土空間の有効利用に関する技術等新技術の開発、実用化を推進する。また、高齢化や人口減少等需要構造の質的、量的変化に対応した、新たな交通システム、生活排水等処理技術等の研究開発に取り組む。これらの投資が、効果的なものとなるよう、研究成果の活用度等により適切な評価を実施しつつ行う。


  (新しい視点に立った国土基盤投資)

 今後の経済社会構造の大きな変化に対応できるよう、新しい視点を持った基盤整備を進めることも重要となる。投資余力の減少に備え、安全度が高く長期の使用が可能である、平常時のみならず災害時にも活用できるなど基盤利用効率を向上させる視点、より使いやすい、地域景観と調和する、自然とのふれあいや環境の保全、回復に寄与するなど、利用者の立場や自然との共存の視点を重視した取組を強化する。また、地球時代の進展の中で、規模、機能面で国際的水準に比し立ち遅れた基盤についての水準の向上や海外諸国の基盤整備の計画との連携等の国際的調和の視点や、海外諸国への便益をも考慮する国際的便益の視点を持った基盤整備を進める。


  (効果的な基盤投資に向けての幅広い検討)

 長期的な投資余力の減少に備え、効果的な国土基盤投資実現のための不断の努力が続けられなければならない。この一環として、費用対効果分析等客観的評価手法の確立や制度のあり方について検討を深める必要があり、それぞれの事業分野においてその特性を踏まえた検討を進める。さらに、各事業分野に共通する手法上の技術的事項、複数の事業が展開されるプロジェクトの総合的評価方策、環境の価値や地域間の条件の差異等の評価方策、評価を行う体制等、費用対効果分析等に係る課題やそのあり方、及び事業の事後評価結果を評価手法等に適切にフィードバックさせる方策等未確立な部分の多い事項について、幅広く検討を進める。

 少子化・高齢化等に起因する財政制約の高まりが懸念される中で、今後とも地域住民が望む地域づくりを進めるためには、これまで以上に受益者となる地域住民が自ら受益と負担に関して主体的な判断を行うことが必要になることが予想される。このため、受益に見合った負担のあり方も含めて、各地域において行われる国土基盤整備において、その適切な地域負担のあり方について中長期的な視野に立って検討を進める。


次頁「第3節 制度・体制の整備」へ
目次へ
「21世紀の国土のグランドデザイン」トップページへ