「21世紀の国土のグランドデザイン」 第2部 第3章 第1節


第3章 地域の整備と暮らしに関する施策


 豊かで暮らしよい国土を形成していくためには、国土の構成要素である都市及び農山漁村のそれぞれが、今後の経済社会情勢の変化や人々のニーズの多様化、高度化に適切に対応し、地域の歴史、文化、自然環境といった特性を生かして個性的な地域整備を推進していくことが必要であり、次の基本的方向に沿って地域づくりを進める。

都市においては、安全でゆとりとうるおいのある生活を実現するため、地域のニーズに対応して、防災性の強化、居住水準の向上、都市・生活環境の整備を図るとともに、地域の活力の維持増進や都市的利便性の向上を図るため、それぞれの地域特性に応じた都市機能の充実を促進する。
多自然居住地域の創造に当たっては、中小都市等と農山漁村との連携により整備が遅れている生活基盤の整備を推進することと併せて、森林、農地、河川、海岸、集落等の地域空間を良好な状態に管理するとともに、これらの地域資源を活用し、地域の独自性を演出する。こうした取組は、誇りの持てる地域づくりを実現し、さらには、地域の所得機会の確保にもつながるものである。
暮らしの安心を確保する観点から、本格的な高齢社会において高齢者等が住み慣れた家庭や地域で安心して生活を営むとともに、地域において安心して子供を生み育てることができるよう、地域社会の条件整備を進める。さらに、世界的な気候変動や食料、エネルギー需給の逼迫が懸念される中で、日々の暮らしに欠かすことができない食料、エネルギーの安定的確保に取り組む。

第1節 快適で活力ある都市の整備

 経済社会情勢の変化や人々のニーズの多様化、高度化に適切に対応し、地域住民の生活の質の向上と地域の活力の維持増進を図るためには、快適な居住環境の形成、都市機能の充実を目指し、都市づくりを進める必要がある。

 居住環境面については、安全で快適な生活を享受できるよう、各地域のニーズに対応して、防災性の強化、居住水準の向上、都市・生活環境の計画的な整備を図ることが求められる。

 都市機能面については、各都市において都市の規模や立地条件に応じて地域特性を生かした基礎的な都市機能を充実させるとともに、都市間の多様な地域連携を通じて、一定の条件でアクセスが可能な広域的な圏域内で高次都市機能を享受できる自立的な地域構造の形成を図ることが求められる。

1 安全で快適な生活の実現

 安全で快適な生活を実現するため、都市における防災性の向上を図るとともに、ゆとりや豊かさを実感できるような住宅ストックの形成、都市公園等の生活環境施設の整備を推進する。

 (1) 都市の防災性の向上

 阪神・淡路大震災を契機として、都市における防災対策の重要性が再認識された。この教訓も踏まえ、各地域の実情に応じて、災害に強いまちづくりを目指す。

 大規模地震、大洪水等に対応して、都市における生活の安全性を向上させるとともに、被災時の経済社会的な機能障害による国内外に及ぶ混乱を最小限のものとするため、ハード、ソフト両面において都市の防災対策を総合的かつ計画的に推進する。

 このため、避難路、避難地、緊急輸送道路、河川舟運路、延焼遮断帯等の体系的整備、防災安全街区の整備、老朽木造密集市街地における老朽木造住宅の建て替えや都市基盤の整備の促進、大河川における堤防の安全性の向上等により、災害に強い都市構造の形成を図る。

 また、官公庁施設、病院、学校、公民館等、災害時に防災拠点や避難場所としての重要な機能を発揮すべき公共的建築物については、耐震診断・改修を徹底するとともに、新築に際してはその役割の重要度に応じて耐震性、耐火性を強化する。既存の住宅等の民間建築物については、耐震診断・改修の啓発、指導やこれらに対する支援措置を講じ、耐震性の向上を図る。都市の道路、鉄道等の構造物についても耐震性を確保するための補強対策を積極的に推進する。

 上下水道、電気、ガス、電話等のライフラインについては主要な施設の防災性の向上を図る。また、関係機関と密接な連携をとりつつ、共同収容施設としての共同溝、電線共同溝の整備を図るとともに、多ルート化、ループ化等による多重性の確保、代替施設の整備等による代替性の確保を推進する。

 被災地の応急対策を円滑に行うため、地域における防災拠点の整備を進めるとともに、大都市圏等においては、国営公園、広域公園、臨海部の緑地、河川敷等を災害時の広域防災拠点として位置付け、備蓄倉庫、緊急輸送基地、防災用ヘリポート等としての機能を確保する。特に、防災用ヘリポートについては、発災時における円滑な機能の発揮と避難住民の安全を確保するため、避難住民の利用部分とは分離するなどの管理システムを含めて整備を図る。

 都市における防災体制を強化するため、国、地方公共団体等の各機関において情報の収集・連絡体制の整備を図るとともに、機関相互間の連絡が迅速かつ確実に行えるよう情報伝達経路の明確化、多重化を図る。また、自主防災活動を推進するため、平常時より防災知識の普及、防災訓練の実施等により、自主防災思想の普及、徹底を図るとともに、自主防災組織の育成、強化、防災ボランティアの活動環境の整備を図る。


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